仮の宿 学習室 資格 基本情報技術者 合格ラボ 経営戦略とビジネスインダストリ
基本情報技術者 FUNDAMENTAL IT ENGINEER
経営戦略とビジネスインダストリ
講義 3 本・確認問題 30 問 | 本試験では「科目A ストラテジ」(12問)の一部 | 最終更新 2026-09-24
この章で学ぶこと 競争戦略の型と、SWOT・PPM・3C・4P・バリューチェーン・ファイブフォースといった分析手法の違い、そしてKGI・CSF・KPIの関係が分かります。 技術を事業に結び付けるMOTの考え方と、イノベーションの種類、魔の川・死の谷・ダーウィンの海・キャズムという四つの壁の位置が分かります。 e-ビジネスの用語、生産方式の違い、IoTの使われ方、そして生成AIを業務で使うときのリスクと対策が分かります。
1. 経営戦略マネジメント
競争戦略の型と、SWOT・PPM・3C・4P・バリューチェーン・ファイブフォースといった分析手法の違い、そしてKGI・CSF・KPIの関係が分かります。
経営戦略とは、限られた経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)をどこに投じて、どうやって他社より選ばれる存在になるかを決めた方針のことです。戦略は階層に分かれます。どの事業をやり、どの事業から手を引くかという全社戦略(企業戦略)、個々の事業でどう競争に勝つかという事業戦略(競争戦略)、生産・販売・人事・研究開発など機能ごとにどう動くかという機能別戦略の三つです。上の階層で決めたことが下の階層の前提になるので、順番を逆にすると、部門ごとに頑張っているのに全社としてはちぐはぐ、という状態になります。
事業戦略の基本形として有名なのが、ポーターが示した三つの基本戦略です。コストリーダーシップ戦略は、規模の経済や工程の改善によって業界で最も低い原価を実現し、価格で優位に立つやり方。差別化戦略は、品質・機能・ブランド・サービスなど価格以外の価値で他社にない魅力を作り、価格競争から抜け出すやり方。集中戦略は、市場全体を狙わず、特定の顧客層・地域・製品分野に経営資源を絞り込み、その狭い範囲でコスト優位または差別化を実現するやり方です。似た考え方に、大手が手を出さない小さな市場を狙うニッチ戦略や、競争の激しい既存市場(レッドオーシャン)を避け、まだ競争相手のいない新しい市場(ブルーオーシャン)を切り開くブルーオーシャン戦略があります。また、他社がまねできない自社独自の中核的な強みをコアコンピタンスといい、これを軸に戦略を組み立てるのが基本です。
戦略を立てる前に、自社と環境を整理する分析手法があります。名前が似ていて取り違えやすいので、何を軸に切るのかで覚えます。SWOT分析は、強み(Strength)・弱み(Weakness)という自社内部の要因と、機会(Opportunity)・脅威(Threat)という外部環境の要因を四つのマスに整理します。3C分析は、顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の三つの視点から市場での立ち位置を見ます。4P(マーケティングミックス)は、売り手の視点で製品(Product)・価格(Price)・流通(Place)・販売促進(Promotion)を組み立てる枠組みで、これを買い手の視点に置き換えたのが4C(顧客価値・顧客の負担・利便性・対話)です。バリューチェーン分析は、自社の事業活動を主活動(購買物流・製造・出荷物流・販売とマーケティング・サービス)と支援活動(全般管理・人事労務管理・技術開発・調達活動)に分け、どこで価値が生まれ、どこにコストがかかっているかを見ます。ファイブフォース分析は、業界の収益性を、新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手の交渉力・売り手の交渉力・既存企業間の敵対関係という五つの力で説明します。
複数の事業を抱える会社が、どの事業にお金を回すかを決める道具がPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)です。縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場シェアを取り、四つの象限に分けます。市場成長率が高くシェアも高いのが花形で、資金の流入も大きいが競争に勝ち続けるための投資も大きく、差引きはあまり残りません。市場成長率が低くシェアが高いのが金のなる木で、市場が伸びない分だけ投資が少なくて済み、安定した資金を生みます。ここが会社の資金源になります。市場成長率が高くシェアが低いのが問題児で、資金の持ち出しが大きく、市場が伸びているうちに投資してシェアを高めれば花形に育ちますが、育たなければ負け犬になります。市場成長率もシェアも低いのが負け犬で、撤退や縮小を検討します。基本の資金の流れは、金のなる木で稼ぎ、問題児と花形に回す、という形です。成長の方向を決めるときはアンゾフの成長マトリクスを使い、市場と製品をそれぞれ既存・新規に分けて、市場浸透(既存×既存)・新市場開拓(既存製品×新市場)・新製品開発(新製品×既存市場)・多角化(新×新)の四つから選びます。
自社だけで全部やらない選択肢もあります。M&Aは他社を買収・合併して事業や技術を一気に手に入れる方法、アライアンスは資本関係によらず提携して協力する方法です。OEMは相手先のブランドで製造して供給すること、ファブレスは自社では工場を持たず企画・設計・開発に特化し、生産は外部に任せる形態、ファウンドリは逆に他社から受託して製造に専念する形態です。アウトソーシングは業務を外部の専門企業に委託すること、その中でも人事・経理・コールセンターなど業務プロセスを丸ごと委託するものをBPOといいます。いずれも、自社のコアコンピタンスに資源を集中させるための手段です。
戦略を日々の活動に落とし込むのが経営管理システムです。CRMは顧客との関係を管理して顧客満足と長期的な取引を高める仕組み、SFAは商談や案件の進捗など営業活動そのものを支援する仕組み、SCMは調達・生産・物流・販売という供給連鎖の情報を取引先も含めて共有し、在庫と納期を全体最適にする仕組み、ERPは会計・人事・生産・販売など社内の基幹業務のデータを一つに統合して経営資源を全社最適で運用する仕組みです。CRMとSFAは顧客・営業まわり、SCMは企業をまたぐ供給の流れ、ERPは社内の基幹業務全体、と守備範囲で区別します。ほかに、全社で品質の向上に取り組むTQM、個人の知識や経験を組織で共有して活用するナレッジマネジメント、従業員が上司と合意した目標に基づいて自ら管理し評価するMBO(目標による管理)があります。
目標が達成できているかを測るときは、KGI・CSF・KPIをセットで使います。KGI(重要目標達成指標)は「売上高を前年比20%増やす」のような最終的なゴールの指標、CSF(重要成功要因)はそのゴールを達成するうえで決定的に重要な要因、KPI(重要業績評価指標)はCSFが実行できているかを日々測る中間指標です。ゴール(KGI)→ 決め手(CSF)→ 途中の物差し(KPI)という順で並べると取り違えません。財務の数字だけで会社を見ると将来が見えないため、バランススコアカード(BSC)では、財務の視点・顧客の視点・業務プロセスの視点・学習と成長の視点という四つの視点で目標と指標を置き、バランスを取って戦略を管理します。また、企業は利益だけでなく社会的責任(CSR)を負い、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献が求められます。経営が適切に行われているかを監視し、不正を防ぐ仕組みづくりをコーポレートガバナンス(企業統治)といいます。
分析手法・目標指標・経営管理システムの早見表(取り違えやすいものを並べて比較) 区分 名称 何を見るか・何をするか 分析手法 SWOT分析 内部の強み・弱みと、外部の機会・脅威。内部要因と外部要因を分けて整理する 分析手法 3C分析 顧客・競合・自社の三つの視点から市場での立ち位置を見る 分析手法 4P(4C) 売り手視点の製品・価格・流通・販売促進。買い手視点では顧客価値・顧客の負担・利便性・対話 分析手法 バリューチェーン分析 主活動(購買物流・製造・出荷物流・販売とマーケティング・サービス)と支援活動(全般管理・人事労務管理・技術開発・調達)に分け、価値の源泉を見る 分析手法 ファイブフォース分析 新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手の交渉力・売り手の交渉力・既存企業間の敵対関係で業界の収益性を見る 分析手法 PPM 市場成長率(縦軸)と相対的市場シェア(横軸)で事業を4分類し、資金配分を決める PPMの象限 花形(高成長・高シェア) 資金の流入も流出も大きい。シェアを守る投資を続け、将来の金のなる木にする PPMの象限 金のなる木(低成長・高シェア) 追加投資が少なくて済み、安定した資金を生む。資金源として他の事業に回す PPMの象限 問題児(高成長・低シェア) 資金の持ち出しが大きい。投資してシェアを高め花形を目指すか、見込みがなければ撤退 PPMの象限 負け犬(低成長・低シェア) 資金を生まず成長も見込めない。撤退・縮小を検討する 分析手法 成長マトリクス(アンゾフ) 市場×製品を既存・新規で分け、市場浸透・新市場開拓・新製品開発・多角化を選ぶ 目標指標 KGI 重要目標達成指標。売上高や利益率など、最終的なゴールが達成できたかを測る 目標指標 CSF 重要成功要因。KGIを達成するうえで決定的に重要な要因(何をやり遂げるか) 目標指標 KPI 重要業績評価指標。CSFが実行できているかを日々測る中間指標(訪問件数、解約率など) 経営管理システム CRM 顧客の情報を一元管理し、顧客満足と長期的な関係の維持・向上を図る 経営管理システム SFA 商談・案件・日報など営業活動そのものを支援し、営業の質と効率を高める 経営管理システム SCM 調達・生産・物流・販売の情報を取引先も含めて共有し、在庫と納期を全体最適にする 経営管理システム ERP 会計・人事・生産・販売など社内の基幹業務データを統合し、経営資源を全社最適で運用する
