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教育心理
講義 4 本・確認問題 36 問 | 教育心理・教育史・答申 | 最終更新 2026-10-16
この章で学ぶこと 遺伝と環境の考え方と、ピアジェ・ヴィゴツキー・エリクソンなどの発達理論を、小学生・中学生の姿と結びつけて理解します。 古典的条件づけ・オペラント条件づけ・洞察・観察学習と、発見学習・有意味受容学習・完全習得学習などの授業につながる理論を区別します。 内発的動機づけ、自己決定理論、欲求階層、原因帰属、学習性無力感、自己効力感、教師の期待の効果を整理します。 診断的・形成的・総括的評価、目標に準拠した評価と指導要録(小学校と中学校の違い)、テストの信頼性・妥当性、知能指数と偏差値の計算を確認します。 ソシオメトリック・テストやリーダーシップの理論で、学級集団をとらえる方法を知ります。
1. 発達の理論:ピアジェ、ヴィゴツキー、エリクソンほか
子どもはどのように育つのか。遺伝と環境の考え方と、教職教養でよく問われる発達の理論を、小学生・中学生の姿と結びつけて整理します。
発達 とは、生まれてから亡くなるまでの、からだと心の変化のことです。教育心理学では、まず「発達を決めるのは遺伝か、環境か」という問いから考えます。
遺伝と環境
成熟優位説 のゲゼルは、一卵性双生児の一方にだけ早くから階段のぼりを練習させても、あとから練習を始めたもう一方がすぐに追いついたことから、学習が効果をもつには心身の準備(レディネス )が整うこと、つまり成熟が大切だと考えました。反対に、行動主義のワトソンは、環境と経験しだいで子どもはどのようにも育つという環境優位説 の立場をとりました。シュテルンの輻輳説 は、遺伝と環境の両方が足し合わさって発達が決まると考えます。ジェンセンの環境閾値説 は、特性によって環境が影響し始める水準(閾値)が違うと考えます。たとえば身長はかなり貧しい環境でなければ遺伝どおりに育ちますが、外国語の発音や楽器の技能などは、よい環境が十分にないと伸びにくいとされます。
ピアジェ:考える力の4段階
ピアジェは、子どもは自分で世界にはたらきかけて知識を組み立てると考えました。外の世界をとらえる枠組みをシェマ といい、新しい経験を今のシェマに取り込むことを同化 、うまく取り込めないときにシェマのほうを作り変えることを調節 と呼びます。同化と調節で釣り合いをとる働きが均衡化 です。
ピアジェの認知発達の段階(年齢はおおよその目安) 段階 目安 特徴
感覚運動期 0〜2歳ごろ 見る・つかむなど感覚と動作で世界を知る。見えなくなった物もあり続けると分かる(対象の永続性)
前操作期 2〜7歳ごろ 言葉やイメージで考え始めるが、見かけに左右されやすい。自分以外の視点に立ちにくい(自己中心性)
具体的操作期 7〜11歳ごろ 具体物があれば筋道を立てて考えられる。形が変わっても量は同じと分かる(保存)
形式的操作期 11歳ごろ〜 具体物がなくても、仮説を立てて論理的に考えられる(仮説演繹的思考)
小学校の多くの時期は具体的操作期に当たり、具体物や操作を使った学習が役立ちます。中学校の時期は形式的操作期への移行と重なり、仮説を立てて確かめる学習が少しずつできるようになります。ただし、年齢はあくまで目安で、個人差が大きいことに注意します。
ヴィゴツキー:発達の最近接領域
ヴィゴツキーは、発達における社会や他者とのかかわりを重視しました。子どもが一人でできる水準と、大人や仲間の助けがあればできる水準の間を発達の最近接領域 と呼び、教育はこの領域にはたらきかけるべきだと考えました。のちにウッド、ブルーナー、ロスは、大人が手助けをして、できるようになるにつれて減らしていく支援を足場かけ(スキャフォールディング) と名づけました。
エリクソン:心理社会的発達の8段階
エリクソンは、人生を8つの段階に分け、各段階に乗り越えるべき心理社会的な課題(危機)があると考えました。学童期(小学生のころ)は「勤勉性 対 劣等感」 、青年期(中学生のころから)は「アイデンティティ(自我同一性)の確立 対 同一性拡散」 です。乳児期は「基本的信頼 対 不信」、成人期は「世代性(生殖性) 対 停滞」、老年期は「統合 対 絶望」です。青年が社会的な責任を一時的に猶予されて自分を探す期間を心理社会的モラトリアム といいます。マーシャは、危機の経験と自己投入の有無から、同一性達成・モラトリアム・早期完了・同一性拡散の4つの状態(アイデンティティ・ステイタス)に分けました。
そのほかの重要な理論
ハヴィガースト は、各時期に達成すべき発達課題 を示し、その時期に達成できると次の段階の課題にも取り組みやすくなると考えました。コールバーグ は、道徳的なジレンマ(例:ハインツのジレンマ)への答えの理由づけを分析し、道徳性の発達を前慣習的水準・慣習的水準・脱慣習的水準の3水準6段階にまとめました。見るのは「どちらを選んだか」ではなく「なぜそう判断したか」です。ボウルビィ は、乳幼児が特定の養育者との間に結ぶ情緒的な絆を愛着(アタッチメント) と呼び、エインズワースはストレンジ・シチュエーション法で愛着の型を調べました。
用語
レディネス 学習が効果をもつための、心身の準備ができた状態。
同化と調節 新しい経験を今の枠組み(シェマ)に取り込むことが同化、枠組みそのものを作り変えることが調節。
保存 形や見かけが変わっても、数・量・重さは変わらないと分かること。具体的操作期に獲得される。
発達の最近接領域 一人でできる水準と、援助があればできる水準の間の領域。
心理社会的モラトリアム 青年が社会的責任を猶予されて、自分の生き方を探す期間。
例題 例題:同じ量の水を、背の低い広いコップから細長いコップに移すと「水が増えた」と答える子どもがいる。ピアジェの理論では、どの段階の特徴か。
答えと考え方 前操作期です。見かけ(水面の高さ)に引っぱられ、量の保存 がまだ分かっていない状態です。具体的操作期になると「移しただけだから同じ」と筋道を立てて考えられるようになります。
根拠:Piaget, J. & Inhelder, B. (1966) La psychologie de l'enfant(『新しい児童心理学』)、Vygotsky, L. S. (1934)『思考と言語』、Wood, D., Bruner, J. S. & Ross, G. (1976) The role of tutoring in problem solving, Journal of Child Psychology and Psychiatry, 17、Erikson, E. H. (1950) Childhood and Society、Marcia, J. E. (1966) Development and validation of ego-identity status, Journal of Personality and Social Psychology, 3、Havighurst, R. J. (1953) Human Development and Education、Kohlberg, L. (1969) Stage and sequence(Goslin編 Handbook of Socialization Theory and Research)、Bowlby, J. (1969) Attachment and Loss, Vol. 1、Ainsworth, M. D. S. ほか (1978) Patterns of Attachment、Jensen, A. R. (1969) How much can we boost IQ and scholastic achievement? Harvard Educational Review, 39。年齢区分は教育心理学の標準的な教科書の目安。
