医療情報技師 HEALTHCARE INFORMATION TECHNOLOGIST
診療記録と医学研究
講義 4 本・確認問題 30 問 | 本試験では「医学・医療系」(50問)の一部 | 最終更新 2026-09-24
この章で学ぶこと- 診療録(カルテ)をはじめとする医療記録は、診療の質と継続性を支え、法的な証拠にもなる医療の基盤です。記録の目的・種類・法定保存期間・POS/SOAPによる記載・監査までを整理します。
- 病名・手術・検査・医薬品を共通のコードで表すことで、施設を越えた情報共有や統計・請求が可能になります。ICD、標準病名マスター、DPC、Kコードなど代表的な標準コードを整理します。
- エビデンスをつくる研究デザイン(RCT・コホート・症例対照・横断)と、その信頼性の序列(エビデンスレベル)、研究倫理(倫理審査・利益相反・オプトアウト)、治験の流れを学びます。
- 平均・中央値・標準偏差などの記述統計、p値と信頼区間、感度・特異度・的中率・ROC曲線という診断の統計、そしてNDB・DPCデータ・がん登録などの臨床データベースを学びます。
1. 診療録と医療記録
診療録(カルテ)をはじめとする医療記録は、診療の質と継続性を支え、法的な証拠にもなる医療の基盤です。記録の目的・種類・法定保存期間・POS/SOAPによる記載・監査までを整理します。
医療記録(診療記録)を作成・利用する目的は、(1)診療の内容を正確に残して診療の質と継続性を確保する、(2)多職種のチーム医療で情報を共有する、(3)診療報酬請求の根拠とする、(4)医療事故や訴訟の際の法的な証拠となる、(5)研究・教育・統計に活用する、といった点にあります。患者への説明と同意(インフォームドコンセント)の内容も記録に残されます。
記録には法令上の定めがあります。医師が診療をしたときに遅滞なく記載する診療録は、医師法第24条により5年間の保存が義務づけられています(保険診療の診療録は療養担当規則により完結の日から5年)。また医療法・医療法施行規則により、病院の診療に関する諸記録(処方箋・手術記録・看護記録・検査所見記録・エックス線写真など)は2年間の保存が定められています。保険医療機関の療養の給付に関する帳簿・書類は完結の日から3年間、助産録は保健師助産師看護師法により5年間の保存です。診療の結果は転帰(治癒・軽快・寛解・不変・増悪・死亡・中止など)として記録されます。
記録の記載方法の代表が、問題志向型医療記録(POMR)です。POMRはPOS(問題志向型システム)の考え方に基づき、患者の医療上の問題ごとに記録を整理します。構成は、患者基本情報などの基礎データ(データベース)、問題点リスト、初期計画、経過記録です。経過記録はSOAP形式、すなわちS(Subjective:患者の訴えなど主観的情報)、O(Objective:診察所見・検査結果など客観的情報)、A(Assessment:評価・考察)、P(Plan:計画)で記載されます。
医療記録には多くの種類があります。患者基本情報を記載する一号用紙、日々の経過記録、入院時に交付される入院診療計画書や退院時の退院療養計画書などの説明と同意に関わる書類、医師の指示記録(指示簿・ワークシート)、手術記録・麻酔記録、検査記録(各種報告書とその未読・既読などのステータス管理)、看護記録(基礎情報・看護計画・経過記録・看護サマリー)、薬剤管理指導記録、リハビリテーション記録、栄養指導記録、クリニカルパス記録、カンファレンス記録などです。入院経過を要約した退院時サマリーは、記載後に指導医などが確認するカウンターサイン(承認)を経て完成します。患者本人に交付される健康記録として、母子手帳やお薬手帳、健康診断記録があります。
記録は書いて終わりではなく、監査(audit)により質が保たれます。必要な書類や署名がそろっているかをみる量的監査と、記載内容が診療の質の面で適切かをみる質的監査があります。また医療記録には真正性(誰がいつ書いたかが明確で、改ざんされていないこと)が求められます。紙の記録の訂正は、元の記載が判読できるように二重線などで行い、訂正者と日時を明らかにします。診療情報の患者への提供・開示については「診療情報の提供等に関する指針」が示されています。
医療記録の主な法定保存期間| 記録 | 根拠 | 保存期間 |
|---|
| 診療録 | 医師法第24条 | 5年間 |
| 診療録(保険診療) | 保険医療機関及び保険医療養担当規則 | 完結の日から5年間 |
| 診療に関する諸記録(処方箋・手術記録・看護記録・エックス線写真など) | 医療法・医療法施行規則 | 2年間 |
| 療養の給付に関する帳簿・書類 | 保険医療機関及び保険医療養担当規則 | 完結の日から3年間 |
| 助産録 | 保健師助産師看護師法 | 5年間 |
用語
- 診療録
- 医師が診療に関する事項を遅滞なく記載する記録。医師法第24条により5年間の保存が義務づけられている、医療記録の中心となる文書。
- 診療に関する諸記録
- 医療法・医療法施行規則が病院に備えることを定める記録。処方箋・手術記録・看護記録・検査所見記録・エックス線写真などで、保存期間は2年間。
- POMR
- 問題志向型医療記録。POSの考え方に基づき、基礎データ・問題点リスト・初期計画・経過記録という構成で、患者の問題ごとに記録を整理する方式。
- SOAP
- 経過記録の記載形式。S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(評価)・P(計画)の4要素で、POMRの経過記録に用いられる。
- 退院時サマリー
- 入院中の経過・治療・転帰を要約した記録。診療の継続や紹介、監査・統計に使われ、カウンターサイン(承認)を経て完成する。
- 転帰
- 診療の結果を表す区分。治癒・軽快・寛解・不変・増悪・死亡・中止などがあり、診療録や退院時サマリーに記載される。
- 量的監査・質的監査
- 医療記録の監査の2区分。量的監査は必要な記録・署名の有無など形式面を、質的監査は記載内容の適切さを評価する。
- 真正性
- 記録について、作成の責任の所在が明確で、故意または過失による虚偽入力・書換え・消去・混同が防止されていること。
例題
例題:SOAPのOに書くのはどんな情報?