用語 コストリーダーシップ戦略 規模の経済や工程の改善によって業界で最も低い原価を実現し、価格競争力で優位に立つ戦略。値下げに耐えられる原価構造そのものが強みになる。 差別化戦略 品質・機能・ブランド・サービスなど、価格以外の価値で他社にない魅力を作り、価格競争から抜け出す戦略。顧客がその違いに対価を払うことが前提となる。 集中戦略 市場全体を狙わず、特定の顧客層・地域・製品分野に経営資源を絞り込み、その狭い範囲でコスト優位または差別化を実現する戦略。 コアコンピタンス 他社がまねできない、自社の中核となる独自の強み。技術力や独自の生産方式などを指し、複数の事業に展開できる点が特徴。 SWOT分析 自社内部の強み(S)・弱み(W)と、外部環境の機会(O)・脅威(T)を四つのマスに整理して戦略を考える手法。内部要因と外部要因を分けるのがポイント。 3C分析 顧客(Customer)・競合(Competitor)・自社(Company)の三つの視点から市場と自社の立ち位置を分析する手法。 4Pと4C 4Pは売り手の視点で製品・価格・流通・販売促進を組み立てる枠組み。4Cはこれを買い手の視点に置き換えたもので、顧客価値・顧客の負担・利便性・対話が対応する。 バリューチェーン分析 事業活動を主活動(購買物流・製造・出荷物流・販売とマーケティング・サービス)と支援活動(全般管理・人事労務管理・技術開発・調達活動)に分け、価値とコストの源泉を見る手法。 ファイブフォース分析 業界の収益性を、新規参入の脅威・代替品の脅威・買い手の交渉力・売り手の交渉力・既存企業間の敵対関係という五つの力で分析する手法。 PPM プロダクトポートフォリオマネジメント。市場成長率と相対的市場シェアの二軸で事業を花形・金のなる木・問題児・負け犬に分類し、資金の配分を決める手法。 金のなる木 PPMで市場成長率が低く相対的市場シェアが高い事業。追加投資が少なくて済み安定した資金を生むので、その資金を問題児や花形に回す。 問題児 PPMで市場成長率が高く相対的市場シェアが低い事業。資金の持ち出しが大きく、投資してシェアを高めれば花形に育つが、育たなければ負け犬になる。 成長マトリクス アンゾフが示した成長戦略の枠組み。市場と製品をそれぞれ既存・新規に分け、市場浸透・新市場開拓・新製品開発・多角化の四つを示す。 ファブレス 自社では生産設備(工場)を持たず、企画・設計・開発と販売に特化し、製造は外部に委託する事業形態。逆に製造を受託して専念する形態をファウンドリという。 OEM 相手先のブランド名で製品を製造して供給すること。委託側は設備を持たずに品ぞろえを増やせ、受託側は設備の稼働率を高められる。 BPO ビジネスプロセスアウトソーシング。人事・経理・コールセンターなど、業務プロセスを丸ごと外部の専門企業に委託すること。自社は中核業務に集中できる。 CRM 顧客関係管理。顧客の属性や購買履歴、問合せ履歴を一元管理し、顧客満足度と長期的な関係の維持・向上を図る仕組み。 SCM 供給連鎖管理。調達・生産・物流・販売の情報を取引先を含めて共有し、供給連鎖全体で在庫の削減と納期の短縮を図る仕組み。 ERP 企業資源計画。会計・人事・生産・販売などの基幹業務のデータを一つに統合し、経営資源を全社最適の視点で計画・運用する仕組み。 SFA 営業支援システム。商談の進捗、案件情報、日報などを共有して営業活動を支援し、属人化を防いで営業の質と効率を高める仕組み。 KGI・CSF・KPI KGIは達成すべき最終目標の指標、CSFはその達成に決定的に重要な要因、KPIはCSFが実行できているかを測る中間指標。ゴール→決め手→途中の物差しの順で対応する。 バランススコアカード 財務・顧客・業務プロセス・学習と成長という四つの視点で目標と指標を置き、財務の数字だけに偏らずに戦略を管理する手法。 コーポレートガバナンス 企業統治。経営が株主などの利害関係者の利益にかなって適切に行われているかを監視し、不正を防ぐための仕組みづくり。
例題
例題:自社の分析結果が「①国内で高いシェアをもつが、②主力工場が老朽化している。③海外で同種製品の需要が伸びている。④原材料の価格が高騰している」であった。SWOT分析ではそれぞれどこに入るか。
答えと考え方 ①強み(内部・有利)、②弱み(内部・不利)、③機会(外部・有利)、④脅威(外部・不利)。自社が自分で変えられることか、環境として与えられることかで内部・外部を分けるのがコツ。
例題:「解約率を年12%から8%に下げる」ことを目標とし、そのためには初回利用後1か月のフォロー連絡が決め手だと考えて、フォロー連絡の実施率を毎週測ることにした。KGI・CSF・KPIはそれぞれどれか。
答えと考え方 KGIは「解約率8%」、CSFは「初回利用後1か月のフォロー連絡」、KPIは「フォロー連絡の実施率」。最終ゴールがKGI、決め手がCSF、途中経過を測る物差しがKPI。
例題:PPMで、市場成長率が高く相対的市場シェアが低い事業がある。取り得る方針を二つ挙げよ。
答えと考え方 この事業は問題児。市場が伸びているうちに集中的に投資してシェアを高め花形に育てるか、育つ見込みがないと判断して撤退・売却するか、のいずれか。中途半端に資金を出し続けると負け犬になる。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法・マーケティング・ビジネス戦略と目標・評価・経営管理システム)
2. 技術戦略マネジメント
技術を事業に結び付けるMOTの考え方と、イノベーションの種類、魔の川・死の谷・ダーウィンの海・キャズムという四つの壁の位置が分かります。
技術戦略マネジメント(MOT:Management of Technology、技術経営)とは、技術を持っているだけで終わらせず、事業の価値と競争力に結び付けるための経営のやり方です。研究開発に投じたお金が売上と利益になって初めて意味があるので、どの技術に、いつ、いくら投じ、いつ製品にするのかを計画します。その計画を関係者で共有するために、技術の動向と自社の開発計画・製品計画を時間軸に沿って一枚の図に表したものを技術ロードマップといいます。将来の目標時点から逆算して今やるべきことを決める考え方(バックキャスティング)と相性がよく、投資判断の根拠にもなります。
イノベーションは、切り口によって呼び分けます。新しい製品やサービスそのものを生み出すのがプロダクトイノベーション、製造工程や業務の進め方を変えてコスト削減・品質向上・納期短縮を実現するのがプロセスイノベーションです。自社だけで抱え込まず、社外の企業・大学・研究機関の技術やアイデア、人材を組み合わせて革新を起こす考え方をオープンイノベーションといい、その反対が自前主義(クローズドイノベーション)です。また、既存製品の性能を着実に高めて主要顧客の要求に応え続けるものを持続的イノベーション、当初は性能が低く既存顧客には評価されないものの、低価格や手軽さなど別の価値軸で新しい顧客に受け入れられ、やがて既存市場を置き換えるものを破壊的イノベーションといいます。優良企業ほど既存の主要顧客の声を優先するため破壊的イノベーションへの対応が遅れ、地位を失うことがあり、これをイノベーションのジレンマといいます。
技術が事業として立ち上がるまでには、いくつもの壁があります。順番に並べると分かりやすくなります。基礎研究の成果を、製品化を目指す開発の段階に進められない壁が魔の川。開発した技術を、量産や販売の体制が整わず事業化できない壁が死の谷。事業化した製品が、既存企業や競合との激しい競争を生き抜いて産業として定着できない壁がダーウィンの海です。研究→開発→事業化→産業化の順に、魔の川・死の谷・ダーウィンの海が並ぶ、と覚えます。これらとは別に、市場に出た後の普及の壁がキャズムです。新製品の購入者を、イノベータ(革新者)・アーリーアダプタ(初期採用者)・アーリーマジョリティ(前期追随者)・レイトマジョリティ(後期追随者)・ラガード(遅滞者)の五つに分けたとき、新しさ自体に価値を見いだすアーリーアダプタまでの初期市場と、実績や安心を重んじるアーリーマジョリティ以降の大衆市場の間には、判断基準の大きな違いによる深い溝があります。この溝がキャズムで、越えられるかどうかが本格的な普及の分かれ目になります。
