仮の宿 学習室

ビジネス BUSINESS BASICS

敬語

講義 4 本・確認問題 40 問 | 本試験では「マナー実践」(0問)の一部 | 最終更新 2026-09-24

この章で学ぶこと
目次
  1. 敬語の5分類(だれを立てているかで見分ける)
  2. 敬語の形(お・御の付け方、二重敬語、可能の形)
  3. 選び方で迷う場面(尊敬語と謙譲語Ⅰの取り違え)
  4. 場面で決まる敬語(ウチとソト、ねぎらい、依頼)
  5. 確認問題(40問)
  6. 演習ツール

1. 敬語の5分類(だれを立てているかで見分ける)

文化庁「敬語の指針」は敬語を5種類に分けます。尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ・丁寧語・美化語が、それぞれだれを立てる敬語なのかを整理します。

取引先に電話をかけると、短い会話の中に「相手の行為」「自分の行為」「自分の会社の人の行為」が次々に出てきます。「言う」だけでも、相手が言うなら「おっしゃる」、自分が相手に言うなら「申し上げる」、自分の側のことを丁重に伝えるなら「申す」と、選ぶ語が変わります。どれを選ぶかは丁寧さの強さで決まるのではなく、その一言でだれを立てているかで決まります。ここを取り違えると、相手を下げたり身内を持ち上げたりしてしまいます。

指針は敬語を、尊敬語(いらっしゃる・おっしゃる型)、謙譲語Ⅰ(伺う・申し上げる型)、謙譲語Ⅱすなわち丁重語(参る・申す型)、丁寧語(です・ます型)、美化語(お酒・お料理型)の5種類に分けます。従来の3分類では謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱがまとめて「謙譲語」、丁寧語と美化語がまとめて「丁寧語」とされていました。職場で起きる敬語の事故のほとんどは、この分け直した部分、つまり謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの違いに集中します。

尊敬語は、相手側または第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べるものです。「先生は来週海外へいらっしゃる」なら行為者の先生を、「先生のお名前」なら所有者の先生を、「お忙しい」ならその状態にある人を立てます。謙譲語Ⅰは、自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとについて、その向かう先の人物を立てるものです。「先生のところに伺う」の伺うは、行く先である先生を立てています。なお「くださる」は行為者を立てたうえで恩恵を受ける意味を、「いただく」は向かう先を立てたうえで恩恵を受ける意味を、それぞれ併せて表します。

謙譲語Ⅱ(丁重語)は、自分側の行為やものごとを、話や文章の相手に対して丁重に述べるものです。参る・申す・いたす・おる・存じる がこれに当たります。立てるのにふさわしい向かう先がなくても使えるのが謙譲語Ⅰとの大きな違いで、「弟のところに伺います」は自分の弟を立ててしまう誤用ですが、「弟のところに参ります」は問題がありません。一方で謙譲語Ⅱは基本的に自分側のことに使うので、「どちらから参りましたか」のように相手側の行為に使うのは不適切です。また一般に「ます」を伴って使います。

丁寧語は「です」「ます」を付けて話や文章の相手に丁寧に述べるもので、さらに丁寧さの度合いが高いものに「(で)ございます」があります。美化語は「お酒」「お料理」のようにものごとを美化して述べるもので、だれかを立てる働きはありません。最後に、尊敬語と謙譲語Ⅰを使うときの原則が三つあります。自分側は立てない、相手側を立てるのが典型的な使い方、第三者は総合的に判断して立てる方がふさわしければ立てる、ただし相手から見て立てる対象と認識されないと思われる第三者は立てない配慮をする、というものです。

敬語の5分類と、それぞれが立てる相手
種類何について述べるか立てる相手語例
尊敬語相手側や第三者の行為・ものごと・状態その行為者や所有者いらっしゃる/おっしゃる/なさる/召し上がる/お使いになる
謙譲語Ⅰ自分側から相手側や第三者に向かう行為その向かう先伺う/申し上げる/お目に掛かる/差し上げる/お届けする
謙譲語Ⅱ(丁重語)自分側の行為やものごと話や文章の相手参る/申す/いたす/おる/存じる
丁寧語内容を選ばず広く使える話や文章の相手です/ます/(で)ございます
美化語ものごとを美化して述べる立てる相手はないお酒/お料理
敬語を選ぶときの順序1 だれの行為かを決める(自分側か、相手側や第三者か)2 相手側や第三者の行為なら尊敬語(先生がいらっしゃいます)3 自分側の行為なら、向かう先に立てるべき人がいるかを見る4 いるなら謙譲語Ⅰ(先生のところに伺います)5 いないなら謙譲語Ⅱ(弟のところに参ります)6 文末は丁寧語で整える(です/ます/(で)ございます)

用語

尊敬語
相手側または第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べる敬語。いらっしゃる、おっしゃる、なさる、召し上がる、お使いになる、お名前、お忙しい など。
謙譲語Ⅰ
自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとについて、その向かう先の人物を立てて述べる敬語。伺う、申し上げる、お目に掛かる、差し上げる、お届けする など。
謙譲語Ⅱ(丁重語)
自分側の行為やものごとを、話や文章の相手に対して丁重に述べる敬語。参る、申す、いたす、おる、存じる、拙著、小社 など。一般に「ます」を伴って使う。
丁寧語
話や文章の相手に対して丁寧に述べる敬語。「です」「ます」。さらに丁寧さの度合いが高いものとして「(で)ございます」がある。
美化語
ものごとを美化して述べるもの。「お酒」「お料理」。行為者・向かう先・相手のだれかを立てる働きはなく、広い意味で敬語に位置付けられる。
立てる
その人物を言葉の上で高く位置付けて述べること。心から敬う場合だけでなく、立場を尊重する場合や距離を置く場合も含めた、共通の特徴を指す言い方。
くださる・いただく
「くださる」は尊敬語に、「いただく」は謙譲語Ⅰに、それぞれ「その行為から恩恵が与えられる」という意味を併せ持たせた語。

例題

例題:「先生からのお手紙」と「先生へのお手紙」は、同じ「お手紙」でも敬語の種類が違う。それぞれ何か。
答えと考え方 「先生からのお手紙」は手紙を書いた行為者である先生を立てるので尊敬語。「先生へのお手紙」は向かう先である先生を立てるので謙譲語Ⅰ。同じ形で尊敬語にも謙譲語Ⅰにもなる例。
例題:恩師の加藤先生に向かって「弟のところに参ります。」と言った。だれを立てているか。
答えと考え方 立てているのは相手である加藤先生で、弟を立ててはいない。参るは謙譲語Ⅱで、話や文章の相手に対して丁重に述べる敬語だから。「弟のところに伺います。」だと弟を立てることになり誤用。
例題:駅員が「あ、バスが参りました。」と言うのは適切か。
答えと考え方 適切。謙譲語Ⅱは基本的に自分側の行為に使うが、立てなくても失礼に当たらない第三者や事物についても使うことができ、話や文章の相手に丁重に述べる働きを果たす。

出典・根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

2. 敬語の形(お・御の付け方、二重敬語、可能の形)

