就職活動 JOB HUNTING
自己分析と志望動機
講義 2 本・確認問題 10 問 | 最終更新 2026-10-16
この章で学ぶこと- 仕事以外も含めて経験を棚卸しし、「状況・行動・結果・学び」に分けて書く方法
- 強みを行動の言葉で表し、ポータブルスキルやジョブ・カードなど公的な道具を手がかりにする方法
- 業界・会社・自分の3つの問いで志望動機を組み立て、企業研究ラボの調べ方で「なぜこの会社か」を固める方法
1. 経験の棚卸しと強みの言語化
経験を評価せずに書き出し、「状況・行動・結果・学び」に分けて、強みを行動の言葉で表せるようにします。
自己分析というと、性格診断の結果を探すことだと思われがちです。しかし応募書類や面接で使えるのは、「何をしたか」という事実です。まずは経験の棚卸しから始めます。棚卸しとは、これまでの経験を、評価をつけずに全部書き出す作業です。仕事やアルバイトだけでなく、学校、家事、家族の介護、ボランティア、療養中に独学したこと、母国での仕事や勉強も対象になります。どの経験が使えるかは、書き出したあとで選べばよいのです。
書き出した経験は、1つずつ「状況・行動・結果・学び」の4つに分けて書きます。状況はそのときの立場と課題、行動は自分が実際にしたこと、結果はその後どう変わったか、学びはそこから身についた考え方や技能です。とくに大切なのは行動で、「チームで頑張った」ではなく「毎朝、作業の順番を表にして共有した」のように、ほかの人が見てもわかる動作で書きます。結果は、数字があれば数字で書きます(ミスが月5件から1件に減った、など)。数字がなければ、まわりの人の反応や、続けた期間でもかまいません。
経験の棚卸しシート(記入例)
| 項目 | 書くこと | 例:コンビニのアルバイト |
| 状況 | 立場・期間・困っていたこと | 2年間勤務。夕方の品出しが遅れ、売り場に空きが出ていた |
| 行動 | 自分がしたこと(動作で) | 売れる時間帯を記録し、品出しの順番を店長に提案した |
| 結果 | 変わったこと(数字・期間) | 提案した順番が店の決まりになり、空きの指摘がなくなった |
| 学び | 次にも使える考え方・技能 | 記録をとってから改善案を出す習慣 |
棚卸しができたら、強みを言葉にします。「コミュニケーション能力」「責任感」のような言葉は、だれでも使えるので、それだけでは伝わりません。強みは「行動のくせ」として書き、裏づけのエピソードを1つつけます。言葉が見つからないときは、厚生労働省が紹介している「ポータブルスキル」の分け方が手がかりになります。ポータブルスキルは「職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル」とされ、「仕事のし方」(現状の把握・課題の設定・計画の立案・課題の遂行・状況への対応)と「人との関わり方」(社内対応・社外対応・上司対応・部下マネジメント)の9つの要素に分けられています。棚卸しの「行動」がどの要素にあたるかを見ると、強みの名前をつけやすくなります。
一人で整理しにくいときは、公的な無料の道具も使えます。厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」には、職業興味検査、仕事価値観検査、職業適性テスト(Gテスト)などの自己診断ツールがあります。また、厚生労働省の「ジョブ・カード」は、キャリア・プランシート(目標とする仕事や伸ばしたい能力)、職務経歴シート(担当した仕事の内容や、そこで学んだこと)、職業能力証明シート(免許・資格、受けた教育訓練など)の3つで経験を整理する様式で、Webサイト「マイジョブ・カード」でオンラインでも作れます。診断ツールの結果は「答え」ではなく、棚卸しを見直すきっかけとして使うのがよいでしょう。
用語
- 経験の棚卸し
- これまでの経験を、よい・悪いを判断せずに書き出す作業。仕事以外の経験も含める。
- 強みの言語化
- 自分の得意なことを、行動の言葉と具体的なエピソードで説明できるようにすること。
- ポータブルスキル
- 業種や職種が変わっても持ち運べる仕事の進め方のスキル。厚生労働省は「仕事のし方」と「人との関わり方」の9要素に分けて紹介している。
- ジョブ・カード
- 厚生労働省の様式。経験や目標、職業能力を3つのシートに整理し、求職活動やキャリア相談で使う。
例題
例題:「私は責任感があります」という自己PRを、伝わる形に直すには、何を足せばよいか。