技術で稼ぐには、権利と標準の設計も要ります。特許戦略では、自社技術を出願して独占的に使うだけでなく、他社に使わせて実施料を得る、あるいは相手の特許と使い合うクロスライセンスで開発の自由度を確保する、といった選択肢があります。ある技術分野に必要な特許を複数の企業が持ち合っていると誰も製品を作れなくなるため、関係する特許をまとめて一括で許諾できるようにした仕組みがパテントプールです。標準化戦略では、規格の作られ方を区別します。公的な標準化機関が定められた手続を経て制定するのがデジュールスタンダード、市場での競争と普及の結果、事実上の業界標準になったものがデファクトスタンダード、関心のある企業が集まって短期間で策定するのがフォーラム標準です。自社技術を標準にできれば市場を広げられますが、標準にした部分は他社も使えるので、どこを公開しどこを自社の強みとして残すかの設計が重要になります。
新しい事業を立ち上げる進め方にも定石があります。デザイン思考は、利用者を観察して共感するところから始め、本当の課題を定義し、アイデアを出し、試作(プロトタイプ)と検証を繰り返して解決策を作り上げる発想法です。リーンスタートアップは、必要最小限の機能だけを備えた製品(MVP)を素早く出し、構築→計測→学習のサイクルを回して、続けるか方向転換(ピボット)するかを早く判断する手法で、大きく作り込んでから外すという失敗を避けます。新技術やアイデアが実際に目的を果たせるかを、小規模な試作や試行で確かめる取組みがPoC(概念実証)です。ほかに、技術者が短期間集中して開発を競うイベントであるハッカソン、アイデア出しに主眼を置くアイデアソン、自社の機能をAPIとして公開し他社サービスと組み合わせて新しい価値と経済圏を作るAPIエコノミーも、技術戦略の実践手段として押さえておきます。
イノベーションの四つの壁の位置づけと、種類・進め方の整理 区分 名称 位置づけ・内容 四つの壁 魔の川 研究 → 開発 の間。基礎研究の成果を、製品化を目指す開発段階に進められない壁 四つの壁 死の谷 開発 → 事業化 の間。資金不足や量産・販売体制の未整備で事業化できない壁 四つの壁 ダーウィンの海 事業化 → 産業化 の間。競合との激しい競争を勝ち抜いて市場に定着できない壁 四つの壁 キャズム 初期市場 → 大衆市場 の間。アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間にある普及の溝 普及の5分類 イノベータ/アーリーアダプタ 新しさ自体に価値を見いだす層。ここまでが初期市場(キャズムの手前) 普及の5分類 アーリーマジョリティ以降 実績と安心を重んじる層。アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ・ラガードが大衆市場 種類 プロダクトイノベーション 新しい製品・サービスそのものを生み出す 種類 プロセスイノベーション 作り方・進め方を変えて、コスト・品質・納期を改善する 種類 オープンイノベーション 社外の技術・アイデア・人材を取り込んで革新を起こす 種類 持続的イノベーション 既存製品の性能を着実に高め、主要顧客の要求に応え続ける 種類 破壊的イノベーション 当初は低性能でも別の価値軸で新しい顧客に広がり、やがて既存市場を置き換える 進め方 デザイン思考 利用者の観察と共感から課題を定義し、試作と検証を繰り返す 進め方 リーンスタートアップ MVPを素早く出し、構築→計測→学習で継続かピボットかを判断する 進め方 PoC(概念実証) 本格導入の前に、小規模な試行で実現可能かを確かめる 進め方 技術ロードマップ 技術と製品の計画を時間軸で図示し、投資判断と関係者の共有に使う 権利・標準 パテントプール 必要な特許をまとめ、一括で許諾できるようにして普及を促す 権利・標準 デジュール/デファクト/フォーラム 公的機関の制定/市場での普及の結果/関心企業の集まりによる策定
用語 MOT 技術経営。技術を事業の価値と競争力に結び付けるための経営手法。研究開発への投資判断、製品化の時期、技術者の育成などを経営の視点で計画・管理する。 技術ロードマップ 技術の動向と自社の開発計画・製品計画を時間軸に沿って一枚の図に表したもの。将来の目標から逆算して今やるべきことを決め、関係者で共有し投資判断に使う。 プロダクトイノベーション これまでにない新しい製品やサービスそのものを生み出す革新。市場に新しい価値をもたらす。 プロセスイノベーション 製造工程や業務の進め方を変えて、コスト削減・品質向上・納期短縮などを実現する革新。作るものは同じでも作り方を変える点が特徴。 オープンイノベーション 社外の企業・大学・研究機関がもつ技術・アイデア・人材を積極的に取り込み、組み合わせて革新を起こす考え方。自前主義に比べ、速度と選択肢で優位に立てる。 破壊的イノベーション 当初は性能が低く既存の主要顧客には評価されないが、低価格や手軽さなど別の価値軸で新しい顧客に広がり、やがて既存市場を置き換える革新。 イノベーションのジレンマ 優良企業ほど既存の主要顧客の要求への対応を優先するため、破壊的イノベーションへの着手が遅れ、結果として市場での地位を失ってしまう現象。 魔の川 基礎研究の成果を、製品化を目指す開発の段階に進められない壁。研究と開発の間にある。 死の谷 開発した技術を事業化できない壁。資金の不足や量産体制・販売体制の未整備が主な原因で、開発と事業化の間にある。 ダーウィンの海 事業化した製品が、競合との激しい競争を勝ち抜いて産業として定着できない壁。事業化と産業化の間にある。 キャズム 新製品が、新しさを重んじるアーリーアダプタまでの初期市場から、実績と安心を求めるアーリーマジョリティ以降の大衆市場へ移るときに立ちはだかる深い溝。 パテントプール ある技術分野に必要な複数企業の特許をまとめて管理し、利用したい企業が一括で許諾を受けられるようにした仕組み。権利が分散して製品化できなくなる事態を防ぐ。 デファクトスタンダード 公的な制定手続によらず、市場での競争と普及の結果、事実上の業界標準として広く使われるようになった規格。 デジュールスタンダード ISOやJISなど公的な標準化機関が、定められた手続を経て制定した規格。関心企業が集まって短期間で作るものはフォーラム標準という。 デザイン思考 利用者の観察と共感から出発して真の課題を定義し、アイデア出し・試作・検証を繰り返して解決策を作り上げる発想法。作り手の思い込みで進めないことが要点。 リーンスタートアップ 必要最小限の機能をもつ製品(MVP)を素早く出し、構築→計測→学習のサイクルを回して、事業を継続するか方向転換(ピボット)するかを早く判断する手法。 PoC 概念実証。新しい技術やアイデアが目的を果たせるかどうかを、小規模な試作や試行によって本格導入の前に確かめる取組み。 APIエコノミー 自社の機能やデータをAPIとして公開し、他社のサービスと組み合わせることで、単独では作れない価値と経済圏を生み出す考え方。 ハッカソン hack(ハック)とmarathon(マラソン)を合わせた語。技術者や企画者が短期間集中して開発に取り組み、成果を競うイベント。アイデア出しに主眼を置くものはアイデアソンという。
例題
例題:ある企業が新素材の基礎研究に成功したが、量産する設備への投資のめどが立たず、製品として世に出せないまま止まっている。これは四つの壁のどれか。
答えと考え方 死の谷。開発された技術を事業化する段階で、資金や量産体制が整わずに越えられない壁である。研究から開発に進めないなら魔の川、発売後に競合に敗れて定着できないならダーウィンの海。
例題:新サービスが、新しいもの好きの利用者には好評で順調に伸びていたが、一般の利用者に広げようとした途端に契約が伸びなくなった。何が起きているか。
答えと考え方 キャズムに直面している。初期市場の利用者は新しさ自体を評価するが、大衆市場の利用者は導入事例・サポート・安心を求める。訴求点と提供体制を大衆市場向けに変える必要がある。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
3. ビジネスインダストリ
e-ビジネスの用語、生産方式の違い、IoTの使われ方、そして生成AIを業務で使うときのリスクと対策が分かります。
e-ビジネスは、取引の当事者で分類すると整理しやすくなります。企業間の取引がBtoB、企業と一般消費者の取引がBtoC、消費者どうしの取引がCtoC(ネットオークションやフリマアプリ)、企業と自社の従業員の取引がBtoE(社内向け通販や福利厚生サービス)です。決済まわりでは、あらかじめ金銭的価値を電子的に記録して支払いに使う電子マネー、金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせて新しい金融サービスを生み出すフィンテック、法定通貨ではなくインターネット上でやり取りされる財産的価値である暗号資産があります。暗号資産の基盤技術がブロックチェーンで、取引記録をまとめたブロックに直前のブロックのハッシュ値を含めて連鎖させ、同じ台帳を多数の参加者がP2Pで分散して保持し、相互に検証します。過去の記録を書き換えると以降のハッシュ値が合わなくなるうえ、多数の参加者の台帳も同時に書き換えなければならないため、改ざんが極めて困難になります。