2. 学習の理論:条件づけから発見学習まで
「学習」とは、経験によって行動や知識が比較的長く続く形で変わることです。行動主義と認知主義の代表的な理論と、授業の方法につながる考え方を確認します。
心理学でいう学習 は、勉強だけでなく、経験によって行動が比較的長く続く形で変わること全般を指します。理論は大きく、刺激と反応の結びつきに注目する行動主義 と、頭の中の理解や知識の組み立てに注目する認知主義 に分けられます。
行動主義の学習理論
行動主義の代表的な理論 人物 理論 実験・要点
パヴロフ 古典的条件づけ 犬にえさ(無条件刺激)と音(中性刺激)を一緒に示すと、音だけで唾液が出る(条件反応)。
ソーンダイク 試行錯誤学習 問題箱のネコが、試行錯誤のうちに脱出が速くなる。満足をもたらす反応が残る(効果の法則)。
スキナー オペラント条件づけ レバーを押すとえさが出る箱で、自発的な行動が結果によって増えたり減ったりする。
古典的条件づけでは、条件刺激だけを示し続けると反応が弱まる消去 、似た刺激にも反応が起きる般化 が知られています。オペラント条件づけでは、行動のあとに起こる結果が大事です。行動を増やす働きを強化 といい、好ましいものを与えて増やすのが正の強化 、嫌なものを取り除いて増やすのが負の強化 です。「負の強化」は罰と混同されやすいので注意します。行動を減らす働きが罰 です。
スキナーはこの考えを授業に応用し、プログラム学習 を考えました。内容を小さな段階に分ける(スモールステップ)、学習者が自分で答える(積極的反応)、答えの正誤をすぐに知らせる(即時確認)、自分のペースで進む(自己ペース)、という原理に基づきます。
認知主義と社会的学習
ケーラー は、チンパンジーが棒や箱を使って高い所のバナナを取る様子から、試行錯誤ではなく、場面全体の関係を見通して突然解決する洞察 による学習を示しました。トールマン は、ネズミが報酬のないときにも迷路の地図のような知識(認知地図)を学んでいることを示しました(潜在学習)。
バンデューラ は、子どもが大人が人形に乱暴する場面を見るだけで、同じような攻撃行動をとるようになることを示し、自分が直接強化を受けなくても他者の行動を見て学ぶ観察学習(モデリング) を明らかにしました。観察学習は、注意・保持・運動再生・動機づけの過程で成り立つとされます。
授業の方法につながる理論
ブルーナー は、学習者が自ら仮説を立てて確かめながら、教科の基本的な構造を発見していく発見学習 を提唱しました。また、どの教科も、知的に誠実な形であれば、どの発達段階の子どもにも効果的に教えることができるという仮説を示し、同じ内容を学年が上がるごとに深めていくらせん型カリキュラム につながりました。
これに対してオーズベル は、教師が内容をまとまった形で示し、学習者がそれを自分の知識と結びつけて理解する有意味受容学習 を重視しました。新しい内容の前に示す、全体をつかむための枠組みを先行オーガナイザー といいます。
ブルーム は、学習に必要な時間と適切な指導があれば、ほとんどの学習者が目標に到達できるとして完全習得学習(マスタリー・ラーニング) を唱え、途中で形成的評価を行って、つまずきに応じて補充や深化の指導をすることを重視しました。クロンバック は、同じ指導法でも学習者の適性によって効果が変わることを適性処遇交互作用(ATI) と呼びました。一人一人に合った指導を考える根拠になります。
記憶では、エビングハウス が無意味つづりを覚えて再び覚え直すまでの節約率を調べ、学習の直後に急速に忘れ、その後はゆるやかになる忘却曲線 を示しました。早めの復習が大切だといわれる根拠の一つです。
用語
強化 行動のあとの結果によって、その行動が起こりやすくなること。
負の強化 嫌な刺激を取り除くことで、行動が起こりやすくなること。罰とは別。
洞察 場面全体の関係を見通して、問題を一気に解決すること。
観察学習 他者の行動とその結果を見ることで成り立つ学習。モデリングともいう。
先行オーガナイザー 新しい学習の前に示す、内容の全体をとらえるための枠組み。
例題 例題:宿題を出した日は、うるさい居残りの注意がなくなるので、ある生徒は宿題を出すようになった。これはオペラント条件づけのどれに当たるか。
答えと考え方 負の強化 です。嫌なもの(居残りの注意)が取り除かれることで、宿題を出す行動が増えています。行動が「増えて」いるので罰ではありません。
根拠:Pavlov, I. P. (1927) Conditioned Reflexes、Thorndike, E. L. (1898) Animal intelligence, Psychological Review Monograph Supplements, 2(4)、Skinner, B. F. (1938) The Behavior of Organisms・(1954) The science of learning and the art of teaching, Harvard Educational Review, 24、Köhler, W. (1917)『類人猿の知恵試験』、Tolman, E. C. (1948) Cognitive maps in rats and men, Psychological Review, 55、Bandura, A., Ross, D. & Ross, S. A. (1961) Journal of Abnormal and Social Psychology, 63・Bandura, A. (1977) Social Learning Theory、Bruner, J. S. (1960) The Process of Education、Ausubel, D. P. (1963) The Psychology of Meaningful Verbal Learning、Bloom, B. S. (1968) Learning for mastery, Evaluation Comment, 1(2)、Cronbach, L. J. (1957) The two disciplines of scientific psychology, American Psychologist, 12、Ebbinghaus, H. (1885) Über das Gedächtnis。
3. 動機づけ:やる気はどこから生まれるか