答えと考え方 Objective=客観的情報。診察所見や検査結果など、医療者が観察・測定した事実を書きます。患者の訴えはS(Subjective)です。
例題:診療録と「診療に関する諸記録」で保存期間が違うのはなぜ覚えにくい?
答えと考え方 根拠法が違うからです。診療録は医師法で5年、看護記録やX線写真などの諸記録は医療法(施行規則)で2年と覚えます。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)第8章 診療録およびその他の医療記録(SBO 8.1.1〜8.3.1)
2. 病名と医療の標準コード
病名・手術・検査・医薬品を共通のコードで表すことで、施設を越えた情報共有や統計・請求が可能になります。ICD、標準病名マスター、DPC、Kコードなど代表的な標準コードを整理します。
医療情報をシステム間・施設間でやり取りし、統計や研究に活用するには、病名や処置を共通のコードで表す標準化が欠かせません。同じ疾患を施設ごとに別の名前で記録していては、集計も共有もできないからです。日本では医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が各種の標準マスターを整備しています。
病名の国際的な分類がWHOの国際疾病分類ICDです。現在日本の死因・疾病統計はICD-10に準拠した統計分類で行われています。WHOは2019年にICD-11を採択し(2022年発効)、日本でも国内適用に向けた作業が進められています。日常診療の病名記載には、ICD-10に対応づけられた「ICD10対応標準病名マスター」(MEDIS-DCが維持管理)が電子カルテやレセプト電算処理で広く使われています。関連する分類として、腫瘍の分類ICD-O-3、生活機能の分類ICF(国際生活機能分類)があり、これらはWHOの国際分類ファミリー(WHO-FIC)を構成します。
急性期入院医療の支払いには診断群分類DPCが使われます。DPCコードは14桁で、先頭の6桁が傷病名(最初の2桁が主要診断群MDC、続く4桁が細分類)を表し、以降で手術・処置や重症度などを表します。DPCに基づく1日当たり包括支払い制度がDPC/PDPSです。
手術・処置のコードには、診療報酬点数表の手術コードであるKコード、処置コードであるJコードのほか、国際的な手術・処置分類のICD-9-CM、外科系学会社会保険委員会連合による外保連コード、WHOが開発を進める医療行為分類ICHIがあります。
その他の主な標準コードとして、臨床検査項目のJLAC10、画像検査(放射線分野)の実施内容を表すJJ1017、医薬品のHOTコード(標準医薬品マスター)やレセプト電算処理用コード・薬価基準収載医薬品コード、医療材料などの物流で使われるGS1コード(GS1-128シンボルなどのバーコード)、看護実践用語標準マスタ(NANDA・NIC・NOCと並ぶ看護の標準用語)、国際的な検査コードLOINCなどがあります。用途(病名・手術・検査・医薬品・物流)ごとに対応するコードを整理して覚えることが重要です。
対象領域と主な標準コード| 対象 | 主な標準コード・分類 | メモ |
|---|
| 病名 | ICD-10/ICD-11・ICD10対応標準病名マスター | 統計はICD準拠。マスターはMEDIS-DCが管理 |
| 診断群分類 | DPC(14桁) | 先頭6桁が傷病名。DPC/PDPSで包括支払い |
| 手術・処置 | Kコード(手術)・Jコード(処置)・ICD-9-CM・外保連コード | Kコードは診療報酬点数表の手術コード |
| 臨床検査 | JLAC10・LOINC | JLAC10は日本の臨床検査項目コード |
| 画像検査 | JJ1017 | 放射線分野の手技・部位などを表す |
| 医薬品 | HOTコード・薬価基準収載医薬品コード・レセプト電算コード | HOTは各コードの橋渡し役 |
| 物流・材料 | GS1コード(GS1-128など) | バーコードでトレーサビリティを確保 |
| 看護 | 看護実践用語標準マスタ・NANDA・NIC・NOC | 看護行為・観察の標準用語 |
用語
- ICD
- WHOが定める国際疾病分類。死因・疾病統計の国際比較の基盤で、日本の統計は現在ICD-10準拠。2019年にICD-11が採択された。
- 標準病名マスター
- ICD-10に対応づけられた病名の標準マスター(ICD10対応標準病名マスター)。MEDIS-DCが維持管理し、電子カルテやレセプト電算処理で使われる。
- DPC
- 急性期入院医療の診断群分類。14桁のコードで先頭6桁が傷病名(MDC2桁+細分類4桁)を表し、DPC/PDPSによる1日当たり包括支払いに使われる。
- Kコード・Jコード
- 診療報酬点数表のコード。Kコードは手術、Jコードは処置を表し、診療報酬請求に用いられる。
- JLAC10
- 臨床検査項目の標準コード。検査の分析物・材料・測定法などを体系的に表し、検査結果の施設間共有や集計に使われる。
- HOTコード
- MEDIS-DCの標準医薬品マスターのコード。同じ医薬品を指す各種コード(薬価基準収載コード・レセプト電算コードなど)を橋渡しする。
- GS1-128
- 医薬品・医療材料のバーコード表示に使われるGS1標準のシンボル。商品識別コードや有効期限・ロットを表現し、トレーサビリティを支える。
- ICF
- WHOの国際生活機能分類。疾病の分類であるICDに対し、心身機能・活動・参加という生活機能と背景因子の視点で人の状態を分類する。
例題
例題:DPCコードの先頭6桁は何を表す?
答えと考え方 傷病名です。最初の2桁が主要診断群(MDC)、続く4桁がその細分類を表します。
例題:手術のKコードと処置のJコード、どちらも何のコード?