販売のやり方にも名前が付いています。実店舗ではそろえられないニッチな商品を大量に扱い、その売上の合計が全体の大きな割合を占める現象がロングテールです。Webサイトやブログで商品を紹介し、そこから成約したら紹介者に報酬を払う広告手法がアフィリエイト。実店舗・EC・アプリ・SNSといったあらゆる販売接点を在庫や顧客情報まで含めて統合し、顧客がどの経路でも同じように買えるようにするのがオムニチャネルで、これに対してオンラインの広告やクーポンから実店舗への来店を促すのがO2O(Online to Offline)です。ほかに、商品を買い取るのではなく定額で一定期間利用できるようにするサブスクリプション、個人が持つ資産や技能をインターネット経由で他の人と共有・貸借するシェアリングエコノミー、インターネットで不特定多数から資金を集めるクラウドファンディング、第三者が代金を預かり商品の受渡しを確認してから売り手に渡すことで個人間取引のリスクを減らすエスクローがあります。
ものづくりを支える仕組みがエンジニアリングシステムです。CADはコンピュータで設計や製図を行う仕組み、CAMは設計データからNCプログラムを作り工作機械の加工を制御する仕組み、CAEは強度・振動・熱・流体などをコンピュータ上で解析して試作の前に妥当性を確かめる仕組みです。工場全体の作業を自動化することをFA(ファクトリオートメーション)といいます。生産計画では、基準生産計画と部品表(BOM)・在庫量から、必要な部品の量と発注時期を計算するMRP(資材所要量計画)が使われます。生産方式では、コンベアなどで製品を流し工程ごとに担当者が分担するライン生産方式と、1人または少人数がセルと呼ぶ作業台で組立の全工程を担当するセル生産方式を対比して覚えます。ライン生産方式は少品種大量生産に向き、作業が単純で習熟が速い反面、1工程が止まると全体が止まり、生産量の変動にも弱い。セル生産方式は多品種少量生産や生産量の変動に強く、担当範囲が広いので作業者の意欲も高まりやすい反面、作業者の多能工化が欠かせません。在庫を減らす仕組みがかんばん方式で、後工程が使った分だけかんばんを添えて前工程に引き取りに行き、前工程は引き取られた分だけ作ることで、必要なものを必要なときに必要な量だけ作るJIT(ジャストインタイム)を実現します。
IoT(Internet of Things)は、あらゆるものをネットワークにつなぐ考え方です。温度・振動・位置などを測って電気信号に変えるのがセンサ、電気信号を受けて物を動かす(回す・押す・開ける)のがアクチュエータで、「測って、判断して、動かす」の入口と出口を担います。集めたデータをすべてクラウドに送ると通信量も遅延も大きくなるため、端末に近い場所で処理して必要な分だけ送る方式をエッジコンピューティングといい、全体をまとめて分析するクラウドと役割を分担します。工場の設備をつないで見える化し、自律的な制御まで進めた工場をスマートファクトリー、農業に適用して生育や水管理を自動化する取組みをスマート農業といいます。現実の設備や製品をセンサデータに基づいて仮想空間に再現し、その上で故障の予測や工程の改善をシミュレーションする仕組みがデジタルツインです。移動の分野では、複数の交通手段を一つのサービスとして検索・予約・決済できるようにするMaaS、無人航空機であるドローンの物流や点検への活用が広がっています。自動車の運転自動化はレベル0からレベル5までの6段階で表され、レベル2までは運転者が常に監視する運転支援、レベル3は限定された条件下でシステムが運転を担うが作動継続が難しい場合には運転者が対応する段階、レベル4は限定された条件下で運転者の対応を必要としない段階、レベル5は条件を限定しない完全な自動運転です。定型的な事務作業をソフトウェアロボットに代行させるRPAも、業務の自動化を担う仕組みとしてよく問われます。
生成AIは、大量のデータで学習したモデルを使って文章・画像・プログラムなどを作り出す技術で、企画書やメールの下書き、要約、翻訳、コードの生成、問合せ対応の下書きなどに活用されています。ただし業務で使うには留意点があります。第一にハルシネーションです。生成AIは言葉のつながりやすさに基づいて文章を作るため、事実に基づかない内容をもっともらしく出力することがあり、出力は必ず一次情報で裏取りしてから使います。第二に情報漏えいです。社外のサービスに入力した内容は事業者側に保存されたり学習に使われたりするおそれがあるため、入力してよい情報の範囲を社内規程で定め、機密情報や個人情報は入力しない、学習に使わせない設定や閉域の環境を使うといった対策を取ります。第三に著作権です。生成物が既存の著作物と同一・類似になることがあるため、公開前に類似性を確認し、サービスの利用規約や生成物の利用条件を確かめます。第四に誤用・悪用で、偽情報やディープフェイクの作成、指示文に細工をして本来禁止された動作をさせるプロンプトインジェクションといった問題があります。望む出力を得るために、役割・前提・出力形式・制約・例を具体的に指示する工夫をプロンプトエンジニアリングといいます。
AIを社会で使うための考え方として、内閣府(統合イノベーション戦略推進会議)が「人間中心のAI社会原則」を示しています。人間中心、教育・リテラシー、プライバシー確保、セキュリティ確保、公正競争確保、公平性・説明責任及び透明性、イノベーションの七つで、AIは人間の能力を拡張するものであって人間の尊厳を損なってはならないこと、学習データの偏りによって不当な差別が生じないようにすること、判断の根拠を説明できるようにすること、最終的な判断と責任は人間が担うことなどが求められます。採用や与信のように人の権利に大きく関わる判断をAIの出力だけで決めてしまわない、という運用上の歯止めが重要です。
生産方式の比較と、生成AIのリスク・対策 区分 名称 内容(特徴・対策) 生産方式 ライン生産方式 コンベアで製品を流し工程ごとに分担。少品種大量生産に向き習熟が速いが、1工程の停止や生産量の変動に弱い 生産方式 セル生産方式 1人または少人数がセルで組立の全工程を担当。多品種少量生産や変動に強いが、作業者の多能工化が必要 生産方式 かんばん方式(JIT) 後工程が使った分だけ前工程に引き取りに行き、前工程はその分だけ作る。中間在庫を減らす 生産方式 MRP 基準生産計画と部品表・在庫量から、必要な部品の量と発注時期を計算する 生成AIのリスク ハルシネーション 事実でない内容をもっともらしく出力する。→ 一次情報で裏取りし、そのまま使わない。用途を限定する 生成AIのリスク 情報漏えい 入力した機密情報・個人情報が保存・学習に使われるおそれ。→ 入力可否を社内規程で定め、学習させない設定や閉域環境を使う 生成AIのリスク 著作権侵害 生成物が既存の著作物と同一・類似になるおそれ。→ 公開前に類似性を確認し、利用規約と生成物の利用条件を確かめる 生成AIのリスク 誤用・悪用 偽情報やディープフェイクの作成、プロンプトインジェクションによる不正操作。→ 用途の限定、人による最終確認、入出力のフィルタリング 生成AIの使い方 プロンプトエンジニアリング 役割・前提・出力形式・制約・例を具体的に指示し、望む出力を安定して引き出す AI利活用の原則 人間中心のAI社会原則 人間中心/教育・リテラシー/プライバシー確保/セキュリティ確保/公正競争確保/公平性・説明責任及び透明性/イノベーションの七つ