敬語には決まった語に置き換える特定形と、いろいろな語に当てはめる一般形があります。お・御の使い分け、作れない形、二重敬語と敬語連結の区別を押さえます。

尊敬語には、行く・来る・いるを「いらっしゃる」に、言うを「おっしゃる」に、するを「なさる」に、食べる・飲むを「召し上がる」に、くれるを「下さる」に置き換える特定形と、広くいろいろな語に当てはめられる一般形があります。一般形は「お(ご)……になる」「……(ら)れる」「……なさる」「ご……なさる」「お(ご)……だ(です)」「お(ご)……くださる」です。ここで注意したいのは「お(ご)……する」で、これは謙譲語Ⅰの形なので尊敬語として使えません。また「ご……される」は、本来、尊敬語の適切な形ではないとされています。

お と 御 の使い分けは「お+和語」「御+漢語」が原則です。読む→お読みになる、出掛ける→お出掛けになる、利用する→御利用になる、出席する→御出席になる、という具合です。ただし美化語では漢語の前でも「お料理」「お化粧」のように お が好まれ、美化語以外でも「お加減」「お元気」のような変則的な例があります。さらに、慣習上 お・御 と組み合わせられず「お(ご)……になる」が作れない動詞もあります。指針は、お死にになる、御失敗になる、御運転になる を作れない例として挙げ、それぞれ お亡くなりになる・亡くなられる、失敗なさる・失敗される、運転なさる・運転される を示しています。御覧になる、おいでになる、お休みになる、お召しになる は変則的な作り方の例です。

謙譲語Ⅰの特定形には、伺う、申し上げる、存じ上げる、差し上げる、頂く、お目に掛かる、お目に掛ける、御覧に入れる、拝見する、拝借する があります。一般形は「お(ご)……する」「お(ご)……申し上げる」「……ていただく」「お(ご)……いただく」です。「お(ご)……する」は向かう先を立てる形なので、向かう先の人物がある動詞に限って作れます。届ける・案内する には向かう先があるので お届けする・御案内する と言えますが、食べる・乗車する には向かう先の人物が想定できないので お食べする・御乗車する という形は作れません。謙譲語Ⅱの一般形は「……いたす」だけで、これはサ変動詞にのみ使えます。

可能の意味を添えるときは、まず敬語の形にしてから可能の形にします。尊敬語なら 召し上がれる、お読みになれる、御利用になれる、謙譲語Ⅰなら 伺える、お届けできる、御報告できる です。逆に「お(ご)……できる」は謙譲語Ⅰ「お(ご)……する」の可能形なので、相手の行為に使うのは適切ではありません。駅の「御乗車できません」は「御乗車になれません」とするのが適切で、「御乗車いただけません」「御乗車はできません」という言い方も可能です。「分かりにくい」「読みやすい」のように動詞と形容詞が組み合わさった語は、動詞の部分だけを尊敬語にして「お分かりになりにくい」「お読みになりやすい」とします。

一つの語について同じ種類の敬語を二重に使ったものが二重敬語で、「お読みになられる」がその例です。二重敬語は一般に適切ではないとされますが、お召し上がりになる、お見えになる、お伺いする、お伺いいたす、お伺い申し上げる のように習慣として定着しているものもあります。これに対し、二つ以上の語をそれぞれ敬語にして「て」でつないだものは敬語連結と呼ばれ、個々の敬語が適切で結び付きに不合理がなければ基本的に許容されます。「お読みになっていらっしゃる」「お読みになってくださる」がその例です。ただし「先生は私の家に伺ってくださった」「私は先生に御案内していただいた」のように、相手の行為を謙譲語Ⅰで述べて自分を立ててしまう連結は不適切で、後者は して を削って「御案内いただく」とすれば適切になります。

助詞にも注意が必要です。「くださる」は先生が主語、「いただく」は自分が主語になるので、「先生が指導してくださった」「先生に指導していただいた」となります。「先生が御指導いただいた」と言うと、いただく が もらう・受ける の意味であるため、先生が別の人物の指導を受けたことになってしまいます。

二重敬語と敬語連結の区別
区分例指針での扱い
二重敬語お読みになられる一つの語に同じ種類の敬語を重ねたもの。一般に適切ではない
定着した二重敬語お召し上がりになる/お見えになる/お伺いする習慣として定着しているものとして指針が挙げる
敬語連結お読みになっていらっしゃる/お読みになってくださる個々の敬語が適切で不合理がなければ基本的に許容される
不適切な敬語連結御案内していただく/伺ってくださる相手の行為を謙譲語Ⅰで述べて自分を立ててしまう。御案内いただく とする
言い換えの型御利用される → 御利用になる/利用なさる/利用される御乗車できません → 御乗車になれません/御乗車いただけませんお分かりにくい → お分かりになりにくいお読みやすい → お読みになりやすい御運転になる → 運転なさる/運転される御案内していただく → 御案内いただくお読みになられる → お読みになる

用語

特定形
行く→いらっしゃる、訪ねる→伺う のように、語そのものを別の語に置き換えて敬語にする形。
一般形
「お(ご)……になる」「お(ご)……する」のように、広くいろいろな語に当てはめて敬語を作る形。
二重敬語
一つの語について同じ種類の敬語を二重に使ったもの。お読みになられる など。一般に適切ではないが、お召し上がりになる、お伺いする のように習慣として定着したものもある。
敬語連結
二つ以上の語をそれぞれ敬語にして接続助詞「て」でつないだもの。お読みになっていらっしゃる など。個々の敬語が適切で不合理がなければ基本的に許容される。
お+和語・御+漢語
お と 御 の使い分けの原則。お読みになる/御利用になる。ただし美化語は漢語でも お が好まれ、お加減・お元気 のような変則もある。
お(ご)……できる
謙譲語Ⅰ「お(ご)……する」の可能形。自分の行為には使えるが、相手の行為の可能を表す尊敬語としては使えない。尊敬語の可能形は「お(ご)……になれる」。
名詞の謙譲語Ⅱ
愚見・小社・拙著・弊社 のように 愚・小・拙・弊 を付けて自分側を控え目に表す語。ほぼ書き言葉専用。

例題

例題:「部長は御運転になりますか。」と言ってよいか。
答えと考え方 よくない。運転する は慣習上「ご……になる」の形が作れない語として指針が挙げている。「運転なさいますか」「運転されますか」とする。
例題:「先生が御指導いただいたおかげです。」の問題点は何か。
答えと考え方 いただく は もらう・受ける の意味なので、指導を受ける側の自分を主語にし、先生には に を付けて「先生に御指導いただいた」とする。先生を主語にするなら「先生が御指導くださった」。
例題:「お伺いします。」は二重敬語ではないのか。
答えと考え方 二重敬語である。ただし お伺いする、お伺いいたす、お伺い申し上げる は、習慣として定着している二重敬語の例として指針が挙げているので、使って問題ない。

出典・根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形/同 第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

3. 選び方で迷う場面(尊敬語と謙譲語Ⅰの取り違え)

職場で最も多い敬語の事故は、相手の行為に謙譲語Ⅰを使ってしまうことです。指針が具体例を挙げている取り違えと、させていただく の使いどころを確かめます。

受付で客に「担当者に伺ってください。」と言う、上司に「そのファイルもお持ちしますか。」と尋ねる、お知らせ文に「御在宅する必要はありません。」と書く。これらはどれも、相手の行為なのに謙譲語Ⅰを使ってしまった例として指針が取り上げているものです。伺う、お聞きする、お尋ねする、お持ちする、御在宅する はいずれも謙譲語Ⅰの形なので、客や上司の行為には使えません。それぞれ、お聞きください・お尋ねください、お持ちになりますか、御在宅なさる必要・御在宅の必要 と尊敬語にします。「担当者にお聞きしてください。」のように ください を付けても、お聞きする が謙譲語Ⅰである事実は変わらないので、やはり使えません。