答えと考え方 診療報酬点数表のコードです。保険請求で手術はK、処置はJの区分番号で表されます。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)第8章(SBO 8.4.1〜8.4.4)
3. 医学研究の進め方と倫理
エビデンスをつくる研究デザイン(RCT・コホート・症例対照・横断)と、その信頼性の序列(エビデンスレベル)、研究倫理(倫理審査・利益相反・オプトアウト)、治験の流れを学びます。
医学研究は大きく、研究者が治療などを割り付ける介入研究と、割り付けをせずに観察する観察研究に分かれます。介入研究の代表が無作為化比較試験(RCT)で、対象者をランダムに介入群と対照群に割り付けて比較します。無作為割付により、群間の背景の偏りを減らせるのが強みです。
観察研究には主に3つの型があります。コホート研究は、要因に曝露した群(曝露群)と曝露していない群(非曝露群)を将来に向かって追跡し、疾患の発生(罹患率)を比較する前向きの研究で、相対危険度を直接計算できます。症例対照研究は、疾患のある群(症例)とない群(対照)を先に選び、過去の曝露を遡って比較する後ろ向きの研究で、オッズ比を指標とし、まれな疾患の研究に適し、比較的短期間・低コストで行えます。横断研究は一時点で曝露と疾患の有無を同時に調べる研究で、有病率の把握に適しますが、時間的な前後関係はわかりません。ほかに集団単位のデータで関連をみる生態学的研究、疾病の分布を記述する記述疫学があります。
研究結果の信頼性の序列がエビデンスレベルです。一般に、複数のRCTを系統的に統合したシステマティックレビュー/メタアナリシスが最も高く、個々のRCT、コホート研究、症例対照研究、症例報告、専門家の意見の順に低くなります。臨床上の疑問(Clinical Question)は、PICO/PECO(対象・介入または曝露・比較・アウトカム)の形で定式化します。観察研究では、選択バイアスや測定バイアスといった系統誤差、および曝露と結果の両方に関連して見かけの関連をつくる交絡因子に注意が必要です。
人を対象とする医学研究の国際的な倫理原則が、世界医師会のヘルシンキ宣言です。日本では「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」等に基づき、研究計画は倫理審査委員会(IRB)の審査・承認を受け、対象者からインフォームドコンセントを得るのが原則です。観察研究などでは、研究の情報を公開し、対象者が拒否できる機会を保障するオプトアウトの方式が認められる場合があります。研究者の利益相反(COI)は申告・開示して適切に管理し、改ざん・捏造などの研究不正は許されません。
医薬品の製造販売承認を目指して行われる臨床試験が治験です。治験はGCP(医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令)に従って実施され、少数の健康成人で安全性や薬物動態を調べる第I相試験、少数の患者で有効性・安全性や用量を探索する第II相試験、多数の患者で有効性を検証する第III相試験と進み、承認後の調査は第IV相と呼ばれます。治験を支援する専門職がCRC(治験コーディネータ)で、データは症例報告書(CRF)に記録され、電子的に収集する仕組みがEDCです。臨床試験はUMIN-CTRなどの臨床試験登録システムに事前登録されます。
主な研究デザインの比較| デザイン | 介入の有無 | 時間の向き | 主な指標・特徴 |
|---|
| 無作為化比較試験(RCT) | あり(無作為割付) | 前向き | 偏りを最小化。個別研究で最も高いエビデンス |
| コホート研究 | なし(観察) | 前向き | 罹患率・相対危険度。追跡に時間と費用がかかる |
| 症例対照研究 | なし(観察) | 後ろ向き | オッズ比。まれな疾患向き。バイアスに注意 |
| 横断研究 | なし(観察) | 一時点 | 有病率の把握。前後関係は不明 |
| 生態学的研究 | なし(観察) | 集団単位 | 地域・集団のデータで関連をみる |
| システマティックレビュー | 既存研究の統合 | — | 複数研究を系統的に統合。最上位のエビデンス |
用語
- RCT
- 無作為化比較試験。対象者をランダムに介入群と対照群へ割り付けて効果を比較する介入研究。群間の背景の偏りを減らせ、個別研究では最も信頼性が高い。
- コホート研究
- 曝露群と非曝露群を将来に向けて追跡し、疾患の発生を比較する前向きの観察研究。罹患率や相対危険度を直接求められる。
- 症例対照研究
- 疾患のある群とない群を選び、過去の曝露を遡って比較する後ろ向きの観察研究。オッズ比を指標とし、まれな疾患の研究に適する。
- エビデンスレベル
- 研究結果の信頼性の序列。システマティックレビュー/メタアナリシスが最上位で、RCT、コホート、症例対照、症例報告、専門家意見の順に低くなる。
- 交絡因子
- 調べたい曝露と結果の両方に関連し、見かけ上の関連をつくってしまう第三の因子。無作為割付や層別解析などで影響を抑える。
- ヘルシンキ宣言
- 世界医師会が採択した、人を対象とする医学研究の倫理的原則。インフォームドコンセントや倫理審査の考え方の国際的な基盤。
- オプトアウト
- 研究の情報を公開し、対象者が参加を拒否できる機会を保障したうえで、拒否がなければ既存情報等を研究に利用する方式。
- GCP
- 医薬品の臨床試験の実施の基準。治験の科学的な質と被験者の人権・安全を守るための省令で、治験はこれに従って行われる。
例題
例題:まれな疾患の要因を調べたい。向いている研究デザインは?
答えと考え方 症例対照研究。疾患のある人を先に集めて過去の曝露を遡るので、まれな疾患でも成立します。
例題:オプトインとオプトアウトの違いは?