用語 BtoE 企業(Business)と自社の従業員(Employee)との間の取引。社内向け通販サイトや福利厚生サービスの提供などが該当する。企業間はBtoB、企業対消費者はBtoC、消費者間はCtoC。 エスクロー 取引の当事者以外の第三者が買い手から代金を預かり、買い手が商品の受取りを確認した後に売り手へ支払う仕組み。個人間取引の代金未払いや商品未着のリスクを減らす。 ロングテール 実店舗では扱いにくいニッチな商品を大量に品ぞろえし、それら少量ずつしか売れない商品の売上合計が全体の大きな割合を占める現象。在庫制約の小さいECで顕著になる。 オムニチャネル 実店舗・EC・アプリ・SNSなどあらゆる販売接点を、在庫や顧客情報まで含めて統合し、顧客がどの経路でも同じように買い、受け取れるようにする考え方。 O2O Online to Offline。Web広告やクーポン、アプリなどオンラインの接点から、実店舗というオフラインの来店・購買につなげる施策。 ブロックチェーン 取引記録をまとめたブロックに直前のブロックのハッシュ値を含めて連鎖させ、同じ台帳を多数の参加者がP2Pで分散保持して相互に検証する技術。改ざんが極めて困難になる。 フィンテック 金融(Finance)と技術(Technology)を組み合わせた造語。スマートフォン決済、家計簿の自動作成、少額投資など、ITを使った新しい金融サービスを指す。 ライン生産方式 コンベアなどで製品を流し、工程ごとに担当者が決められた作業を繰り返す方式。少品種大量生産に向き習熟が速い反面、1工程の停止や生産量の変動に弱い。 セル生産方式 1人または少人数が、部品や工具をそろえたセルと呼ぶ作業台で組立の全工程を担当する方式。多品種少量生産や生産量の変動に強いが、作業者の多能工化が必要。 かんばん方式 後工程が使った分だけかんばんを添えて前工程に引き取りに行き、前工程は引き取られた分だけ作る仕組み。JIT(必要なものを必要なときに必要な量だけ)を実現し、中間在庫を減らす。 MRP 資材所要量計画。基準生産計画と部品表(BOM)、在庫量をもとに、必要な部品の種類と量、発注や製造の時期を計算する手法。 CAD・CAM・CAE CADはコンピュータによる設計・製図、CAMは設計データからNCプログラムを作り加工を制御する仕組み、CAEは強度や流体などを解析して試作前に妥当性を検証する仕組み。 アクチュエータ 電気信号を受けて、回す・押す・開けるといった物理的な動きを生み出す部品。測って信号に変えるセンサと対になり、IoTの出口を担う。 エッジコンピューティング データを生む端末の近くで処理を行い、必要な分だけをクラウドに送る方式。応答時間の短縮と通信量の削減ができ、全体の分析はクラウドが担う。 デジタルツイン 現実の設備や製品を、IoTで集めたデータに基づいて仮想空間に再現したもの。実物を止めずに故障予測や工程改善のシミュレーションができる。 MaaS Mobility as a Service。鉄道・バス・タクシー・シェアサイクルなど複数の交通手段を一つのサービスとして統合し、検索・予約・決済をまとめて行えるようにする考え方。 運転自動化レベル レベル0〜5の6段階。レベル2までは運転者が監視する運転支援、レベル3は限定条件下でシステムが運転し継続困難時に運転者が対応、レベル4は限定条件下で運転者の対応が不要、レベル5は条件を限定しない完全自動運転。 RPA パソコン上の定型的な操作手順をソフトウェアロボットに実行させ、データ入力・転記・照合・帳票作成などの事務作業を自動化する仕組み。 ハルシネーション 生成AIが、事実に基づかない内容をもっともらしい文章として出力してしまう現象。言葉のつながりやすさから文章を作る仕組みに起因し、出力の裏取りが欠かせない。 プロンプトエンジニアリング 生成AIへの指示文に、役割・前提・出力形式・制約・例などを具体的に与えて、望む出力を安定して引き出す工夫。モデル自体は変更しない点がファインチューニングと異なる。 プロンプトインジェクション 生成AIへの入力に細工をして、本来の指示や制限を無視させ、禁止された出力や不正な動作をさせる攻撃。入出力のフィルタリングや権限の制限で備える。 人間中心のAI社会原則 内閣府が示したAI利活用の基本方針。人間中心、教育・リテラシー、プライバシー確保、セキュリティ確保、公正競争確保、公平性・説明責任及び透明性、イノベーションの七つから成る。
例題
例題:注文が入るたびに仕様が異なる製品を、月ごとに大きく変動する数量で作らなければならない。ライン生産方式とセル生産方式のどちらが向くか。
答えと考え方 セル生産方式。1人または少人数が全工程を担当するため、仕様が変わっても段取りの切替えがしやすく、生産量の変動にはセルの数を増減して対応できる。ただし作業者の多能工化に時間がかかる点は覚悟が要る。
例題:社外の生成AIサービスで、顧客からの問合せメールへの返信文の下書きを作ることにした。運用上、必ず決めておくべきことを三つ挙げよ。
答えと考え方 ①入力してよい情報の範囲(顧客名や契約情報などの個人情報・機密情報は入力しない)、②出力の確認手順(事実関係を一次情報で裏取りし、人が最終確認してから送信する)、③利用するサービスの条件(入力データを学習に使わせない設定、利用規約と生成物の利用条件の確認)。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(e-ビジネス・エンジニアリングシステム・IoTを利用したシステム・民生機器/産業機器)/人間中心のAI社会原則(内閣府 統合イノベーション戦略推進会議)
確認問題(30問) 四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|競争戦略
ポーターが示した三つの基本戦略のうち、集中戦略の説明として最も適切なものはどれか。
規模の経済や工程の改善によって業界で最も低い原価を実現し、価格競争力で優位に立つ。 特定の顧客層や地域、製品分野に経営資源を絞り込み、その狭い範囲で優位を築く。 品質やブランド、サービスで他社にない価値を提供し、価格以外の理由で選ばれるようにする。 競争相手のいない新しい市場を切り開き、競争そのものを避ける。 正解と解説 正解:B. 特定の顧客層や地域、製品分野に経営資源を絞り込み、その狭い範囲で優位を築く。 集中戦略は、市場全体を狙わずに特定の顧客層・地域・製品分野へ経営資源を絞り込み、その狭い範囲でコスト優位または差別化を実現する戦略である。最も低い原価で価格優位に立つのはコストリーダーシップ戦略、価格以外の価値で選ばれるようにするのは差別化戦略の説明。競争のない市場を切り開くのはブルーオーシャン戦略であり、ポーターの三つの基本戦略には含まれない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問2|SWOT分析
SWOT分析において、機会(Opportunity)に分類されるものはどれか。
自社が長年蓄積してきた独自の製造ノウハウ 主力製品を生産する設備が老朽化していること 法改正によって自社製品の需要が拡大しそうなこと 若手技術者が育っておらず技術の継承が進んでいないこと 正解と解説 正解:C. 法改正によって自社製品の需要が拡大しそうなこと SWOT分析では、強み(S)と弱み(W)が自社内部の要因、機会(O)と脅威(T)が自社では左右できない外部環境の要因である。法改正による需要の拡大は外部環境の変化で自社に有利に働くので機会に当たる。蓄積した製造ノウハウは内部の強み、設備の老朽化と技術継承の遅れは内部の弱みであり、いずれも外部環境の要因ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問3|金のなる木
PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)において、市場成長率が低く、相対的市場シェアが高い事業はどの象限に分類され、どのように扱うのが基本か。
花形。成長のために大きな追加投資を続ける。 問題児。シェアを高めるために資金を集中的に投入する。 負け犬。撤退や縮小を検討する。 金のなる木。追加投資を抑えて資金を回収し、他の事業に回す。 正解と解説 正解:D. 金のなる木。追加投資を抑えて資金を回収し、他の事業に回す。 PPMは縦軸に市場成長率、横軸に相対的市場シェアを取る。市場成長率が低くシェアが高い象限は金のなる木で、市場が伸びない分だけ設備投資が少なくて済み、高いシェアから安定した資金を生む。その資金は問題児や花形に回す。花形は高成長・高シェア、問題児は高成長・低シェア、負け犬は低成長・低シェアであり、いずれも設問の位置と一致しない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問4|問題児
PPMで「問題児」に位置づけられた事業に対する対応として、最も適切なものはどれか。
市場成長率が高いうちに投資してシェアの向上を狙い、見込みがなければ撤退する。 市場が成熟していてシェアも高いので、投資を抑えて資金の回収に徹する。 市場成長率もシェアも高いので、シェアを守るための投資を続ける。 市場成長率もシェアも低いので、追加投資を行って立て直す。 正解と解説 正解:A. 市場成長率が高いうちに投資してシェアの向上を狙い、見込みがなければ撤退する。 問題児は市場成長率が高いのに相対的市場シェアが低い事業で、資金の持ち出しが大きい。市場が伸びているうちに投資してシェアを高めれば花形に育つが、育たなければ負け犬になるため撤退の判断も必要になる。市場が成熟しシェアが高いのは金のなる木、成長率もシェアも高いのは花形への対応。成長率もシェアも低い負け犬は撤退・縮小が基本で、追加投資は適切でない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問5|5フォース
業界の収益性を「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「買い手の交渉力」「売り手の交渉力」「既存企業間の敵対関係」という五つの観点から分析する手法はどれか。
