仮の宿 学習室

幼稚園教員 KINDERGARTEN TEACHER

発達と幼児理解

講義 4 本・確認問題 40 問 | 幼児教育の基礎 | 最終更新 2026-10-16

この章で学ぶこと
目次
  1. 乳幼児期の発達の道筋
  2. 幼児期の心の発達:自我・社会性・思考
  3. 遊びと学び
  4. 幼児理解と評価
  5. 確認問題(40問)
  6. 演習ツール

1. 乳幼児期の発達の道筋

幼稚園に入るまでの0〜2歳の育ちと、3歳から就学までの育ちを、公的資料の目安で整理します。

幼稚園は、学校教育法第22条で、幼児を保育し「幼児の健やかな成長のために適当な環境を与えて、その心身の発達を助長すること」を目的の一つにしています。入園できるのは「満三歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児」です(第26条)。幼稚園の教師が担当するのは3歳から就学前までの子どもですが、目の前の3歳児は、0歳からの育ちを積み重ねてきた子どもです。この講義では、0歳から就学までの発達の道筋を、公的な資料の目安で大づかみにします。発達の理論の一般論(遺伝と環境、ピアジェ、エリクソンなど)は教職教養ラボ「教育心理」で、保育士試験の観点からの説明は保育士ラボ「保育の心理学」で学べます。

「発達過程」という見方

保育所保育指針は、子どもの発達を、環境との相互作用を通して資質・能力が育まれていく過程ととらえ、発達過程という言葉を使っています。指針解説は、これは、ある時点で何かが「できる、できない」で発達を見る画一的な捉え方ではなく、育ちゆく過程の全体を大切にする考え方だと説明しています。解説が挙げる発達の特徴は次のとおりです。

・発達には、ある程度一定の順序性や方向性がある。
・身体・運動・情緒・認知・社会性などの側面が、相互に関連しながら総合的に発達する。
・実際の育ちは直線的ではなく、行きつ戻りつしながら進み、停滞して見えたり急に伸びたりする。
・同じ月齢・年齢でも違いがあり、一人の子どもの中でも側面によって違いがある(個人差)。

幼稚園教育要領も、「幼児の発達は,心身の諸側面が相互に関連し合い,多様な経過をたどって成し遂げられていくもの」であることなどを考慮し、幼児一人一人の特性に応じ、発達の課題に即した指導を行うよう求めています(第1章第1の3)。

0歳から2歳まで

こども家庭庁の「令和5年乳幼児身体発育調査」は、保護者が「できる」と答えた割合(通過率)を月齢ごとに調べています。次の表は、90%以上が「できる」と答えた月齢の区分です。平均の月齢ではなく、「ほとんどの子ができている月齢」である点に注意してください。

90%以上の子が「できる」と答えた月齢(令和5年乳幼児身体発育調査)
項目月齢の区分
首のすわり生後4〜5か月未満
ねがえり生後6〜7か月未満
ひとりすわり生後9〜10か月未満
はいはい生後10〜11か月未満
つかまり立ち生後11〜12か月未満
ひとり歩き生後1年4〜5か月未満
一語以上の言葉を話す生後1年6〜7か月未満

心の面について、保育所保育指針解説は次のような目安を示しています。6か月頃には身近な人の顔が分かり、あやしてもらうと喜びます。特定の大人との愛着関係が強まり、その現れとして、知らない人には泣くなど人見知りをするようになります。9か月頃には、自分の意思や欲求を指差しや身振りで伝えようとします。1歳以上3歳未満の時期には、歩く・走る・跳ぶなどの運動機能や、つまむ・めくるなどの指先の機能が発達します。言葉は一語文から「マンマ欲しい」のような二語文へ進み、玩具などを実物に見立てる象徴機能が発達して、簡単なごっこ遊びを楽しむようになります。自我が芽生え、1歳半ば頃から強く自己主張することも多くなります。思いを受け止めてもらう経験を重ねることで、他者を受け入れることができ始めます。

3歳から就学まで

保育所保育指針は3歳以上の時期について、基本的な動作が一通りできるようになり、基本的な生活習慣もほぼ自立できるようになること、理解する語彙数が急激に増加し、知的興味や関心も高まること、仲間と遊び、仲間の中の一人という自覚が生じ、集団的な遊びや協同的な活動も見られるようになることを挙げ、「個の成長と集団としての活動の充実」を図るよう求めています。

幼稚園教育要領は、入園から修了までの生活を、入園当初の一人一人の遊びや教師との触れ合いを通して安定していく時期から、他の幼児との関わりの中で主体的な活動が深まる時期、やがて幼児同士や学級全体で目的をもって協同して生活を展開する時期へと広がっていく過程としてとらえています(第1章第3の4(1))。また、3歳児の入園では家庭との連携を緊密にし、生活のリズムや安全面に十分配慮すること、学年の途中から入園する満3歳児には安心して過ごせるよう配慮することを求めています(同(2))。

保育所保育指針との対応

保育所保育指針は、乳児(0歳)の保育を「健やかに伸び伸びと育つ」(身体的発達)、「身近な人と気持ちが通じ合う」(社会的発達)、「身近なものと関わり感性が育つ」(精神的発達)の3つの視点で、1歳以上3歳未満と3歳以上の保育を「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域で示しています。3歳以上の5領域のねらいは、幼稚園教育要領とほぼ同じです。指針解説は、3つの視点と5領域が「発達的な連続性」をもつと述べています。幼稚園の生活は、家庭や保育所などでのそれまでの育ちの上に始まります。

用語

発達過程
保育所保育指針の言葉。「できる・できない」ではなく、環境との相互作用の中で育っていく過程全体として発達をとらえる。
通過率
ある月齢の子どものうち、その動作などが「できる」と答えた割合。
愛着
特定の大人との間に結ばれる情緒的な絆。人見知りはその現れの一つとされる。
象徴機能
目の前にない物を、別の物や言葉で表す働き。見立てやごっこ遊びを支える。
満3歳児
3歳の誕生日を迎えて、学年の途中から幼稚園に入園する幼児。

例題

例題:1歳2か月の子どもがまだひとりで歩かない、と保護者が心配している。令和5年乳幼児身体発育調査の目安から、どう考えられるか。
答えと考え方 「ひとり歩き」ができると答えた割合が90%以上になるのは、生後1年4〜5か月未満の区分です。1歳2か月で歩いていないことだけで「遅れ」とは言えません。発達には個人差があり、行きつ戻りつしながら進みます。一つの項目だけでなく、全体の育ちを見ながら見守り、気になることが続く場合は専門機関への相談を案内します。

根拠:学校教育法(e-Gov法令検索) 第22条・第26条、保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号) 第1章1(3)、第2章1(1)・2(1)・3(1)、厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(序章・第1章1(3)ウの解説、第2章1〜3の解説)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第1・第3の4、こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査 調査結果の概要」(運動機能・言語機能の通過率。2024年12月公表、2026年10月確認)

2. 幼児期の心の発達:自我・社会性・思考

自我の芽生えと自己抑制、愛着、ピアジェの前操作期、心の理論、言葉と思考の関係を、幼児期に絞って学びます。

幼稚園の3年間(3〜5歳児)は、心の面で大きく育つ時期です。幼稚園教育要領解説は、幼児期の特性として、家庭で親しい人間関係を軸にした生活からより広い世界に目を向け始め、生活の場、他者との関係、興味や関心などが急激に広がり、「依存から自立に向かう」と述べています。同時に、次第に自分でやりたいという意識が強くなる一方で、信頼できる大人にまだ依存していたいという気持ちも強く残っている時期だとも述べています。この講義では、幼児期の心の発達を、自我・社会性・思考と言葉の3つの面から見ます。理論の全体像は教職教養ラボ「教育心理」にあります。

自我の芽生えと自己抑制

幼稚園教育要領は、教育課程の編成に当たって「自我が芽生え,他者の存在を意識し,自己を抑制しようとする気持ちが生まれる幼児期の発達の特性」を踏まえるよう求めています(第1章第3の3(1))。自分の思いを出すこと(自己主張)と、場面に応じて我慢したり待ったりすること(自己抑制)は、どちらも育っていく力です。柏木惠子(1988)の研究では、幼稚園児の自己主張は3歳から4歳後半ごろまで大きく伸びてその後は横ばいになるのに対し、自己抑制は幼児期を通して伸び続けるという結果が示されました。