答えと考え方 責任感が表れた行動と、その結果を足す。たとえば「任された在庫表を、2年間1日も欠かさず閉店前に更新し、発注ミスをなくしました」のように書くと、読む人が場面を思い浮かべられる。
出典・根拠:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール」、厚生労働省 キャリア形成・学び直し支援センター「ジョブ・カード」、厚生労働省「ジョブ・カード制度」、マイジョブ・カード、職業情報提供サイト job tag「使い方」、労働政策研究・研修機構 資料シリーズNo.287「Web提供型の仕事価値観検査の開発」(2024年)
2. 志望動機の組み立て
業界・会社・自分の3つの問いに答え、企業研究ラボの調べ方で「なぜこの会社か」を具体的にします。
志望動機は、多くの場合、3つの問いに答える形で組み立てます。1つ目は「なぜこの業界・この仕事なのか」、2つ目は「なぜほかの会社ではなく、この会社なのか」、3つ目は「入社したら、自分の何を生かしてどう働くのか」です。1つ目と3つ目は自己分析から、2つ目は企業研究から材料をとります。どれか1つが欠けると、話がつながらなくなります。
いちばん書きにくいのは2つ目です。「業界で大きい会社だから」「成長しているから」は、同じ業界のほかの会社にもあてはまることが多く、理由として弱くなります。この部分は、企業研究ラボの内容を使って調べます。業界の地図でその会社がサプライチェーンのどこにいるかを確かめ、会社の読み方で有価証券報告書の「事業の内容」や「沿革」から、どんな経緯でいまの事業になったのかを読みます。上場していない会社なら、中小企業と地域の会社で紹介している調べ方が使えます。
3つ目では、棚卸しで見つけた強みと、その会社の仕事を結びつけます。「記録をとって改善案を出す習慣があるので、店舗の在庫管理を担う仕事で生かせる」のように、強みと仕事の具体的な場面をつなげます。このとき、「御社で学ばせていただきたい」だけで終わると、受け身な印象になりやすいので、学んだことをどう仕事に返すかまで書くのが一般的です。給与や休日などの条件は大切ですが、それだけを志望理由の中心にすると、どの会社にも言える話になってしまいます。
1. 棚卸しから、強みを1〜2個えらぶ(エピソードつき)
2. なぜこの業界・仕事かを、自分の経験から1文で書く
3. 企業研究ラボの方法で、その会社だけの特徴を2つ以上集める
4. 「この会社の特徴」と「自分の強み」が重なる仕事の場面を探す
5. 結論→理由→入社後にしたいこと、の順に300字前後で書く
6. 会社名を競合他社に入れかえても通じないか、読み直す
療養、介護、学び直しなどで仕事をしていない期間(ブランク)がある人もいるでしょう。説明は短く事実を述べ、その期間に続けたこと(独学、資格の勉強、家族の世話で身についた段取りなど)と、いま働ける状況であることにつなげるのが一般的です。どこまで話すかは本人が決めてよく、企業によって受け止め方も異なります。
書いた志望動機は、応募書類と面接の両方で使います。履歴書の志望動機欄の書き方は履歴書の書き方、職務経歴書やエントリーシートは応募書類:職務経歴書・エントリーシート、面接での話し方のマナーは面接のマナーを見てください。
用語
- 志望動機
- その会社・その仕事を選んだ理由。業界・会社・自分の3つの理由で組み立てることが多い。
- 企業研究
- 業界の構造や会社の事業・歴史を調べること。志望動機の「なぜこの会社か」の材料になる。
- ブランク
- 職歴の空白期間。理由を短く説明し、その間に続けたことと今の状況につなげるのが一般的。
例題
例題:「御社は業界最大手で安定しているので志望しました」という志望動機の弱点は何か。
答えと考え方 会社の規模と安定は条件の話で、自分の強みも入社後の働き方も出てこない。さらに「最大手」以外の理由がないので、なぜこの会社かが伝わらない。事業の特徴と自分の経験が重なる点を足す。
出典・根拠:※ 一般的な就職活動の考え方にもとづく当サイトのオリジナル教材です。会社の調べ方は企業研究 就活ラボ(当サイト)
確認問題(10問)
四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|ポータブルスキルとは
厚生労働省が紹介している「ポータブルスキル」の説明として正しいものはどれか。
- 特定の資格や免許があることを示すスキル
- 職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキル
- パソコンやスマートフォンを使いこなすデジタルのスキル
- ひとつの会社の中だけで通用する、社内の手続きについての知識
正解と解説
正解:B. 職種の専門性以外に、業種や職種が変わっても持ち運びができる職務遂行上のスキルポータブルスキルは、職種の専門性以外の部分で、業種や職種が変わっても持ち運べる仕事の進め方のスキルとされています。資格や免許はジョブ・カードでは職業能力証明シートに書く内容で、ポータブルスキルの定義とは別です。デジタルのスキルは「持ち運べる」という言葉からの連想ですが、定義はIT技能に限りません。社内だけで通用する知識は、持ち運べないという意味で正反対です。
根拠:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール」
問2|人との関わり方
ポータブルスキルの9つの要素のうち、「人との関わり方」に分類されるものはどれか。
- 課題の設定
- 計画の立案
- 状況への対応
- 上司対応
正解と解説
正解:D. 上司対応「人との関わり方」は、社内対応・社外対応・上司対応・部下マネジメントの4要素です。課題の設定、計画の立案、状況への対応は、いずれも「仕事のし方」の5要素(現状の把握・課題の設定・計画の立案・課題の遂行・状況への対応)に入ります。状況への対応は人と接する場面も多いので迷いやすいですが、仕事の進め方の側に分類されています。
根拠:厚生労働省「ポータブルスキル見える化ツール」
問3|ジョブ・カードの3つのシート
厚生労働省の「ジョブ・カード」で、担当した仕事の内容や、仕事で学んだこと・得た知識や技能を書くシートはどれか。
- 職務経歴シート
- キャリア・プランシート
- 職業能力証明シート
- 履歴書
正解と解説
問4|強みを行動で書く
「私はコミュニケーション能力があります」という自己PRを書き直すとき、最も伝わりやすいものはどれか。
- 私は人一倍コミュニケーション能力が高く、だれとでもすぐに仲良くなれます。
- 私の長所はコミュニケーション能力と協調性と責任感です。
- 飲食店のアルバイトで、注文の聞き間違いが続いたため、復唱のルールを提案して全員で守り、3か月間聞き間違いの苦情がなくなりました。
- コミュニケーション能力は社会人に必要なので、これから身につけたいと考えています。
正解と解説
正解:C. 飲食店のアルバイトで、注文の聞き間違いが続いたため、復唱のルールを提案して全員で守り、3か月間聞き間違いの苦情がなくなりました。状況・行動・結果がそろっていて、読む人が場面を思い浮かべられるので最も伝わります。「人一倍」「だれとでも」と程度を強める書き方は、裏づけの事実がないので説得力が増えません。長所の言葉を並べる書き方は、それぞれのエピソードがなく、どれも印象に残りにくくなります。これから身につけたいという書き方は、強みではなく課題を述べているので、自己PRになっていません。
※ 当サイトのオリジナル問題です
問5|棚卸しの範囲
経験の棚卸しについての考え方として、最も適切なものはどれか。
- 正社員として働いた経験だけを書き出す
- 仕事以外の経験(家事、家族の介護、療養中の独学、母国での勉強など)も、まず評価せずに書き出す
- 応募先の仕事に関係がありそうな経験だけを、最初から選んで書く
- 失敗した経験は印象が悪いので書き出さない
正解と解説
正解:B. 仕事以外の経験(家事、家族の介護、療養中の独学、母国での勉強など)も、まず評価せずに書き出す棚卸しは、評価をつけずに全部書き出す作業です。仕事以外の経験からも段取りや継続する力などの強みが見つかることがあり、どれを使うかは書き出したあとで選べます。正社員の経験だけに絞ると、アルバイトや学校、生活の中の経験が抜け落ちます。最初から応募先に合う経験だけを選ぶと、ほかの会社に応募するときや、思いがけない強みを見つける機会を失います。失敗の経験も、そこから何を学んで次にどう変えたかを書けば、材料になります。
※ 当サイトのオリジナル問題です
問6|「なぜこの会社か」
志望動機の「なぜこの会社なのか」の部分として、最も弱い理由はどれか。
- 業界でも大きい会社で、これからも成長しそうだから
- 有価証券報告書の沿革から、地域の取引先と一緒に製品を開発してきた経緯を知り、自分の調整の経験を生かせると考えたから
- 同業他社と比べて、自社の物流網を持っている点が、自分の在庫管理の経験と結びつくから