3C分析 バリューチェーン分析 SWOT分析 ファイブフォース分析 正解と解説 正解:D. ファイブフォース分析 五つの力によって業界構造と収益性を分析するのはファイブフォース分析である。3C分析は顧客・競合・自社の三つの視点で市場での立ち位置を捉える手法、バリューチェーン分析は自社の事業活動を主活動と支援活動に分けて価値の源泉を探る手法、SWOT分析は内部の強み・弱みと外部の機会・脅威を整理する手法であり、いずれも業界の五つの力を分析するものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問6|価値連鎖
バリューチェーン分析において、支援活動に分類されるものはどれか。
購買物流 出荷物流 販売・マーケティング 人事・労務管理 正解と解説 正解:D. 人事・労務管理 バリューチェーン分析では事業活動を主活動と支援活動に分ける。主活動は購買物流・製造・出荷物流・販売とマーケティング・サービスで、製品が顧客に届くまでの流れそのものを担う。支援活動は全般管理・人事労務管理・技術開発・調達活動で、主活動を支える。したがって人事・労務管理が支援活動であり、他の三つはいずれも主活動に属する。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問7|4Pと4C
マーケティングミックスの4Pのうち、買い手の視点で捉え直した4Cの「利便性(Convenience)」に対応するものはどれか。
Product(製品) Price(価格) Place(流通) Promotion(販売促進) 正解と解説 正解:C. Place(流通) 4Pは売り手の視点で製品・価格・流通・販売促進を組み立てる枠組み、4Cはそれを買い手の視点に置き換えたもので、Productは顧客価値、Priceは顧客の負担、Placeは利便性、Promotionは対話に対応する。買い手にとっての「買いやすさ・入手しやすさ」である利便性に対応するのは、売り手側から見た流通経路のPlaceである。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(マーケティング)
問8|成長戦略
アンゾフの成長マトリクスにおいて、既存の製品を新しい市場に投入して成長を図る戦略はどれか。
市場浸透戦略 新市場開拓戦略 新製品開発戦略 多角化戦略 正解と解説 正解:B. 新市場開拓戦略 成長マトリクスは市場と製品をそれぞれ既存・新規に分ける。既存製品を新市場に投入するのは新市場開拓戦略で、海外進出や新しい顧客層への販売が例である。市場浸透戦略は既存製品を既存市場でより多く売る戦略、新製品開発戦略は既存市場に新製品を投入する戦略、多角化戦略は新市場に新製品を投入する戦略であり、組合せが異なる。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営戦略手法)
問9|KPI
ある企業が「新規顧客からの売上高を前年比20%増やす」ことを目標に掲げ、その達成には見込み客への訪問活動の強化が決定的に重要だと判断して、営業担当者1人当たりの月間訪問件数を毎月測定することにした。この月間訪問件数に当たるものはどれか。
KGI CSF KPI MBO 正解と解説 正解:C. KPI 最終的なゴールである「新規顧客売上高の前年比20%増」がKGI(重要目標達成指標)、その達成に決定的に重要な「訪問活動の強化」がCSF(重要成功要因)、CSFが実行できているかを日々測る中間指標である月間訪問件数がKPI(重要業績評価指標)である。MBOは従業員が上司と合意した目標に基づいて自ら管理し評価を受ける目標管理制度であり、指標の種類を表す語ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(ビジネス戦略と目標・評価)
問10|SCM
資材の調達から生産、物流、販売に至る一連の流れの情報を、取引先を含めて共有し、在庫の削減と納期の短縮を図る仕組みはどれか。
SCM CRM ERP SFA 正解と解説 正解:A. SCM 供給連鎖の全体を対象に、企業をまたいで情報を共有し全体最適を図るのはSCM(供給連鎖管理)である。CRMは顧客の情報を一元管理して顧客満足と長期的な関係を高める仕組み、ERPは会計・人事・生産・販売など社内の基幹業務データを統合して経営資源を全社最適で運用する仕組み、SFAは商談や案件など営業活動を支援する仕組みであり、いずれも対象とする範囲が異なる。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(経営管理システム)
問11|BSC
バランススコアカードの四つの視点のうち、「業務プロセスの視点」の目標として最も適切なものはどれか。
売上高営業利益率を8%に高める。 顧客満足度調査の評価を5段階で4.5以上にする。 受注から出荷までの日数を平均3日に短縮する。 従業員1人当たりの年間研修時間を20時間以上にする。 正解と解説 正解:C. 受注から出荷までの日数を平均3日に短縮する。 バランススコアカードは財務・顧客・業務プロセス・学習と成長の四つの視点で戦略を管理する。受注から出荷までの日数は社内の仕事の進め方そのものを測る指標なので、業務プロセスの視点に当たる。売上高営業利益率は財務の視点、顧客満足度は顧客の視点、研修時間は人材や組織の能力を高める学習と成長の視点の指標である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類19:経営戦略マネジメント(ビジネス戦略と目標・評価)
問12|イノベーション
プロセスイノベーションの例として、最も適切なものはどれか。
従来にない機能をもつ新しい製品を開発し、市場に投入した。 生産工程を全面的に見直して自動化し、製造原価と製造期間を大幅に削減した。 他社が保有する特許を買い取り、競合他社の参入を防いだ。 社外の研究機関と提携し、共同で新素材の研究に取り組んだ。 正解と解説 正解:B. 生産工程を全面的に見直して自動化し、製造原価と製造期間を大幅に削減した。 プロセスイノベーションは、製造工程や業務の進め方を変えることで、コスト削減・品質向上・納期短縮などを実現する革新である。生産工程の自動化による原価と期間の削減がこれに当たる。新しい製品そのものを生み出すのはプロダクトイノベーション、社外の技術や知見を取り込むのはオープンイノベーションの例。特許の買取りは特許戦略の一つで、革新の種類を表すものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問13|死の谷
技術が事業として立ち上がるまでの障壁のうち、開発した技術を製品として事業化する段階で、資金の不足や量産・販売体制の未整備によって越えられない状態を指す語はどれか。
魔の川 死の谷 ダーウィンの海 キャズム 正解と解説 正解:B. 死の谷 基礎研究から開発の段階に進めない壁が魔の川、開発から事業化に進めない壁が死の谷、事業化した製品が激しい競争を勝ち抜いて産業として定着できない壁がダーウィンの海である。設問は開発と事業化の間の壁なので死の谷が正しい。キャズムは市場に出た後、初期市場から大衆市場へ移る際の普及の溝であり、開発段階の障壁ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問14|キャズム
新製品の購入者をイノベータ、アーリーアダプタ、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティ、ラガードの五つに分けたとき、キャズム(溝)があるとされるのはどの層とどの層の間か。
イノベータとアーリーアダプタの間 アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間 アーリーマジョリティとレイトマジョリティの間 レイトマジョリティとラガードの間 正解と解説 正解:B. アーリーアダプタとアーリーマジョリティの間 新しさ自体に価値を見いだすイノベータ・アーリーアダプタの初期市場と、実績や安心を重んじるアーリーマジョリティ以降の大衆市場では、購買の判断基準が大きく異なる。この境目にある深い溝がキャズムで、多くの新製品はここを越えられずに終わる。他の層の間にも違いはあるが、普及の分かれ目としてキャズムと呼ばれるのはアーリーアダプタとアーリーマジョリティの間である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問15|破壊的技術
破壊的イノベーションの特徴として、最も適切なものはどれか。
