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遺言の種類と選び方——自筆証書・公正証書・秘密証書と、法務局の保管制度・検認
15歳から つくれます。
書き方は、大きく 3つ あります。
決まりを まもらないと、使えない ことが あります。
心配な ときは、公証役場や 法務局、専門家に 相談しましょう。
- ふつうの遺言は自筆証書・公正証書・秘密証書の3種類(民法967条)。15歳から作れる(民法961条)
- 費用を抑えるなら自筆証書遺言+法務局の保管制度(1通3,900円)。死亡後の家庭裁判所の検認が不要になる
- 形式のミスで無効になるリスクを下げたい、外出が難しい、手で書けないなら公正証書遺言(公証人の出張も可)
- 保管制度を使わない自筆証書遺言と秘密証書遺言は、死亡後に家庭裁判所の検認が必要
遺言(いごん・ゆいごん)は、亡くなった後に財産を誰にどう渡すかを、生きているうちに決めておくための書面です。民法で決められた方式(作り方のルール)を守らないと、効力が認められないことがあります。この記事では、3つの方式の違い、法務局の保管制度、公正証書遺言の費用、検認の手続きを、公的な情報にもとづいて整理します。
- 遺言の基本ルール(年齢・共同遺言の禁止・撤回)
- 3つの方式の比較表
- 自筆証書遺言の書き方と、法務局の保管制度
- 公正証書遺言の作り方と手数料
- 秘密証書遺言
- 家庭裁判所の検認
- どれを選ぶか(状況別の目安)
- 外国籍の人・海外に家族がいる場合
遺言の基本ルール
- 15歳以上なら遺言ができます(民法961条)。ただし、判断する力(遺言能力)がなくなると、遺言はできません。
- 2人以上が同じ書面で遺言することはできません(共同遺言の禁止・民法975条)。夫婦でも1人1通ずつ作ります。
- 遺言はいつでも撤回できます。撤回も遺言の方式に従って行います(民法1022条)。前の遺言と後の遺言が矛盾する部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます(民法1023条)。
- 兄弟姉妹以外の相続人には遺留分(最低限受け取れる割合)があります(民法1042条)。遺言の内容によっては、相続人どうしの争いの原因になることがあるので注意が必要です。
3つの方式の比較
民法967条は、ふつうの遺言(普通方式)を次の3つに限っています。このほか、死が迫っている場合などの「特別の方式」もありますが、この記事では扱いません。
| 自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
|---|---|---|---|
| 作る人 | 本人が手書き | 公証人が作成(本人は内容を伝える) | 本人(パソコンや代筆も可。署名・押印は本人) |
| 証人 | 不要 | 2人以上 | 2人以上(+公証人1人) |
| 主な費用 | 無料(法務局に預けるなら1通3,900円) | 財産の価額に応じた手数料(下の表) | 13,000円 |
| 保管 | 自分(または法務局) | 原本は公証役場 | 自分 |
| 死亡後の検認 | 必要(法務局保管なら不要) | 不要 | 必要 |
| 形式ミスのリスク | あり(保管制度でも内容の有効性は保証されない) | 低い(公証人が作成) | あり(公証人は内容を確認しない) |
自筆証書遺言の書き方
自筆証書遺言は、全文・日付・氏名を自分で手書きし、印を押すことが必要です(民法968条1項)。
- 財産目録(財産の一覧)だけは手書きでなくてもかまいません。パソコンで作った一覧や、登記事項証明書・通帳のコピーを付けられます。ただし、目録の各ページに署名・押印が必要で、両面に記載がある場合は両面に必要です(民法968条2項)。
- 書き直し(加除・訂正)は、場所を示し、変更したことを書き添えて署名し、変更した場所に印を押さないと効力がありません(民法968条3項)。間違えたら、全部書き直すほうが安全です。
・本文をパソコンで作った、または家族が代わりに書いた(自筆証書遺言としては認められない)
・日付が「○年○月吉日」「○月末ごろ」など、特定できない
・訂正のルールを守らずに書き直した
・夫婦2人で1枚の遺言書を作った(共同遺言の禁止)
法務局の自筆証書遺言書保管制度
2020年(令和2年)7月10日に始まった、手書きの遺言書を法務局(遺言書保管所)に預ける制度です。原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間保管されます。紛失や、相続人による隠す・書き換えるといったおそれを防ぐことができ、死亡後の検認も不要です。
預けるときのポイント
- 預け先は、遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する法務局。
- 予約が必須。本人が出向くことが必要で、代理人による申請や郵送はできません(付き添いは可能)。
- 本人確認書類は、顔写真付きの官公署発行の身分証明書(運転免許証、マイナンバーカードなど)。
- 添付書類として、本籍と筆頭者の記載がある住民票の写し等(マイナンバーの記載がないもの)が必要。外国語で書いた遺言書には日本語の翻訳文を付けます。