子どもが学びに向かう力をどう支えるかは、教師の大きな仕事です。内発的動機づけ、欲求の階層、原因帰属、自己効力感、教師の期待の効果を整理します。
動機づけ とは、行動を起こし、方向づけ、続けさせる心の働きです。学習指導要領が育てる資質・能力の一つ「学びに向かう力、人間性等」とも深く関わります。
内発的動機づけと外発的動機づけ
学ぶこと自体のおもしろさや好奇心から学ぶのが内発的動機づけ 、ほめ言葉・ごほうび・成績・罰の回避など、外からの結果のために学ぶのが外発的動機づけ です。デシは、パズルを解くと報酬がもらえる条件の大学生が、報酬がなくなると自由時間にパズルに取り組む時間が減ることを示しました。もともと楽しんでいた活動に外的な報酬を与えると、内発的動機づけが下がることがあり、これをアンダーマイニング効果 といいます。レッパーらも、絵を描くことが好きな幼児に「ごほうび」を約束して描かせると、その後の自由な時間に描く量が減ることを示しました。一方、能力を認める言葉によるほめは、内発的動機づけを下げにくいとされます。
デシとライアンの自己決定理論 は、外発的動機づけにも段階があり、活動の価値を自分のものとして取り入れるほど自律的になると考えます。そして、人には自律性 (自分で決めたい)・有能さ (できるようになりたい)・関係性 (人とつながりたい)の3つの基本的な心理的欲求があり、これらが満たされると自律的な動機づけが育つとしました。生徒指導提要が挙げる「自己決定の場の提供」「共感的な人間関係の育成」とも通じる考え方です。
マズローの欲求階層説
マズローは、人間の欲求を生理的欲求 → 安全の欲求 → 所属と愛の欲求 → 承認(尊重)の欲求 → 自己実現の欲求 の階層で説明し、下の欲求がある程度満たされると上の欲求が強くなると考えました。おなかがすいている、家庭や学級で安心できない、という状態では、学習への意欲は生まれにくい、という見方につながります。
原因帰属と学習性無力感
ワイナーは、成功や失敗の原因を何に求めるか(原因帰属 )が、次の意欲を左右すると考えました。
ワイナーの原因帰属の分類(基本の2次元) 安定(変わりにくい) 不安定(変わりやすい)
内的(自分の中) 能力 努力
外的(自分の外) 課題の難しさ 運
失敗を「能力がないから」(内的で安定)と考えると、次も失敗すると予想して意欲が下がりやすくなります。「努力が足りなかった」「やり方がまずかった」(内的で不安定、自分で変えられる)と考えると、次に向けて頑張りやすくなります。ワイナーはのちに、自分で統制できるかどうか という次元も加えました。
セリグマンとマイヤーは、逃げられない電気ショックを受け続けた犬が、あとで逃げられる状況になっても逃げようとしなくなることを示しました。自分の行動で結果を変えられない経験が続くと「何をしても無駄だ」と学んでしまうことを学習性無力感 といいます。
自己効力感と達成動機
バンデューラは、ある行動をうまくやれるという自分への見込みを自己効力感 と呼びました。自己効力感は、①自分でやりとげた経験(遂行行動の達成)、②他者がやりとげるのを見る経験(代理経験)、③「できるよ」という言葉による励まし(言語的説得)、④体や気持ちの状態(生理的・情動的状態)から生まれるとされ、最も強い源は①の自分の成功体験です。
アトキンソンの達成動機 の理論では、成功を求める動機が強い人は、易しすぎず難しすぎない、成功の見込みが中くらいの課題を選びやすいとされます。
教師の期待:ピグマリオン効果
ローゼンタールとジェイコブソンは、小学校で知能検査を行い、実際には無作為に選んだ子どもを「これから伸びる子」として担任に伝えたところ、とくに低学年でその子たちの成績が伸びたと報告しました。教師の期待が子どもの成績に影響することをピグマリオン効果(教師期待効果) といいます。逆に、低い期待が成績を下げることはゴーレム効果 と呼ばれます。
用語
内発的動機づけ 活動そのもののおもしろさや好奇心から生まれる意欲。
アンダーマイニング効果 外的な報酬によって、内発的動機づけが下がること。
原因帰属 成功や失敗の原因を何に求めるか、という考え方の傾向。
学習性無力感 何をしても結果が変わらない経験が続き、行動しようとしなくなる状態。
自己効力感 ある行動をうまくやれるという、自分についての見込み。
例題 例題:小テストで失敗した生徒が「どうせ自分は頭が悪いから」と言った。ワイナーの理論では、どのような帰属で、どう声をかけるとよいか。
答えと考え方 「能力」への帰属で、内的・安定的な原因です。次も失敗すると考えやすいので、「覚え方を変えてみよう」「この部分は練習で伸びたね」など、努力ややり方 (自分で変えられる原因)に目を向けられるように声をかけます。
根拠:Deci, E. L. (1971) Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation, Journal of Personality and Social Psychology, 18、Lepper, M. R., Greene, D. & Nisbett, R. E. (1973) Journal of Personality and Social Psychology, 28、Deci, E. L. & Ryan, R. M. (1985) Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior・Ryan, R. M. & Deci, E. L. (2000) American Psychologist, 55、Maslow, A. H. (1943) A theory of human motivation, Psychological Review, 50、Weiner, B. (1979) A theory of motivation for some classroom experiences, Journal of Educational Psychology, 71、Seligman, M. E. P. & Maier, S. F. (1967) Journal of Experimental Psychology, 74、Bandura, A. (1977) Self-efficacy, Psychological Review, 84、Atkinson, J. W. (1957) Psychological Review, 64、Rosenthal, R. & Jacobson, L. (1968) Pygmalion in the Classroom、文部科学省「生徒指導提要(令和4年12月) 」1.1.2(2026-10-16確認)。
4. 評価とテスト、学級集団の理解
評価は「成績をつけること」だけではありません。評価の種類と日本の学習評価のしくみ、テストの考え方、学級集団をとらえる方法とリーダーシップの理論を確認します。
いつ評価するか:診断的・形成的・総括的評価
スクリヴァンが形成的評価と総括的評価を区別し、ブルームらはこれに診断的評価を加えて、授業の流れの中で評価を使い分ける考え方を広めました。診断的評価 は学習の前に、子どもの準備状況や前提の知識を確かめます。形成的評価 は学習の途中で、つまずきを見つけて指導を直すために行います。総括的評価 は単元や学期の終わりに、到達の程度をまとめて判断します。