既存製品の性能を着実に高め、主要顧客の要求に応え続けることで、既存の価値軸のまま市場での地位を保つ。 複数企業の特許をまとめて管理し、必要な企業が一括で許諾を受けられるようにして普及を促す。 利用者の観察と共感から課題を定義し、試作と検証を繰り返して、利用者にとって望ましい解決策を作り上げる。 当初は既存製品より性能が低く主要顧客には評価されないが、低価格や手軽さなど別の価値で新しい顧客に受け入れられ、やがて既存市場を置き換える。 正解と解説 正解:D. 当初は既存製品より性能が低く主要顧客には評価されないが、低価格や手軽さなど別の価値で新しい顧客に受け入れられ、やがて既存市場を置き換える。 破壊的イノベーションは、当初は性能が低く既存の主要顧客に評価されない技術が、低価格や手軽さといった別の価値軸で新しい顧客層に広がり、性能の向上とともに既存市場を置き換える現象である。既存製品の性能を着実に高めるのは持続的イノベーションで、優良企業が既存顧客を優先して対応が遅れることをイノベーションのジレンマという。特許をまとめる仕組みはパテントプール、観察と試作を繰り返す発想法はデザイン思考である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問16|標準化
デファクトスタンダードの説明として、適切なものはどれか。
市場での競争や普及の結果、事実上の業界標準として広く使われるようになった規格 公的な標準化機関が、定められた手続を経て制定した規格 複数の企業が保有する特許をまとめ、必要な企業が一括で利用できるようにした仕組み 特定の技術分野に関心をもつ企業が集まり、短期間で策定した規格 正解と解説 正解:A. 市場での競争や普及の結果、事実上の業界標準として広く使われるようになった規格 デファクトスタンダードは、公的な制定手続によるものではなく、市場で広く使われた結果として事実上の標準になった規格を指す。公的な標準化機関が手続を経て定めるものはデジュールスタンダード、関心のある企業が集まって作るものはフォーラム標準である。特許をまとめて一括許諾できるようにする仕組みはパテントプールで、規格の種類ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問17|PoC
新しい技術を本格的に導入する前に、小規模な試作や試行によって、その技術で目的が実現できるかどうかを実際に確かめる取組みはどれか。
ハッカソン デザイン思考 PoC APIエコノミー 正解と解説 正解:C. PoC 実現可能性を小規模な試作や試行で確かめる取組みはPoC(Proof of Concept:概念実証)である。ハッカソンは技術者などが短期間集中して開発に取り組み成果を競うイベント、デザイン思考は利用者の観察と共感から課題を定義し試作と検証を繰り返す発想法、APIエコノミーは自社の機能をAPIとして公開し他社サービスと組み合わせて新しい価値を生む考え方であり、いずれも実現可能性の検証そのものを指す語ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類20:技術戦略マネジメント
問18|電子商取引
企業が自社の従業員に向けて、社内向け通販サイトや福利厚生サービスをインターネット経由で提供する取引形態を表す語はどれか。
BtoB BtoC BtoE CtoC 正解と解説 正解:C. BtoE EはEmployee(従業員)を表し、企業が自社の従業員に対して行う取引がBtoEである。BtoBは企業間の取引、BtoCは企業と一般消費者の取引、CtoCはネットオークションやフリマアプリのように消費者どうしが行う取引を指す。設問は対象が自社の従業員なのでBtoEに当たる。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(e-ビジネス)
問19|エスクロー
個人間の売買を仲介するサービスにおいて、第三者が買い手から代金をいったん預かり、買い手が商品の受取りを確認した後に売り手へ支払う仕組みはどれか。
アフィリエイト ロングテール クラウドファンディング エスクロー 正解と解説 正解:D. エスクロー 取引の当事者以外の第三者が代金を預かり、商品の受渡しを確認してから売り手に渡す仕組みがエスクローで、代金を払ったのに商品が届かない、商品を送ったのに入金されないといった個人間取引のリスクを減らす。アフィリエイトは成果に応じて紹介者に報酬を払う広告手法、ロングテールはニッチ商品の売上合計が大きな割合を占める現象、クラウドファンディングはインターネットで不特定多数から資金を集める仕組みである。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(e-ビジネス)
問20|オムニ
オムニチャネルの説明として、最も適切なものはどれか。
実店舗・Webサイト・アプリなどあらゆる販売接点を在庫や顧客情報まで含めて統合し、顧客がどの経路でも同じように商品を探し、購入し、受け取れるようにする。 Web広告やクーポン、位置情報を用いた通知などオンラインの接点を入り口にして、実店舗への来店と店頭での購買につなげる。 毎月など定額の料金を支払うことで、契約している期間中はサービスや商品を何度でも利用できるようにする。 個人が保有する住居や自動車などの資産や技能を、インターネット上の場を介して他の人と共有・貸借できるようにする。 正解と解説 正解:A. 実店舗・Webサイト・アプリなどあらゆる販売接点を在庫や顧客情報まで含めて統合し、顧客がどの経路でも同じように商品を探し、購入し、受け取れるようにする。 オムニチャネルは、実店舗・EC・アプリなどすべての販売接点を、在庫や顧客情報まで含めて統合し、どの経路からでも一貫した購買体験を提供する考え方である。オンラインから実店舗の来店につなげるのはO2O(Online to Offline)、定額で一定期間利用できるようにするのはサブスクリプション、個人の資産や技能を共有・貸借するのはシェアリングエコノミーであり、いずれもチャネル全体の統合を意味しない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(e-ビジネス)
問21|自動運転
自動車の運転自動化レベルにおいて、レベル3(条件付運転自動化)の説明として適切なものはどれか。
システムは前後方向か左右方向のいずれか一方の車両制御を支援するだけで、運転操作は運転者が行う。 限定された条件下ではシステムが運転操作の全てを行うが、作動の継続が難しくなった場合には、システムからの要請に応じて運転者が対応しなければならない。 限定された条件下でシステムが運転操作の全てを行い、作動の継続が難しくなった場合の対応もシステムが行うため、運転者の対応を必要としない。 走行できる条件を限定せず、あらゆる走行環境でシステムが運転操作の全てを行う。 正解と解説 正解:B. 限定された条件下ではシステムが運転操作の全てを行うが、作動の継続が難しくなった場合には、システムからの要請に応じて運転者が対応しなければならない。 レベル3は、限定領域(走行環境条件)の中ではシステムが運転操作の全てを担うが、作動の継続が困難になった場合にはシステムからの要請を受けて運転者が対応しなければならない段階である。一つ目は前後・左右のいずれか一方だけを支援するレベル1、三つ目は作動継続が困難な場合の応答までシステムが行い運転者の対応を必要としないレベル4、四つ目は走行環境条件を限定しないレベル5の説明である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(民生機器・産業機器)/JASOテクニカルペーパー「自動車用運転自動化システムのレベル分類及び定義」
問22|セル生産
セル生産方式の説明として、最も適切なものはどれか。
コンベアで製品を流し、工程ごとに担当者が決められた作業だけを繰り返す。 1人または少人数が、部品や工具をそろえた作業台で組立の全工程を担当する。 後工程が使った分だけ前工程に引き取りに行き、前工程は引き取られた分だけ作る。 基準生産計画と部品表から、必要な部品の量と発注時期を計算する。 正解と解説 正解:B. 1人または少人数が、部品や工具をそろえた作業台で組立の全工程を担当する。 セル生産方式は、セルと呼ぶ作業台で1人または少人数が組立の全工程を受け持つ方式で、多品種少量生産や生産量の変動に対応しやすい一方、作業者の多能工化が欠かせない。コンベアで流して工程ごとに分担するのは少品種大量生産に向くライン生産方式、後工程が使った分だけ引き取るのはかんばん方式、部品表から所要量と発注時期を計算するのはMRPであり、いずれもセル生産方式ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(エンジニアリングシステム)
問23|かんばん
かんばん方式の目的として、最も適切なものはどれか。
必要なものを必要なときに必要な量だけ生産し、工程間の中間在庫を減らす。 設計データをもとにNCプログラムを作り、工作機械による加工を制御する。 製品の強度や熱の伝わり方をコンピュータ上で解析し、試作の回数を減らす。 工場の生産設備をネットワークでつなぎ、稼働状況を遠隔から監視する。 正解と解説 正解:A. 必要なものを必要なときに必要な量だけ生産し、工程間の中間在庫を減らす。 かんばん方式は、後工程が使った分だけかんばんを添えて前工程に引き取りに行き、前工程は引き取られた分だけ作る仕組みで、JIT(ジャストインタイム)を実現して工程間の中間在庫を減らすことを目的とする。設計データから加工を制御するのはCAM、強度や熱を解析するのはCAE、設備をつないで遠隔監視するのはIoTの活用であり、いずれも生産指示と在庫削減の仕組みではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(エンジニアリングシステム)