要領の領域「人間関係」は、人に対する信頼感や思いやりの気持ちは「葛藤やつまずきをも体験し,それらを乗り越えることにより次第に芽生えてくる」こと、互いに思いを主張し、折り合いを付ける体験をし、きまりの必要性などに気付き、自分の気持ちを調整する力が育つようにすることを求めています。友達とのいざこざは、避けるべきものというより、育ちの機会でもあります。

愛着と安心の土台

ボウルビィは、子どもと特定の養育者との情緒的な絆を愛着(アタッチメント)と呼びました。エインズワースは、子どもが愛着の対象を安全基地として探索に出かける姿に注目し、母親との分離と再会の場面を観察するストレンジ・シチュエーション法で、回避型(A型)、安定型(B型)、アンビバレント型(C型)に分けました。のちにメインらが無秩序・無方向型(D型)を加えました。要領が教師に「幼児との信頼関係を十分に築き」と求め、「幼児は安定した情緒の下で自己を十分に発揮する」と述べるのも、安心が探索や挑戦の土台になるからです。

エリクソンの心理社会的発達(乳幼児期の3段階)
時期心理社会的危機
乳児期(0〜1歳ごろ)基本的信頼 対 不信
幼児期初期(1〜3歳ごろ)自律性 対 恥・疑惑
遊戯期(3〜6歳ごろ)自主性(積極性) 対 罪悪感

幼児の考え方:ピアジェの前操作期

ピアジェは、2歳ごろから7歳ごろまでを前操作期と呼びました。象徴機能が働き、ごっこ遊びや言葉が豊かになる一方で、次のような特徴があるとしました。

・自己中心性:自分以外の視点に立って考えることが難しい。3つの山の模型を使い、反対側に座った人形から見える景色を選ばせると、自分から見える景色を選ぶ(三つの山問題)。
・アニミズム:「お日さまが笑っている」のように、生命のない物にも命や心があると考える。
・保存の未成立:コップの水を細長い容器に移すと「水が増えた」と答えるなど、見た目に左右される。

他者の心の理解も、幼児期に大きく育ちます。他者が自分とは違う、事実と異なる信念(誤信念)をもつことを理解できるかを調べる課題を誤信念課題といい、ウィマーとパーナー(1983)の研究などで、4歳ごろから正しく答える子が増えることが示されました。このような他者の心を推し量る仕組みを心の理論と呼びます。

言葉と思考

要領は「言語に関する能力の発達と思考力等の発達が関連している」ことを踏まえ、言語環境を整えるよう求めています(第1章第4の3(3))。幼児は遊びながらよく独り言を言います。ピアジェはこれを他者への伝達を意図しない自己中心的言語と考えましたが、ヴィゴツキーは、人とのやりとりの言葉(外言)が頭の中で考えるための言葉(内言)へ移っていく途中の姿であり、考えを進める道具として働いていると考えました。

用語

自己抑制
場面に応じて自分の欲求や行動を抑える力。幼児期を通して伸びる。
安全基地
子どもが探索に出かけ、不安なときに戻ってくる、安心できる愛着の対象。
自己中心性
ピアジェの用語。自分の視点と他者の視点を区別して考えることが難しいこと。わがままの意味ではない。
心の理論
他者の考えや信念を推し量り、行動を理解・予測する仕組み。
内言
声に出さず、頭の中で考えるために使う言葉。

例題

例題:4歳児が「ぼくの好きな電車の本なら、先生も喜ぶよ」と言って、先生の誕生日に自分の電車の本を渡そうとした。ピアジェの考え方では、どの特徴の現れと考えられるか。
答えと考え方 自分の好みと他者の好みを区別して考えることが難しい自己中心性の現れと考えられます。これは「わがまま」とは違い、幼児期の考え方の特徴です。教師は「先生は何が好きかな」と相手の気持ちに目を向ける言葉をかけながら、友達との関わりの中で、少しずつ他者の視点に気付いていけるよう援助します。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 序章第2節1(幼児期の特性)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第1・第3の3(1)・第4の3(3)、第2章「人間関係」3(4)(5)。学説は原典に基づく教科書的な内容:柏木惠子(1988)『幼児期における「自己」の発達』東京大学出版会、Bowlby, J. (1969) Attachment and Loss, Vol. 1、Ainsworth, M. D. S. ほか (1978) Patterns of Attachment、Main, M. & Solomon, J. (1990)、Erikson, E. H. (1950/1963) Childhood and Society、Piaget, J. & Inhelder, B. (1948) La représentation de l'espace chez l'enfant、Piaget, J. (1926) La représentation du monde chez l'enfant、Wimmer, H. & Perner, J. (1983) Cognition, 13、Vygotsky, L. S. (1934)『思考と言語』

3. 遊びと学び

遊びが「幼児期特有の学習」とされる理由と、遊びの分類、遊びを支える動機づけを学びます。

幼稚園教育要領は、幼稚園教育の基本の一つとして「幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習である」ことを考慮して、遊びを通しての指導を中心として、第2章のねらいが総合的に達成されるようにすることを求めています(第1章第1の2)。この講義では、遊びがなぜ学びなのか、遊びがどう発達していくのかを整理します。

遊びとは何か

幼稚園教育要領解説は、遊びの本質は、人が周囲の事物や他の人たちと思うがままに多様な仕方で応答し合うことに夢中になり、時の経つのも忘れて、その関わり合いそのものを楽しむことにあると述べます。そして「遊びは遊ぶこと自体が目的であり,人の役に立つ何らかの成果を生み出すことが目的ではない」としたうえで、「自発的な活動としての遊びは,幼児期特有の学習なのである」と述べています。保育所保育指針解説も、遊びは「それ自体が目的となっている活動」であり、何よりも「今」を十分に楽しむことが重要だとしています。

では、なぜ「総合的な指導」なのでしょうか。解説は、幼児期には諸能力が個別に発達していくのではなく、相互に関連し合い、総合的に発達していくと説明します。例えば砂場で水路をつくる遊びには、体を動かすこと(健康)、友達と相談すること(人間関係)、水の流れに気付くこと(環境)、思いを伝えること(言葉)などが一度に含まれます。教科ごとに時間を分ける小学校とは違い、5領域は遊びの中で同時に育つものとしてとらえます。

環境を通して行う教育

要領は、幼稚園教育は「幼児期の特性を踏まえ,環境を通して行うもの」であることを基本とします(第1章第1)。教師は幼児の行動の理解と予想に基づいて計画的に環境を構成し、教材を工夫し、物的・空間的環境を構成しなければなりません。遊びは放っておけばよいのではなく、遊びが生まれ、深まるような環境を教師が意図をもってつくります。教師は「理解者,共同作業者など様々な役割」を果たします(第1章第4の3(7))。

遊びの発達:パーテンとピアジェ

パーテン(1932)は、幼児施設(ナーサリー・スクール)での子どもの遊びを、他の子どもとの関わり方(社会的参加)によって分類しました。年齢とともに、一人遊びや平行遊びより、連合遊びや協同遊びが多くなる傾向が示されています。

パーテンによる遊びの分類(社会的参加の型)
型様子
何もしていない行動遊びに加わらず、その時々に興味をひくものを眺めている
一人遊び近くの子どもと関わらず、一人で自分の遊びをする
傍観的行動他の子どもの遊びを見て、話しかけたりするが、遊びには加わらない
平行遊び隣で同じような遊びをしているが、互いに関わり合わない
連合遊び一緒に遊び、物の貸し借りや会話はあるが、役割分担や共通の目標ははっきりしない
協同遊び共通の目的のもとで役割を分担し、組織的に遊ぶ

ピアジェは、遊びを思考の発達と結び付けて、感覚運動期の機能遊び(練習遊び)、前操作期に盛んになる象徴遊び(見立て遊び・ごっこ遊び)、学童期に盛んになるルールのある遊びに分けました。幼稚園の時期は、ごっこ遊びが豊かになり、年長になると鬼ごっこなど簡単なルールのある遊びを楽しむ姿も見られます。