何と比べるか:絶対評価・相対評価・個人内評価
相対評価 (集団に準拠した評価)は、集団の中での位置で評価します。絶対評価 のうち、目標を基準にして実現の程度を見るものを目標に準拠した評価 といいます。個人内評価 は、その子の過去の姿や、得意・不得意を比べて、一人一人の伸びやよさを見ます。
日本の学校の学習評価は、目標に準拠した評価で行われます。平成31年3月の文部科学省の通知により、各教科の観点別学習状況の評価 は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3観点で行います。観点に合わない感性や思いやりなどは、個人内評価で子どもに伝えます。
指導要録の記入(平成31年3月29日の通知の参考様式・記入上の注意による) 項目 小学校 中学校
観点別学習状況 A(十分満足できる)・B(おおむね満足できる)・C(努力を要する)の3段階
評定 第3学年以上で、3・2・1の3段階 5・4・3・2・1の5段階
特別の教科 道徳 数値ではなく、個人内評価として文章で端的に記述
総合的な学習の時間 学習活動と各学校が定めた評価の観点を書き、身に付いた力を文章で記述
学習指導要領の総則(小学校・中学校とも第1章第3の2)は、子どものよい点や進歩の状況を積極的に評価すること、学習評価の妥当性 や信頼性 が高められるよう組織的・計画的に取り組むことを求めています。
テストのよしあし:信頼性と妥当性
信頼性 は、同じ人が何度受けても、だれが採点しても、結果が安定しているかどうかです。妥当性 は、測りたいものを本当に測れているかどうかです。たとえば計算力を測りたいのに、問題文が難しすぎて読解力の差が結果に出てしまえば、妥当性が低いことになります。
評価する人の側にも、ゆがみが生じます。一つのよい(悪い)特徴に引っぱられて全体を高く(低く)評価してしまうことをハロー効果(光背効果) といいます。全体に甘くつける寛大化傾向 、極端を避けて真ん中に集まる中心化傾向 もあります。
知能検査と偏差値
ビネーはシモンとともに、学校で特別な支援が必要な子どもを見つけるために知能検査を作りました。そこから求める精神年齢 (MA)を生活年齢 (CA)で割って100をかけた値が、ターマンのスタンフォード・ビネー検査で使われた知能指数 (IQ)です。いまのウェクスラー式などの検査では、同じ年齢集団の中での位置を、平均100・標準偏差15の尺度で表す偏差IQ が使われます。テストの偏差値 は、平均を50、標準偏差を10にそろえた値で、偏差値=50+10×(得点−平均)÷標準偏差で求めます。
学級集団をとらえる
モレノのソシオメトリック・テスト は、「一緒に活動したい人」などを子どもに選ばせ、選択の関係を図(ソシオグラム)にして、学級の人間関係やだれからも選ばれない子(孤立児)をとらえる方法です。ゲス・フー・テスト は、「親切な人はだれか」などの説明に当てはまる友達の名前を挙げさせて、学級の中での見られ方を調べます。どちらも子どもの心を傷つけないよう、扱いには十分な配慮が必要です。
リーダーシップでは、レヴィン らが、子どものクラブで専制型・民主型・放任型 の指導を比べ、民主型の集団で友好的な雰囲気と自主的な活動が見られたと報告しました。三隅二不二 のPM理論 は、目標を達成させる働き(P:Performance)と、集団のまとまりを保つ働き(M:Maintenance)の両方が強いPM型 が最も効果的だとします。
学習指導要領の総則は、小学校・中学校とも、教師と子ども、子ども同士のよりよい人間関係を育てるため「学級経営の充実」を図ることを求めています。小学校ではあわせて、低学年・中学年・高学年の時期の特長を生かした指導の工夫も示されています。生徒指導提要(令和4年12月)は、学級・ホームルームを生活集団・学習集団・生徒指導の実践集団ととらえています。
用語
形成的評価 学習の途中で、つまずきを見つけ指導を改善するための評価。
目標に準拠した評価 目標を基準に、その実現の程度を見る評価。日本の学習評価の基本。
個人内評価 その子自身の過去や得意・不得意と比べて、伸びやよさを見る評価。
妥当性 テストが、測りたいものを本当に測れている程度。
ハロー効果 目立つ一つの特徴に引っぱられて、全体の評価がゆがむこと。
ソシオメトリック・テスト 子ども同士の選択関係から学級の人間関係を調べる方法(モレノ)。
例題 例題:テストの平均点が60点、標準偏差が12点のとき、51点の生徒の偏差値はいくつか。
答えと考え方 50+10×(51−60)÷12=50−7.5=42.5 です。平均より低いので、偏差値は50より小さくなります。
根拠:文部科学省「小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校等における児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 」(平成31年3月29日)、同別紙1(小学校) ・別紙2(中学校) 、小学校学習指導要領(平成29年告示) ・中学校学習指導要領(平成29年告示) (小学校・中学校 第1章総則 第3の2、第4の1)、「生徒指導提要(令和4年12月) 」2.1.3(いずれも2026-10-16確認)。理論:Scriven, M. (1967) The methodology of evaluation、Bloom, B. S., Hastings, J. T. & Madaus, G. F. (1971) Handbook on Formative and Summative Evaluation of Student Learning、Thorndike, E. L. (1920) A constant error in psychological ratings, Journal of Applied Psychology, 4、Binet, A. & Simon, T. (1905)、Terman, L. M. (1916) The Measurement of Intelligence、Moreno, J. L. (1934) Who Shall Survive?、Lewin, K., Lippitt, R. & White, R. K. (1939) Journal of Social Psychology, 10、三隅二不二『リーダーシップ行動の科学』(有斐閣)。
確認問題(36問) 四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|ピアジェの保存
ピアジェの理論で、形や見かけが変わっても数や量は変わらないと分かる「保存」が獲得されるとされる段階はどれか。
感覚運動期 具体的操作期 前操作期 形式的操作期 正解と解説 正解:B. 具体的操作期 保存は具体的操作期(7〜11歳ごろ)に獲得されるとされます。感覚運動期は対象の永続性を身につける時期、前操作期は見かけに左右されて保存がまだ成り立たない時期、形式的操作期は具体物なしに仮説を立てて考えられるようになる時期で、保存の獲得の時期ではありません。