- 中小企業の調べ方で、地元の工場と長く取引していることがわかり、その関係づくりに関わりたいと考えたから
正解と解説
正解:A. 業界でも大きい会社で、これからも成長しそうだから会社の大きさや成長性は、同じ業界のほかの会社にもあてはまることが多く、自分の経験とも結びついていないので最も弱い理由です。沿革から開発の経緯を読み取った理由は、その会社だけの特徴と自分の経験をつないでいます。同業他社との違い(自社の物流網)に注目した理由も、比べたうえでの根拠があります。地元の工場との取引に関わりたいという理由も、調べてわかった具体的な事実にもとづいています。
※ 当サイトのオリジナル問題です
問7|企業研究ラボとの接続
志望先の会社が「どんな経緯でいまの事業になったのか」を一次情報で調べたい。上場会社の場合、まず見るとよいものはどれか。
- 就職情報サイトの口コミ
- SNSで話題になった社員の投稿
- 会社の採用ページのキャッチコピーだけ
- 有価証券報告書の「沿革」と「事業の内容」
正解と解説
正解:D. 有価証券報告書の「沿革」と「事業の内容」有価証券報告書は会社が法律にもとづいて提出する書類で、「沿革」で事業が広がった経緯を、「事業の内容」でいまの事業の形を確かめられます(くわしくは企業研究ラボ「会社の読み方」)。口コミやSNSの投稿は個人の感想で、一次情報ではありません。採用ページは会社が出す情報ですが、キャッチコピーだけでは経緯や事業の中身まではわかりません。
根拠:企業研究ラボ「会社の読み方」(当サイト)
問8|条件だけの志望動機
「休日が多く、給与もよいので志望しました」という志望動機について、最も適切な見直し方はどれか。
- 条件を気にするのはよくないので、休日や給与のことは一切考えないようにする
- 休日と給与に加えて、福利厚生のよさも書き足す
- 条件は大切だが、それだけではどの会社にも言えるので、事業の特徴と自分の強みが生きる場面を中心に書き直す
- 「長く働ける会社だと思った」と言いかえれば、そのままでよい
正解と解説
正解:C. 条件は大切だが、それだけではどの会社にも言えるので、事業の特徴と自分の強みが生きる場面を中心に書き直す働く条件を確かめることは大切ですが、それだけが理由だと、ほかの条件のよい会社にも同じことが言え、自分が何をしたいかも伝わりません。事業の特徴と自分の強みを中心にするのが一般的な直し方です。条件を一切考えないのは、入社後のミスマッチにつながるので現実的ではありません。福利厚生を足しても、条件の話が増えるだけです。言いかえても中身は条件の話のままです。なお、労働条件そのものの確かめ方は<a href="/learn/life/work-1/">働き方の基礎</a>を見てください。
※ 当サイトのオリジナル問題です
問9|仕事価値観検査
厚生労働省の職業情報提供サイト「job tag」にある「仕事価値観検査」は、主に何を調べるための検査か。
- 計算や文章読解などの能力の高さ
- 仕事を選ぶときに重視する条件や働き方についての考え方
- 性格が明るいか暗いか
- 応募先の会社に合格できるかどうか
正解と解説
問10|ブランクの説明
療養のために2年間働いていなかった人が、応募書類や面接でその期間を説明するときの考え方として、最も一般的なものはどれか。
- 事実を短く述べ、その間に続けたことと、いまは働ける状況であることにつなげる
- 病名や治療の経過を、できるだけくわしく書く
- 期間を書かずに、前の仕事を続けていたように見せる
- 空白は不利なので、話題にされたら謝罪をくり返す
正解と解説
正解:A. 事実を短く述べ、その間に続けたことと、いまは働ける状況であることにつなげる短く事実を述べ、その期間に続けたことや今の状況につなげる説明が一般的です。どこまで話すかは本人が決めてよく、病名や経過をくわしく書く必要はありません。働いていなかった期間を隠して在籍していたように見せるのは、経歴を偽ることになるので避けます。謝罪をくり返すと、これからの話ができなくなります。受け止め方は企業によって異なります。
※ 当サイトのオリジナル問題です
演習:この章の問題を解く
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※ 解説は学習用の情報提供です。制度や手続きは変わることがあるため、最新の情報はハローワーク・厚生労働省などの公式案内でご確認ください。
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