医療情報技師 HEALTHCARE INFORMATION TECHNOLOGIST
システムの導入と運用
講義 3 本・確認問題 30 問 | 本試験では「医療情報システム系」(60問)の一部 | 最終更新 2026-09-24
この章で学ぶこと- 病院の経営戦略に基づく情報化、調達の手順(RFI・RFP・ベンダ選定)、契約の種類、要求仕様書の書き方を学ぶ。
- 院内の合意形成と組織体制、マスター作成・データ移行・リハーサルから検収・サービスインまでの流れを学ぶ。
- 運用管理規程の3層構造、ユーザ管理・マスター管理、障害時対応とIT-BCP、システムの評価と改善を学ぶ。
1. 情報化戦略とシステム調達
病院の経営戦略に基づく情報化、調達の手順(RFI・RFP・ベンダ選定)、契約の種類、要求仕様書の書き方を学ぶ。
病院情報システムの導入は、病院の経営戦略に基づく情報化戦略の一環として計画する。導入目的は業務の効率化だけでなく、医療の質・安全の向上、経営管理、地域連携など多様化している。経営層が導入の意思決定に関与し、医療における最高情報責任者(医療CIO)が情報化戦略の立案・推進の中心的役割を担う。情報システムには企画・調達から導入、運用、評価、次期更新へと続くライフサイクルがあり、運用中の評価を次期システムに反映させる。
調達は、調達要件の明確化から始まり、調達実施方法の検討、ベンダ評価基準の作成、RFP(提案依頼書)の作成、ベンダ選定リストの作成、RFPの発行、提案の評価、調達先の選定・契約という順で進む。RFI(情報提供依頼書)は、要件を固める前にベンダから製品・技術情報の提供を受けるための文書であり、提案を依頼するRFPとは役割が異なる。ベンダ評価基準はRFP発行前に作成しておくことで、提案を公平・客観的に比較できる。
契約には購入・リース・レンタルがある。リースはリース会社が購入した機器を長期間借りる形態で原則中途解約できない。レンタルは短期利用向けで中途解約が可能だが割高になりやすい。稼働後に備えてハードウェア保守契約・ソフトウェア保守契約を結ぶ。また、業務委託は受託者が自らの指揮命令で業務を遂行するのに対し、人材派遣は派遣先(医療機関)が労働者に指揮命令する点が異なる。
要求仕様書は、医療機関側が実現したい要求要件を明確にしてベンダに伝える文書であり、システム全般の基本的要求要件、ハードウェア・ソフトウェアの技術的要件のほか、部門システムなど複数システムを接続するための接続要件(接続対象、交換する情報、標準規格の利用など)を記載する。
システム調達の主な手順| 順序 | 作業 | ポイント |
|---|
| 1 | 調達要件の明確化 | 現状分析を踏まえ実現したい要求を整理する |
| 2 | 調達実施方法の検討 | 購入・リース等の形態や調達方式を検討する |
| 3 | ベンダ評価基準の作成 | RFP発行前に作成し公平・客観的に評価する |
| 4 | RFPの作成・発行 | 要求要件を示し提案書の提出を依頼する |
| 5 | 提案評価・調達先の選定 | 評価基準に基づき比較しベンダを決める |
| 6 | 契約 | 契約形態・保守条件などを取り決める |
用語
- 医療CIO
- 医療機関における最高情報責任者。経営戦略と整合した情報化戦略の立案・推進、システム導入の意思決定への関与など、病院の情報化を統括する役割を担う。
- RFI
- Request for Information(情報提供依頼書)。調達要件を固める前の段階で、ベンダに製品・技術・実績などの情報提供を依頼する文書。提案書の提出を求めるRFPとは区別される。
- RFP
- Request for Proposal(提案依頼書)。医療機関が要求要件や調達条件を示し、ベンダに提案書の提出を依頼する文書。提案内容をあらかじめ作成した評価基準で比較してベンダを選定する。
- リース契約
- リース会社が購入した機器を医療機関が長期間借りて使用する契約。原則として中途解約ができない。短期利用で中途解約可能なレンタル、資産として保有する購入と区別される。
- 保守契約
- システム稼働後の維持管理に関する契約。ハードウェアの点検・修理を対象とするハードウェア保守と、不具合修正やプログラム修正への対応などを対象とするソフトウェア保守がある。
- 要求仕様書
- 医療機関がシステムに求める要求要件を明確にし、ベンダに伝えるために作成する文書。基本的要求要件、ハードウェア・ソフトウェアの技術的要件、システム間の接続要件などを記載する。
- 業務委託と人材派遣
- 業務委託では受託者側が自らの指揮命令で業務を遂行する。人材派遣では派遣先である医療機関側が派遣労働者に指揮命令を行う。指揮命令権の所在が両者を区別する重要な違いである。
例題
例題:ベンダに提案書の提出を依頼する文書はどれか。
答えと考え方 RFP(提案依頼書)。情報提供を依頼するRFIと区別する。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.1.1〜3.1.3(情報化戦略・ライフサイクル), SBO 3.2.1(システム調達), SBO 3.2.2(契約), SBO 3.4.1〜3.4.5(要求仕様書)
2. 導入プロジェクトと稼働準備
院内の合意形成と組織体制、マスター作成・データ移行・リハーサルから検収・サービスインまでの流れを学ぶ。