謙譲語Ⅱの取り違えもあります。加藤先生に向かって「明日は、田中先生のところに参ります。」と言っても、田中先生を立てたことにはなりません。参る は相手に対して丁重に述べる敬語であって、話の中に出てくる第三者を立てる働きはないからです。田中先生を立てるなら「伺います」とします。逆に、参る や 申す を含んでいても謙譲語Ⅱとして働いていない表現があります。「御持参ください」「お申し出ください」「お申し込みください」は相手側の行為に用いて問題ありません。気になる場合は「お持ちください」「おっしゃってください」と言い換えられます。「そのように申し伝えておきます。」も、相手である社長に改まって述べたもので、部下を高めることにはなりません。

自分側に お や 御 を付けることは、常に禁じられているわけではありません。「(先生を)お待ちする」「(山田さんに)御説明をしたい」のように、向かう先を立てる謙譲語Ⅰであれば全く問題がなく、「私のお菓子」のように美化語として使う場合もあります。付けてはいけないのは「私のお考え」「私の御旅行」のように、自分側の動作やものごとを立ててしまう場合で、これは自分側に尊敬語を用いる誤用になります。

いただく と くださる はどちらも使えます。「御利用いただく」は謙譲語Ⅰ、「御利用くださる」は尊敬語で、立てる対象も、恩恵を受けるという認識を表す点も同じなので、どちらも適切に敬語が用いられているというのが指針の判断です。ただし「御利用いただく」の用法には受け止め方に個人差があることも述べられています。

「(お・ご)……(さ)せていただく」は、自分側が行うことを、相手側または第三者の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちがある場合に使う形です。相手の本をコピーする前の「コピーを取らせていただけますか。」はこの条件を満たします。研究発表の冒頭の「発表させていただきます。」や、張り紙の「本日、休業させていただきます。」は、許可の条件がない場合にはやや冗長で、「発表いたします」「休業いたします」の方が簡潔です。自己紹介での「○○高校を卒業させていただきました。」は、許可も恩恵もないと感じられる場合には不適切と判断されます。

指針が挙げる取り違えと、直した言い方
言いたいこと取り違えた言い方適切な言い方
客に担当者へ尋ねてもらう担当者に伺ってください担当者にお聞きください/お尋ねください
課長が持っていくかを尋ねるそのファイルもお持ちしますかそのファイルもお持ちになりますか
相手が在宅する必要はない御在宅する必要はありません御在宅なさる必要/御在宅の必要はありません
第三者の先生を立てて訪問を伝える田中先生のところに参ります田中先生のところに伺います
自分の考えを述べる私のお考えでは私の考えでは
だれの行為かで敬語を決める相手や上司の行為 → 尊敬語(お聞きになる/お尋ねになる/お持ちになる)自分の行為で向かう先を立てる → 謙譲語Ⅰ(お聞きする/お尋ねする/お持ちする)自分側のことを相手に丁重に述べる → 謙譲語Ⅱ(参る/申す/いたす/おる)ください を付けても謙譲語Ⅰは尊敬語にならない許可を得て行い恩恵を受けるとき → させていただく

用語

取り違え
相手の行為に謙譲語Ⅰを使う、自分の行為に尊敬語を使うといった、立てる相手を誤る使い方。指針が具体例を多く挙げている。
お聞きする・お尋ねする
伺う と同じ謙譲語Ⅰ。客や上司の行為には使えない。相手に尋ねてもらうときは お聞きください・お尋ねください と尊敬語にする。
御持参ください
参る を含むが、ここでの 参 は謙譲語Ⅱとして働いていないため、相手側の行為に用いて問題ない。お申し出ください、お申し込みください も同様。
申し伝える
自分側の人物に伝えることを、相手に対して改まって述べた言い方。伝える先の部下を高めることにはならない。
御利用いただく
謙譲語Ⅰ。自分側の立場から相手側や第三者の行為を表現したもので、尊敬語の「御利用くださる」と同じく適切な敬語。
させていただく
自分側が行うことを、(ア)相手側または第三者の許可を受けて行い、(イ)そのことで恩恵を受ける場合に使う形。条件をどの程度満たすかで許容度が変わる。

例題

例題:受付で「担当者に伺ってください。」と言われて妙に感じた。どこが変か。
答えと考え方 伺う は謙譲語Ⅰで、聞く・尋ねる の向かう先である担当者を立ててしまう。客を立てるには尊敬語を使い「担当者にお聞きください」「担当者にお尋ねください」とする。
例題:社長の指示を部下に伝えるとき「そのように申し伝えておきます。」でよいか。
答えと考え方 よい。申す は謙譲語Ⅱで、相手である社長に対して改まって述べたものであり、向かう先である部下を立てるものではない。
例題:発表会の冒頭で「発表させていただきます。」と言うのはどうか。
答えと考え方 許可と恩恵の条件を満たしていれば基本的な用法に合う。許可の条件がない場合にはやや冗長になるため、「発表いたします。」の方が簡潔に感じられる。

出典・根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

4. 場面で決まる敬語(ウチとソト、ねぎらい、依頼)

同じ相手でも、だれに向かって話すかで敬語は変わります。身内の扱い、ねぎらいと褒め、依頼の仕方、マニュアル敬語を場面ごとに確かめます。

取引先に対しては、上司も自分側すなわちウチの人になります。日ごろ敬語で話している田中部長のことも、社外の人に話すときは「田中」と呼んで問題ありません。「部長の田中」のように職階を示したうえでウチ扱いにする言い方もあり、改まった場面では「弊社の部長」、ややくだけた場面では「うちの部長」とも言えます。注意したいのは「田中部長」で、これはウチ扱いにした呼び方にはならないため不適切です。自分の家族についても、改まった場面では 父・母・祖父・祖母・兄・姉 のように言うのが基本です。

ウチ・ソトは相手が変われば線の引き方も変わります。社員だけの忘年会で司会をするなら、社長を立てて「社長からごあいさつを頂きます。」でよく、社外の人が多い会では、その人たちを立てて「社長からごあいさつを申し上げます。」とします。係長が部長を相手に課長の発言を伝える場合は、部長から見れば課長は立てる対象と認識されないため、課長を立てずに「課長は、このように申しておりました。」と謙譲語Ⅱで述べるのがよいとする考え方があります。一方で、課長を立てればさらに上の部長も立てることになるとして「おっしゃっていました」を認める考え方もあり、その場合も敬語を抑え気味にして「言われていました」程度にする配慮が考えられます。なお学校では、同僚の田中教諭の不在を保護者に伝えるとき、ウチ・ソトの意識では「田中はおりません。」ですが、世論調査では「田中先生」を支持する人が多く、「田中教諭」と職名で呼ぶ中立的な方法もあります。