根拠:Piaget, J. & Inhelder, B. (1966) La psychologie de l'enfant(『新しい児童心理学』)
問2|同化と調節
ピアジェの用語の説明として正しいものはどれか。
新しい経験に合わせて枠組みを作り変えることを同化という 外界をとらえる枠組みのことを均衡化という 大人の援助でできる水準のことをシェマという 今の枠組みに新しい経験を取り込むことを同化という 正解と解説 正解:D. 今の枠組みに新しい経験を取り込むことを同化という 同化は、今の枠組み(シェマ)に新しい経験を取り込むことです。枠組みを作り変えるのは調節で、同化ではありません。外界をとらえる枠組みはシェマで、均衡化は同化と調節の釣り合いをとる働きです。援助があればできる水準はヴィゴツキーの発達の最近接領域に関わる考え方で、シェマではありません。
根拠:Piaget, J. & Inhelder, B. (1966) La psychologie de l'enfant(『新しい児童心理学』)
問3|発達の最近接領域
子どもが一人でできる水準と、大人や仲間の援助があればできる水準の間の領域に教育がはたらきかけるべきだと考えた人物はどれか。
ヴィゴツキー ゲゼル ピアジェ ハヴィガースト 正解と解説 正解:A. ヴィゴツキー 発達の最近接領域を唱えたのはヴィゴツキーです。ゲゼルは成熟(レディネス)を重視した成熟優位説、ピアジェは子どもが自ら知識を組み立てる認知発達の段階説、ハヴィガーストは各時期の発達課題を示した人物で、いずれもこの概念の提唱者ではありません。
根拠:Vygotsky, L. S. (1934)『思考と言語』、Wood, Bruner & Ross (1976) Journal of Child Psychology and Psychiatry, 17
問4|エリクソンの学童期
エリクソンの心理社会的発達理論で、小学生のころに当たる学童期の課題(危機)はどれか。
基本的信頼 対 不信 自律性 対 恥・疑惑 勤勉性 対 劣等感 親密性 対 孤立 正解と解説 正解:C. 勤勉性 対 劣等感 学童期の課題は「勤勉性 対 劣等感」です。「基本的信頼 対 不信」は乳児期、「自律性 対 恥・疑惑」は幼児期前期、「親密性 対 孤立」は成人期前期の課題で、学童期のものではありません。
根拠:Erikson, E. H. (1950) Childhood and Society、Marcia, J. E. (1966) Journal of Personality and Social Psychology, 3
問5|アイデンティティ・ステイタス
マーシャのアイデンティティ・ステイタスで、危機(迷い)を経験しないまま、親など身近な人の価値観をそのまま受け入れて進路を決めている状態はどれか。
同一性達成 早期完了 モラトリアム 同一性拡散 正解と解説 正解:B. 早期完了 危機を経験せずに自己投入している状態は早期完了(フォークロージャー)です。同一性達成は危機を経験したうえで自己投入している状態、モラトリアムは危機の最中で模索している状態、同一性拡散は自己投入ができていない状態で、いずれも当てはまりません。
根拠:Erikson, E. H. (1950) Childhood and Society、Marcia, J. E. (1966) Journal of Personality and Social Psychology, 3
問6|遺伝と環境
特性によって、環境が影響を及ぼし始める水準(閾値)が違うと考える説はどれか。
環境閾値説 輻輳説 成熟優位説 環境優位説 正解と解説 正解:A. 環境閾値説 特性ごとに環境の閾値が違うと考えるのはジェンセンの環境閾値説です。輻輳説(シュテルン)は遺伝と環境が足し合わさると考える説、成熟優位説(ゲゼル)は成熟を重視する説、環境優位説(ワトソン)は環境と経験を重視する説で、閾値の考え方ではありません。
根拠:Gesell, A. & Thompson, H. の一卵性双生児研究、Jensen, A. R. (1969) Harvard Educational Review, 39(教育心理学の標準的教科書による整理)
問7|コールバーグ
コールバーグの道徳性の発達理論についての説明として正しいものはどれか。
道徳性を乳児期から老年期までの8段階に分けた ジレンマにどちらの答えを選んだかで段階を決める 道徳性は成熟によって決まり経験の影響を受けない 判断の理由づけを分析し3水準6段階にまとめた 正解と解説 正解:D. 判断の理由づけを分析し3水準6段階にまとめた コールバーグは、道徳的ジレンマへの判断の「理由づけ」を分析し、前慣習的・慣習的・脱慣習的の3水準6段階にまとめました。8段階はエリクソンの理論です。段階は選んだ答えではなく理由で決まります。また、経験や他者との討論などが発達を促すと考えており、成熟だけで決まるとはしていません。
根拠:Kohlberg, L. (1969) Stage and sequence(Goslin編 Handbook of Socialization Theory and Research)
問8|ハヴィガースト
各時期に達成すべき発達課題を示し、ある時期の課題を達成すると次の時期の課題にも取り組みやすくなると考えた人物はどれか。
エリクソン ボウルビィ ハヴィガースト ワトソン 正解と解説 正解:C. ハヴィガースト 発達課題を体系的に示したのはハヴィガーストです。エリクソンは心理社会的な危機の8段階、ボウルビィは養育者との愛着、ワトソンは環境優位の行動主義で知られ、発達課題の提唱者ではありません。
根拠:Havighurst, R. J. (1953) Human Development and Education
問9|愛着
乳幼児が特定の養育者との間に結ぶ情緒的な絆を「愛着(アタッチメント)」と呼び、その重要性を論じた人物はどれか。
ゲゼル ボウルビィ マーシャ ヴィゴツキー 正解と解説 正解:B. ボウルビィ 愛着理論を唱えたのはボウルビィです(愛着の型の測定はエインズワースのストレンジ・シチュエーション法)。ゲゼルは成熟とレディネス、マーシャは青年期のアイデンティティ・ステイタス、ヴィゴツキーは発達の最近接領域で知られます。
根拠:Bowlby, J. (1969) Attachment and Loss, Vol. 1、Ainsworth, M. D. S. ほか (1978) Patterns of Attachment
問10|古典的条件づけ
パヴロフの実験で、えさと一緒に音を何度も示したあと、音だけで唾液が出るようになった。このときの「音」は何と呼ばれるか。
無条件刺激 無条件反応 条件刺激 強化子 正解と解説 正解:C. 条件刺激 条件づけが成立したあとの音は条件刺激です(条件づけの前は中性刺激)。えさが無条件刺激、えさによる唾液が無条件反応です。強化子はオペラント条件づけで行動を増やす結果を指す用語で、この場面の音には当たりません。