システム導入は病院全体のプロジェクトであり、病院の意思決定プロセスに沿った体制を組む。経営層を含む委員会が意思決定を行い、現場の医師・看護師・技師・事務職員などが参加するワーキンググループで運用と仕様を詳細化し、院内の合意形成を図る。ベンダ側にもプロジェクトマネージャを中心とした体制が組まれ、医療機関内の組織間、医療機関とベンダ間、複数ベンダが関与する場合のベンダ間の調整を計画的に行う。
導入フェーズでは、運用・仕様の詳細化、開発・設定・システム構築、マスター作成、システムテスト、データ移行、ユーザ教育(操作研修)、運用テスト(リハーサル)、端末展開を経て、検収の後にサービスイン(本稼働)を迎える。稼働直後はベンダや情報部門が現場に立ち会い、問い合わせや不具合に即応する(運用後立ち合い)。
マスター作成は、薬剤・病名・検査項目・利用者など院内の運用に依存する内容が多く、医療機関側の関与が不可欠である。データ移行は旧システムから新システムへ患者基本情報や診療データを移す作業で、移行範囲の決定と移行後の検証が重要になる。運用テスト(リハーサル)は、実際の業務の流れに沿って外来受付から会計までを通しで確認し、運用上の問題を稼働前に洗い出す。検収は、納品されたシステムが仕様どおりに動作することを医療機関側が確認して受け入れる行為である。
導入フェーズからサービスインまでの主な作業| 段階 | 作業 | 内容 |
|---|
| 詳細化 | 運用・仕様の詳細化 | ワーキンググループで運用と仕様を詰める |
| 構築 | 開発・設定・システム構築 | ベンダが設計・開発・環境設定を行う |
| 準備 | マスター作成 | 薬剤・病名等の基本データを医療機関側も関与して整備 |
| 検証 | システムテスト・データ移行 | 動作確認と旧システムからのデータ移行・検証 |
| 習熟 | ユーザ教育・運用テスト | 操作研修と業務の流れに沿ったリハーサル |
| 稼働 | 端末展開・検収・サービスイン | 端末設置、仕様どおりの動作確認を経て本稼働 |
用語
- ワーキンググループ
- システム導入にあたり、医師・看護師・技師・事務職員など現場の代表者が参加して運用と仕様を検討する会議体。部門ごとの要望を調整し、院内の合意形成を進める役割を持つ。
- マスター作成
- 薬剤・病名・検査項目・利用者情報など、システムの動作の前提となる基本データを整備する作業。院内の運用に依存する内容が多く、医療機関側の関与が不可欠である。
- データ移行
- 旧システムに蓄積された患者基本情報や診療データを新システムへ移す作業。移行対象範囲の決定、移行方式の検討、移行後のデータ検証が重要となる。
- 運用テスト(リハーサル)
- 稼働前に実際の業務の流れに沿ってシステムを通しで使い、運用上の問題を洗い出すテスト。受付から診察・検査・会計までを本番同様の手順で確認する。
- 検収
- 納品されたシステムが要求仕様どおりに動作することを、発注者である医療機関側が確認して受け入れる行為。検収をもって納品が完了し、以後は保守契約等に基づく運用に移る。
- サービスイン
- システムの本稼働開始。稼働直後はベンダや情報部門の担当者が現場に立ち会い、操作の問い合わせや不具合への対応を行う(運用後立ち合い)。
例題
例題:納品されたシステムが仕様どおり動作することを医療機関側が確認して受け入れる行為は何か。
答えと考え方 検収。検収の後にサービスイン(本稼働)を迎える。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(導入フェーズからサービスイン), SBO 3.3.1〜3.3.4(導入に関わる組織体制)
3. 運用管理と障害対応・評価
運用管理規程の3層構造、ユーザ管理・マスター管理、障害時対応とIT-BCP、システムの評価と改善を学ぶ。
病院情報システムの運用には、責任者・管理者と運用管理に関わるスタッフからなる運用管理体制を整える。運用のルールは、組織の基本方針を示すポリシー、それを具体化した運用管理規程であるスタンダード、日々の作業手順を定めるプロシージャ(実施手順)の3層で整備する。運用管理規程には、管理対象・管理体制、管理者と利用者の責務、サーバ・端末・ネットワークの利用、データの取り扱い・保管、教育・訓練、業務委託に関する安全措置、罰則規程などの項目を盛り込む。
日常の運用管理には、問い合わせ対応、ネットワーク・端末の管理、資産管理、性能管理、システム/ネットワーク監視などがある。ユーザ管理では、アカウントの登録と使用停止を人事情報と連動させ、退職者のアカウントは速やかに停止する。パスワードの運用、業務に応じたアクセス権の設定、データのダウンロード権限の管理、利用者教育も欠かせない。権限や職務を分離して相互チェックを働かせる考え方をセグリゲーションの原則という。マスター管理では、マスターとトランザクションデータの整合性を保つことが重要で、過去データが参照できなくなるためマスター項目は安易に削除せず、無効化などで対応する。標準マスターの利用はシステム間のデータ共有を容易にする。
システム障害時は、影響範囲の把握、利用部門への連絡、紙運用など代替運用への切り替え、復旧、復旧後のデータ遡及入力という流れで対応する。医療施設における事業継続マネジメントの一環としてIT-BCPを策定し、被災したシステムを復旧させるディザスターリカバリーの手順を定め、災害時・障害時に備えた訓練を平時から行う。
運用フェーズでは診療報酬改定への対応や医療安全のための改修が代表的なシステム改修となる。システムは導入して終わりではなく、測定対象の定義、データ収集、データ分析、情報のとりまとめと活用、是正活動という流れで継続的に評価・改善する。情報化には部分的なコミュニケーションの減少、ワークフローの変更による混乱、診療の不適切な類型化といった副作用もあり、評価の結果は次期システムへのフィードバックにつなげる。