ねぎらいと褒めには向きがあります。「御苦労様」は、基本的に自分側のために仕事をしてくれた人にねぎらいの気持ちを込めて使う表現で、ねぎらいは上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人には用いない方がよいとされます。仕事を教えてくれた上司には「ありがとうございました。」と感謝を伝え、一緒に書類作成に追われた上司が帰るときは「お疲れ様でございました。」などと言えばよいでしょう。褒めについても、身に付けるものや持ち物、容姿を褒められるのは基本的に親しい関係の人同士で、それほど親しくない講師のネクタイを褒めるのは適切とは言えません。講演の内容が分かりやすかった、参考になったという点を伝える方が適切です。また、上位者に能力や意思や願望を直接尋ねるのは避け、「フランス語もお話しになりますか。」のように事実を問う形にします。

呼び方と依頼にも型があります。「あなた」は現在では同等または下位の人に使うのが一般的で、上位者には用いにくい語です。名前を知っている相手は名前で呼び、知らない相手にはその人の動作に敬語を使って「お考えをお聞かせください。」とすれば避けられます。手紙のあて名では、氏名が明らかなのに「山田一郎先生御中」とするのは不適切で、御中 は組織や機関の中にいる関係者へあてることを表す脇付けだからです。依頼では、自分が責任者でないのに「この仕事をしていただきます。」と言うと決定権を持っているような表現になるので、「していただけますか。」「お願いできますか。」と相手に判断をゆだねます。突然「これ、お願いします。」と置いていくのではなく、「すみませんが」などの前置きを添えるだけで印象は変わります。

接客のマニュアル敬語も、型として有効である一方、誤ったまま定着しているものがあります。「御注文の品はおそろいになりましたでしょうか。」は、「お……になる」が尊敬語の形であるため、御注文の品という物を立ててしまっています。「御注文の品は、そろいましたでしょうか。」あるいは「御注文の品は、以上でよろしいでしょうか。」とします。指針は、マニュアルが場面ごとに過度に画一的な敬語使用を示すと、かえって不快な思いを与えたり、その場にそぐわない過不足のある敬語使用になったりしやすいと指摘しつつ、まだ習熟していない人への手引としては有効だとも述べています。

だれに話すかで変わる言い方
場面適切とされる言い方指針が示す理由
社員だけの忘年会で社長のあいさつを紹介する社長からごあいさつを頂きます会社内での立場だけを考えればよく、社長は立てるべき存在
社外の人が多い会で社長のあいさつを紹介する社長からごあいさつを申し上げますウチの社長は立てず、あいさつを聞く人たちを立てる
取引先に上司の田中部長のことを話す田中/部長の田中/弊社の部長ウチ扱いにする。「田中部長」はウチ扱いの呼び方にならない
部長を相手に課長の発言を伝える課長は、このように申しておりました部長から見れば課長は立てる対象と認識されない
改まった場面で自分の家族のことを話す父・母・祖父・祖母ふだんの「お父さん」などをウチ扱いの語に改める
場面ごとの言い換え目上に「御苦労様でした」 → 「ありがとうございました」(感謝に変える)一緒に働いた上司へ → 「お疲れ様でございました」「フランス語もお話しになれますか」 → 「フランス語もお話しになりますか」(事実を問う)「どこへいらっしゃるつもりですか」 → 「どちらへいらっしゃいますか」責任者でないのに「していただきます」 → 「していただけますか」「御注文の品はおそろいになりましたでしょうか」 → 「御注文の品は、そろいましたでしょうか」

用語

ウチ・ソト
自分側とみなす範囲と、その外側の相手側との区別。社外の人に対しては、自分の上司もウチの人物として扱い、立てずに述べる。
部長の田中
職階を示したうえでウチ扱いにした呼び方。「田中」「弊社の部長」も可。「田中部長」はウチ扱いの呼び方にならないため社外には不適切。
御苦労様
自分側のために仕事をしてくれた人へのねぎらいの表現。ねぎらいは上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人には用いない方がよい。
お疲れ様
一緒に仕事をした後などに互いに掛け合うねぎらいの表現。「お疲れ様でございました」のような丁寧な言い方であれば、上司に対しても使える。
とんでもございません
相手からの褒めや賞賛を軽く打ち消すときの表現。現在ではこうした状況で使うことに問題はないとされる。
御中
具体的な人ではなく、その組織や機関の中にいる関係者へあてることを表す脇付け。氏名が明らかな場合に添えるのは不適切。
マニュアル敬語
接客場面などの言語使用を具体的に示したもの。型として有効だが、過度に画一的な使用は過不足のある敬語使用につながりやすい。

例題

例題:取引先からの電話に「田中部長は席を外しております。」と答えた。よいか。
答えと考え方 よくない。社外の人に対しては上司もウチの人物なので「田中は席を外しております」「部長の田中は席を外しております」とする。「田中部長」はウチ扱いにした呼び方にならない。
例題:講演会の講師に懇親会で「すてきなネクタイですね。」と褒めてよいか。
答えと考え方 適切とは言えない。身に付けるものを褒められるのは基本的に親しい関係の人同士で、それほど親しくない相手ではなれなれしく受け取られる。講演の内容が分かりやすかった、参考になったという点を伝える方がよい。
例題:料理を出し終えて「御注文の品はおそろいになりましたでしょうか。」と言った。どこが誤りか。
答えと考え方 「お……になる」は尊敬語の形なので、御注文の品という物を立てていることになる。「御注文の品は、そろいましたでしょうか。」「御注文の品は、以上でよろしいでしょうか。」とすればよい。

出典・根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

確認問題(40問)

四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。

問1|敬語の5分類

文化庁「敬語の指針」が示す敬語の5種類に含まれないものはどれか。

  1. 尊大語
  2. 美化語
  3. 謙譲語Ⅱ(丁重語)
  4. 丁寧語
正解と解説
正解:A. 尊大語

指針は敬語を、尊敬語・謙譲語Ⅰ・謙譲語Ⅱ(丁重語)・丁寧語・美化語の5種類に分けている。尊大語という区分はない。従来の3分類では、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱがまとめて「謙譲語」、丁寧語と美化語がまとめて「丁寧語」とされていた。指針は、働きと適切な使い方をより深く理解するために5種類に分け直したと述べている。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問2|尊敬語の定義

「相手側又は第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べるもの」と指針が定義しているのはどの敬語か。

  1. 謙譲語Ⅰ
  2. 謙譲語Ⅱ(丁重語)
  3. 美化語
  4. 尊敬語
正解と解説
正解:D. 尊敬語

引用は尊敬語の定義。謙譲語Ⅰは自分側から相手側や第三者に向かう行為について、その向かう先を立てるもの。謙譲語Ⅱは自分側のことを話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。美化語はものごとを美化して述べるもので、立てる相手はない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問3|伺うの分類

「先生のところに伺います。」の「伺う」は、指針の5分類ではどれに当たるか。

  1. 尊敬語
  2. 謙譲語Ⅰ
  3. 謙譲語Ⅱ(丁重語)
  4. 丁寧語
正解と解説
正解:B. 謙譲語Ⅰ

伺う は、行為の向かう先である先生を立てる謙譲語Ⅰの特定形。行く・訪ねる のほか、聞く・尋ねる の謙譲語Ⅰとしても使う。同じ「行く」でも 参る は謙譲語Ⅱで、立てるのは話や文章の相手であり、向かう先の人物ではない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問4|参る申すの型