答えと考え方 オプトインは同意した人だけを対象にする方式、オプトアウトは情報公開のうえ拒否がなければ利用できる方式です。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)第9章 医学研究(SBO 9.1.1〜9.2.3)
4. 医学統計と臨床データベース
平均・中央値・標準偏差などの記述統計、p値と信頼区間、感度・特異度・的中率・ROC曲線という診断の統計、そしてNDB・DPCデータ・がん登録などの臨床データベースを学びます。
データのまとめ方の基本が記述統計です。分布の中心を表す代表値には、すべての値の合計を個数で割った平均値、値を並べたときの真ん中の中央値、最も多く現れる最頻値があります。平均値は外れ値(極端な値)に引っ張られやすく、中央値は外れ値に対して頑健です。ばらつきは分散・標準偏差や四分位範囲で表し、分布の形は箱ひげ図やヒストグラムで可視化します。変量には、血圧のような量的変量と、血液型のような質的(カテゴリ)変量があり、適するまとめ方・グラフ(棒グラフ・円グラフ・折れ線グラフ・箱ひげ図など)が異なります。
2つの量的変量の関連の強さは相関係数(−1から+1)で表します。+1に近いほど正の相関、−1に近いほど負の相関が強いことを示しますが、相関があることは因果関係を意味しません。一方の変量から他方を予測する式を求めるのが回帰分析(単回帰)です。
検定は、まず「差がない」という帰無仮説を立て、得られたデータがその仮説の下でどれくらい起こりにくいかを評価する手続きです。p値は、帰無仮説が正しいとした場合に、観察された結果かそれ以上に極端な結果が得られる確率で、あらかじめ定めた有意水準(慣例的に0.05)を下回れば帰無仮説を棄却し「統計学的に有意」と判断します。データが正規分布に従うことを仮定する検定(t検定など)に対し、分布の形を仮定しないノンパラメトリックな方法もあります。推定値の不確かさは信頼区間で表し、95%信頼区間が広いほど推定の精度が低いことを意味します。
診断・スクリーニングの統計では2×2表(疾患の有無×検査の陽性陰性)を使います。感度は疾患のある人のうち検査陽性となる割合、特異度は疾患のない人のうち検査陰性となる割合です。陽性反応的中率(陽性者のうち疾患ありの割合)と陰性反応的中率は、感度・特異度だけでなく対象集団の有病率に強く影響され、有病率が低い集団では陽性反応的中率は低くなります。検査の判定基準(カットオフ値)を動かしながら、縦軸に感度・横軸に偽陽性率(1−特異度)をとって描いた曲線がROC曲線で、曲線下面積(AUC)が大きいほど判別能の高い検査です。感度と特異度はトレードオフの関係にあります。
診療で生まれたデータを集めた臨床データベースは、医療の質評価や政策・研究に活用(二次利用)されます。NDB(ナショナルデータベース)は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づきレセプト情報と特定健診等情報を集めた国のデータベースです。DPC対象病院から収集されるDPCデータ(DPC調査)は急性期入院医療の分析に使われます。NCD(National Clinical Database)は外科系の学会が中心となり手術症例などを登録する臨床データベースで、専門医制度とも連携しています。がん登録には、法律(がん登録等の推進に関する法律)に基づき病院に届出義務がある全国がん登録と、施設内の診療情報を登録する院内がん登録があります。特定の疾患や治療の症例を継続的に登録する仕組みは疾患レジストリと呼ばれます。また、次世代医療基盤法では、国の認定を受けた事業者(認定匿名加工医療情報作成事業者等)が、あらかじめ通知を受けた本人が停止を求めない限り(オプトアウト方式)医療機関等から医療情報の提供を受け、匿名加工等をして研究開発に提供する仕組みが設けられています。
2×2表による診断指標(a=真陽性、b=偽陽性、c=偽陰性、d=真陰性)| 指標 | 計算式 | 意味 |
|---|
| 感度 | a ÷(a+c) | 疾患のある人のうち検査陽性となる割合 |
| 特異度 | d ÷(b+d) | 疾患のない人のうち検査陰性となる割合 |
| 陽性反応的中率 | a ÷(a+b) | 陽性者のうち実際に疾患がある割合。有病率に影響される |
| 陰性反応的中率 | d ÷(c+d) | 陰性者のうち実際に疾患がない割合 |
| 偽陽性率 | b ÷(b+d)=1−特異度 | 疾患のない人が誤って陽性となる割合。ROC曲線の横軸 |
用語
- 中央値
- データを小さい順に並べたときの真ん中の値。平均値と異なり外れ値の影響を受けにくく、分布が偏ったデータの代表値に適する。
- 標準偏差
- データのばらつきの大きさを表す指標。分散の平方根で、平均値の周りにデータがどの程度散らばっているかを示す。
- p値
- 帰無仮説が正しいとしたときに、観察された結果かそれ以上に極端な結果が得られる確率。有意水準(慣例0.05)未満で帰無仮説を棄却する。
- 信頼区間
- 推定値の不確かさを幅で表したもの。95%信頼区間が代表的で、区間が狭いほど推定の精度が高い。
- 感度・特異度
- 感度は疾患のある人のうち検査陽性となる割合、特異度は疾患のない人のうち検査陰性となる割合。両者はカットオフ値に対しトレードオフの関係。
- ROC曲線
- カットオフ値を変えながら縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1−特異度)をとって描く曲線。曲線下面積(AUC)が大きいほど判別能が高い。
- NDB
- レセプト情報・特定健診等情報データベース。高齢者の医療の確保に関する法律に基づき国が構築・運用し、医療費分析や研究に活用される。
- 全国がん登録
- がん登録等の推進に関する法律に基づき、病院等に届出義務があるがん罹患情報の登録制度。院内がん登録・疾患レジストリと区別する。
- 認定匿名加工医療情報作成事業者
- 次世代医療基盤法に基づき国の認定を受け、医療機関等から提供された医療情報を匿名加工等して研究開発に提供する事業者。提供はオプトアウト方式による。
例題
例題:年収のように一部の極端な値があるデータの代表値は?
答えと考え方 中央値が適しています。平均値は外れ値に引っ張られて実感とずれやすくなります。
例題:有病率が低い集団で検査をすると的中率はどうなる?