根拠:Pavlov, I. P. (1927) Conditioned Reflexes
問11|負の強化
オペラント条件づけの「負の強化」の例として最も適切なものはどれか。
係の仕事をすると苦手な掃除が免除され、係の仕事が増える 発表をほめられて、発表する回数が増える 私語をして注意され、私語が減る チャイムの音を聞くと自然に席に着くようになる 正解と解説 正解:A. 係の仕事をすると苦手な掃除が免除され、係の仕事が増える 嫌なもの(苦手な掃除)が取り除かれて行動が増えるのが負の強化です。ほめられて行動が増えるのは好ましいものを与える正の強化です。注意されて行動が減るのは罰です。チャイムで席に着くのは、合図(刺激)をきっかけに行動が起こるようになった例で、嫌なものが取り除かれて行動が増える場面ではないため、負の強化の例とはいえません。
根拠:Skinner, B. F. (1938) The Behavior of Organisms・(1954) Harvard Educational Review, 24
問12|プログラム学習
スキナーのプログラム学習の原理に含まれないものはどれか。
スモールステップ 即時確認 自己ペース 先行オーガナイザー 正解と解説 正解:D. 先行オーガナイザー 先行オーガナイザーはオーズベルの有意味受容学習の考え方で、プログラム学習の原理ではありません。スモールステップ(小さな段階に分ける)、即時確認(すぐに正誤を知らせる)、自己ペース(自分の速さで進む)は、積極的反応とともにプログラム学習の原理です。
根拠:Skinner, B. F. (1938) The Behavior of Organisms・(1954) Harvard Educational Review, 24
問13|洞察
チンパンジーが棒や箱を使って高い所のバナナを取る観察から、場面全体の関係を見通して一気に解決する「洞察」による学習を示した人物はどれか。
ソーンダイク ケーラー スキナー パヴロフ 正解と解説 正解:B. ケーラー 洞察学習を示したのはケーラーです。ソーンダイクは問題箱のネコによる試行錯誤学習と効果の法則、スキナーはオペラント条件づけ、パヴロフは古典的条件づけで知られ、いずれも洞察説の人物ではありません。
根拠:Köhler, W. (1917)『類人猿の知恵試験』、Thorndike, E. L. (1898) Psychological Review Monograph Supplements, 2(4)
問14|観察学習
バンデューラの観察学習(モデリング)についての説明として正しいものはどれか。
学習者が直接強化を受けなくても、他者の行動を見て学習が成り立つ 学習者自身が報酬を受けたときにだけ学習が成り立つ 刺激と反応を何度も対にして示すことで成り立つ 教材を小さな段階に分けて即時に確認すると成り立つ 正解と解説 正解:A. 学習者が直接強化を受けなくても、他者の行動を見て学習が成り立つ 観察学習は、自分が直接強化を受けなくても、他者(モデル)の行動を見るだけで成り立つ学習です。自分が報酬を受けたときだけとするのは直接強化の考え方です。刺激を対にして示すのは古典的条件づけ、小さな段階と即時確認はプログラム学習の説明です。
根拠:Bandura, A., Ross, D. & Ross, S. A. (1961) Journal of Abnormal and Social Psychology, 63、Bandura, A. (1977) Social Learning Theory
問15|発見学習と受容学習
学習者が自ら仮説を立てて確かめ、教科の基本的な構造を発見していく「発見学習」を提唱した人物はどれか。
オーズベル ブルーム ブルーナー エビングハウス 正解と解説 正解:C. ブルーナー 発見学習を提唱したのはブルーナーです。オーズベルは教師が内容を示して理解させる有意味受容学習、ブルームは完全習得学習、エビングハウスは記憶と忘却曲線の研究で知られます。
根拠:Bruner, J. S. (1960) The Process of Education、Ausubel, D. P. (1963) The Psychology of Meaningful Verbal Learning
問16|完全習得学習
ブルームの完全習得学習についての説明として正しいものはどれか。
学習者を集団内の順位で評価し、上位者を選び出す 教師は内容を示さず、学習者が自力で構造を発見する 報酬を与えずに内発的動機づけだけで学習させる 形成的評価でつまずきを見つけ、補充や深化の指導をする 正解と解説 正解:D. 形成的評価でつまずきを見つけ、補充や深化の指導をする 完全習得学習は、時間と適切な指導があればほとんどの学習者が目標に到達できるとし、途中の形成的評価でつまずきを見つけて補充や深化の指導をします。順位で選び出すのは相対評価の発想で、全員の到達を目指す考え方と合いません。自力で構造を発見するのはブルーナーの発見学習、内発的動機づけだけで学ばせるという原理は完全習得学習の内容ではありません。
根拠:Bloom, B. S. (1968) Learning for mastery, Evaluation Comment, 1(2)
問17|適性処遇交互作用
同じ指導法でも、学習者の適性(能力・性格など)によって効果が違うことを示す概念はどれか。
ハロー効果 適性処遇交互作用 アンダーマイニング効果 ピグマリオン効果 正解と解説 正解:B. 適性処遇交互作用 学習者の適性と指導法(処遇)の組み合わせで効果が変わることは、クロンバックの適性処遇交互作用(ATI)です。ハロー効果は評価のゆがみ、アンダーマイニング効果は報酬による内発的動機づけの低下、ピグマリオン効果は教師の期待が成績に影響することで、いずれも別の概念です。
根拠:Cronbach, L. J. (1957) American Psychologist, 12
問18|忘却曲線
エビングハウスの忘却曲線についての説明として正しいものはどれか。
忘却は学習の直後に急速に進み、その後はゆるやかになる 忘却は時間に比例して一定の速さで進む 学習の直後はほとんど忘れず、数週間後に急に忘れる 意味のある文章を覚えさせて、再生の正答数を調べた 正解と解説 正解:A. 忘却は学習の直後に急速に進み、その後はゆるやかになる エビングハウスは、学習の直後に急速に忘れ、その後はゆるやかになることを示しました。一定の速さで進むわけでも、直後はほとんど忘れないわけでもありません。また、意味の影響を除くために無意味つづりを使い、覚え直すのに必要な手間が減る割合(節約率)で調べたので、意味のある文章の再生という説明も誤りです。
根拠:Ebbinghaus, H. (1885) Über das Gedächtnis
問19|アンダーマイニング効果
もともと楽しんで取り組んでいた活動に、ごほうびなどの外的な報酬を与えた結果、報酬がなくなるとその活動への意欲が下がる現象はどれか。