参る・申す・いたす・おる を、指針はどの種類の敬語としているか。

  1. 尊敬語
  2. 謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱ
  3. 謙譲語Ⅱ(丁重語)
  4. 美化語
正解と解説
正解:C. 謙譲語Ⅱ(丁重語)

これらは、自分側の行為やものごとを話や文章の相手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱ(丁重語)の特定形で、存じる も同じ。謙譲語Ⅰの 伺う・申し上げる が向かう先を立てるのに対し、謙譲語Ⅱが立てるのは話や文章の相手である点が違う。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問5|弟のところへ

他人に対して、これから自分の弟の家に行くことを述べる。適切なものはどれか。

  1. 弟のところに伺います
  2. 弟のところに参ります
  3. 弟のところにいらっしゃいます
  4. 弟のところにおいでになります
正解と解説
正解:B. 弟のところに参ります

伺う は謙譲語Ⅰで向かう先を立てるため、自分側の弟を立てることになり誤用。参る は謙譲語Ⅱで、立てるのにふさわしい向かう先がなくても使え、話や文章の相手に丁重に述べる働きをするので問題ない。いらっしゃる・おいでになる は尊敬語なので、自分の行為には使えない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問6|バスが参る

駅の構内放送で「あ、バスが参りました。」と述べることについて、指針の説明はどれか。

  1. 自分側の行為ではないため、この場面で 参る を使うことはできず、誤用になる
  2. バスそのものを立てることになるので、放送での言い方としては適切とはいえない
  3. 立てなくても失礼に当たらない事物にも使え、相手に丁重に述べる働きをする
  4. 参る は丁寧語なので、駅の構内放送のような改まった場面には向いていない
正解と解説
正解:C. 立てなくても失礼に当たらない事物にも使え、相手に丁重に述べる働きをする

謙譲語Ⅱは基本的に自分側の行為に使うが、指針は「向こうから子供たちが大勢参りました」「あ、バスが参りました」「夜も更けて参りました」を挙げ、立てなくても失礼に当たらない第三者や事物についても使えるとしている。働きは、話や文章の相手に対して丁重に述べることであり、参る は丁寧語ではない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問7|来客への問い

来客に、どこから来たのかを尋ねる。指針に照らして不適切なものはどれか。

  1. どちらからいらっしゃいましたか
  2. どちらからおいでになりましたか
  3. どちらから来られましたか
  4. どちらから参りましたか
正解と解説
正解:D. どちらから参りましたか

参る は謙譲語Ⅱで基本的に自分側の行為に使うため、指針は「(あなたは)どちらから参りましたか。」を不適切な例として挙げている。相手側の行為には尊敬語を使い、いらっしゃる、おいでになる、来られる とする。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問8|お待ちいたす

「駅で先生をお待ちいたします。」の「お待ちいたす」を、指針はどう位置付けているか。

  1. 謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱで、先生を立てつつ相手に丁重に述べる
  2. 同じ種類の敬語を重ねた二重敬語なので、避けるべき言い方である
  3. 尊敬語であるから、待つ相手である先生の行為についてしか使えない
  4. 美化語なので、改まった場面で用いるのには向かない言い方になる
正解と解説
正解:A. 謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱで、先生を立てつつ相手に丁重に述べる

「お待ちいたす」は「お待ちする」の する を いたす に代えたもので、謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱの両方が使われている。お待ちする の働きで待つ相手の先生を立て、いたす の働きで話や文章の相手に丁重に述べる。指針はこれを「謙譲語Ⅰ」兼「謙譲語Ⅱ」の一般形「お(ご)……いたす」として説明している。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問9|お酒の分類

「お酒は百薬の長なんだよ。」と述べる場合の「お酒」は、指針の5分類ではどれに当たるか。

  1. 尊敬語
  2. 謙譲語Ⅰ
  3. 美化語
  4. 丁寧語
正解と解説
正解:C. 美化語

この「お酒」は、行為者や所有者を立てるのでも、向かう先を立てるのでも、相手に丁重・丁寧に述べるのでもなく、ものごとを美化して述べているので美化語。ただし「先生はお酒を召し上がりますか。」のように、相手に配慮して述べるときには美化語が表れやすいと指針は述べている。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問10|身内の外出

他社の人に、父が来週から海外へ行くことを伝える。適切なものはどれか。

  1. 父は来週海外へいらっしゃいます
  2. 父は来週海外へ参ります
  3. 父は来週海外へお出掛けになります
  4. 父は来週海外へ行かれます
正解と解説
正解:B. 父は来週海外へ参ります

尊敬語や謙譲語Ⅰを使うときの原則の一つが「自分側は立てない」。いらっしゃる、お出掛けになる、行かれる はいずれも尊敬語なので、自分側の父を立てることになり不適切。自分側のことを述べるには謙譲語Ⅱの 参る を使うと、相手に対する丁重な述べ方になる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第1 敬語の種類と働き

問11|二重敬語

「部長がお読みになられる」という言い方の説明として正しいものはどれか。

  1. 同じ種類の敬語を重ねた二重敬語で、一般に適切ではない
  2. 二つの語をそれぞれ敬語にした敬語連結で、基本的に許容される
  3. 尊敬語と謙譲語Ⅰを混同した誤りである
  4. 丁寧語を重ねたもので、丁寧さが増すので望ましい
正解と解説
正解:A. 同じ種類の敬語を重ねた二重敬語で、一般に適切ではない

「読む」を「お読みになる」と尊敬語にした上で、さらに尊敬語の「……れる」を加えたもので、指針が二重敬語の例として挙げている形。二重敬語は一般に適切ではないとされ、「お読みになる」で足りる。二つの語をそれぞれ敬語にして「て」でつないだ「お読みになっていらっしゃる」の方が敬語連結で、これは基本的に許容される。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問12|定着した形

二重敬語だが習慣として定着していると指針が挙げているものはどれか。

  1. お読みになられる
  2. 御利用される
  3. お分かりにくい
  4. お伺いする
正解と解説
正解:D. お伺いする

指針は定着した二重敬語として、尊敬語の お召し上がりになる・お見えになる と、謙譲語Ⅰの お伺いする・お伺いいたす・お伺い申し上げる を挙げている。お読みになられる は適切ではない二重敬語、御利用される は規範的には適切な尊敬語の形ではないとされる形、お分かりにくい は「お分かりになりにくい」とすべき形。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問13|敬語連結

「お読みになっていらっしゃる」を、指針はどう扱っているか。

  1. 二重敬語なので避けるべきである
  2. 敬語連結であり、基本的に許容される
  3. 謙譲語Ⅰなので相手側の行為には使えない
  4. 美化語なので改まった場面には向かない
正解と解説
正解:B. 敬語連結であり、基本的に許容される

「読んでいる」の 読む を「お読みになる」に、いる を「いらっしゃる」に、二つの語をそれぞれ別々に敬語にして「て」でつないだもの。これは二重敬語ではなく敬語連結で、個々の敬語の使い方が適切で、敬語同士の結び付きに意味的な不合理がなければ基本的に許容される。「お読みになってくださる」「御案内してさしあげる」も許容される例。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問14|不適切な連結

指針が不適切な敬語連結として挙げている言い方はどれか。

  1. 先生が指導してくださった
  2. 先生に指導していただいた
  3. 先生は私の家に伺ってくださった
  4. 田中さんが先生のところに伺ってくださいました
正解と解説
正解:C. 先生は私の家に伺ってくださった