答えと考え方 陽性反応的中率は低くなります。疾患のない人が多い分、偽陽性が相対的に増えるためです。
出典・根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)第9章(SBO 9.1.3)・第10章 医学・医療統計(SBO 10.1.1〜10.3.2)・第11章 臨床データベース(SBO 11.1.1〜11.1.5)
確認問題(30問)
四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|診療録の保存
医師法に定める診療録の保存期間はどれか。
- 2年間
- 5年間
- 3年間
- 10年間
正解と解説
正解:B. 5年間医師法第24条により、診療録は5年間の保存が義務づけられている(保険診療の診療録は療養担当規則により完結の日から5年)。2年間は医療法・医療法施行規則が定める病院の診療に関する諸記録(看護記録・エックス線写真など)の保存期間、3年間は療担規則の帳簿等の保存期間であり、10年間という定めはない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.1.2(医療記録に関する定義と法令)/医師法第24条
問2|諸記録の保存
医療法・医療法施行規則に基づき病院に備えるべき「診療に関する諸記録」(看護記録・手術記録・エックス線写真など)の保存期間はどれか。
- 1年間
- 5年間
- 10年間
- 2年間
正解と解説
正解:D. 2年間医療法・医療法施行規則により、病院の診療に関する諸記録(病院日誌・処方箋・手術記録・看護記録・検査所見記録・エックス線写真など)は2年間の保存とされている。5年間は医師法に基づく診療録の保存期間であり、諸記録と診療録で根拠法令と期間が異なる点が問われやすい。1年間・10年間の定めはない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.1.2・8.1.3(医療記録に関する定義と法令・医療記録の体系)/医療法・医療法施行規則
問3|SOAP
SOAP形式の経過記録で、O(Objective)に記載するものはどれか。
- 診察所見や検査結果などの客観的情報
- 患者本人や家族の訴えなどの主観的情報
- 得られた情報に対する評価・考察
- 今後の治療や検査についての計画
正解と解説
正解:A. 診察所見や検査結果などの客観的情報OはObjective(客観的情報)で、診察所見や検査結果など医療者が観察・測定した事実を記載する。患者の訴えなど主観的情報はS(Subjective)、評価・考察はA(Assessment)、計画はP(Plan)にあたる。SOAPはPOMRの経過記録の標準的な記載形式である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.2.1(問題志向型医療記録(POMR):Subjective・Objective・Assessment・Plan)
問4|POMR
問題志向型医療記録(POMR)について誤っているものはどれか。
- POS(問題志向型システム)の考え方に基づく記録方式である
- 基礎データ・問題点リスト・初期計画・経過記録から構成される
- 記録は診療科の収入額ごとに整理する方式である
- 経過記録はSOAP形式で記載される
正解と解説
正解:C. 記録は診療科の収入額ごとに整理する方式であるPOMRは患者の医療上の問題ごとに記録を整理する方式であり、診療科の収入額ごとに整理するという記述は誤り。POSの考え方に基づき、患者基本情報などの基礎データ(データベース)・問題点リスト・初期計画・経過記録で構成され、経過記録はSOAP形式で記載される。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.2.1(問題志向型医療記録(POMR)とは)・SBO 8.2.3(初期記録)
問5|サマリー
退院時サマリーについて正しいものはどれか。
- 入院前に患者が自分で作成する書類である
- 入院中の経過・治療・転帰を要約した記録である
- 薬局が調剤の内容を記録する帳簿である
- 病院の会計処理を要約した財務書類である
正解と解説
正解:B. 入院中の経過・治療・転帰を要約した記録である退院時サマリーは、入院中の診療経過・治療内容・転帰などを医師が要約した記録で、外来や紹介先での診療の継続、監査・統計などに活用され、カウンターサイン(承認)を経て完成する。患者が作成する書類でも、調剤の帳簿でも、財務書類でもない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.2.10(サマリー:退院時サマリー、カウンターサイン)
問6|記録の監査
医療記録の監査について正しいものはどれか。
- 監査は行政機関だけが行うものであり、診療情報管理部門など院内では行わない
- 質的監査とは、そろっている記録の枚数を数えて評価することである
- 監査の対象は電子カルテに記録されたものだけで、紙の記録は対象外である
- 量的監査は必要な記録や署名の有無など形式面を、質的監査は記載内容の適切さを評価する
正解と解説
正解:D. 量的監査は必要な記録や署名の有無など形式面を、質的監査は記載内容の適切さを評価する医療記録の監査には、必要な書類・記載・署名がそろっているかをみる量的監査と、記載内容が診療の質の面で適切かをみる質的監査がある。監査は診療情報管理部門などにより院内でも行われる。質的監査は枚数を数えることではなく、紙・電子を問わず記録が対象となる。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.1.6(医療記録の監査:量的監査、質的監査)
問7|転帰
診療の結果を表す「転帰」の区分に含まれないものはどれか。
- 主訴
- 治癒
- 軽快
- 死亡
正解と解説
正解:A. 主訴転帰は診療の結果を表す区分で、治癒・軽快・寛解・不変・増悪・死亡・中止などがある。主訴は患者が診察時に訴える中心的な症状のことであり、診療の入口に記録される情報であって転帰の区分ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.1.2・8.2.2(患者基本情報:転帰(治癒・軽快・寛解・不変・増悪・死亡・中止))
問8|患者の記録
患者本人に交付され、患者が保持する健康記録はどれか。
- 医師の指示簿
- 手術記録
- お薬手帳
- 麻酔記録
正解と解説
正解:C. お薬手帳お薬手帳は調剤された薬の履歴を患者本人が持ち歩く記録で、母子手帳や健康診断記録とともに患者に交付される健康記録にあたる。指示簿・手術記録・麻酔記録は医療機関が作成・保管する院内の医療記録であり、患者が保持する記録ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.3.1(その他の健康記録:母子手帳、お薬手帳、健康診断記録)
問9|記録の真正性
医療記録の真正性の観点から、紙の診療録の誤記の訂正方法として適切なものはどれか。
- 修正液で元の記載を完全に消したうえで、正しい内容を書き直す
- 元の記載が判読できるように二重線で訂正し、訂正者と日時を明らかにする
- 誤記のあるページを破棄し、内容を新しい用紙に書き直して差し替える