運用ルールの3層構造| 階層 | 名称 | 内容 |
|---|
| 第1層 | ポリシー(基本方針) | 組織としての情報システム運用の基本方針 |
| 第2層 | スタンダード(運用管理規程) | 基本方針を具体化した規程・ルール |
| 第3層 | プロシージャ(実施手順) | 日々の作業レベルの具体的な手順書 |
用語
- 運用管理規程
- 病院情報システムを安全に運用するためのルールを定めた規程。管理体制、管理者・利用者の責務、端末・ネットワークの利用、データの取り扱い、教育・訓練、罰則規程などの項目を含む。
- ポリシー・スタンダード・プロシージャ
- 運用ルールの3層構造。ポリシーは組織の基本方針、スタンダードは基本方針を具体化した運用管理規程、プロシージャは日々の作業レベルの実施手順を指す。
- セグリゲーションの原則
- 権限や職務を1人に集中させず分離し、相互チェックが働くようにする考え方。不正やミスを防ぐため、登録と承認の分離など業務に応じた権限設定を行う。
- マスター管理
- 薬剤・病名などのマスターを最新かつ正確に保つ管理。マスターとトランザクションデータの整合性を保つため、項目の削除ではなく無効化で対応し、標準マスターの利用で共有性を高める。
- IT-BCP
- 情報システムに関する事業継続計画。災害や障害の発生時にも重要な業務を継続・早期再開できるよう、代替手段や復旧手順、体制をあらかじめ定めておく。
- ディザスターリカバリー
- 災害などで被災した情報システムを復旧・復元すること、またはそのための体制・手順。遠隔地バックアップの活用などを含め、IT-BCPと併せて整備する。
- 代替運用(紙運用)
- システム障害時に、あらかじめ用意した紙の伝票・カルテなどで業務を継続する運用。復旧後には代替運用中の記録をシステムへ遡及入力し、データの連続性を確保する。
例題
例題:システム障害の復旧後に、代替運用中の記録に対して行うべきことは何か。
答えと考え方 システムへの遡及入力。データの連続性を確保する。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.1.1〜4.2.3(運用体制・運用管理規程), SBO 4.3.1〜4.3.7(運用管理・障害対応・IT-BCP), SBO 4.4.1〜4.4.7(評価・改善)
確認問題(30問)
四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|ライフサイクル
情報システムのライフサイクルの説明として正しいのはどれか。
- システムは一度導入すれば、その後に更新する必要はない
- 運用中に行った評価の結果は、次期システムの計画に反映させる必要はない
- 企画・調達から導入、運用、評価を経て次期更新へと続く一連の流れを指す
- ライフサイクルとは、ハードウェアの耐用年数のみを指す言葉である
正解と解説
正解:C. 企画・調達から導入、運用、評価を経て次期更新へと続く一連の流れを指す情報システムには企画・調達→導入→運用→評価→次期更新と続くライフサイクルがあり、運用中の評価を次期システムの計画に反映させることが重要である。一度導入して終わりではなく、ハードウェアの耐用年数だけを指す言葉でもない。評価を反映させない選択肢もライフサイクルの考え方に反する。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.1.3(情報システムのライフサイクル)
問2|RFIとRFP
RFP(提案依頼書)の説明として正しいのはどれか。
- ベンダに対して製品や技術に関する情報の提供を依頼するための文書である
- 医療機関が要求要件を示し、ベンダに提案書の提出を依頼する文書である
- ベンダが医療機関に対して見積金額のみを提示する文書である
- 契約を締結した後にベンダが作成する詳細設計書である
正解と解説
正解:B. 医療機関が要求要件を示し、ベンダに提案書の提出を依頼する文書であるRFP(Request for Proposal)は、医療機関が要求要件や調達条件を示してベンダに提案書の提出を依頼する文書である。製品・技術情報の提供を依頼する文書はRFI(情報提供依頼書)であり、要件を固める前の段階で用いる。見積のみの提示や契約後の詳細設計書はRFPではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.1(システム調達:RFPの作成・発行)
問3|調達手順
病院情報システムの調達手順として、時系列で正しい順序はどれか。
- 調達要件の明確化 → ベンダ評価基準の作成 → RFPの発行 → 調達先の選定・契約
- RFPの発行 → 調達要件の明確化 → ベンダ評価基準の作成 → 調達先の選定・契約
- 調達先の選定・契約 → RFPの発行 → 調達要件の明確化 → ベンダ評価基準の作成
- ベンダ評価基準の作成 → 調達先の選定・契約 → RFPの発行 → 調達要件の明確化
正解と解説
正解:A. 調達要件の明確化 → ベンダ評価基準の作成 → RFPの発行 → 調達先の選定・契約調達は、まず調達要件を明確化し、調達実施方法の検討とベンダ評価基準の作成を行ったうえでRFPを作成・発行し、提案を評価して調達先の選定・契約に至る。RFPの発行が要件明確化より先に来る順序や、契約が先頭に来る順序はあり得ない。評価基準はRFP発行前に作成しておくことがポイントである。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.1(システム調達の手順)