- 用紙はA4・片面。余白は上5mm・下10mm・左20mm・右5mm以上。ホチキス止めせず、封筒にも入れません。消せるボールペンは使いません。
- 2枚以上ならページ番号(1/2、2/2など)が必要。2026年3月2日の省令改正で、1枚だけの遺言書はページ番号が不要になりました。
手数料(収入印紙で納付)
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 遺言書の保管の申請 | 1通 3,900円 |
| 遺言書情報証明書の交付(相続人等) | 1通 1,400円 |
| 遺言書の閲覧(モニター) | 1回 1,400円 |
| 遺言書の閲覧(原本) | 1回 1,700円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 1通 800円 |
死亡後は、相続人等が全国どの法務局でも遺言書情報証明書を請求できます(原本の閲覧は保管している法務局のみ)。相続人の1人が証明書の交付や閲覧をすると、他の相続人にも遺言書が保管されていることが通知されます(関係遺言書保管通知)。遺言者が希望すれば、死亡が確認されたときに指定した人(3人まで)へ通知が届く仕組み(指定者通知)もあります。
法務局が確認するのは様式などの外形だけです。遺言の内容の相談には応じず、保管された遺言書の有効性を保証するものではありません。
公正証書遺言の作り方と手数料
公正証書遺言は、証人2人以上の立会いのもと、遺言者が内容を公証人に伝え(口授)、公証人が作成する遺言です(民法969条)。原本は公証役場に保管され、検認は不要です(民法1004条2項)。
- 証人になれない人:未成年者、推定相続人・受遺者(遺言で財産を受け取る人)とその配偶者・直系血族、公証人の配偶者・4親等内の親族・書記・使用人(民法974条)。適当な証人がいない場合は、公証役場で紹介を受けられます。
- 話すことができない人は、通訳人の通訳または自分で書くことで、口授に代えられます(民法969条の2)。
- 外出が難しい人のために、公証人が自宅・病院・介護施設などへ出張して作成することもできます。
- 2025年10月1日から、公正証書(遺言を含む)の作成手続がデジタル化されました。原本は原則として電子データで作成・保存され、本人が希望し公証人が相当と認めるときは、ウェブ会議で手続きできる場合があります。
- 1989年(平成元年)以降に作成された公正証書遺言は、死亡後に相続人などが全国の公証役場で無料で検索できます(生前は本人のみ)。
手数料(公証人手数料令。2025年10月1日以降の嘱託に適用)
手数料は、遺言の目的である財産の価額に応じて決まり(9条・別表)、価額が1億円以下なら13,000円が加算されます(19条)。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 50万円以下 | 3,000円 |
| 50万円超〜100万円以下 | 5,000円 |
| 100万円超〜200万円以下 | 7,000円 |
| 200万円超〜500万円以下 | 13,000円 |
| 500万円超〜1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円超〜3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円超〜5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円超〜1億円以下 | 49,000円 |
病床で作成する場合は手数料が5割増しになり(32条)、出張には日当(1日2万円、4時間以内は1万円)と旅費(交通費の実費等)がかかります(43条)。遺言の内容や財産の評価によって計算が変わるため、正確な金額は依頼する公証役場で見積もりを受けてください。
秘密証書遺言
内容を誰にも知られずに、遺言書が「本人のもの」であることだけを公証人に証明してもらう方式です(民法970条)。本人が署名・押印した遺言書を封筒に入れて同じ印で封印し、公証人1人と証人2人以上の前に出して、自分の遺言書であることと、書いた人の氏名・住所を述べます。
- 本文はパソコンや代筆でもかまいません(署名・押印は本人)。
- 手数料は13,000円(公証人手数料令28条)。
- 遺言書は自分で保管します。法務局の保管制度は使えず、死亡後は検認が必要です。公証人は内容を確認しないため、形式の不備で無効になるおそれがあります。
家庭裁判所の検認
検認は、相続人に遺言の存在と内容を知らせ、検認の日の時点での遺言書の状態を記録して、偽造・変造を防ぐための手続きです。遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 必要な遺言 | 自筆証書遺言(法務局保管のものを除く)、秘密証書遺言 |
| 申し立てる人 | 遺言書の保管者、遺言書を見つけた相続人 |
| いつ | 相続の開始を知った後、遅滞なく(民法1004条1項) |
| 申立先 | 遺言者の最後の住所地の家庭裁判所 |
| 費用 | 遺言書1通につき収入印紙800円+連絡用の郵便切手等 |