- 誰が訂正したか分からないよう、元の記載の上に鉛筆で上書きする
正解と解説
正解:B. 元の記載が判読できるように二重線で訂正し、訂正者と日時を明らかにする医療記録には、誰がいつ記載・訂正したかが明確で改ざんが防止されているという真正性が求められる。紙の記録では元の記載が判読できるよう二重線などで訂正し、訂正者・日時を明らかにするのが適切である。修正液で消す、ページを破棄する、匿名で上書きするといった方法は元の記載や責任の所在を失わせ、真正性を損なう。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.1.4(医療記録の医療安全と継続性:真正性、原本性)
問10|ICD
ICD(国際疾病分類)について正しいものはどれか。
- WHOが定める疾病の国際的な分類で、死因・疾病統計に用いられる
- 日本の診療報酬点数表で手術を表すKコードのことである
- 医薬品や医療材料の物流に用いるGS1バーコードの規格である
- 臨床検査項目に用いる日本国内の標準コードJLAC10のことである
正解と解説
正解:A. WHOが定める疾病の国際的な分類で、死因・疾病統計に用いられるICDはWHOが定める国際疾病分類で、死因・疾病統計の国際比較の基盤であり、日本の統計も現在ICD-10に準拠している。診療報酬点数表の手術コードはKコード、医薬品等の物流バーコードはGS1コード、臨床検査項目の国内標準コードはJLAC10であり、いずれもICDの説明ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.2(傷病名の標準コード:ICD、ICD-10、ICD-11)
問11|ICD-11
ICDの版について正しいものはどれか。
- ICD-11はICD-10より前に採択された古い分類であり、現在は使われていない
- 日本の死因・疾病統計は現在ICD-10に準拠しており、WHOはICD-11を採択している
- ICD-10は日本ではまったく使われたことがなく、独自の分類が用いられてきた
- ICD-11は日本医療情報学会が作成した国内規格で、WHOとは関係がない
正解と解説
正解:B. 日本の死因・疾病統計は現在ICD-10に準拠しており、WHOはICD-11を採択している日本の死因・疾病統計は現在ICD-10に準拠した統計分類で行われており、WHOは2019年にその改訂版であるICD-11を採択した(2022年発効、日本は国内適用の準備段階)。ICD-11はICD-10より新しい版である。ICDはWHOの国際分類であり、日本の学会が作成した国内規格ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.2(傷病名の標準コード:ICD-10、ICD-11)
問12|標準病名
ICD10対応標準病名マスターについて正しいものはどれか。
- 手術の術式に診療報酬点数表のコードを対応づけた標準マスターで、手術記録で使われる
- 画像検査の撮影部位や撮影条件を表すマスターで、放射線部門システムで使われる
- 医療材料の物流管理に用いるマスターで、在庫管理や発注のしくみで使われる
- ICD-10に対応づけられた病名の標準マスターで、電子カルテやレセプト電算処理で使われる
正解と解説
正解:D. ICD-10に対応づけられた病名の標準マスターで、電子カルテやレセプト電算処理で使われるICD10対応標準病名マスターは、病名にICD-10コードなどを対応づけた標準マスターで、医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)が維持管理し、電子カルテやレセプト電算処理システムで広く使われている。手術の術式・画像検査の撮影条件・医療材料の物流のためのマスターではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.1・8.4.2(標準コードの必要性・傷病名の標準コード:ICD-10対応標準病名マスター、医療情報システム開発センター)
問13|DPC
DPC(診断群分類)について正しいものはどれか。
- 外来診療の予約管理に使われる分類である
- DPCコードは14桁で、先頭6桁が傷病名を表す
- DPCコードは患者の氏名から自動生成される
- DPC/PDPSは出来高払いのみの支払い方式である
正解と解説
正解:B. DPCコードは14桁で、先頭6桁が傷病名を表すDPCコードは14桁で構成され、先頭6桁が傷病名(最初の2桁が主要診断群MDC、続く4桁が細分類)を表し、以降で手術・処置等を表す。DPCは急性期入院医療の診断群分類であり、外来の予約管理の分類ではない。コードは診断・診療内容から決まるもので氏名からは生成されない。DPC/PDPSは1日当たりの包括支払い制度である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.2(傷病名の標準コード:診断群分類コード、DPC、MDC)
問14|手術コード
診療報酬点数表で手術を表すコードはどれか。
- Kコード
- Jコード
- HOTコード
- JLAC10
正解と解説
正解:A. Kコード診療報酬点数表では手術はKコード(K○○○の区分番号)で表される。Jコードは同じ点数表の処置のコード。HOTコードはMEDIS-DCの標準医薬品マスターのコード、JLAC10は臨床検査項目の標準コードであり、手術のコードではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.3(手術処置の標準コード:Kコード、Jコード(診療報酬コード))
問15|検査コード
臨床検査項目の標準コードはどれか。
- ICD-O-3
- GS1-128
- JLAC10
- Kコード
正解と解説
正解:C. JLAC10JLAC10は臨床検査項目の標準コードで、検査結果の施設間共有や集計に用いられる(国際的にはLOINCがある)。ICD-O-3は腫瘍の分類、GS1-128は医薬品・医療材料などのバーコードシンボル、Kコードは診療報酬点数表の手術コードであり、いずれも臨床検査項目のコードではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 8.4.4(その他の医療関係コード:JLAC10、LOINC、GS1-128シンボル)
問16|RCT
無作為化比較試験(RCT)について正しいものはどれか。
- 一時点で曝露と疾患の有無を同時に調べる研究である
- 疾患のある群とない群で過去の曝露を遡って比較する研究である
- 研究者は介入を行わず、経過を観察するだけの研究である
- 対象者を無作為に介入群と対照群に割り付けて比較する介入研究である
正解と解説
正解:D. 対象者を無作為に介入群と対照群に割り付けて比較する介入研究であるRCTは対象者をランダムに介入群と対照群へ割り付けて効果を比較する介入研究で、無作為割付により群間の背景の偏り(交絡)を減らせる。一時点で調べるのは横断研究、疾患の有無から過去の曝露を遡るのは症例対照研究であり、介入を行わないのは観察研究の説明である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.2(研究デザイン:無作為化比較試験・RCT、介入研究)
問17|症例対照研究
症例対照研究について正しいものはどれか。