問4|要求仕様書
要求仕様書の説明として正しいのはどれか。
- ベンダが医療機関に対して、システムの納品時に提出する完成報告書である
- プログラムのソースコードをそのまま記載した文書である
- システムの稼働後に発生した障害への対応手順を定めた文書である
- 医療機関が実現したい要求要件を明確にしてベンダに伝える文書である
正解と解説
正解:D. 医療機関が実現したい要求要件を明確にしてベンダに伝える文書である要求仕様書は、医療機関側がシステムに求める要求要件を明確にし、調達にあたってベンダに伝えるための文書である。基本的要求要件、ハードウェア・ソフトウェアの技術的要件、システム間の接続要件などを記載する。納品時の完成報告書、ソースコード、障害対応手順書はいずれも要求仕様書ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.4.1(要求仕様書作成の概要)
問5|ベンダ選定
ベンダ選定を公平・客観的に行うための対応として最も適切なのはどれか。
- 各ベンダの提案書が出そろってから、その内容に合わせて評価の基準を作成する
- RFPの発行前にベンダ評価基準を作成しておき、それに基づいて提案を比較する
- 評価は行わず、見積金額が最も安いベンダを常に選ぶことにする
- 特定のベンダにのみRFPより詳しい要件を伝えて提案させる
正解と解説
正解:B. RFPの発行前にベンダ評価基準を作成しておき、それに基づいて提案を比較する評価基準をRFP発行前に作成しておくことで、提案内容を同じ物差しで公平・客観的に比較できる。提案を見てから基準を作ると恣意的な評価になりやすい。金額のみでの選定は機能・保守体制などの評価を欠き、特定ベンダへの情報提供は公平性を損なうため不適切である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.1(ベンダ評価基準の作成・調達先の選定)
問6|契約形態
機器の調達形態に関する説明として正しいのはどれか。
- リースは長期間の利用を前提とし、原則として中途解約できない
- レンタルは長期間の利用が前提であり、原則として中途解約はできない
- リースでは医療機関が機器を直接購入して自院の資産に計上する
- 購入した機器は技術の進歩による陳腐化のリスクがない
正解と解説
正解:A. リースは長期間の利用を前提とし、原則として中途解約できないリースはリース会社が購入した機器を長期間借りる形態で、原則として中途解約ができない。レンタルは短期利用向けで中途解約が可能な点がリースと異なる。リースで機器を購入・資産計上するのはリース会社であり医療機関ではない。購入は自院の資産となるが、技術の進歩による陳腐化のリスクは避けられない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.2(契約:リース・レンタル・購入の違い)
問7|委託と派遣
業務委託と人材派遣の違いに関する説明として正しいのはどれか。
- 業務委託では、発注者である医療機関が受託者の作業者一人ひとりに直接指揮命令を行う
- 人材派遣では、派遣元の会社が派遣先での日々の業務について指揮命令する
- 業務委託では受託者が自らの指揮命令で業務を遂行し、人材派遣では派遣先が指揮命令する
- 両者に指揮命令権の違いはなく、契約書の名称だけが異なるものである
正解と解説
正解:C. 業務委託では受託者が自らの指揮命令で業務を遂行し、人材派遣では派遣先が指揮命令する業務委託は受託者が自らの責任と指揮命令で業務を遂行する契約であり、発注者である医療機関が受託者の作業者に直接指揮命令することはできない。人材派遣では派遣先の医療機関が派遣労働者に指揮命令を行う。指揮命令権の所在が両者を分ける本質的な違いであり、名称だけの違いではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.2(契約:業務委託と人材派遣)
問8|保守契約
ソフトウェア保守契約の対象として最も適切なのはどれか。
- サーバ本体の故障した部品の交換と修理
- 院内LANのケーブルの敷設や配線の工事
- 端末の設置場所の変更にともなう移設作業
- 稼働後に発見された不具合の修正への対応
正解と解説
正解:D. 稼働後に発見された不具合の修正への対応ソフトウェア保守は、稼働後に発見された不具合(バグ)の修正やプログラム修正への対応などを対象とする。サーバ本体の部品交換や修理はハードウェア保守の対象である。LANケーブルの敷設工事や端末の移設は構築・工事作業であり、ソフトウェア保守契約の範囲ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.2(契約:保守契約)
問9|接続要件
要求仕様書に記載するシステム間の接続要件の説明として最も適切なのはどれか。
- 接続の詳細は稼働した後に決めればよいものなので、要求仕様書には記載しなくてよい
- 接続対象のシステム、交換する情報、接続方式(標準規格の利用など)を明記する
- 接続要件は各ベンダが自由に決めるものであり、医療機関は関与しない
- 同一のベンダの製品同士であれば、接続要件を記載する必要はない
正解と解説