ハロー効果 ピグマリオン効果 学習性無力感 アンダーマイニング効果 正解と解説 正解:D. アンダーマイニング効果 外的な報酬で内発的動機づけが下がることをアンダーマイニング効果といいます(デシ、レッパーらの研究)。ハロー効果は評価のゆがみ、ピグマリオン効果は教師の期待の効果、学習性無力感は統制できない経験から無気力になる現象で、いずれも違います。
根拠:Deci, E. L. (1971) Journal of Personality and Social Psychology, 18、Lepper, Greene & Nisbett (1973) 同誌 28
問20|自己決定理論
デシとライアンの自己決定理論で、人の基本的な心理的欲求とされる3つの組み合わせはどれか。
生理的欲求・安全の欲求・自己実現の欲求 自律性・有能さ・関係性 能力・努力・運 注意・保持・動機づけ 正解と解説 正解:B. 自律性・有能さ・関係性 自己決定理論の3つの基本的な心理的欲求は自律性・有能さ・関係性です。生理的・安全・自己実現はマズローの欲求階層、能力・努力・運はワイナーの原因帰属の要因、注意・保持・動機づけはバンデューラの観察学習の過程に含まれるもので、いずれも違います。
根拠:Deci, E. L. & Ryan, R. M. (1985) Intrinsic Motivation and Self-Determination in Human Behavior、Ryan & Deci (2000) American Psychologist, 55
問21|マズロー
マズローの欲求階層説で、「所属と愛の欲求」のすぐ上に位置づけられる欲求はどれか。
安全の欲求 生理的欲求 承認(尊重)の欲求 自己実現の欲求 正解と解説 正解:C. 承認(尊重)の欲求 階層は下から、生理的・安全・所属と愛・承認(尊重)・自己実現の順です。所属と愛のすぐ上は承認の欲求です。安全と生理的欲求は所属と愛より下、自己実現は承認のさらに上の最上位です。
根拠:Maslow, A. H. (1943) A theory of human motivation, Psychological Review, 50
問22|原因帰属
ワイナーの原因帰属の分類で、「努力」はどれに当たるか。
内的で不安定な原因 内的で安定した原因 外的で安定した原因 外的で不安定な原因 正解と解説 正解:A. 内的で不安定な原因 努力は自分の中にあり(内的)、変えられる(不安定)原因です。内的で安定は能力、外的で安定は課題の難しさ、外的で不安定は運に当たります。
根拠:Weiner, B. (1979) Journal of Educational Psychology, 71
問23|学習性無力感
逃げられない電気ショックを受け続けた犬が、逃げられる状況になっても逃げようとしなくなった実験から導かれた概念はどれか。
自己効力感 達成動機 学習性無力感 観察学習 正解と解説 正解:C. 学習性無力感 セリグマンとマイヤーの実験から導かれたのは学習性無力感です。自己効力感は「できる」という見込み、達成動機は成功を求める動機、観察学習は他者を見て学ぶことで、いずれもこの実験の結論ではありません。
根拠:Seligman, M. E. P. & Maier, S. F. (1967) Journal of Experimental Psychology, 74
問24|自己効力感の源
バンデューラが示した自己効力感の4つの源のうち、最も強い影響をもつとされるものはどれか。
代理経験 言語的説得 生理的・情動的状態 遂行行動の達成 正解と解説 正解:D. 遂行行動の達成 バンデューラは、自分でやりとげた経験(遂行行動の達成)が最も強い源だとしました。他者の成功を見る代理経験、言葉による励ましの言語的説得、体や気持ちの状態も源ですが、自分の成功体験よりは影響が弱いとされます。
根拠:Bandura, A. (1977) Self-efficacy, Psychological Review, 84
問25|ピグマリオン効果
教師が「この子は伸びる」と期待すると、その子の成績が実際に伸びることがあるという効果を報告した研究者はどれか。
ローゼンタールとジェイコブソン セリグマンとマイヤー デシとライアン レヴィン、リピット、ホワイト 正解と解説 正解:A. ローゼンタールとジェイコブソン ピグマリオン効果(教師期待効果)を報告したのはローゼンタールとジェイコブソンです。セリグマンとマイヤーは学習性無力感、デシとライアンは自己決定理論、レヴィンらはリーダーシップの型と集団の雰囲気の研究で知られます。
根拠:Rosenthal, R. & Jacobson, L. (1968) Pygmalion in the Classroom
問26|達成動機
アトキンソンの達成動機の理論で、成功を求める動機が強い人が選びやすいとされる課題はどれか。
必ず成功できる、とても易しい課題 成功の見込みが中くらいの課題 ほとんど成功の見込みがない、とても難しい課題 成否が運だけで決まる課題 正解と解説 正解:B. 成功の見込みが中くらいの課題 成功を求める動機が強い人は、成功の見込みが中くらいの課題を選びやすいとされます。とても易しい課題やとても難しい課題は、失敗を避けたい動機が強い人が選びやすいとされます。運だけで決まる課題は自分の力で達成した満足が得にくく、達成動機の高い人が好む課題ではありません。
根拠:Atkinson, J. W. (1957) Psychological Review, 64
問27|帰属と声かけ
テストで失敗した生徒の次の意欲を高めるために、ワイナーの理論から考えて最も適切な声かけはどれか。
「もともと向いていない教科だから気にしなくていい」 「今回は問題が難しすぎただけだよ」 「たまたま運が悪かったね」 「覚え方を変えれば次は伸びるよ」 正解と解説 正解:D. 「覚え方を変えれば次は伸びるよ」 やり方や努力という、自分で変えられる内的な原因に目を向けさせると、次の意欲につながりやすいとされます。「向いていない」は能力(内的で安定)への帰属で意欲が下がりやすく、「問題が難しすぎた」(外的で安定)や「運が悪かった」(外的で不安定)は、自分の行動で結果を変えられるという見通しにつながりにくい声かけです。
根拠:Weiner, B. (1979) Journal of Educational Psychology, 71
問28|形成的評価
単元の途中で小テストを行い、つまずいている子どもを見つけて指導を改善するための評価はどれか。
形成的評価 診断的評価 総括的評価 相対評価 正解と解説 正解:A. 形成的評価 学習の途中で指導の改善に生かす評価は形成的評価です。診断的評価は学習の前に準備状況を確かめるもの、総括的評価は単元や学期の終わりに到達の程度をまとめるものです。相対評価は「いつ」ではなく「何と比べるか」の分類で、集団内の位置で評価する方法です。
根拠:Scriven (1967)、Bloom, Hastings & Madaus (1971) Handbook on Formative and Summative Evaluation of Student Learning
問29|観点別評価の3観点
