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相続放棄と限定承認——3か月の期限、家庭裁判所での手続き、やってはいけないこと

やさしい ことばで家族かぞくが 亡なくなると、お金かねや 家いえだけでなく、借金しゃっきんも 受うけ継つぐことが あります。
借金しゃっきんを 受うけ継つぎたくない ときは、「相続放棄そうぞくほうき」が できます。
家庭裁判所かていさいばんしょに 書類しょるいを 出だします。期限きげんは、自分じぶんが 相続人そうぞくにんに なったことを 知しってから 3か月げつです。
その前まえに、亡なくなった 人ひとの お金かねを 使つかったり、物ものを 売うったり しないで ください。
最終更新:2026年10月16日|仮の宿 編集部
先に結論

亡くなった方に借金があるとわかったとき、多くの人が最初に調べるのが「相続放棄」です。相続放棄にははっきりした期限があり、やり方を間違えると取り返しがつきません。この記事では、相続放棄と限定承認の違い・期限・家庭裁判所での手続き・注意点を、裁判所・法令・国税庁の情報にもとづいて整理します。

この記事でわかること
  1. 相続の3つの選び方(単純承認・限定承認・相続放棄)
  2. 期限の「3か月」はいつから数えるか、延ばせるか
  3. 相続放棄の手続き(申述先・費用・書類・その後)
  4. 相続放棄の効果と、やってはいけないこと
  5. 限定承認の手続きと注意点
  6. 外国籍の人・海外に住む相続人の場合

相続の3つの選び方

相続が始まると、相続人(財産を受け継ぐ立場の人)は次の3つのどれかを選びます。

選び方どうなるか手続き
単純承認預貯金や不動産などのプラスの財産も、借金などのマイナスの財産も、制限なくすべて引き継ぐ(民法920条)特別な手続きは不要。3か月の期間内に何もしなければ単純承認とみなされる
限定承認相続で得たプラスの財産の範囲内でだけ、借金などを支払う(民法922条)家庭裁判所に申述。相続人全員が共同で行う必要がある
相続放棄プラスもマイナスも一切引き継がない。初めから相続人でなかったことになる(民法939条)家庭裁判所に申述。1人ずつ単独でできる

借金がプラスの財産より明らかに多いなら相続放棄、どちらが多いかわからない・残したい財産があるなら限定承認、というのが基本的な考え方です。ただし限定承認は手続きの負担が大きいため(後述)、実際にどれを選ぶかは専門家と相談して決めることをおすすめします。

期限は「知った時から3か月」

民法915条は、相続人が「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」に、単純承認・限定承認・相続放棄のどれにするかを決めなければならないと定めています。この3か月を熟慮期間(よく考えるための期間)と呼びます。

亡くなった日から3か月を過ぎている場合
申述先の家庭裁判所から、相続が始まったことを知った日がわかる書面(債権者から届いた通知書の写しなど)の提出を求められることがあります(大阪家庭裁判所の案内)。受理されるかどうかは事情によるため、気づいた時点ですぐに家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談してください。

相続放棄の手続き

申述先と費用

項目内容
申述する人相続人本人。未成年者や成年被後見人は法定代理人(親権者など)が代わりに行う
申述先亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所
期限自分のために相続が始まったことを知った時から3か月以内
費用申述人1人につき収入印紙800円+連絡用の郵便切手(金額は裁判所ごとに異なる)

未成年の子と親権者がそろって相続人になっている場合などは、子のために特別代理人の選任が必要になることがあります。

必要な書類

申述書(裁判所のウェブサイトに書式と記入例があります)と、次の書類が標準的な添付書類です。

親や兄弟姉妹など、順位があとの相続人が申述する場合は、亡くなった方の出生から死亡までのすべての戸籍などが追加で必要になります。同じ書類は1通でよく、先に別の相続人が提出した書類は出し直さなくてよい場合があります。戸籍の集め方は戸籍収集チェックリストも参考にしてください。法定相続情報一覧図の写しで戸籍の代わりにできる場合もあるため、申述先の家庭裁判所に確認しましょう。

申述したあと

相続放棄の効果と、やってはいけないこと

放棄すると、次の順位の人が相続人になる

相続放棄をした人は、その相続について初めから相続人でなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、子が全員放棄すると亡くなった方の父母など(直系尊属)が、父母などもいなければ兄弟姉妹が相続人になります(民法889条)。また、放棄した人の子が代わりに相続する「代襲相続」は起こりません(民法887条2項が代襲相続の原因として挙げるのは、相続開始以前の死亡、相続人の欠格、廃除で、相続放棄は含まれていません)。