「先生が私の家を訪ねる」ことを謙譲語Ⅰの 伺う で述べると、向かう先である「私」を立ててしまうため不適切。「隣の窓口で伺ってください。」も同じ理由で不適切になる。一方、田中さんの例は、伺う が向かう先の先生を立て、くださる が田中さんを立てており、行為者の田中さんが先生に比べれば立てなくても失礼に当たらない人物である場合には問題のない使い方。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問15|おと御

「お」と「御」の使い分けの原則から外れた変則的な例として、指針が挙げているものはどれか。

  1. お名前
  2. 御住所
  3. お加減
  4. 御説明
正解と解説
正解:C. お加減

原則は「お+和語」「御+漢語」。お名前 は和語に お、御住所・御説明 は漢語に 御 で原則どおり。お加減・お元気 はいずれも尊敬語だが漢語に お が付く変則的な例として指針が挙げている。なお美化語では、お料理・お化粧 のように漢語の前でも お が好まれる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問16|作れない形

「お(ご)……する」の形を作ることができない例として、指針が挙げているものはどれか。

  1. お届けする
  2. 御案内する
  3. お誘いする
  4. 御乗車する
正解と解説
正解:D. 御乗車する

「お(ご)……する」は向かう先を立てる謙譲語Ⅰなので、向かう先の人物がある動詞に限って作れる。届ける・案内する・誘う には向かう先があるが、乗車する・食べる には向かう先の人物が想定できないため、御乗車する・お食べする という形は作れない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問17|乗車の案内

駅の放送で、その車両には乗れないことを乗客に伝える。適切なものはどれか。

  1. 御乗車になれません
  2. 御乗車できません
  3. 御乗車されません
  4. お乗車になれません
正解と解説
正解:A. 御乗車になれません

「お(ご)……できる」は謙譲語Ⅰ「お(ご)……する」の可能形なので、乗客の行為には使えない。尊敬語の可能形は「お(ご)……になれる」であり「御乗車になれません」が適切で、指針は「御乗車いただけません」「御乗車はできません」も可能としている。「ご……される」は本来、尊敬語の適切な形ではないとされ、乗車 は漢語なので お ではなく 御 が原則。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問18|可能の尊敬語

客に「全問正しく答えることができたら賞品を進呈します」と伝えたい。答えることができたら に当たる部分として適切なものはどれか。

  1. お答えできたら
  2. お答えになれたら
  3. お答えしていただけたら
  4. お答え申し上げたら
正解と解説
正解:B. お答えになれたら

尊敬語に可能の意味を添えるときは、まず「お答えになる」と尊敬語の形にしてから「お答えになれる」と可能の形にする。指針は「全問正しくお答えできたら」を不適切とし「お答えになれたら」を適切としている。お答えする・お答え申し上げる は謙譲語Ⅰで自分の行為に使う形、「お答えしていただく」は相手の行為を謙譲語Ⅰで述べたもので、して を削って「お答えいただく」とすべき形。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問19|分かりにくい

「分かりにくい」を尊敬語にした形として適切なものはどれか。

  1. お分かりにくい
  2. 御分かりにくい
  3. お分かりしにくい
  4. お分かりになりにくい
正解と解説
正解:D. お分かりになりにくい

動詞と形容詞が組み合わさった語を尊敬語にするときは、動詞の部分だけを尊敬語にする。分かる を「お分かりになる」にして「〜にくい」を付け、「お分かりになりにくい」とする。「読みやすい」なら「お読みになりやすい」。お分かりにくい は指針が変な敬語として取り上げた形、「お……する」は謙譲語Ⅰの形で相手の動作には使えず、分かる は和語なので 御 はなじまない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問20|拙著小社

「愚見」「小社」「拙著」「弊社」のような語を、指針はどう位置付けているか。

  1. 尊敬語で、相手のものを高く表す
  2. 謙譲語Ⅰで、向かう先を立てる
  3. 名詞の謙譲語Ⅱで、ほぼ書き言葉専用
  4. 美化語で、話し言葉で広く使う
正解と解説
正解:C. 名詞の謙譲語Ⅱで、ほぼ書き言葉専用

愚・小・拙・弊 を付けて自分側を控え目に表す語で、名詞の謙譲語Ⅱとして位置付けられ、ほぼ書き言葉専用。指針は、こうした言い方を卑屈な言い方ではなく、自分にかかわるものを小さく表すことで相手への配慮を示す意識で使われるものだとし、自己表現として自分の気持ちに合うと思う場合には使えばよいとしている。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第2章 敬語の仕組み 第2 敬語の形

問21|受付の案内

受付で、詳しくは担当者に尋ねてほしいと客に伝える。適切なものはどれか。

  1. 担当者に伺ってください
  2. 担当者にお聞きしてください
  3. 担当者にお尋ねしてください
  4. 担当者にお尋ねください
正解と解説
正解:D. 担当者にお尋ねください

伺う は謙譲語Ⅰで、聞く・尋ねる の向かう先である担当者を立ててしまうため、客の動作には使えない。客を立てるには尊敬語を用いて「担当者にお聞きください」「担当者にお尋ねください」とする。お聞きする・お尋ねする も 伺う と同じ謙譲語Ⅰなので、ください を付けても客の動作には使えない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問22|課長への確認

課長がファイルを会議室に持っていくかどうかを尋ねたい。適切なものはどれか。

  1. そのファイルも会議室にお持ちしますか
  2. そのファイルも会議室にお持ちになりますか
  3. そのファイルも会議室にお持ちいたしますか
  4. そのファイルも会議室にお持ち申し上げますか
正解と解説
正解:B. そのファイルも会議室にお持ちになりますか

「お持ちする」は謙譲語Ⅰなので、これでは自分が持っていくかどうかを尋ねたことになり、指針の例では課長も「よろしく頼むよ」と答えてしまっている。課長の動作を尋ねるには尊敬語で「お持ちになりますか」とする。お持ちいたす は謙譲語Ⅰ兼謙譲語Ⅱ、お持ち申し上げる も謙譲語Ⅰで、どちらも自分側の行為に使う形。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問23|御在宅する

点検のお知らせに「消防設備等の点検に伺いますが、御在宅する必要はありません。」とあった。問題はどこか。

  1. 「御在宅する」が謙譲語Ⅰを作る形なので、相手の在宅に使えない
  2. 「伺います」が尊敬語なので、点検に行く自分側の行為には使えない
  3. 「点検」に「御」が付いておらず、美化語の形になっていない点である
  4. 「必要はありません」が丁寧語になっておらず、言い切りの形である
正解と解説
正解:A. 「御在宅する」が謙譲語Ⅰを作る形なので、相手の在宅に使えない

「ご……する」は謙譲語Ⅰを作る形式である。ここは在宅している相手を立てて表現したい場面なので、「御在宅なさる必要…」あるいは、より簡潔に「御在宅の必要…」と尊敬語を用いるべき。なお「伺います」は謙譲語Ⅰで、点検に行く自分側の行為に使っているので問題はない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問24|第三者を立てる