遊びの中の学びと動機づけ

要領は、遊びや生活を通して「知識及び技能の基礎」「思考力,判断力,表現力等の基礎」「学びに向かう力,人間性等」を一体的に育むとしています(第1章第2)。また、幼児の発達に即して主体的・対話的で深い学びが実現するようにすること、「心を動かされる体験が次の活動を生み出す」ことを考慮することを求めています(第1章第4の3(2))。幼児期は直接的な体験が重要なので、視聴覚教材やコンピュータなどの情報機器は、幼稚園生活では得難い体験を補完するなど、幼児の体験との関連を考えて使います(同(6))。

遊びは、活動そのものの楽しさから生まれる内発的動機づけに支えられています。レッパーら(1973)は、もともと絵を描くことが好きだった幼児に、ご褒美を約束して描かせると、その後の自由な時間に自分から描く時間が減ることを示しました。外からの報酬が内発的動機づけを弱めるこの現象をアンダーマイニング効果といいます。

用語

遊びを通しての総合的な指導
遊びの中で、5領域のねらいを相互に関連させながら達成していく幼稚園の指導の考え方。
環境の構成
幼児が主体的に関われるよう、物・空間・人などの環境を教師が計画的に整えること。
平行遊び
同じ場で同じような遊びをしているが、互いに関わり合わない遊び。
象徴遊び
物を別の物に見立てたり、何かのふりをしたりする遊び。ごっこ遊びなど。
アンダーマイニング効果
外からの報酬によって、もともとあった内発的動機づけが弱まる現象。

例題

例題:5歳児がお店屋さんごっこをしている。品物をつくる係、売る係、お客さんの役を相談して決め、「みんなでお店を開く」という目的で遊んでいる。パーテンの分類ではどれに当たるか。
答えと考え方 共通の目的があり、役割を分担して組織的に遊んでいるので協同遊びです。一緒に遊んでいても役割分担や共通の目標がはっきりしなければ連合遊び、隣で同じ遊びをしていても関わりがなければ平行遊びです。なお、ピアジェの分類で見ると、ふりをして遊ぶ象徴遊びでもあります。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第1・第2・第4の3(2)(6)(7)、文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(2)「遊びを通しての総合的な指導」、厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月) 第1章1(3)オの解説。学説は原典に基づく教科書的な内容:Parten, M. B. (1932) Social participation among pre-school children, Journal of Abnormal and Social Psychology, 27、Piaget, J. (1945) La formation du symbole chez l'enfant、Lepper, M. R., Greene, D. & Nisbett, R. E. (1973) Journal of Personality and Social Psychology, 28

4. 幼児理解と評価

幼児理解の考え方、評価の留意点、指導要録、特別な配慮を必要とする幼児の理解を学びます。

幼稚園教育要領は、第1章第4の題を「指導計画の作成と幼児理解に基づいた評価」としています。幼稚園の評価は、テストの点数で子どもを順位付けすることではありません。子どもを理解し、その理解を指導の改善に生かすことです。この講義では、幼児理解の考え方、評価の留意点、記録と指導要録、特別な配慮を必要とする幼児の理解を学びます。小学校以上の評価の考え方(形成的評価、個人内評価など)は教職教養ラボ「教育心理」で学べます。

幼児理解とは

幼稚園教育要領解説は、一人一人の発達の特性に応じた指導は、まず幼児の思いや気持ちを受け止め、幼児が周囲の環境をどう受け止めているのかを理解すること、すなわち「幼児の内面を理解しようとすることから始まる」と述べています。また、幼児の姿を理解しようとするなら、教師は幼児と関わっているときの自分自身の在り方や関わり方に少しでも気付いていく必要があるとしています。同じ行動でも、教師の見方や関わり方によって意味が違って見えるからです。

理解の手がかりは、日々の観察と記録です。遊びや生活の自然な場面で子どもの姿を見る観察、印象に残った場面を具体的に書き留める記録、保護者との情報交換、教師同士の話し合いを重ねて、一人の見方に偏らないようにします。保育所保育指針も、保育士等が保育の記録を通して自らの保育を振り返る自己評価を求め、その際「子どもの活動内容やその結果だけでなく、子どもの心の育ちや意欲、取り組む過程などにも十分配慮する」よう述べています。

評価の留意点

要領は、幼児理解に基づいた評価の実施に当たって、次の2点に配慮するよう求めています(第1章第4の4)。

(1) 指導の過程を振り返りながら幼児の理解を進め、幼児一人一人のよさや可能性などを把握し、指導の改善に生かす。その際、「他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではない」ことに留意する。
(2) 評価の妥当性や信頼性が高められるよう創意工夫を行い、組織的かつ計画的な取組を推進するとともに、次年度又は小学校等にその内容が適切に引き継がれるようにする。

評価する人の見方には、偏りが入り込むことがあります。目立つよい特徴(または悪い特徴)に引きずられて、他の面まで同じように評価してしまうハロー効果や、教師の期待がその子への関わり方を変え、結果として子どもの伸びに影響するピグマリオン効果(ローゼンタールら)が知られています。複数の場面・複数の教師で見ることは、評価の妥当性や信頼性を高める工夫の一つです。

「10の姿」と指導要録

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)は、教師が指導を行う際に考慮するものです。保育所保育指針解説は、10の姿が到達すべき目標ではないこと、個別に取り出されて指導されるものではないことに十分留意するよう述べています。10の姿の内容は「幼稚園教育要領の総則」の章で学びます。

幼稚園の幼児一人一人の記録の原本が指導要録です。学校教育法施行規則は、校長が指導要録を作成しなければならないこと、幼児が進学した場合は、その抄本又は写しを作成して進学先の校長に送付しなければならないことを定めています(第24条)。保存期間は5年間ですが、入学・卒業等の学籍に関する記録は20年間です(第28条)。文部科学省の通知「幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について」(2018年3月30日)は、最終年度の「指導上参考となる事項」について、小学校等における児童の指導に生かされるよう、10の姿を活用して幼児に育まれている資質・能力を捉え、指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入すること、10の姿が到達すべき目標ではないことに留意し、項目別に記入するのではなく、全体的、総合的に捉えて記入することを示しています。保育所では、子どもの育ちを支える資料(保育所児童保育要録)が小学校へ送付されます(保育所保育指針 第2章4(2)ウ)。

特別な配慮を必要とする幼児の理解

要領は、障害のある幼児などへの指導では、集団の中で生活することを通して全体的な発達を促していくことに配慮し、家庭、地域、医療・福祉・保健等の関係機関と連携して長期的な視点で支援するための個別の教育支援計画と、個々の幼児の実態を的確に把握して作成する個別の指導計画を作成し活用するよう努めることを求めています(第1章第5の1)。また、海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児については、安心して自己を発揮できるよう配慮するなど、個々の幼児の実態に応じ、指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行うとしています(同2)。

用語

幼児理解
幼児の思いや気持ちを受け止め、内面を理解しようとすること。指導と評価の出発点。
指導要録
幼児の学籍と指導の過程・結果を記録した原本。校長が作成し、進学先に抄本又は写しを送る。
ハロー効果
目立つ特徴の印象に引きずられて、他の面の評価までゆがむこと。
個別の教育支援計画
家庭や関係機関と連携し、長期的な視点で教育的支援を行うための計画。
個別の指導計画
個々の幼児の実態に応じて、指導の目標や内容・方法を具体的に示す計画。

例題

例題:ある教師は、学期末の振り返りで「Aちゃんは学級の中で製作が遅いほうなので、評価を低くつける」と考えた。幼稚園教育要領に照らして、どこに問題があるか。
答えと考え方 要領は、評価は「他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではない」としています。学級の中の順位で見るのではなく、Aちゃんが製作の中で何に興味をもち、どう工夫しているかなど、一人一人のよさや可能性を捉え、それを次の指導(材料や時間の工夫など)の改善に生かすことが求められます。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第4の4・第5、文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(3)、保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号) 第1章3(4)ア・第2章4(2)ウ、厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月) 第1章4(2)の解説、学校教育法施行規則(e-Gov法令検索) 第24条・第28条、文部科学省初等中等教育局長通知「幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について」(29文科初第1814号、平成30年3月30日)。学説は原典に基づく教科書的な内容:Thorndike, E. L. (1920) A constant error in psychological ratings, Journal of Applied Psychology, 4、Rosenthal, R. & Jacobson, L. (1968) Pygmalion in the Classroom