正解:B. 接続対象のシステム、交換する情報、接続方式(標準規格の利用など)を明記する電子カルテと部門システムなど複数システムを接続するには、接続対象、交換する情報の種類、接続方式(標準規格の利用を含む)を要求仕様書に明記し、責任の範囲を明確にする必要がある。稼働後に決める、ベンダ任せにする、同一ベンダなら不要とする対応では、接続不良や責任の所在の不明確化を招く。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.4.5(システム間の接続要件)
問10|医療CIO
病院情報システムの導入戦略に関する説明として最も適切なのはどれか。
- 導入戦略は病院の経営戦略に基づいて策定し、医療CIOが情報化戦略の推進の中心的役割を担う
- 導入戦略の策定は情報部門だけで行うものであり、経営層や診療部門は関与しない方がよい
- システム導入の目的は、事務作業の効率化に限られる
- 導入戦略は一度決めたら、その後の評価や見直しを行う必要はないとされる
正解と解説
正解:A. 導入戦略は病院の経営戦略に基づいて策定し、医療CIOが情報化戦略の推進の中心的役割を担う病院情報システムの導入は経営戦略に基づく情報化戦略の一環であり、経営層の関与とシステム導入に向けた合意形成が不可欠で、医療における最高情報責任者(医療CIO)が戦略の立案・推進の中心を担う。情報部門だけでの決定は合意形成を欠く。導入目的は医療の質向上や連携など多様化しており、戦略は評価と見直しを重ねる。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.1.1(病院の情報化戦略・医療CIO), SBO 3.1.2(導入目的)
問11|マスター作成
導入時のマスター作成に関する説明として最も適切なのはどれか。
- 薬剤や病名などのマスターはベンダが標準のものを用意するため、医療機関は一切関与しなくてよい
- マスターの作成は、システムのサービスイン後に始めればよい
- 薬剤・病名・検査項目などのマスターは院内の運用に依存する内容が多く、医療機関側の関与が不可欠である
- マスターは一度作成すれば、その後の見直しや更新は不要である
正解と解説
正解:C. 薬剤・病名・検査項目などのマスターは院内の運用に依存する内容が多く、医療機関側の関与が不可欠である薬剤・病名・検査項目・利用者などのマスターは、採用医薬品や運用ルールなど院内の実情に依存する内容が多く、医療機関側が主体的に関与して整備する必要がある。ベンダ任せにはできず、稼働前に整備しなければシステムは正しく動作しない。マスターは稼働後も薬価改定などに合わせた継続的な管理が必要である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(マスター作成)
問12|導入の手順
導入フェーズからサービスインまでの作業の順序として正しいのはどれか。
- 検収 → 運用・仕様の詳細化 → マスター作成 → 運用テスト(リハーサル)
- 運用テスト(リハーサル)→ 運用・仕様の詳細化 → 検収 → マスター作成
- マスター作成 → 運用・仕様の詳細化 → 検収 → 運用テスト(リハーサル)
- 運用・仕様の詳細化 → マスター作成 → 運用テスト(リハーサル)→ 検収
正解と解説
正解:D. 運用・仕様の詳細化 → マスター作成 → 運用テスト(リハーサル)→ 検収導入フェーズは、運用・仕様の詳細化、開発・設定・システム構築、マスター作成、システムテスト、データ移行、ユーザ教育を経て、稼働前に運用テスト(リハーサル)を行い、検収の後にサービスインとなる。検収やリハーサルが仕様の詳細化やマスター作成より先に来る順序は成り立たない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(システム導入フェーズの作業プロセス)
問13|データ移行
旧システムから新システムへのデータ移行に関する説明として最も適切なのはどれか。
- 移行対象の範囲を決め、移行後にデータが正しく引き継がれたか検証する
- データ移行はサービスイン後に時間をかけて行えばよいので稼働前の計画は不要である
- 移行したデータの検証は不要である
- 旧システムのデータはすべて破棄し、新システムには引き継がない
正解と解説
正解:A. 移行対象の範囲を決め、移行後にデータが正しく引き継がれたか検証するデータ移行では、患者基本情報や診療データのうちどの範囲を移行するかを決定し、移行方式を検討したうえで実施し、移行後にデータが正しく引き継がれたかを検証することが重要である。診療の継続性を保つため稼働前に計画的に行う必要があり、検証を省略したり、診療データを引き継がず破棄したりする対応は不適切である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(データ移行)
問14|検収
検収の説明として正しいのはどれか。
- ベンダが自社内でプログラムの単体テストを実施し、動作に問題がないか品質を確認すること
- 納品されたシステムが要求仕様どおりに動作することを医療機関側が確認して受け入れること
- 医療機関が職員に向けてシステムの操作研修を実施すること
- 稼働した後に発生した障害について、その原因を分析すること
正解と解説
正解:B. 納品されたシステムが要求仕様どおりに動作することを医療機関側が確認して受け入れること検収は、発注者である医療機関側が、納品されたシステムが要求仕様どおりに動作することを確認して受け入れる行為であり、検収をもって納品が完了する。ベンダ社内の単体テストはシステムテストの一部、操作研修はユーザ教育、障害の原因分析は運用フェーズの活動であり、いずれも検収ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(検収)