放棄すると借金の請求が親や兄弟姉妹に移ることがあるため、事前に家族へ伝えておくとトラブルを防ぎやすくなります。

財産を処分すると、放棄できなくなる

民法921条は、次の場合に単純承認をしたものとみなすと定めています。

決める前に避けたいこと
・亡くなった方の預貯金を引き出して自分のために使う
・不動産・車・貴金属などを売る、人にあげる、名義を変える
・どれが「処分」にあたるか迷うものは、手をつける前に弁護士・司法書士に相談する

その他の注意点

税金への影響

限定承認の手続きと注意点

限定承認は「借金はプラスの財産の範囲でだけ払う」という方法です。借金の全体がわからないときや、自宅など残したい財産があるときに検討されます。一方で、次のように手続きの負担が大きい点に注意が必要です。

項目内容
申述する人相続人全員が共同で申述する(1人でも反対すると選べない)
申述先・期限・費用亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所/知った時から3か月以内/収入印紙800円と連絡用の郵便切手
書類申述書、相続財産の目録(民法924条)、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本、申述人全員の戸籍謄本など
受理後の公告限定承認後5日以内に、債権者などに対して官報で公告する。請求を申し出る期間は2か月以上(民法927条)。わかっている債権者には個別に知らせる
相続人が複数のとき家庭裁判所が相続人の中から相続財産の清算人を選ぶ。公告の期限は選任後10日以内(民法936条)
限定承認と所得税
限定承認をすると、亡くなった方の不動産などは、亡くなった時の価額で譲渡したものとみなされます(所得税法59条1項)。値上がりしている財産があると、亡くなった方の所得税(準確定申告)が生じることがあります。準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内です。限定承認を考えるときは、税理士にも相談してください。

外国籍の人・海外に住む相続人の場合

期限と費用のまとめ

手続き期限申立先・申請先費用(収入印紙)
相続放棄の申述知った時から3か月以内亡くなった方の最後の住所地の家庭裁判所申述人1人につき800円+郵便切手
限定承認の申述知った時から3か月以内(相続人全員で)同上800円+郵便切手
期間の伸長の申立て知った時から3か月以内同上相続人1人につき800円+郵便切手
相続放棄申述受理証明書—申述が受理された家庭裁判所1通150円
限定承認後の官報公告限定承認後5日以内(清算人選任時は選任後10日以内)官報—
準確定申告(必要な場合)知った日の翌日から4か月以内税務署—

死亡後の届出から相続税の申告・相続登記までの期限は相続手続きの全体像と期限にまとめています。相続放棄をした人がいる場合の相続登記については相続登記の義務化も参考にしてください。

どこに相談すればよいか

よくある質問

Q. 亡くなってから3か月を過ぎたら、もう相続放棄はできませんか?
A. 期限の3か月は、亡くなった日からではなく「自分のために相続が始まったことを知った時」から数えます。亡くなった日から3か月を過ぎて申述する場合は、相続が始まったことを知った日がわかる書面(債権者からの通知書の写しなど)を求められることがあります。事情によって判断が分かれるため、早めに家庭裁判所や弁護士・司法書士に相談してください。
Q. 一度した相続放棄を、あとから取り消せますか?
A. 原則としてできません。民法919条により、相続の承認や放棄は3か月の期間内であっても撤回できません。だまされた・おどされたなど民法上の取消しの理由がある場合に限り、家庭裁判所への申述で取り消せることがありますが、期間の制限があります。
Q. 相続放棄をした人が死亡保険金を受け取ったら、相続税はどうなりますか?
A. 死亡保険金には「500万円×法定相続人の数」の非課税枠がありますが、国税庁の説明では、この非課税枠を使える受取人は相続人で、相続を放棄した人は含まれません。そのため、亡くなった方が保険料を負担していた保険金を放棄した人が受け取った場合は、非課税枠を使えず、受け取った額が相続税の課税対象になります。一方、非課税枠や基礎控除の計算に使う「法定相続人の数」は、放棄がなかったものとして数えます。
Q. 家族の話し合いで「何も受け取らない」と決めれば、相続放棄と同じですか?
A. 同じではありません。相続放棄は家庭裁判所に申述して行う手続きです(民法938条)。話し合い(遺産分割協議)で財産を受け取らないと決めただけでは、家庭裁判所での相続放棄にはなりません。借金がある場合は特に、専門家に相談してください。
※ 本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、法律・税務・登記に関する具体的な助言ではありません。個別の事案については、弁護士・司法書士・税理士等の専門家、または家庭裁判所・税務署・法テラスなどの公的窓口にご相談ください。郵便切手の額や添付書類は家庭裁判所ごとに異なることがあります。記載内容は最終更新日時点の情報にもとづきます。
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出典(最終確認:2026年10月) この記事は制度の一般的な解説です。制度・法令は最新の公式情報をご確認ください。