確認問題(40問)

四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。

問1|発達過程のとらえ方

保育所保育指針とその解説が「発達過程」という語で表している発達のとらえ方として、最も適切なものはどれか。

  1. 月齢ごとの到達基準を定め、基準に届いたかどうかで一人一人を判定する
  2. 発達は一定の速さで直線的に進むので、遅れはすぐに取り戻させる
  3. ある時点で「できる・できない」を見るのではなく、育ちゆく過程の全体を大切にする
  4. 運動・言葉・社会性などの側面は互いに独立して、別々に育つと考える
正解と解説
正解:C. ある時点で「できる・できない」を見るのではなく、育ちゆく過程の全体を大切にする

指針解説は、発達を環境との相互作用を通して資質・能力が育まれていく過程ととらえ、「できる、できない」で見る画一的な捉え方ではないから「発達過程」という語を使うと説明しています。到達基準で判定するという選択肢は、解説が否定する画一的な見方です。直線的に進むという選択肢は、育ちは行きつ戻りつするという解説の記述と合いません。側面が独立して育つという選択肢は、諸側面が相互に関連しながら総合的に発達するという記述と逆です。

根拠:厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(序章4【発達過程】、第1章1(3)ウの解説)

問2|発達の特徴

保育所保育指針解説が述べる乳幼児期の発達の特徴として、適切なものはどれか。

  1. 同じ月齢の子どもであれば、興味や関心の対象はほぼ同じになる
  2. 一人の子どもの中では、どの側面もほぼ同じ速さで発達する
  3. 実際の育ちは直線的ではなく、行きつ戻りつしながら進むことがある
  4. 発達には順序性がないので、見通しをもって保育することはできない
正解と解説
正解:C. 実際の育ちは直線的ではなく、行きつ戻りつしながら進むことがある

解説は、育ちは直線的ではなく、行きつ戻りつしながら、停滞して見えたり急に伸びたりすると述べています。同じ月齢なら興味関心が同じという選択肢は、個性や経験の違いで興味関心の対象は異なるという記述に反します。一人の中では同じ速さという選択肢は、言葉は早いが運動はゆっくりなど、側面によって違いがあるという記述に反します。順序性がないという選択肢は、発達には「ある程度一定の順序性や方向性がある」という記述に反します。

根拠:厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(第1章1(3)ウの解説)

問3|ひとり歩きの目安

令和5年乳幼児身体発育調査で、「ひとり歩き」ができると答えた割合が90%以上になった月齢の区分はどれか。

  1. 生後9〜10か月未満
  2. 生後11〜12か月未満
  3. 生後1年10〜11か月未満
  4. 生後1年4〜5か月未満
正解と解説
正解:D. 生後1年4〜5か月未満

調査結果の概要では、「ひとり歩き」は生後1年4〜5か月未満の幼児の90%以上でできると回答されています。生後9〜10か月未満は「ひとりすわり」、生後11〜12か月未満は「つかまり立ち」が90%以上になる区分で、ひとり歩きではありません。1年10〜11か月未満は、調査が示すひとり歩きの区分より遅すぎます。

根拠:こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査 調査結果の概要」(2(1)運動機能)

問4|運動発達の順序

令和5年乳幼児身体発育調査で90%以上が「できる」と答えた月齢が早い順に、運動機能を正しく並べたものはどれか。

  1. ねがえり → 首のすわり → つかまり立ち → ひとりすわり
  2. 首のすわり → ひとりすわり → ねがえり → つかまり立ち
  3. 首のすわり → ねがえり → ひとりすわり → つかまり立ち
  4. ねがえり → ひとりすわり → 首のすわり → つかまり立ち
正解と解説
正解:C. 首のすわり → ねがえり → ひとりすわり → つかまり立ち

調査では、首のすわり(生後4〜5か月未満)、ねがえり(6〜7か月未満)、ひとりすわり(9〜10か月未満)、つかまり立ち(11〜12か月未満)の順です。ねがえりを首のすわりより前に置く並びは誤りです。ひとりすわりをねがえりより前に置く並びも、調査の順序と合いません。つかまり立ちをひとりすわりより前に置く並びも誤りです。

根拠:こども家庭庁「令和5年乳幼児身体発育調査 調査結果の概要」(2(1)運動機能)

問5|人見知りの意味

生後6か月を過ぎた乳児が、初めて会った人に対して泣くなど人見知りをするようになった。保育所保育指針解説に照らして、この姿の理解として最も適切なものはどれか。

  1. 特定の大人との愛着関係が育まれていることの現れである
  2. 発達の遅れのサインなので、すぐに専門機関に相談すべきである
  3. 家庭でのしつけが不十分なために起こる行動である
  4. 3歳ごろに初めて現れる行動が、早く出てきたものである
正解と解説
正解:A. 特定の大人との愛着関係が育まれていることの現れである

指針解説は、特定の大人との愛着関係が育まれている現れとして、初めて会った人や知らない人に対して泣くなど、人見知りをするようになると述べています。遅れのサインとする選択肢は、育ちの現れという解説の記述と逆です。しつけ不足とする選択肢には根拠がありません。3歳ごろに初めて現れるという選択肢は、乳児期の姿として書かれている解説と合いません。

根拠:厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(第2章1(2)イの解説)

問6|象徴機能

1歳以上3歳未満の子どもが、積み木を電話に見立てて耳に当て、「もしもし」と話している。保育所保育指針解説で、この時期に発達するとされている働きはどれか。

  1. 保存の概念
  2. 象徴機能
  3. 自己抑制
  4. 原始反射
正解と解説
正解:B. 象徴機能

指針解説は、1歳以上3歳未満の時期に、玩具等を実物に見立てるなどの象徴機能が発達し、大人と一緒に簡単なごっこ遊びを楽しむようになると述べています。保存の概念は、見た目が変わっても量などが変わらないと分かることで、ピアジェは具体的操作期に成立するとしました。自己抑制は自分の欲求を抑える力で、見立てとは別のものです。原始反射は新生児期に見られる生まれつきの反射で、見立て遊びとは関係ありません。

根拠:厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(第2章2(1)の解説)

問7|自己主張への援助

1歳半ばを過ぎた子どもが、何でも「自分で」「いや」と強く主張するようになった。保育所保育指針解説の考え方に最も近い関わりはどれか。

  1. わがままが癖にならないよう、主張が出たらその場ですぐにやめさせる
  2. 思いや欲求を受け止めてもらう経験を重ねることで、他者を受け入れ始めると考え、気持ちを受け止める
  3. 主張は一時的なものなので、反応せずにそのまま放っておく
  4. 理由を論理的に説明すれば分かる時期なので、言葉で説得して従わせる
正解と解説
正解:B. 思いや欲求を受け止めてもらう経験を重ねることで、他者を受け入れ始めると考え、気持ちを受け止める

指針解説は、自我が芽生え、1歳半ば頃から強く自己主張することも多くなり、自分の思いや欲求を主張し、受け止めてもらう経験を重ねることで、他者を受け入れることができ始めると述べています。すぐにやめさせる選択肢は、受け止める経験を奪うので解説の考え方と合いません。反応せず放っておく選択肢も、受け止める関わりになりません。論理的な説得で従わせる選択肢は、言葉がまだ十分でないこの時期の姿に合わず、解説の考え方とも違います。

根拠:厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(第2章2(1)の解説)

問8|3歳以上の保育の基本

保育所保育指針は、3歳以上児の発達の特徴を踏まえ、この時期の保育で何を図るようにしなければならないとしているか。

  1. 集団の規律の確立を、個の成長より優先すること
  2. 小学校の教科につながる知識・技能の早期習得
  3. 個の成長と集団としての活動の充実
  4. 養護と切り離した、教育だけを目的とする活動
正解と解説
正解:C. 個の成長と集団としての活動の充実