問15|リハーサル
運用テスト(リハーサル)の目的として最も適切なのはどれか。
- 開発したプログラムのソースコードに誤りがないかを、1行ずつ目で確認すること
- ベンダが開発に要する工数と費用を見積もること
- 実際の業務の流れに沿ってシステムを通しで使い、稼働前に運用上の問題を洗い出す
- サーバ室に設置した空調設備の冷却能力を測定すること
正解と解説
正解:C. 実際の業務の流れに沿ってシステムを通しで使い、稼働前に運用上の問題を洗い出す運用テスト(リハーサル)は、受付から診察・検査・会計までの実際の業務の流れに沿って本番同様にシステムを使い、運用上の問題を稼働前に洗い出すために行う。ソースコードの確認は開発側のテスト、開発工数の見積もりは調達・契約段階の作業、空調能力の測定は設備の話であり、運用テストの目的ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(運用テスト(リハーサル))
問16|合意形成
システム導入時に現場の職員が参加するワーキンググループを設置する目的として最も適切なのはどれか。
- 部門ごとの運用と仕様を詳細化し、院内の合意形成を図るため
- ベンダとの契約金額を院内の他の職員に対して秘密にしておくため
- 経営層による意思決定の手続きを不要にするため
- 情報部門の人員を削減し、費用を抑えるため
正解と解説
正解:A. 部門ごとの運用と仕様を詳細化し、院内の合意形成を図るためワーキンググループは、医師・看護師・技師・事務職員など現場の代表者が参加し、部門ごとの運用と仕様を詳細化して要望を調整し、院内の合意形成を進めるために設置する。契約金額の秘匿が目的ではなく、経営層による意思決定(委員会など)を置き換えるものでもない。人員削減の手段でもない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.3.1(導入に関する組織), SBO 3.3.2(医療機関内の組織体制)
問17|ベンダ体制
導入プロジェクトにおけるベンダ側の体制の説明として最も適切なのはどれか。
- ベンダ側にはプロジェクトの体制は組まれず、営業担当者が1人ですべての工程を担当する
- ベンダ側の体制は社内の情報であり、医療機関に知らせてはならない
- ベンダ側の担当者は、契約を締結した後も決めなくてよい
- プロジェクトマネージャを中心に、設計・開発・導入支援などの担当で構成される体制が組まれる
正解と解説
正解:D. プロジェクトマネージャを中心に、設計・開発・導入支援などの担当で構成される体制が組まれるベンダ側では、プロジェクトマネージャを中心に設計・開発・導入支援などの担当者からなるプロジェクト体制が組まれ、医療機関側の体制と対応して調整を行う。営業担当者1人が全工程を担うわけではない。体制は提案書などで医療機関に示され、調整の窓口を明確にするためにも担当者を定めておく必要がある。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.3.3(ベンダ内の組織体制)
問18|組織間調整
複数のベンダが関与する病院情報システム導入における調整の説明として最も適切なのはどれか。
- ベンダ間の調整はどのベンダも行わないこととし、問題が起きてから対応を考えればよい
- 医療機関内の組織間、医療機関とベンダ間に加え、ベンダ間の調整の仕組みをあらかじめ設ける
- 部門システムのベンダ同士は、接続の仕様を共有してはならない
- 調整は文書に残さず、口頭のみで行うのが原則である
正解と解説
正解:B. 医療機関内の組織間、医療機関とベンダ間に加え、ベンダ間の調整の仕組みをあらかじめ設ける電子カルテと部門システムなど複数ベンダが関与する導入では、医療機関内の組織間調整、医療機関とベンダ間の調整に加え、ベンダ間の調整を行う会議体などの仕組みをあらかじめ設けることが重要である。問題発生後の場当たり対応や、接続仕様を共有しない進め方は接続不良を招く。調整結果は記録に残して共有する。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.3.4(組織間の調整)
問19|稼働後立ち合い
サービスイン直後の対応として最も適切なのはどれか。
- 障害が起きても、稼働した直後の期間は現場からの連絡に対応しないこととする
- 混乱を避けるため、全職員のアカウントを一時的に停止する
- ベンダや情報部門の担当者が現場に立ち会い、問い合わせや不具合に即応する
- 旧システムのデータは、稼働と同時に直ちにすべて消去する
正解と解説
正解:C. ベンダや情報部門の担当者が現場に立ち会い、問い合わせや不具合に即応するサービスイン直後は操作の問い合わせや不具合が集中しやすいため、ベンダや情報部門の担当者が現場に立ち会って即応する(運用後立ち合い)。障害に対応しない、稼働直後にアカウントを停止する、旧システムのデータを直ちに消去するといった対応は、診療業務の継続やデータの保全を損なうため不適切である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.2.3(サービスイン・運用後立ち合い)
問20|導入目的
病院情報システムの導入目的に関する説明として最も適切なのはどれか。
- システム導入の目的は、診療報酬請求を迅速に行えるようにすることのみである
- システム導入の目的は、要求仕様の作成前にあらかじめ明確にする必要はない