恩師の加藤先生に、もう一人の恩師である田中先生を訪ねることを伝える。田中先生を立てられる言い方はどれか。

  1. 田中先生のところに参ります
  2. 田中先生のところに行かせていただきます
  3. 田中先生のところに伺います
  4. 田中先生のところにいらっしゃいます
正解と解説
正解:C. 田中先生のところに伺います

参る は謙譲語Ⅱで、立てるのは話の相手である加藤先生であって、話の中に出てくる第三者の田中先生を立てる働きはない。田中先生を立てるには、向かう先を立てる謙譲語Ⅰの 伺う を使う。「(さ)せていただく」は許可を受けて行い恩恵を受ける場合の形で向かう先を立てる働きはなく、いらっしゃる は尊敬語なので自分の行為には使えない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問25|御持参ください

「御持参ください」「お申し出ください」について、指針の説明はどれか。

  1. 含まれる「参る」「申す」が謙譲語Ⅱとして働いているので、相手側の行為に用いることはできない
  2. 含まれる「参る」「申す」は謙譲語Ⅱとして働いておらず、相手側の行為に用いて問題ない
  3. 「御」や「お」に「参る」「申す」を重ねた二重敬語に当たるので、相手側の行為には用いない
  4. ものごとを美化して述べる美化語に当たるので、改まった場面で用いるのには向かない言い方である
正解と解説
正解:B. 含まれる「参る」「申す」は謙譲語Ⅱとして働いておらず、相手側の行為に用いて問題ない

参る・申す は謙譲語Ⅱに当たる敬語だが、「御持参ください」「お申し出ください」「お申し込みください」に含まれる 参・申 は謙譲語Ⅱとしての働きは持っていないので、相手側の行為に用いて問題ない。気になる場合は「お持ちください」「おっしゃってください」と言い換えられ、「お申し込みください」は状況によっては「御応募ください」に代えられる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問26|申し伝える

社長から部下への指示を頼まれ「そのように申し伝えておきます。」と答えた。この言い方の評価はどれか。

  1. 「申す」で向かう先の部下を立てることになるので、この言い方は不適切
  2. 「申し伝える」は敬語を二つ重ねた二重敬語なので使ってはならない
  3. 「お伝え申し上げます」と謙譲語Ⅰの形に直さなければならない
  4. 「申す」は相手である社長に改まって述べたもので、問題ない
正解と解説
正解:D. 「申す」は相手である社長に改まって述べたもので、問題ない

「申し伝えておく」は、部下に言っておくということを謙譲語Ⅱの 申す を使って表現したもの。謙譲語Ⅱが立てるのは話や文章の相手なので、ここでは社長に対して改まって述べたことになり、向かう先である部下を立てるものではない。したがって問題のない使い方。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問27|自分側のお

自分側のことに「お」「御」を付けた次の例のうち、指針が誤用としているものはどれか。

  1. 先生をお待ちする
  2. 山田さんに御説明をしたい
  3. 私のお考えでは
  4. 私のお菓子
正解と解説
正解:C. 私のお考えでは

自分側の動作でも、向かう先を立てる謙譲語Ⅰであれば「お待ちする」「御説明をしたい」と お・御 を付けて全く問題がなく、「私のお菓子」のように美化語として用いる場合もある。誤用になるのは「私のお考え」「私の御旅行」のように自分側の動作やものごとを立ててしまう場合で、自分側に尊敬語を用いることになるから。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問28|いただく

「御利用いただきましてありがとうございます。」と「御利用くださいまして…」の関係について、指針の説明はどれか。

  1. 前者は謙譲語Ⅰ、後者は尊敬語で、どちらも適切に敬語が用いられている
  2. 「御利用いただく」は利用するのが相手なので、敬語の使い方として誤用である
  3. 「御利用くださる」は謙譲語Ⅰなので、客の行為について用いることはできない
  4. どちらも同じ種類の敬語を重ねた二重敬語なので、避けなければならない言い方
正解と解説
正解:A. 前者は謙譲語Ⅰ、後者は尊敬語で、どちらも適切に敬語が用いられている

「御利用いただく」は謙譲語Ⅰ、「御利用くださる」は尊敬語という違いはあるが、立てるべき対象はどちらも同じで、恩恵を受けるという認識を表す点も同じなので、どちらも適切に敬語が用いられている。御利用いただく は、自分側の立場から相手側や第三者の行為を表現した敬語で、慣用的な用法として特に問題はない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問29|させて頂く

「(お・ご)……(さ)せていただく」という形式が基本的に使われるのは、どのような場合か。

  1. 相手側や第三者の行為について、その人物を立てて敬意を高く表したいと考える場合に使う形式
  2. 自分側が行うことを、相手側または第三者の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場合
  3. 自分の決定を相手に伝える場合
  4. 目上の人の労をねぎらう場合
正解と解説
正解:B. 自分側が行うことを、相手側または第三者の許可を受けて行い、そのことで恩恵を受ける場合

指針は、この形式が基本的に、(ア)相手側または第三者の許可を受けて行い、(イ)そのことで恩恵を受けるという事実や気持ちのある場合に使われるとし、(ア)(イ)をどの程度満たすかによって、適切な場合と余り適切だとは言えない場合とがあるとしている。相手の行為を立てるのは尊敬語の役割。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問30|許容度

「させていただく」の例のうち、許可と恩恵という基本的な用法に合致していると指針が判断しているものはどれか。

  1. 結婚式の祝辞で「私は、新郎と3年間同じクラスで勉強させていただいた者です。」
  2. 店の張り紙で「本日、休業させていただきます。」
  3. 自己紹介で「私は、○○高校を卒業させていただきました。」
  4. 相手の本をコピーする前に「コピーを取らせていただけますか。」
正解と解説
正解:D. 相手の本をコピーする前に「コピーを取らせていただけますか。」

コピーの例は、相手の許可を求め、そのことで恩恵を受けるという(ア)(イ)の条件を満たすので、基本的な用法に合致していると判断できる。休業の例は、許可の条件がない場合にはやや冗長な言い方になり「休業いたします」の方がよい。結婚式の祝辞の例と卒業の例は、(ア)(イ)の両方を満たしていないと感じる場合には不適切だと判断される。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第2 敬語の適切な選び方

問31|上司の呼び方

取引先の相手に、上司である田中部長が外出していることを伝える。不適切なものはどれか。

  1. 田中はただいま外出しております
  2. 部長の田中はただいま外出しております
  3. 田中部長はただいま外出しております
  4. 弊社の部長はただいま外出しております
正解と解説
正解:C. 田中部長はただいま外出しております

社外の人に対しては上司も自分側の人物なので、ウチ扱いにして「田中」と呼ぶことに問題はなく、「部長の田中」と職階を示した上で呼ぶこともできる。改まった場面では「弊社の部長」とも言える。「田中部長」はウチ扱いにした呼び方にはならないので不適切。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問32|同僚の不在

保護者からの電話に、同僚の田中教諭の不在を伝える。ウチ・ソトの意識に基づく言い方はどれか。

  1. 田中はおりません
  2. 田中先生はおりません
  3. 田中先生はいらっしゃいません
  4. 田中先生はお出掛けになっています
正解と解説
正解:A. 田中はおりません

ウチ・ソトの意識に基づけば同僚の田中教諭はウチの人なので「田中はおりません」と伝える方がよい。ただし指針は、世論調査では保護者に対して「田中先生」という言い方を支持する人が多いこと、「田中教諭」と職名で呼べば中立的な言い方になることも述べている。いらっしゃる・お出掛けになる は尊敬語で、身内を立てることになる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問33|社長の挨拶