指針は、3歳以上児について、仲間の中の一人という自覚が生じ、集団的な遊びや協同的な活動も見られるようになるという特徴を踏まえ、「個の成長と集団としての活動の充実が図られるようにしなければならない」としています。規律を個より優先する選択肢は、個と集団の両方を図るという記述と合いません。知識・技能の早期習得は指針の示す内容ではありません。養護と切り離すという選択肢は、各領域の内容が養護と一体となって展開されるという指針の記述に反します。

根拠:保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号) 第2章3(1)ア・ウ

問9|幼稚園に入園できる年齢

学校教育法第26条が定める、幼稚園に入園することのできる者として正しいものはどれか。

  1. 満三歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児
  2. 満二歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児
  3. 満三歳になった後の最初の4月1日から、小学校就学の始期に達するまでの幼児
  4. 満四歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児
正解と解説
正解:A. 満三歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児

第26条は「幼稚園に入園することのできる者は、満三歳から、小学校就学の始期に達するまでの幼児とする」と定めています。満二歳とする選択肢は誤りです。満三歳後の最初の4月からとする選択肢は、学年の途中で満3歳になって入園する満3歳児(要領も入園への配慮を求めている)を説明できず、条文とも違います。満四歳とする選択肢も条文と違います。

根拠:学校教育法(e-Gov法令検索) 第26条、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第3の4(2)

問10|乳児保育の3つの視点

保育所保育指針で、乳児保育のねらい及び内容のうち、身体的発達に関する視点として示されているものはどれか。

  1. 身近な人と気持ちが通じ合う
  2. 身近なものと関わり感性が育つ
  3. 健やかに伸び伸びと育つ
  4. 明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう
正解と解説
正解:C. 健やかに伸び伸びと育つ

指針は、乳児保育のねらい及び内容を、身体的発達に関する視点「健やかに伸び伸びと育つ」、社会的発達に関する視点「身近な人と気持ちが通じ合う」、精神的発達に関する視点「身近なものと関わり感性が育つ」の3つで示しています。「身近な人と気持ちが通じ合う」は社会的発達、「身近なものと関わり感性が育つ」は精神的発達の視点です。「明るく伸び伸びと行動し、充実感を味わう」は、3歳以上の領域「健康」(幼稚園教育要領の「健康」も同じ)のねらいで、乳児の視点ではありません。

根拠:保育所保育指針(平成29年厚生労働省告示第117号) 第2章1(1)イ・第2章3(2)ア、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第2章「健康」

問11|幼児期の特性

幼稚園教育要領解説は、幼児期には生活の場、他者との関係、興味や関心などが急激に広がり、(  )と述べている。空欄に入る語句として正しいものはどれか。

  1. 自立から依存に向かう
  2. 依存から自立に向かう
  3. 集団から個に向かう
  4. 抽象から具体に向かう
正解と解説
正解:B. 依存から自立に向かう

解説は、幼児期には家庭での親しい人間関係を軸にした生活からより広い世界に目を向け始め、生活の場、他者との関係、興味や関心などが急激に広がり、「依存から自立に向かう」と述べています。「自立から依存に向かう」は向きが逆です。「集団から個に向かう」は、他者との関係が広がるという記述と合いません。「抽象から具体に向かう」も解説の記述になく、幼児期の思考の説明としても向きが逆です。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 序章第2節1

問12|要領が示す幼児期の発達の特性

幼稚園教育要領は、教育課程の編成に当たり、どのような幼児期の発達の特性を踏まえるよう求めているか。

  1. 論理的な思考が完成し、抽象的な概念を使って考えられるようになる
  2. 他者の立場に完全に立って考えられるようになり、自己主張が見られなくなる
  3. 大人への依存がなくなり、自分の力だけで生活を組み立てられるようになる
  4. 自我が芽生え、他者の存在を意識し、自己を抑制しようとする気持ちが生まれる
正解と解説
正解:D. 自我が芽生え、他者の存在を意識し、自己を抑制しようとする気持ちが生まれる

要領第1章第3の3(1)は「自我が芽生え,他者の存在を意識し,自己を抑制しようとする気持ちが生まれる幼児期の発達の特性を踏まえ」と述べています。論理的思考が完成するという選択肢は、ピアジェが形式的操作期(11〜12歳ごろ以降)に置く姿です。自己主張が見られなくなるという選択肢は、自己主張も自己抑制も育つ幼児期の姿と合いません。依存がなくなるという選択肢は、大人にまだ依存していたい気持ちも強く残るという解説の記述に反します。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第3の3(1)、文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 序章第2節1

問13|自己主張と自己抑制

柏木惠子(1988)の幼稚園児の自己制御に関する研究で示された結果として、最も適切なものはどれか。

  1. 自己抑制は幼児期を通して伸び続け、自己主張は4歳後半ごろから横ばいになる
  2. 自己主張は幼児期を通して伸び続け、自己抑制は4歳後半ごろから横ばいになる
  3. 自己主張と自己抑制は、どちらも3歳でほぼ完成し、その後は変わらない
  4. 自己抑制が伸びると自己主張が減るため、両者は常に逆の動きをする
正解と解説
正解:A. 自己抑制は幼児期を通して伸び続け、自己主張は4歳後半ごろから横ばいになる

柏木の研究では、自己主張・自己実現は3歳から4歳後半ごろまで大きく伸び、その後は横ばいになるのに対し、自己抑制は幼児期を通して伸び続けるという結果が示されました。主張と抑制を入れ替えた選択肢は誤りです。3歳で完成するという選択肢は、幼児期を通して変化するという結果と合いません。常に逆の動きをするという選択肢も、主張が横ばいの時期に抑制が伸びるという結果を正しく表していません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問14|いざこざと思いやり

幼稚園教育要領の領域「人間関係」の内容の取扱いに照らして、友達とのいざこざについての考え方として最も適切なものはどれか。

  1. いざこざは育ちに悪い影響を与えるので、起こらないように遊びの場を一人ずつ分けておく
  2. いざこざが起きたら、教師がすぐにどちらが悪いかを決め、謝らせて終わりにする
  3. 思いやりは年長になってから教えるものなので、3歳児同士の関わりは控えさせる
  4. 人に対する信頼感や思いやりは、葛藤やつまずきを体験し、乗り越えることで次第に芽生えるので、その体験を大切にする
正解と解説
正解:D. 人に対する信頼感や思いやりは、葛藤やつまずきを体験し、乗り越えることで次第に芽生えるので、その体験を大切にする

要領は「人に対する信頼感や思いやりの気持ちは,葛藤やつまずきをも体験し,それらを乗り越えることにより次第に芽生えてくることに配慮すること」とし、互いに思いを主張し、折り合いを付ける体験を通して気持ちを調整する力が育つようにすることを求めています。遊びの場を分ける選択肢は、関わりの中での育ちの機会をなくします。教師がすぐに裁定する選択肢は、子ども自身が折り合いを付ける体験を奪います。関わりを控えさせる選択肢も要領の考え方と合いません。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第2章「人間関係」3(4)(5)

問15|エリクソンの遊戯期

エリクソンの心理社会的発達理論で、3〜6歳ごろ(遊戯期)の心理社会的危機として正しいものはどれか。

  1. 基本的信頼 対 不信
  2. 自律性 対 恥・疑惑
  3. 勤勉性 対 劣等感
  4. 自主性(積極性) 対 罪悪感
正解と解説
正解:D. 自主性(積極性) 対 罪悪感

エリクソンは、遊戯期(3〜6歳ごろ)の危機を「自主性(積極性)対 罪悪感」としました。「基本的信頼 対 不信」は乳児期、「自律性 対 恥・疑惑」は幼児期初期(1〜3歳ごろ)、「勤勉性 対 劣等感」は学童期の危機です。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問16|ストレンジ・シチュエーション法

エインズワースのストレンジ・シチュエーション法で、母親と離れると泣くが、再会すると喜んで迎え、すぐに落ち着いてまた遊び始める子どもは、どの型に分類されるか。

  1. 安定型(B型)
  2. 回避型(A型)
  3. アンビバレント型(C型)
  4. 無秩序・無方向型(D型)
正解と解説
正解:A. 安定型(B型)