問24|デジタルツイン
工場の設備や製品から収集したセンサデータを使い、現実の対象と同じ振る舞いをする模型を仮想空間に作って、故障の予測や工程の改善をシミュレーションする仕組みはどれか。
エッジコンピューティング アクチュエータ MaaS デジタルツイン 正解と解説 正解:D. デジタルツイン 現実の対象をIoTで集めたデータに基づいて仮想空間に再現し、その上で予測や改善の検討を行う仕組みがデジタルツインである。エッジコンピューティングは端末に近い場所で処理して応答時間と通信量を抑える方式、アクチュエータは電気信号を受けて物を動かす部品、MaaSは複数の交通手段を一つのサービスとして検索・予約・決済できるようにする考え方であり、いずれも仮想空間への再現を指すものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(IoTを利用したシステム)
問25|RPA
RPAの適用対象として、最も適したものはどれか。
手順が明確で繰り返し発生する、複数システム間のデータ転記や照合の作業 顧客ごとに条件が異なり、その場の交渉で内容が決まる価格の決定 前例がなく、専門家の間でも判断が分かれる新規事業への投資の可否 顧客と対面してニーズを聞き取り、信頼関係を築いていく営業活動 正解と解説 正解:A. 手順が明確で繰り返し発生する、複数システム間のデータ転記や照合の作業 RPAは、パソコン上の操作手順をソフトウェアロボットに実行させる仕組みで、手順が定型化されて繰り返し発生する事務作業(データ入力・転記・照合・帳票作成など)に最も適する。交渉で内容が決まる価格の決定、判断が分かれる投資の可否、対面で信頼関係を築く営業活動は、いずれも手順を一意に定められず、その都度人間の判断が必要なためRPA単独では代行できない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(業務プロセスの自動化)
問26|ハルシネーション
生成AIの利用における「ハルシネーション」の説明として、適切なものはどれか。
入力した内容が事業者側に保存され、他の利用者への回答に現れてしまうこと 事実に基づかない内容を、もっともらしい文章として出力してしまうこと 指示文に細工をして、本来禁止されている動作を行わせること 同じ指示に対して、毎回まったく同じ文章しか出力しなくなること 正解と解説 正解:B. 事実に基づかない内容を、もっともらしい文章として出力してしまうこと ハルシネーションは、生成AIが言葉のつながりやすさに基づいて文章を作る仕組みのために、事実でない内容をもっともらしく出力してしまう現象である。入力内容が保存されて他者への回答に現れるのは情報漏えいの問題、指示文への細工で禁止動作をさせるのはプロンプトインジェクションという攻撃であり、別の論点。毎回同じ文章になることは出力の多様性の話で、誤情報の生成とは関係がない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(AIの利活用)
問27|AIと著作権
生成AIを業務で利用するときの著作権に関する留意点として、最も適切なものはどれか。
生成AIの出力は常に新しい創作物なので、既存の著作物の権利を侵害することはない。 生成物が既存の著作物と類似する場合があるため、公開の前に類似性を確認し、サービスの利用条件も確かめる。 AIが出力したものであれば、他人の著作物をそのまま複製して配布してもよい。 生成AIに与える指示文を短くすれば、著作権の問題は生じない。 正解と解説 正解:B. 生成物が既存の著作物と類似する場合があるため、公開の前に類似性を確認し、サービスの利用条件も確かめる。 生成AIの出力が既存の著作物と同一・類似になることはあり得るため、公開や配布の前に類似性を確認し、利用するサービスの利用規約や生成物の利用条件も確かめる必要がある。AIの出力なら侵害にならない、他人の著作物をそのまま複製してよいという考えは誤りで、利用の仕方によっては権利侵害になる。指示文の長さは権利侵害の有無を左右しない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(AIの利活用)
問28|情報漏えい
社外の生成AIサービスを業務で利用する際の、情報漏えいへの対策として最も適切なものはどれか。
入力してよい情報の範囲を社内規程で定め、機密情報や個人情報は入力しない。 回答の精度を上げるため、顧客名簿や設計書をそのまま貼り付けて質問する。 利用の可否は各自の判断に任せ、利用の記録は残さない。 出力された文章は内容を確認せず、そのまま社外に公開する。 正解と解説 正解:A. 入力してよい情報の範囲を社内規程で定め、機密情報や個人情報は入力しない。 社外の生成AIに入力した内容は、事業者側に保存されたり学習に利用されたりして、他者への出力に現れるおそれがある。そこで入力してよい情報の範囲を社内規程で定め、機密情報や個人情報は入力しない、学習に使わせない設定や閉域の環境を使うといった対策を取る。名簿や設計書をそのまま入力するのは漏えいそのもの、各自任せで記録を残さないのは統制が働かず、無確認の公開は誤りや権利侵害を招くため不適切である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(AIの利活用)
問29|プロンプト
プロンプトエンジニアリングの説明として、最も適切なものはどれか。
生成AIの内部のパラメタを追加のデータで再学習させ、モデルそのものを目的に合わせて調整すること 生成AIが出力した文章を人手で校正し、誤りを修正する作業のこと 生成AIの学習に使うデータを収集し、重複や誤りを取り除く作業のこと 生成AIに与える指示文に、役割・前提・出力形式・制約や例を具体的に示し、望む出力を引き出す工夫のこと 正解と解説 正解:D. 生成AIに与える指示文に、役割・前提・出力形式・制約や例を具体的に示し、望む出力を引き出す工夫のこと プロンプトエンジニアリングは、モデル自体には手を加えず、指示文(プロンプト)の書き方を工夫して望む出力を安定して引き出す取組みである。役割や前提条件、出力形式、制約、例示を具体的に与えるほど結果が安定する。パラメタを再学習させるのはファインチューニング、出力後の校正は人による確認作業、学習データの収集と整備は前処理であり、いずれも指示文の設計そのものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ(AIの利活用)
問30|AI社会原則
内閣府が示した「人間中心のAI社会原則」の考え方に沿った取組みとして、最も適切なものはどれか。
AIの判断は人間より正確なので、採用や与信の可否はAIの出力どおりに決定し、理由の説明は行わない。 利用者の同意を得ずに個人データを収集し、精度の向上のために制限なく利用する。 学習データに偏りがないかを確認し、判断の根拠を説明できるようにしたうえで、最終的な判断は人間が責任をもって行う。 AIの安全性の検証は開発者だけの責任なので、AIを利用する企業側では検討しない。 正解と解説 正解:C. 学習データに偏りがないかを確認し、判断の根拠を説明できるようにしたうえで、最終的な判断は人間が責任をもって行う。 人間中心のAI社会原則は、人間中心、教育・リテラシー、プライバシー確保、セキュリティ確保、公正競争確保、公平性・説明責任及び透明性、イノベーションの七つから成る。学習データの偏りの確認、判断根拠の説明、人間が最終的な責任を負うことはこの考え方に沿う。出力どおりに決めて説明しないのは公平性・説明責任及び透明性と人間中心に反し、同意なき個人データの利用はプライバシー確保に反し、安全性の検証を利用者が放棄するのはセキュリティ確保に反する。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類8:経営戦略 中分類21:ビジネスインダストリ/人間中心のAI社会原則(内閣府 統合イノベーション戦略推進会議)
演習:この章の問題を解く ランダム出題の演習ツールです(JavaScript が有効な場合に動きます)。上の「確認問題」はそのままでもすべて読めます。
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※ 解説は学習用の情報提供です。最新の出題範囲・制度は必ずIPAの公式発表をご確認ください。 ※ 出題はIPA公開のシラバスVer.9.2(2026年1月8日適用)に沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。擬似言語の記述形式もIPA公開の仕様に合わせています。試験制度・実施要項はIPAの公式発表をご確認ください(2027年度春ごろに新試験制度へ移行予定)。