| 主な書類 | 申立書、遺言者の出生から死亡までのすべての戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本、相続人全員の戸籍謄本 など |
封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人等の立会いのもとでなければ開封できません(民法1004条3項)。提出を怠ったり、検認を経ずに遺言を執行したり、家庭裁判所の外で開封したりすると、5万円以下の過料の対象になります(民法1005条)。遺言を執行するには、遺言書に検認済証明書を付けてもらいます(申請に遺言書1通につき収入印紙150円)。戸籍の集め方は戸籍収集チェックリストを参考にしてください。
封がされた遺言書を見つけたら、自宅で開けずに、そのまま家庭裁判所に検認を申し立てましょう。
どれを選ぶか(状況別の目安)
| こんなとき | 検討しやすい方式 |
|---|---|
| 費用を抑えたい・自分で書ける・法務局に行ける | 自筆証書遺言+法務局の保管制度 |
| 形式の不備で無効になるのを避けたい | 公正証書遺言 |
| 病気や障がいで外出が難しい | 公正証書遺言(公証人の出張)※保管制度は本人の出頭が必須 |
| 手で文字を書くのが難しい | 公正証書遺言(秘密証書遺言も本文の自書は不要) |
| 財産や家族関係が複雑、相続人どうしの争いが心配 | 公正証書遺言+専門家への相談 |
これはあくまで目安です。内容の決め方や税金については、弁護士・司法書士・税理士などの専門家に相談してください。費用が心配な場合は、法テラス(日本司法支援センター)の窓口で相談先の案内を受けられます。
外国籍の人・海外に家族がいる場合
- 方式(作り方):「遺言の方式の準拠法に関する法律」2条により、遺言をした場所の法律、遺言者の国籍のある国の法律、住所地・常居所地の法律(遺言をしたとき、または死亡したとき)、不動産についてはその所在地の法律のいずれかに合っていれば、方式は有効とされます。
- 遺言の成立と効力:「法の適用に関する通則法」37条により、遺言をした当時の遺言者の本国法によります。相続全体にどの国の法律が適用されるかは、外国籍の人・海外に住む相続人がいるときの相続で解説しています。
- 公正証書遺言は日本語で作成されます(公証人法27条)。日本語がわからない人は通訳人を付けて作成します(公証人法29条)。
- 法務局の保管制度では、外国語で書いた遺言書に日本語の翻訳文を付けます。氏名は公的書類のとおりに書きます。
- 日本で作った遺言が母国でどう扱われるか、母国の財産をどうするかは国によって違います。在外公館(大使館・領事館)や、国際相続に詳しい専門家に確認してください。
よくある質問
- Q. パソコンで作った遺言書は有効ですか?
- A. 自筆証書遺言は、本文・日付・氏名を手書きし、押印する必要があります。パソコンで作ってよいのは、添付する財産目録(各ページに署名・押印が必要)だけです。本文をパソコンで作りたい場合は、公正証書遺言や秘密証書遺言を検討します。
- Q. 法務局の保管制度を使えば、遺言が無効になることはありませんか?
- A. いいえ。法務局が確認するのは様式などの外形だけで、内容の相談には応じず、遺言書の有効性も保証しません。内容に不安がある場合は、専門家に相談してください。
- Q. 入院中や外出が難しい人でも遺言を作れますか?
- A. 公正証書遺言なら、公証人が自宅・病院・施設などに出張して作成できます(日当・旅費がかかり、病床で作成する場合は手数料が5割増しになります)。法務局の保管制度は、本人が法務局に出向くことが必須で、代理や郵送はできません。
- Q. 一度書いた遺言を書き直せますか?
- A. はい。遺言者はいつでも、遺言の方式に従って、遺言の全部または一部を撤回できます。前の遺言と後の遺言が矛盾する部分は、後の遺言で撤回したものとみなされます。
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- e-Gov法令検索「民法」(961条・967条・968条・969条・969条の2・970条・974条・975条・1004条・1005条・1022条・1023条・1042条)
- e-Gov法令検索「公証人手数料令」(9条・別表・19条・28条・32条・43条、附則)
- e-Gov法令検索「公証人法」(27条・29条ほか)
- e-Gov法令検索「遺言の方式の準拠法に関する法律」(2条)
- e-Gov法令検索「法の適用に関する通則法」(37条)
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」/「01 遺言書保管制度とは?」/「02 遺言者の手続」/「03 遺言書の様式等についての注意事項」/「09 手数料」/「11 よくあるご質問」
- 法務省「法務局における遺言書の保管等に関する省令の改正の概要」(令和8年3月2日公布・施行)
- 法務省民事局「公正証書に係る一連の手続のデジタル化について」(令和7年12月)/法務省 公正証書のデジタル化に関するページ
- 日本公証人連合会「遺言」
- 裁判所「遺言書の検認」
- 法テラス(日本司法支援センター)