分離で泣き、再会すると積極的に身体接触を求めてすぐに落ち着き、また探索に戻る姿は、母親を安全基地として使える安定型(B型)の特徴です。回避型(A型)は、分離でもあまり泣かず、再会しても母親を避けるような様子が特徴です。アンビバレント型(C型)は、再会で接触を求めながら怒りも示し、なかなか落ち着かない様子が特徴です。無秩序・無方向型(D型)は、のちにメインらが加えた型で、近づきながら顔をそむけるなど、まとまりのない行動が特徴です。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問17|三つの山問題

ピアジェの「三つの山問題」で、前操作期の幼児が、反対側に座った人形から見える景色として、自分から見える景色を選ぶことが多い。この特徴を何と呼ぶか。

  1. アニミズム
  2. 保存の未成立
  3. 対象の永続性
  4. 自己中心性
正解と解説
正解:D. 自己中心性

自分以外の視点に立って考えることが難しく、自分の見え方を他者の見え方と区別できない特徴を、ピアジェは自己中心性と呼び、三つの山問題で示しました。アニミズムは、生命のない物にも命や心があると考える特徴です。保存の未成立は、見た目が変わると量や数も変わったと考える特徴です。対象の永続性は、見えなくなった物も存在し続けると分かることで、感覚運動期に獲得されます。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問18|アニミズム

4歳児が「お花がのどが渇いたって言ってるよ」「石をけったら石が痛いよ」と話している。ピアジェの考え方で、この特徴を何と呼ぶか。

  1. アニミズム
  2. 自己中心性
  3. 保存の未成立
  4. 外言
正解と解説
正解:A. アニミズム

生命のない物や植物にも、人と同じような命や心、感覚があると考える特徴を、ピアジェはアニミズムと呼び、前操作期の特徴の一つとしました。自己中心性は、自分以外の視点に立つことが難しい特徴で、物に心があると考えることとは別のものです。保存の未成立は、見た目の変化で量が変わったと考える特徴です。外言は、人に向けて声に出す言葉を指すヴィゴツキーの用語で、考え方の特徴を表す語ではありません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問19|誤信念課題

人形劇で、「サリーがかごに入れたボールを、サリーがいない間にアンが箱に移す。戻ってきたサリーはどこを探すか」を幼児に尋ねる。このような課題で主に調べているのはどれか。

  1. 見た目が変わっても量が変わらないと分かるか(保存)
  2. 見えなくなった物が存在し続けると分かるか(対象の永続性)
  3. 他者が事実と異なる信念をもつことを理解できるか(心の理論)
  4. 物を別の物に見立てることができるか(象徴機能)
正解と解説
正解:C. 他者が事実と異なる信念をもつことを理解できるか(心の理論)

これは誤信念課題で、ボールが移されたことを知らないサリーは、事実とは違って「かごにある」と信じている、と理解できるかを調べます。このように他者の心を推し量る仕組みを心の理論と呼び、ウィマーとパーナー(1983)の研究などで、4歳ごろから正しく答える子が増えることが示されました。保存は量の理解、対象の永続性は見えない物の存在の理解、象徴機能は見立ての力で、いずれもこの課題が調べるものではありません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問20|幼児の独り言

幼児が積み木を組みながら「ここに長いのを置いて…あれ、倒れる。じゃあこっち」と独り言を言っている。ヴィゴツキーの考え方として最も適切なものはどれか。

  1. 人とのやりとりの言葉(外言)が、考えるための言葉(内言)へ移っていく途中の姿で、思考の道具として働いている
  2. 他者への伝達を意図しない未熟な言葉で、社会化が進めば役割を果たさずに消えていく
  3. 言葉の発達に問題があるサインなので、独り言をやめさせて話しかけるようにする
  4. 大人の言葉をまねしているだけで、子どもの思考とは関係がない
正解と解説
正解:A. 人とのやりとりの言葉(外言)が、考えるための言葉(内言)へ移っていく途中の姿で、思考の道具として働いている

ヴィゴツキーは、幼児の独り言を、外言が内言へ移っていく途中の形であり、考えを進める道具として働いていると考えました。伝達を意図しない未熟な言葉で役割なく消えるとする選択肢は、ピアジェの初期の見方に近く、ヴィゴツキーの考えではありません。問題のサインとする選択肢には根拠がありません。思考と関係がないとする選択肢は、言葉が思考の道具になるというヴィゴツキーの考えと逆です。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問21|遊びの位置付け

幼稚園教育要領は「幼児の自発的な活動としての遊びは,心身の調和のとれた発達の基礎を培う(  )である」と述べている。空欄に入る語句として正しいものはどれか。

  1. 学習の準備
  2. 大切な休息
  3. 学習とは別の活動
  4. 重要な学習
正解と解説
正解:D. 重要な学習

要領第1章第1の2は、遊びは「心身の調和のとれた発達の基礎を培う重要な学習である」ことを考慮して、遊びを通しての指導を中心とするよう求めています。「学習の準備」は、遊びそのものを学習とする要領の考え方と違います。「大切な休息」は、遊びを学習の合間の休みとみる誤解です。「学習とは別の活動」は、要領の文言と逆です。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第1の2

問22|遊びの本質

幼稚園教育要領解説の遊びのとらえ方として、最も適切なものはどれか。

  1. 遊びは遊ぶこと自体が目的であり、何らかの成果を生み出すことが目的ではない
  2. 遊びは小学校の教科学習の準備なので、教師が目的を定めて行わせるものである
  3. 遊びは自由時間の活動なので、教師の指導や環境の工夫は必要ない
  4. 遊びの価値は、できあがった作品の出来栄えによって決まる
正解と解説
正解:A. 遊びは遊ぶこと自体が目的であり、何らかの成果を生み出すことが目的ではない

解説は「遊びは遊ぶこと自体が目的であり,人の役に立つ何らかの成果を生み出すことが目的ではない」とし、自発的な活動としての遊びは幼児期特有の学習であると述べています。教科学習の準備として行わせる選択肢は、遊ぶこと自体が目的という記述に反します。指導や環境の工夫は不要とする選択肢は、教師が計画的に環境を構成するという要領の記述に反します。作品の出来栄えで決まるという選択肢は、成果を目的としないという記述と逆です。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(2)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第1

問23|総合的な指導の理由

幼稚園で遊びを通して「総合的な指導」を行う理由について、幼稚園教育要領解説の説明として最も適切なものはどれか。

  1. 5つの領域は小学校の教科と同じなので、時間を分けて一つずつ教える必要があるから
  2. 幼児期には諸能力が個別に発達するのではなく、相互に関連し合い、総合的に発達していくから
  3. 幼児は一度に一つの能力しか伸ばせないので、遊びで順番に伸ばす必要があるから
  4. 領域ごとに達成度を評定するには、まとめて指導したほうが効率的だから
正解と解説
正解:B. 幼児期には諸能力が個別に発達するのではなく、相互に関連し合い、総合的に発達していくから

解説は、幼児期には諸能力が個別に発達していくのではなく、相互に関連し合い、総合的に発達していくと説明しており、これが総合的な指導の理由です。領域を教科と同じとみて時間を分ける選択肢は、要領の領域の考え方(発達の側面からまとめたもの)と違います。一度に一つの能力しか伸ばせないという選択肢は、相互に関連して発達するという説明と逆です。達成度の評定のためという選択肢は、評定によって捉えないという要領の評価の考え方とも合いません。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(2)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第2章前文・第1章第4の4

問24|平行遊び

3歳児が砂場で、隣り合って同じように型抜きをしている。互いに話しかけたり道具を貸し借りしたりする様子はない。パーテンの分類ではどれに当たるか。

  1. 一人遊び
  2. 連合遊び
  3. 協同遊び
  4. 平行遊び
正解と解説
正解:D. 平行遊び

同じ場で同じような遊びをしているが、互いに関わり合わない遊びは、パーテンの分類では平行遊びです。一人遊びは、近くの子と同じ遊びをしているわけではなく、一人で自分の遊びをしている状態です。連合遊びは、一緒に遊び、会話や物の貸し借りがある遊びです。協同遊びは、共通の目的のもとで役割を分担して遊ぶものです。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問25|連合遊び