- システム導入の目的は、情報部門の業務量を増やして体制を拡大することである
- 業務の効率化に加え、医療の質・安全の向上や地域連携など導入目的は多様化している
正解と解説
正解:D. 業務の効率化に加え、医療の質・安全の向上や地域連携など導入目的は多様化している病院情報システムの導入目的は、事務の効率化や診療報酬請求だけでなく、医療の質・安全の向上、経営管理への活用、地域連携への対応など多様化している。導入目的を明確にすることは要求仕様の作成や導入後の評価の前提であり、目的を定めない導入や、特定の目的に限定する理解は適切でない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 3.1.2(病院情報システムの導入目的)
問21|規程の3層
情報システム運用のルールの3層構造において、組織の基本方針を示すものはどれか。
- ポリシー
- プロシージャ
- スタンダード
- マニフェスト
正解と解説
正解:A. ポリシー運用ルールは、基本方針を示すポリシー、それを具体化した運用管理規程であるスタンダード、日々の作業手順を定めるプロシージャ(実施手順)の3層で整備する。プロシージャは手順書のレベル、スタンダードは規程のレベルであり、基本方針ではない。マニフェストはこの3層構造の用語ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.2.1(運用管理規程の作成:ポリシー・スタンダード・プロシージャ)
問22|規程の項目
病院情報システムの運用管理規程に盛り込む項目として適切でないのはどれか。
- 利用者の責務
- 個々の患者の診断名の一覧
- 教育・訓練の実施
- 業務委託に関する安全措置
正解と解説
正解:B. 個々の患者の診断名の一覧運用管理規程には、管理対象・管理体制、管理者・責任者と利用者の責務、サーバ・端末・ネットワークの利用、データの取り扱い・保管、教育・訓練の実施、業務委託に関する安全措置、罰則規程などを定める。個々の患者の診断名の一覧は診療記録の内容であり、運用ルールを定める規程に記載するものではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.2.3(運用管理規程に必要な項目)
問23|ユーザ管理
病院情報システムのユーザ管理として最も適切なのはどれか。
- 部署内で1つのIDを全員で共有して使う
- 退職者のアカウントは記念として永久に有効なままにしておく
- パスワードを端末に貼り紙して周知する
- 退職者のアカウントは速やかに使用停止にする
正解と解説
正解:D. 退職者のアカウントは速やかに使用停止にするユーザ管理では、アカウントの登録と使用停止を人事情報と連動させ、退職者のアカウントは速やかに停止することが基本である。IDの共有は誰が操作したかの記録(監査証跡)を無意味にし、退職者IDの放置やパスワードの貼り紙は不正アクセスの原因となるため、いずれも不適切である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.3.4(ユーザ管理:アカウント登録と使用停止・パスワードの運用)
問24|職務の分離
セグリゲーションの原則の説明として最も適切なのはどれか。
- 権限や職務を分離して1人に集中させず、相互チェックが働くようにする考え方
- すべての利用者に同一の管理者権限を与えて、誰でも同じ操作ができるようにする考え方
- 端末を診療科ごとに違う色に塗り分けて区別する考え方
- パスワードを全職員で統一し、共有して使う考え方
正解と解説
正解:A. 権限や職務を分離して1人に集中させず、相互チェックが働くようにする考え方セグリゲーションの原則は、権限や職務を1人に集中させずに分離し、登録と承認を別の者が行うなど相互チェックが働くようにして不正やミスを防ぐ考え方である。全員に管理者権限を与えることやパスワードの統一はむしろ安全管理に反する。端末の色分けは職務の分離とは無関係である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.3.4(ユーザ管理:セグリゲーションの原則・アクセス権の設定)
問25|マスター管理
採用を中止した医薬品のマスター項目の扱いとして最も適切なのはどれか。
- マスターから該当する項目を物理的に削除してしまう
- 項目の名称を別の医薬品の名称に書き換えて再利用する
- 削除せずに無効化(使用停止)とし、過去のデータとの整合性を保つ
- 特に何も行わず、新規のオーダでもそのまま選択できる状態にしておく
正解と解説
正解:C. 削除せずに無効化(使用停止)とし、過去のデータとの整合性を保つマスター項目を削除すると、その項目を参照している過去のトランザクションデータ(処方歴など)が正しく表示できなくなる。このためマスターとトランザクションデータの整合性を保つよう、削除ではなく無効化(使用停止)で対応する。名称の書き換えは過去の記録の意味を変えてしまい、放置は誤オーダの原因となる。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.3.3(マスター管理:マスターとトランザクションデータとの整合性)
問26|障害時対応
診療中に病院情報システムが停止した場合の対応として最も適切なのはどれか。
- システムが復旧するまで、すべての診療を中止して待つ
- 影響範囲を把握して利用部門に連絡し、紙運用など代替運用に切り替える
- 障害が発生したことを院内に知らせないまま、復旧の作業だけを進めていく