- 疾患のある群とない群を選び、過去の曝露を遡って比較する後ろ向きの観察研究である
- 対象者を無作為に2群へ割り付けて治療効果を比較する介入研究である
- 曝露群と非曝露群を将来に向かって追跡し、疾患の発生を比較する前向き研究である
- 個人ではなく集団単位の統計データだけを用いて関連を調べる研究である
正解と解説
正解:A. 疾患のある群とない群を選び、過去の曝露を遡って比較する後ろ向きの観察研究である症例対照研究は、疾患のある群(症例)とない群(対照)を先に選び、過去の曝露を遡って比較する後ろ向きの観察研究で、オッズ比を指標とし、まれな疾患の研究に適する。無作為割付を行うのはRCT、将来へ追跡するのはコホート研究、集団単位のデータで調べるのは生態学的研究である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.2(研究デザイン:症例対照研究)・SBO 9.1.3(オッズ比)
問18|コホート研究
コホート研究について正しいものはどれか。
- ある一時点の調査だけで完結する研究であり、対象者の追跡は行わない
- 研究者が対象者に新しい治療を無作為に割り付けて効果を比較する介入研究である
- 曝露群と非曝露群を追跡して疾患の発生を比較し、相対危険度を求められる
- 疾患のある人だけを対象として観察し、比較のための群は設けない
正解と解説
正解:C. 曝露群と非曝露群を追跡して疾患の発生を比較し、相対危険度を求められるコホート研究は、要因に曝露した群と曝露していない群を将来に向かって追跡し、疾患の発生(罹患率)を比較する前向きの観察研究で、相対危険度を直接計算できる。追跡を行わないのは横断研究、治療を割り付けるのはRCT(介入研究)であり、コホート研究では曝露群・非曝露群という比較の群を設ける。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.2(研究デザイン:コホート研究)・SBO 9.1.3(罹患率、相対危険度、暴露群・非暴露群)
問19|エビデンス
エビデンスレベルについて、一般に最も高いとされるものはどれか。
- 系統的な検討を経ていない、専門家個人の経験に基づく意見
- 複数のRCTを統合したシステマティックレビュー/メタアナリシス
- 1例の患者の経過をまとめて報告した症例報告
- 過去の曝露を遡って比較した単一の症例対照研究
正解と解説
正解:B. 複数のRCTを統合したシステマティックレビュー/メタアナリシスエビデンスレベルは一般に、複数のRCTを系統的に統合したシステマティックレビュー/メタアナリシスが最も高く、個々のRCT、コホート研究、症例対照研究、症例報告、専門家の意見の順に低くなる。専門家個人の意見や1例の症例報告は序列の下位に位置づけられる。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.2.1(エビデンス:エビデンスレベル、システマティックレビュー)
問20|交絡因子
交絡因子の説明として正しいものはどれか。
- 測定機器の故障や測定方法のばらつきによって生じる系統的な誤差のこと
- 研究対象者が追跡の途中で研究への参加をやめてしまうこと
- 研究結果を統計ソフトが誤って計算し、誤った数値が出ること
- 調べたい曝露と結果の両方に関連し、見かけ上の関連をつくる第三の因子のこと
正解と解説
正解:D. 調べたい曝露と結果の両方に関連し、見かけ上の関連をつくる第三の因子のこと交絡因子は、調べたい曝露(要因)と結果(疾患)の両方に関連することで、実際にはない関連を見かけ上つくったり、実際の関連を歪めたりする第三の因子である。RCTの無作為割付や層別解析はその影響を抑える方法である。測定機器による誤差は測定バイアス、途中でやめるのは脱落の問題であり、交絡の定義ではない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.3(疫学研究における基本的指標と影響因子:交絡因子、バイアス)
問21|研究倫理
人を対象とする医学研究の倫理について正しいものはどれか。
- ヘルシンキ宣言は人を対象とする医学研究の倫理的原則を示した宣言である
- 研究計画は倫理審査委員会の審査を受ける必要はない
- 利益相反(COI)がある研究者は、その事実を隠して研究を行えばよい
- 研究データの改ざんは、結論が正しければ許される
正解と解説
正解:A. ヘルシンキ宣言は人を対象とする医学研究の倫理的原則を示した宣言であるヘルシンキ宣言は世界医師会が採択した、人を対象とする医学研究の倫理的原則であり、日本の倫理指針の基盤でもある。研究計画は倫理審査委員会(IRB)の審査・承認を受けるのが原則であり、利益相反は隠すのではなく申告・開示して管理する。改ざん・捏造は結論にかかわらず研究不正である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.1(研究指針と倫理:ヘルシンキ宣言、IRB、COI、改ざん、捏造)
問22|オプトアウト
研究におけるオプトアウトの説明として正しいものはどれか。
- 対象者全員に研究の内容を説明したうえで、書面による個別の同意を得てから行う方式
- 研究の実施について対象者に一切知らせず、公開も行わずに実施する方式
- 研究の情報を公開し、対象者が拒否できる機会を保障したうえで、拒否がなければ情報を利用する方式
- 研究が終了した後に初めて対象者へ研究の存在を通知し、了承を求める方式
正解と解説
正解:C. 研究の情報を公開し、対象者が拒否できる機会を保障したうえで、拒否がなければ情報を利用する方式オプトアウトは、研究に関する情報を通知・公開し、対象者が参加(情報利用)を拒否できる機会を保障したうえで、拒否の申し出がなければ既存情報等を研究に利用する方式で、観察研究などで認められる場合がある。個別に同意を得てから行うのはオプトイン(インフォームドコンセント)であり、一切知らせない・事後にだけ知らせる方式はオプトアウトの要件を満たさない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.2.2(臨床研究:インフォームドコンセント、オプトイン、オプトアウト)
問23|治験の相
治験の第I相試験の説明として正しいものはどれか。
- 多数の患者を対象に、有効性を標準的な治療と比較して検証する試験
- 少数の健康成人を対象に安全性や薬物動態を調べる試験
- 製造販売の承認後に行われる使用成績の調査
- 人に投与する前に動物のみを対象に行う毒性試験
正解と解説
正解:B. 少数の健康成人を対象に安全性や薬物動態を調べる試験第I相試験は、原則として少数の健康成人を対象に、安全性や薬物動態(体内での吸収・排泄など)を調べる段階である。多数の患者で有効性を検証するのは第III相試験、承認後の調査は第IV相にあたる。動物を対象とする毒性試験は治験(人を対象とする臨床試験)に入る前の非臨床試験である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.2.3(治験:第I相試験、第Ⅱ相試験、第Ⅲ相試験、第IV相試験、GCP)
問24|中央値
5人の患者の入院日数が 2、3、5、9、100 日であった。このデータの中央値はどれか。
- 3日
- 23.8日
- 5日
- 100日
正解と解説