4歳児が数人で、それぞれ三輪車に乗って園庭を走り回っている。「待ってー」「こっち行こう」と声をかけ合い、ついて行ったりしているが、役割分担や共通の目標ははっきりしない。パーテンの分類ではどれに当たるか。

  1. 平行遊び
  2. 連合遊び
  3. 協同遊び
  4. 傍観的行動
正解と解説
正解:B. 連合遊び

一緒に遊び、会話ややりとりはあるが、役割分担や共通の目標がはっきりしない遊びは、パーテンの分類では連合遊びです。平行遊びは、同じ遊びをしていても互いに関わらない遊びで、声をかけ合う姿とは違います。協同遊びは、共通の目的のもとで役割を分担して組織的に遊ぶものです。傍観的行動は、他の子の遊びを見ているが加わらない状態です。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問26|傍観的行動

入園して間もない3歳児が、友達のままごとをじっと見ていて、ときどき「それ何?」と話しかけるが、自分は遊びに加わらない。パーテンの分類ではどれに当たるか。

  1. 何もしていない行動
  2. 平行遊び
  3. 傍観的行動
  4. 連合遊び
正解と解説
正解:C. 傍観的行動

他の子どもの遊びを見て、話しかけたりするが、遊びには加わらない状態は、パーテンの分類では傍観的行動です。何もしていない行動は、特定の遊びを見るのでもなく、その時々に興味をひくものを眺めている状態です。平行遊びは、自分も同じような遊びをしている点で違います。連合遊びは、遊びに加わって一緒に遊ぶものです。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問27|ピアジェの遊びの分類

ままごとで葉っぱをお皿に見立てたり、お母さんのふりをしたりする遊びは、ピアジェの遊びの分類では何に当たるか。

  1. 機能遊び(練習遊び)
  2. 象徴遊び
  3. ルールのある遊び
  4. 協同遊び
正解と解説
正解:B. 象徴遊び

物を別の物に見立てたり、何かのふりをしたりする遊びを、ピアジェは象徴遊びと呼び、前操作期に盛んになるとしました。機能遊び(練習遊び)は、感覚運動期に見られる、体の動きや感覚を繰り返し楽しむ遊びです。ルールのある遊びは、学童期に盛んになる、決まりに従って行う遊びです。協同遊びはパーテンの分類の用語で、ピアジェの分類ではありません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問28|アンダーマイニング効果

もともと絵を描くことが好きだった幼児に、ご褒美を約束して絵を描かせたところ、その後の自由な時間に自分から絵を描く時間が減った。この現象を何と呼ぶか。

  1. アンダーマイニング効果
  2. ピグマリオン効果
  3. ハロー効果
  4. 観察学習
正解と解説
正解:A. アンダーマイニング効果

外からの報酬によって、もともとあった内発的動機づけが弱まる現象をアンダーマイニング効果といい、レッパーら(1973)が幼児の絵を描く活動で示しました。ピグマリオン効果は、教師の期待が子どもの伸びに影響する現象です。ハロー効果は、目立つ特徴の印象で他の面の評価がゆがむことです。観察学習は、他者の行動を見ることで学ぶことで、報酬で意欲が下がる現象ではありません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問29|情報機器の活用

幼稚園教育要領は、視聴覚教材やコンピュータなど情報機器を活用する際の留意事項として、何を示しているか。

  1. 情報機器は幼児の発達に適さないので、幼稚園では一切使用しない
  2. 直接的な体験より効率がよいので、自然や動植物との関わりは映像で代える
  3. 小学校の準備として、文字や数の反復練習に毎日一定時間使う
  4. 幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ、幼稚園生活では得難い体験を補完するなど、幼児の体験との関連を考慮する
正解と解説
正解:D. 幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ、幼稚園生活では得難い体験を補完するなど、幼児の体験との関連を考慮する

要領第1章第4の3(6)は「幼児期は直接的な体験が重要であることを踏まえ,視聴覚教材やコンピュータなど情報機器を活用する際には,幼稚園生活では得難い体験を補完するなど,幼児の体験との関連を考慮すること」としています。一切使用しないという選択肢は、活用する際の留意事項を示す要領の書き方と合いません。映像で代えるという選択肢は、直接的な体験が重要という記述に反します。反復練習に毎日使うという選択肢も要領にはなく、体験との関連という趣旨と違います。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第4の3(6)

問30|思考力、判断力、表現力等の基礎

幼稚園教育要領が示す育みたい資質・能力のうち、「思考力,判断力,表現力等の基礎」の説明として正しいものはどれか。

  1. 豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり、分かったり、できるようになったりする
  2. 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする
  3. 心情、意欲、態度が育つ中で、よりよい生活を営もうとする
  4. 教師が示した手順どおりに、正確に作業を進められるようになる
正解と解説
正解:B. 気付いたことや、できるようになったことなどを使い、考えたり、試したり、工夫したり、表現したりする

要領第1章第2の1は、「思考力,判断力,表現力等の基礎」を「気付いたことや,できるようになったことなどを使い,考えたり,試したり,工夫したり,表現したりする」と示しています。「豊かな体験を通じて、感じたり、気付いたり…」は「知識及び技能の基礎」の説明です。「心情、意欲、態度が育つ中で…」は「学びに向かう力,人間性等」の説明です。手順どおりに作業を進めるという説明は、要領にありません。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第2の1

問31|評価の考え方

幼稚園教育要領が示す、幼児理解に基づいた評価の留意事項として正しいものはどれか。

  1. 学級の中での相対的な位置を明らかにし、5段階で評定する
  2. 「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」の各項目の達成度を数値で示す
  3. 他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではない
  4. 評価は担任一人の判断で行い、他の教師との共有は避ける
正解と解説
正解:C. 他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではない

要領第1章第4の4(1)は、幼児一人一人のよさや可能性などを把握し、指導の改善に生かすこととし、「他の幼児との比較や一定の基準に対する達成度についての評定によって捉えるものではない」と述べています。学級内の位置で5段階評定する選択肢、10の姿の達成度を数値で示す選択肢は、いずれもこの記述に反します。担任一人で判断する選択肢は、組織的かつ計画的な取組を推進するという(2)に反します。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第4の4

問32|幼児理解の出発点

幼稚園教育要領解説は、一人一人の発達の特性に応じた指導は、何から始まると述べているか。

  1. 幼児の思いや気持ちを受け止め、周囲の環境をどう受け止めているかという内面を理解しようとすること
  2. 発達検査を行い、その数値から幼児の能力を正確に判定すること
  3. 前の担任が書いた評価を読み、その見方をそのまま引き継ぐこと
  4. 保護者から家庭での様子を聞き、その内容に従って指導方針を決めること
正解と解説
正解:A. 幼児の思いや気持ちを受け止め、周囲の環境をどう受け止めているかという内面を理解しようとすること

解説は、一人一人の発達の特性に応じた指導は、まず幼児の思い、気持ちを受け止め、幼児が周囲の環境をどう受け止めているのかを理解すること、すなわち「幼児の内面を理解しようとすることから始まる」と述べています。発達検査の数値で判定する選択肢は、内面の理解という出発点と違います。前の担任の見方をそのまま引き継ぐ選択肢は、目の前の幼児を理解しようとする姿勢と合いません。保護者の話は大切な手がかりですが、その内容に従って方針を決めるという選択肢は、解説の述べる出発点ではありません。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(3)

問33|教師自身の関わり方

教師が「Bくんはいつも乱暴だ」と感じている。幼稚園教育要領解説の幼児理解の考え方に最も近い対応はどれか。

  1. 乱暴な行動の回数を記録し、他の幼児より多いことを保護者に伝えて改善を求める
  2. Bくんと関わるときの自分自身の在り方や関わり方にも目を向け、見方が固定していないか振り返る
  3. 最初の印象は当たることが多いので、その見方を前提に指導計画を立てる
  4. 乱暴な行動が出たときだけ注意し、それ以外の場面は観察しない
正解と解説
正解:B. Bくんと関わるときの自分自身の在り方や関わり方にも目を向け、見方が固定していないか振り返る

解説は、幼児の姿を理解しようとするなら、教師は幼児と関わっているときの自分自身の在り方や関わり方に少しでも気付いていく必要があると述べています。回数を数えて他児と比べる選択肢は、比較によらないという要領の評価の考え方と合いません。最初の印象を前提にする選択肢は、見方の固定化につながります。乱暴な場面だけを見る選択肢は、さまざまな場面で幼児を理解する姿勢と違います。