- 障害の原因の究明が終わるまで、利用部門への連絡は一切行わない
正解と解説
正解:B. 影響範囲を把握して利用部門に連絡し、紙運用など代替運用に切り替えるシステム障害時は、影響範囲を把握し、利用部門へ速やかに連絡したうえで、あらかじめ定めた紙運用などの代替運用に切り替えて診療を継続する。復旧後には代替運用中の記録を遡及入力する。全診療の中止は医療の継続性を損ない、連絡をせずに復旧作業だけを行うと現場が状況を判断できず混乱を招く。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.3.6(システム障害時の対応), SBO 4.3.7(紙運用)
問27|IT-BCP
IT-BCPとディザスターリカバリーに関する説明として最も適切なのはどれか。
- IT-BCPは災害時にも重要な業務を継続するための計画で、ディザスターリカバリーは被災したシステムの復旧を指す
- IT-BCPを策定しておけば、災害に備えた訓練は不要である
- ディザスターリカバリーとは、新しい情報システムを調達して入れ替えるための一連の手続きのことである
- IT-BCPは、平常時に行う広告宣伝の計画のことである
正解と解説
正解:A. IT-BCPは災害時にも重要な業務を継続するための計画で、ディザスターリカバリーは被災したシステムの復旧を指すIT-BCPは医療施設における事業継続マネジメントの一環として、災害・障害時にも重要な業務を継続・早期再開するための計画であり、ディザスターリカバリーは被災した情報システムの復旧・復元を指す。計画は策定するだけでなく災害時・障害時に備えた訓練を平時から行うことが重要で、調達手続きや広告宣伝の話ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.3.7(IT-BCPとディザスターリカバリ)
問28|システム改修
病院情報システムの運用フェーズで定期的に発生する代表的なシステム改修はどれか。
- 病院のロゴマークの変更対応
- 職員食堂のメニュー変更対応
- 診療報酬改定への対応
- 駐車場料金の改定対応
正解と解説
正解:C. 診療報酬改定への対応運用フェーズにおける代表的なシステム改修は、診療報酬改定への対応である。改定のたびに医事会計システムやオーダエントリシステムのマスター・計算ロジックの改修が必要となる。医療安全のための改修も代表例とされる。ロゴや食堂メニュー、駐車場料金は病院情報システムの代表的改修とはいえない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.4.5(運用フェーズにおける代表的なシステム改修:診療報酬改定・医療安全)
問29|継続的改善
病院情報システムの継続的な改善の流れとして最も適切なのはどれか。
- まず是正活動を行ってから、測定の対象と測定の方法を定義するという流れで進める
- データは収集するだけで、分析や活用は行わない
- 改善は行わず、現状を維持することを最優先する
- 測定対象を定義し、データを収集・分析して情報をとりまとめ、是正活動につなげる
正解と解説
正解:D. 測定対象を定義し、データを収集・分析して情報をとりまとめ、是正活動につなげる継続的な改善は、測定対象の定義と測定可能性の確認から始め、データ収集、データ処理・分析、情報のとりまとめと活用を経て是正活動につなげる流れで行う。是正活動が先に来ることはなく、収集したデータを分析しなければ改善の根拠が得られない。現状維持を優先する姿勢は継続的改善の考え方に反する。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.4.2(継続的な病院情報システムの改善の流れ)
問30|情報化副作用
病院情報システム導入・情報化の副作用として挙げられるものはどれか。
- 紙の記録に比べて診療記録の判読性が大きく低下すること
- 部分的なコミュニケーションの減少やワークフローの変更による混乱
- 電子化にともない院内で用いる手書きの文書が増加すること
- システムを導入することによって、院内の電気使用量が必ず半減すること
正解と解説
正解:B. 部分的なコミュニケーションの減少やワークフローの変更による混乱情報化の副作用として、画面越しのやり取りが増えることによる部分的なコミュニケーションの減少、ワークフローの変更による混乱、障害時運用の混乱、テンプレート化による診療の不適切な類型化などが挙げられる。電子化により判読性はむしろ向上し、手書き文書は減少する。電気使用量の半減は副作用の議論とは無関係である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医療情報システム系)v7(2025年7月26日更新)SBO 4.4.1(情報システム導入・情報化の副作用)
演習:この章の問題を解く
ランダム出題の演習ツールです(JavaScript が有効な場合に動きます)。上の「確認問題」はそのままでもすべて読めます。
※ 解説は学習用の情報提供です。医療上の助言ではありません。最新の試験実施要項は医療情報技師育成部会の公式発表をご確認ください。
※ 出題は日本医療情報学会 医療情報技師育成部会が公開する「医療情報技師 到達目標」(v7・GIO/SBO/キーワード)に沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。医療上の助言ではありません。合格基準は非公開のため、本サイトの到達度は独自の目安です。試験の実施要項は育成部会の公式発表をご確認ください。