平成31年3月の文部科学省の通知で示された、各教科の観点別学習状況の評価の3観点として正しいものはどれか。
関心・意欲・態度/思考・判断・表現/技能/知識・理解 知識・理解/技能・表現/主体性・協働性 知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度 知識・技能/思考力/学びに向かう力、人間性等 正解と解説 正解:C. 知識・技能/思考・判断・表現/主体的に学習に取り組む態度 通知の3観点は「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」です。「関心・意欲・態度」を含む4観点は改訂前の観点です。「学びに向かう力、人間性等」は資質・能力の柱の名前で、そのうち観点別評価で見るのが「主体的に学習に取り組む態度」です。「主体性・協働性」を含む組み合わせは通知の観点にありません。
根拠:文部科学省「学習評価及び指導要録の改善等について(通知) 」(平成31年3月29日)
問30|評定の段階
指導要録の各教科の「評定」についての説明として正しいものはどれか(平成31年3月の通知の別紙による)。
小学校は第1学年から5段階、中学校は3段階で記入する 小学校は第3学年以上で3段階、中学校は5段階で記入する 小学校・中学校とも、すべての学年で10段階で記入する 小学校・中学校とも評定は行わず、文章で記述する 正解と解説 正解:B. 小学校は第3学年以上で3段階、中学校は5段階で記入する 小学校は第3学年以上で3・2・1の3段階、中学校は5・4・3・2・1の5段階です。小学校と中学校の段階を逆にした説明や、10段階とする説明は誤りです。文章で記述するのは特別の教科 道徳や総合的な学習の時間で、各教科の評定ではありません。
根拠:同通知の別紙1(小学校) ・別紙2(中学校) (2026-10-16確認)
問31|道徳科の評価
指導要録における「特別の教科 道徳」の評価の記入方法として正しいものはどれか。
A・B・Cの3段階で観点別に記入する 小学校は3段階、中学校は5段階の数値で記入する 学級内の順位をもとに相対評価で記入する 学習状況や道徳性に係る成長の様子を個人内評価として文章で記述する 正解と解説 正解:D. 学習状況や道徳性に係る成長の様子を個人内評価として文章で記述する 道徳科は、学習状況や道徳性に係る成長の様子を、個人内評価として文章で端的に記述します(小学校・中学校とも同じ)。A・B・Cの観点別評価や、3段階・5段階の評定は各教科の方法で、道徳科では数値による評価をしません。順位による相対評価も行いません。
根拠:同通知の別紙1(小学校) ・別紙2(中学校) (2026-10-16確認)
問32|妥当性
算数・数学の計算力を測るテストなのに、問題文がとても難しく、読解力の差が得点に強く表れてしまった。このテストで特に問題になるのはどれか。
信頼性 寛大化傾向 妥当性 中心化傾向 正解と解説 正解:C. 妥当性 測りたいもの(計算力)を本当に測れているかどうかは妥当性の問題です。信頼性は、何度受けても、だれが採点しても結果が安定しているかどうかです。寛大化傾向と中心化傾向は、評価する人が甘くつけたり真ん中に集めたりするゆがみで、テストの作り方の問題ではありません。
根拠:小学校学習指導要領(平成29年告示) ・中学校学習指導要領(平成29年告示) 第1章総則 第3の2(2)(学習評価の妥当性・信頼性)
問33|知能指数の計算
生活年齢(CA)が8歳、精神年齢(MA)が10歳の子どもの比率知能指数(IQ=MA÷CA×100)はいくつか。
125 80 120 100 正解と解説 正解:A. 125 IQ=10÷8×100=125です。80は割る順を逆にした(8÷10×100)ときの値です。120は、差の2歳を10倍して100に足した値で、式に合いません。100は精神年齢と生活年齢が同じときの値です。
根拠:Binet & Simon (1905)、Terman, L. M. (1916) The Measurement of Intelligence(計算は自分で確認)
問34|偏差値の計算
平均点62点、標準偏差8点のテストで74点をとった生徒の偏差値はいくつか(偏差値=50+10×(得点−平均)÷標準偏差)。
62 65 74 51.5 正解と解説 正解:B. 65 50+10×(74−62)÷8=50+15=65です。62は平均点、74は得点そのもので、偏差値ではありません。51.5は、10をかけ忘れて50+12÷8としたときの値です。
根拠:偏差値の定義(平均50・標準偏差10への変換)。計算は自分で確認
問35|ハロー効果
字がきれいで礼儀正しい生徒の作文を、内容まで実際より高く評価してしまった。このような評価のゆがみはどれか。
中心化傾向 ゴーレム効果 アンダーマイニング効果 ハロー効果 正解と解説 正解:D. ハロー効果 一つの目立つよい特徴に引っぱられて、ほかの面まで高く評価してしまうのはハロー効果(光背効果)です。中心化傾向は極端を避けて真ん中に評価が集まること、ゴーレム効果は低い期待が成績を下げること、アンダーマイニング効果は報酬で内発的動機づけが下がることです。
根拠:Thorndike, E. L. (1920) A constant error in psychological ratings, Journal of Applied Psychology, 4
問36|学級集団とリーダーシップ
学級集団の理解やリーダーシップについての説明として正しいものはどれか。
ゲス・フー・テストは、子ども同士の選択関係をソシオグラムにする方法である PM理論では、集団維持の働きだけが強いM型が最も効果的とされる ソシオメトリック・テストはモレノが考案し、選択関係から学級の人間関係をとらえる レヴィンらの研究では、放任型の指導で最も自主的な活動が見られた 正解と解説 正解:C. ソシオメトリック・テストはモレノが考案し、選択関係から学級の人間関係をとらえる ソシオメトリック・テストはモレノが考案し、選択関係をソシオグラムにして学級の人間関係をとらえます。ゲス・フー・テストは説明に当てはまる友達の名前を挙げさせる方法で、ソシオグラムを作る方法ではありません。PM理論で最も効果的とされるのは、目標達成(P)と集団維持(M)の両方が強いPM型です。レヴィンらの研究で友好的な雰囲気と自主的な活動が見られたのは民主型で、放任型ではありません。
根拠:Moreno, J. L. (1934) Who Shall Survive?、Lewin, K., Lippitt, R. & White, R. K. (1939) Journal of Social Psychology, 10、三隅二不二『リーダーシップ行動の科学』(有斐閣)
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※ 解説は学習用の情報提供です。採用選考の実施方法・出題範囲は、必ず受験する自治体の実施要項をご確認ください。 ※ 問題はすべて仮の宿 学習室のオリジナル問題で、本試験の問題ではありません。法令は2026年10月時点のものです。