根拠:文部科学省「幼稚園教育要領解説」(平成30年2月) 第1章第1節3(3)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第4の4

問34|ハロー効果

いつも元気にあいさつをし、明るい印象の幼児について、教師が製作や運動の場面まで「よくできている」と甘く見てしまうことがある。このような評価のゆがみを何と呼ぶか。

  1. ピグマリオン効果
  2. アンダーマイニング効果
  3. ハロー効果
  4. ホーソン効果
正解と解説
正解:C. ハロー効果

目立つよい特徴(または悪い特徴)の印象に引きずられて、他の面まで同じように評価してしまうゆがみをハロー効果(光背効果)といいます。ピグマリオン効果は、教師の期待が関わり方を通して子どもの伸びに影響する現象です。アンダーマイニング効果は、外からの報酬が内発的動機づけを弱める現象です。ホーソン効果は、注目されていると意識することで行動や成績が変わる現象で、評価する側の見方のゆがみではありません。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問35|ピグマリオン効果

教師が「この子は伸びる」と期待している幼児には、自然と声をかける回数が増え、励ます関わりが多くなり、その結果その幼児が実際に伸びていく。このような現象を何と呼ぶか。

  1. ピグマリオン効果
  2. ハロー効果
  3. アンダーマイニング効果
  4. 観察学習
正解と解説
正解:A. ピグマリオン効果

教師の期待が関わり方を変え、結果として子どもの伸びに影響する現象をピグマリオン効果(教師期待効果)といい、ローゼンタールらの研究で知られます。ハロー効果は、目立つ特徴の印象で他の面の評価がゆがむことで、子どもの実際の伸びを説明するものではありません。アンダーマイニング効果は、報酬で内発的動機づけが弱まる現象です。観察学習は、他者を見て学ぶことです。

根拠:学説の原典に基づく教科書的な内容(講義の出典欄を参照)

問36|指導要録の作成と送付

学校教育法施行規則が定める指導要録について、正しいものはどれか。

  1. 学級担任が任意で作成し、修了時に原本を保護者に渡す
  2. 市町村の教育委員会が作成し、各幼稚園に配布する
  3. 校長が作成し、幼児が進学した場合は、その抄本又は写しを進学先の校長に送付する
  4. 保護者の同意がある場合に限り作成し、進学先には送付しない
正解と解説
正解:C. 校長が作成し、幼児が進学した場合は、その抄本又は写しを進学先の校長に送付する

施行規則第24条は、校長は在学する児童等の指導要録を作成しなければならないこと、児童等が進学した場合は、その抄本又は写しを作成して進学先の校長に送付しなければならないことを定めています。担任が任意で作成し原本を保護者に渡すという選択肢、教育委員会が作成するという選択肢は、作成者と扱いが条文と違います。同意がある場合に限り作成し送付しないという選択肢も、作成と送付を義務としている条文に反します。

根拠:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索) 第24条

問37|指導要録の保存期間

学校教育法施行規則が定める指導要録の保存期間として、正しいものはどれか。

  1. すべて5年間
  2. 原則5年間。ただし入学・卒業等の学籍に関する記録は20年間
  3. 原則10年間。ただし学籍に関する記録は20年間
  4. すべて20年間
正解と解説
正解:B. 原則5年間。ただし入学・卒業等の学籍に関する記録は20年間

施行規則第28条第2項は、指導要録などの表簿は5年間保存しなければならないとし、ただし指導要録とその写しのうち入学、卒業等の学籍に関する記録の保存期間は20年間としています。すべて5年間という選択肢は、学籍に関する記録の例外を見落としています。原則10年間という選択肢は、原則の年数が違います。すべて20年間という選択肢は、20年が学籍に関する記録だけの期間であることと合いません。

根拠:学校教育法施行規則(e-Gov法令検索) 第28条第2項

問38|10の姿と指導要録

幼稚園幼児指導要録の最終年度の「指導上参考となる事項」に、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」(10の姿)を活用して記入するときの留意点として、最も適切なものはどれか。

  1. 10の姿の各項目について、到達したかどうかを「できる・できない」で記入する
  2. 10の姿のうち、到達していない項目だけを選んで課題として記入する
  3. 10の姿の各項目を他の幼児と比べ、学級内の順位を記入する
  4. 10の姿は到達すべき目標ではないので、項目別には記入せず、育ちつつある姿と指導の過程を分かりやすく記入する
正解と解説
正解:D. 10の姿は到達すべき目標ではないので、項目別には記入せず、育ちつつある姿と指導の過程を分かりやすく記入する

文部科学省の指導要録の改善通知(2018年3月30日)は、最終年度の「指導上参考となる事項」について、小学校等における児童の指導に生かされるよう、10の姿を活用して、指導の過程と育ちつつある姿を分かりやすく記入すること、10の姿が到達すべき目標ではないことに留意し、項目別に記入するのではなく、全体的、総合的に捉えて記入することを示しています。「できる・できない」で記入する選択肢、到達していない項目だけを記入する選択肢は、到達目標として扱うもので、この留意点に反します。順位を記入する選択肢は、他の幼児との比較によらないという要領の評価の考え方に反します。

根拠:文部科学省初等中等教育局長通知「幼稚園及び特別支援学校幼稚部における指導要録の改善について」(29文科初第1814号、平成30年3月30日)、厚生労働省「保育所保育指針解説」(平成30年2月)(第1章4(2)の解説)、幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第4の4

問39|障害のある幼児の計画

幼稚園教育要領で、障害のある幼児について、家庭、地域及び医療や福祉、保健等の業務を行う関係機関との連携を図り、長期的な視点で幼児への教育的支援を行うために作成し活用するよう努めるとされている計画はどれか。

  1. 個別の指導計画
  2. 指導要録
  3. 全体的な計画
  4. 個別の教育支援計画
正解と解説
正解:D. 個別の教育支援計画

要領第1章第5の1は、関係機関との連携を図り、長期的な視点で幼児への教育的支援を行うために個別の教育支援計画を作成し活用することに努めるとしています。個別の指導計画は、個々の幼児の実態を的確に把握して作成する、指導のための計画で、関係機関と連携した長期的な支援計画とは役割が違います。指導要録は幼児の学籍と指導の記録の原本です。全体的な計画は、教育課程を中心に、教育時間の終了後等に行う教育活動の計画、学校保健計画、学校安全計画などを関連させた園全体の計画です。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第5の1・第3の6

問40|日本語の習得に困難のある幼児

幼稚園教育要領は、海外から帰国した幼児や生活に必要な日本語の習得に困難のある幼児について、どのように指導するとしているか。

  1. 日本語で会話ができるようになるまでは、集団での活動から離して個別に日本語を教える
  2. 安心して自己を発揮できるよう配慮するなど、個々の実態に応じて指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行う
  3. 家庭でも日本語だけを使うよう保護者に求め、母語の使用を控えてもらう
  4. 担任が一人で対応すればよく、園全体で組織的に取り組む必要はない
正解と解説
正解:B. 安心して自己を発揮できるよう配慮するなど、個々の実態に応じて指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行う

要領第1章第5の2は、これらの幼児について「安心して自己を発揮できるよう配慮するなど個々の幼児の実態に応じ,指導内容や指導方法の工夫を組織的かつ計画的に行う」としています。集団から離して日本語を教える選択肢は、要領に示されておらず、安心して自己を発揮できるようにする趣旨とも合いません。家庭で日本語だけを使うよう求める選択肢も要領にはありません。担任一人で対応するという選択肢は、組織的かつ計画的に行うという記述に反します。

根拠:幼稚園教育要領(平成29年文部科学省告示第62号) 第1章第5の2

演習:この章の問題を解く

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※ 解説は学習用の情報提供です。認定試験・採用選考の受験資格や実施方法は、必ず文部科学省・受験する自治体の公式発表をご確認ください。
※ 問題はすべて仮の宿 学習室のオリジナル問題で、本試験の問題ではありません。幼稚園教育要領は平成29年告示のもの(2026年10月時点)です。