社外の人が多くいる会の司会で、社長のあいさつを紹介する。指針が適切とするものはどれか。

  1. 社長からごあいさつを頂きます
  2. 社長からごあいさつを申し上げます
  3. 社長がごあいさつをなさいます
  4. 社長がごあいさつをされます
正解と解説
正解:B. 社長からごあいさつを申し上げます

社外の人が多くいる会では会社のウチ・ソトの関係が生じるので、ウチの社長は立てず、あいさつを聞く人たちを立てる謙譲語Ⅰを使って「社長からごあいさつを申し上げます」とする。社員だけの忘年会などなら、社長を立てる敬語で「社長からごあいさつを頂きます」でよい。なさる・される は尊敬語で、社長を立てることになる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問34|上司の上司

係長が部長を相手に課長の発言を伝える。課長から「わたしには敬語を使わなくていい」と指摘された考え方に沿う言い方はどれか。

  1. 課長は、このようにおっしゃっていました
  2. 課長は、このようにおっしゃられていました
  3. 課長は、このように言われていました
  4. 課長は、このように申しておりました
正解と解説
正解:D. 課長は、このように申しておりました

部長から見れば課長は立てる対象とは認識されないため、課長を立てずに、相手である部長に対して改まった謙譲語Ⅱで「申しておりました」とするのが、この指摘に沿う考え方。指針は、係長が課長を立てればさらに上の部長も立てることになるとして「おっしゃっていました」を認める考え方も示し、その場合は敬語を抑え気味にして「言われていました」程度にする配慮も挙げている。おっしゃられる は二重敬語。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問35|御苦労様

「御苦労様」について、指針の説明として正しいものはどれか。

  1. ねぎらいは上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人には用いない方がよい
  2. 目上にも下の人にも使える、最も丁寧なねぎらいの表現である
  3. 感謝を表す表現なので、教えてもらったときに使うのがよい
  4. 「お疲れ様」より改まった言い方なので、上司に使うのがよい
正解と解説
正解:A. ねぎらいは上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人には用いない方がよい

「御苦労様」は基本的に、自分側のために仕事をしてくれた人にねぎらいの気持ちを込めて用いる表現。ねぎらいは上位者から下位者に向けたものとなるため、目上の人には用いない方がよい。仕事を教えてくれた上司には「ありがとうございました」と感謝を表し、一緒に仕事をした上司には「お疲れ様でございました」などと言えばよい。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問36|とんでもない

部長に褒められて「とんでもございません。」と答えた。この表現について指針の説明はどれか。

  1. 「とんでもない」全体で一つの形容詞であり、その一部を変えた形なので、どのような場面でも使ってはならない
  2. 謙譲語Ⅱなので目上の人には使えない
  3. 相手の褒めや賞賛を軽く打ち消す表現であり、現在ではこうした状況で使うことに問題はない
  4. 「とんでもないことでございます」と言い換えれば全く同じ意味になる
正解と解説
正解:C. 相手の褒めや賞賛を軽く打ち消す表現であり、現在ではこうした状況で使うことに問題はない

指針は、褒めや賞賛などを軽く打ち消すときの「とんでもございません」を、現在ではこうした状況で使うことに問題はないとしている。使わない方がよいと言われる理由は「とんでもない」全体で一つの形容詞である点にあり、その立場では「とんでもないです」などとする。ただし「とんでもないことでございます」は、褒められた場面では相手の褒めたことがとんでもないという意味にも受け取られるおそれがある。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問37|あなた

「あなた」という呼び方について、指針の説明として正しいものはどれか。

  1. 現在では同等または下位の人に使うのが一般的で、上位者には用いにくい
  2. 本来から目下に対して使う語であり、敬語ではない
  3. どのような相手にも使える、最も丁寧な呼び方である
  4. 会議や面接など改まった場では使ってはならない
正解と解説
正解:A. 現在では同等または下位の人に使うのが一般的で、上位者には用いにくい

「あなた」は本来は敬意の高い敬語だったが、現在では年齢や立場が同等あるいは下位にある人に対して使うことが一般的となり、上位者には用いにくくなっている。名前を知っている相手は名前で呼び、知らない相手にはその人の動作に敬語を使って「お考えをお聞かせください」とすればよい。中立的な語感から会議の席上や面接試験などでは比較的多く用いられており、双方が理解していれば問題はない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問38|宛名書き

手紙のあて名書きとして、指針が不適切としているものはどれか。

  1. ○○中学校 山田一郎先生
  2. ○○中学校 山田一郎先生御中
  3. ○○中学校 山田一郎様
  4. ○○中学校 御中
正解と解説
正解:B. ○○中学校 山田一郎先生御中

御中 は、具体的な人ではなく、その組織や機関の中にいる関係者へあてるという意味を表す脇付け。氏名が明らかなのに添えると矛盾するので「山田一郎先生御中」は不適切で、「○○中学校 山田一郎先生」とすればよい。教師あてに「○○様」と書くこと自体は誤りではないが、生徒や保護者の立場からは「○○先生」の方が適切。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問39|依頼の仕方

自分が責任者ではない場面で、同僚に仕事を頼む。指針が勧める言い方はどれか。

  1. この仕事をしていただきます
  2. この仕事をしてもらいます
  3. この仕事をさせていただきます
  4. この仕事をしていただけますか
正解と解説
正解:D. この仕事をしていただけますか

自分が責任者でない場合は、「していただきます」のように自分が決定権を持っているような表現ではなく、「していただけますか」など相手に判断をゆだねる表現を用いる方がよい。「これお願いできますか」「お願いしてもいいですか」も同様。「させていただく」は自分側が行うことについての形なので、相手に頼む場面には合わない。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

問40|注文の品

料理を出し終えたときの客への声掛けとして、適切なものはどれか。

  1. 御注文の品は、そろいましたでしょうか
  2. 御注文の品はおそろいになりましたでしょうか
  3. 御注文の品はおそろいでしょうか
  4. 御注文の品はおそろいになられましたでしょうか
正解と解説
正解:A. 御注文の品は、そろいましたでしょうか

「お……になる」は尊敬語の形なので、「おそろいになる」では「御注文の品」という物を立てていることになる。「御注文の品は、そろいましたでしょうか」あるいは「御注文の品は、以上でよろしいでしょうか」とすればよい。指針が直接触れているのは「おそろいになりましたでしょうか」だが、「おそろいです」も「お(ご)……だ」という尊敬語の一般形と見れば同じく品物を立てることになり、「おそろいになられる」はさらに二重敬語が重なる。

根拠:文化審議会答申「敬語の指針」(平成19年2月2日)第3章 敬語の具体的な使い方 第3 具体的な場面での敬語の使い方

演習:この章の問題を解く

ランダム出題の演習ツールです(JavaScript が有効な場合に動きます)。上の「確認問題」はそのままでもすべて読めます。

※ 解説は学習用の情報提供です。最新の出題範囲・制度は必ず公式発表をご確認ください。
※ 敬語は文化庁「敬語の指針」(平成19年文化審議会答申)に沿っています。マナーの慣行は広く一般に通用する形を紹介するもので、業界・会社により異なる場合があります。