正解:C. 5日中央値はデータを小さい順に並べたときの真ん中の値で、5個のデータでは3番目の5日である。23.8日はこのデータの平均値で、100日という外れ値に引っ張られている。このように外れ値を含むデータでは、中央値の方が代表値として実態を表しやすい。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 10.1.3(標本の収集と記述:代表値のまとめ方)
問25|p値と検定
統計的検定について正しいものはどれか。
- p値が有意水準(例:0.05)を下回るとき、帰無仮説を棄却して統計学的に有意と判断する
- p値は、その治療が有効であることを示す確率そのものを表している
- p値が大きいほど差が大きいことを示し、結果は統計学的に有意である
- 検定ではまず「差がある」という帰無仮説を立て、これを採択できるか調べる
正解と解説
正解:A. p値が有意水準(例:0.05)を下回るとき、帰無仮説を棄却して統計学的に有意と判断する検定では「差がない」という帰無仮説を立て、帰無仮説の下で観察された結果かそれ以上に極端な結果が得られる確率(p値)を求め、有意水準(慣例0.05)未満なら帰無仮説を棄却して有意と判断する。p値は治療が有効である確率そのものではなく、小さいほど有意であり、帰無仮説は「差がある」ではなく「差がない」と立てる。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 10.2.1(正規分布に基づく検定)・SBO 10.1.4(母集団の分布と確率分布)
問26|感度の計算
1000人にある検査を行った。疾患のある100人のうち90人が陽性、疾患のない900人のうち90人が陽性であった。この検査の感度はどれか。
- 10%
- 90%
- 50%
- 81%
正解と解説
正解:B. 90%感度は疾患のある人のうち検査陽性となる割合で、90÷100=90%。なお特異度は810÷900=90%、陽性反応的中率は90÷(90+90)=50%となる。50%を感度と取り違えないこと。10%は偽陰性率や有病率に相当する値、81%は計算の取り違えによる誤りである。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.3(疫学研究における基本的指標:感度(Sensitivity))
問27|特異度の計算
疾患のある200人のうち160人が検査陽性・40人が陰性、疾患のない800人のうち80人が陽性・720人が陰性であった。この検査の特異度はどれか。
- 80%
- 約67%
- 約95%
- 90%
正解と解説
正解:D. 90%特異度は疾患のない人のうち検査陰性となる割合で、720÷800=90%。80%はこの検査の感度(160÷200)、約67%は陽性反応的中率(160÷240)、約95%は陰性反応的中率(720÷760)にあたる値であり、いずれも特異度ではない。どの分母・分子を使うかを2×2表で確認することが重要である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.3(疫学研究における基本的指標:特異度(Specificity))
問28|的中率の計算
有病率10%の集団1000人に、感度80%・特異度90%の検査を行った。陽性反応的中率に最も近いものはどれか。
- 約47%
- 80%
- 90%
- 約98%
正解と解説
正解:A. 約47%疾患あり100人のうち陽性は100×0.8=80人(真陽性)、疾患なし900人のうち陽性は900×0.1=90人(偽陽性)。陽性反応的中率=80÷(80+90)≒47%。感度80%・特異度90%の検査でも、有病率が低いと偽陽性が多くなり的中率は大きく下がる。約98%は陰性反応的中率(810÷830)に近い値である。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.3(疫学研究における基本的指標:感度・特異度・偽陽性率)・SBO 6.1.1(陽性反応的中率)
問29|ROC曲線
ROC曲線について正しいものはどれか。
- 縦軸に特異度、横軸に感度をとり、カットオフ値を変えながら描く曲線である
- 曲線下面積(AUC)が小さいほど判別能の高い検査であることを示している
- 検査に要するコストと所要時間の関係を表し、効率の比較に用いる曲線である
- 縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1−特異度)をとり、カットオフ値を変えながら描く曲線である
正解と解説
正解:D. 縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1−特異度)をとり、カットオフ値を変えながら描く曲線であるROC曲線は、検査の判定基準(カットオフ値)を変化させながら、縦軸に感度、横軸に偽陽性率(1−特異度)をとって描いた曲線で、曲線下面積(AUC)が大きいほど判別能の高い検査といえる。軸の取り方が逆の記述、AUCが小さいほど良いという記述はいずれも誤りで、コストと時間の関係を表すものでもない。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 9.1.3(疫学研究における基本的指標:ROC曲線、感度・特異度・偽陽性率)
問30|臨床DB
臨床データベースについて正しいものはどれか。
- NCD(National Clinical Database)は音楽配信のデータベースである
- 全国がん登録への届出は病院の任意であり、法律上の義務はない
- NDBは、レセプト情報と特定健診等情報を集めた国のデータベースである
- DPCデータは歯科診療所の外来データのみを集めたものである
正解と解説
正解:C. NDBは、レセプト情報と特定健診等情報を集めた国のデータベースであるNDB(ナショナルデータベース)は、高齢者の医療の確保に関する法律に基づき、レセプト情報と特定健診等情報を集めた国のデータベースで、医療費分析や研究に活用される。NCDは外科系学会が中心の手術症例等の臨床データベース。全国がん登録は法律(がん登録推進法)により病院に届出義務がある。DPCデータはDPC対象病院の急性期入院医療のデータである。
根拠:日本医療情報学会 医療情報技師育成部会「医療情報技師 到達目標」(医学・医療系)v7(2025年7月26日更新)SBO 11.1.1〜11.1.4(DPC調査、NDB、NCD、がん登録)/高齢者の医療の確保に関する法律
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ランダム出題の演習ツールです(JavaScript が有効な場合に動きます)。上の「確認問題」はそのままでもすべて読めます。
※ 解説は学習用の情報提供です。医療上の助言ではありません。最新の試験実施要項は医療情報技師育成部会の公式発表をご確認ください。
※ 出題は日本医療情報学会 医療情報技師育成部会が公開する「医療情報技師 到達目標」(v7・GIO/SBO/キーワード)に沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。医療上の助言ではありません。合格基準は非公開のため、本サイトの到達度は独自の目安です。試験の実施要項は育成部会の公式発表をご確認ください。