仮の宿 学習室 資格 基本情報技術者 合格ラボ セキュリティ
基本情報技術者 FUNDAMENTAL IT ENGINEER
セキュリティ
講義 4 本・確認問題 40 問 | 本試験では「科目A テクノロジ」(41問)の一部 | 最終更新 2026-09-24
この章で学ぶこと 守るべき三つの性質と、代表的な攻撃手法が「どこの弱点を突いてくるのか」が分かります。 共通鍵と公開鍵の使い分け、そして「どちらの鍵で暗号化してどちらの鍵で戻すのか」が確実に言えるようになります。 本人確認のしかたと権限の絞り方、そしてファイアウォールからEDRまでの守備範囲の違いが分かります。 ISMSとリスクの扱い方、組織的な体制、そして脆弱性を作り込まない書き方までを押さえます。
1. 情報セキュリティの基礎と脅威・攻撃手法
守るべき三つの性質と、代表的な攻撃手法が「どこの弱点を突いてくるのか」が分かります。
情報セキュリティとは、情報資産を機密性・完全性・可用性の三つの面から守ることです。機密性(Confidentiality)は許可された人だけが情報に触れられること、完全性(Integrity)は情報が正確で改ざんも欠落もないこと、可用性(Availability)は必要なときにいつでも使えることを指し、頭文字を取ってCIAと呼びます。JIS Q 27000ではこれに加えて、名乗ったとおりの本人・本物であることを確実にする真正性、誰が何をしたかを後からたどれる責任追跡性、行った事実を後から否定させない否認防止、意図したとおりにふるまう信頼性の四つが挙げられています。どの対策がどの特性を守るのかを言えるようにしておくことが、この分野の出発点です。
情報資産に損害を与えうる要因が脅威です。脅威は、誤操作や紛失、内部不正、ソーシャルエンジニアリングのような人的脅威、マルウェアや不正アクセス、盗聴のような技術的脅威、火災・地震・盗難のような物理的脅威に分けられます。これに対し、資産の側がもっている弱点が脆弱性で、修正プログラムを適用していないソフトウェアの欠陥、単純で使い回されたパスワード、施錠されていないサーバ室などが該当します。リスクとは、脅威が脆弱性を突いて損失が生じる可能性の度合いのことで、脅威か脆弱性のどちらかを小さくできればリスクは下がります。組織が対策を選ぶときは、この「脅威×脆弱性×資産価値」の大きさを見て判断します。
技術的脅威の中心がマルウェアです。ウイルスは単独では動かず他のプログラムに寄生して増えます。ワームは単独のプログラムとして動作し、自分の複製をネットワーク越しに送り込んで自己増殖します。トロイの木馬は有用なソフトに見せかけて導入させ、裏で不正な動作をします。ランサムウェアはファイルを暗号化して使えなくし、復元と引換えに金銭を要求します。スパイウェアは利用者の情報をひそかに収集して外部へ送信します。ボットは攻撃者のC&C(指令)サーバの命令で動き、多数が束ねられてボットネットを構成します。RATは端末を遠隔操作する道具で、標的型攻撃で侵入後に使われます。ファイルレスマルウェアはディスクに実行ファイルを置かず、メモリ上やOS標準のツールを悪用して動くため、ファイルの特徴で探す方式では見つけにくいのが特徴です。
Webアプリケーションを狙う攻撃は出題の中心です。SQLインジェクションは、入力値を文字列連結でSQL文に埋め込んでいる箇所を突き、データベースを不正に操作します。クロスサイトスクリプティング(XSS)は、入力をそのままHTMLに出力しているサイトを経由して、閲覧者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させます。クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は、ログイン済みの利用者のブラウザから、本人が意図しない更新要求を送らせます。ディレクトリトラバーサルは「../」などを含むファイル名を与えて、公開を意図していないファイルを読み出します。OSコマンドインジェクションは、入力がシェルに渡る箇所に区切り文字を混ぜて任意のコマンドを実行させます。バッファオーバフローは入力長を検査していない領域をあふれさせて処理の流れを乗っ取ります。セッションハイジャックは、盗んだり推測したりしたセッションIDを使って他人になりすまします。
ネットワークを狙う攻撃もあります。DoS攻撃は大量の要求を送ってサービスを止め、これを多数の踏み台から一斉に行うのがDDoS攻撃です。DNSリフレクション(DNSアンプ)攻撃は、送信元IPアドレスを攻撃対象に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を攻撃対象へ集中させる増幅型の攻撃です。DNSキャッシュポイズニングは、DNSサーバのキャッシュに偽の対応関係を覚え込ませて利用者を偽サイトへ誘導します。中間者攻撃(Man-in-the-middle)は通信経路に割り込んで双方になりすまし、リプレイ攻撃は盗聴した認証データをそのまま送り直して認証を突破します。
パスワードそのものを狙う攻撃も整理しておきます。ブルートフォース攻撃はあり得る文字列を総当たりし、辞書攻撃は辞書に載っている単語やよくあるパスワードを試します。パスワードリスト攻撃は、他サイトから流出したIDとパスワードの組をそのまま別サイトで試すもので、使い回しがあると成立します。レインボーテーブル攻撃は、ハッシュ値と元の文字列の対応表をあらかじめ計算しておき、盗んだハッシュ値から元のパスワードを高速に割り出します。少し毛色が違うのがサイドチャネル攻撃で、暗号処理そのものではなく、処理時間・消費電力・電磁波といった物理的な観測値から鍵を推定します。
最後は人と組織を狙う攻撃です。標的型攻撃は特定の組織に狙いを定め、業務に見せかけたメールなどで長期間にわたり侵入を図ります。その一種であるやり取り型攻撃は、無害な問合せを何度か交わして信用させてからマルウェアを送り付けます。水飲み場型攻撃は、標的がよく訪れるWebサイトを改ざんして待ち伏せします。サプライチェーン攻撃は、対策の手薄な取引先や委託先、あるいはソフトウェアの配布経路を踏み台にして本来の標的へ入り込みます。ゼロデイ攻撃は修正プログラムが提供される前の脆弱性を突きます。ソーシャルエンジニアリングは、なりすましの電話や肩越しののぞき見(ショルダハッキング)、ごみ箱あさり(スキャベンジング)など、技術ではなく人の心理や不注意につけ込む手口です。内部不正については、機会・動機・正当化の三つがそろったときに起きるという「不正のトライアングル」の考え方が知られており、組織が直接手を打てるのは主として「機会」(権限の絞込み、職務分離、ログ監視、持出し制限)です。
主な攻撃手法と、それが突く弱点・主な対策 区分 攻撃手法 突かれる弱点 主な対策 Web SQLインジェクション SQL文を入力値の文字列連結で組み立てている プレースホルダ(バインド機構)で値として渡す Web クロスサイトスクリプティング 入力値をそのままHTMLに出力している 出力時のエスケープ処理 Web クロスサイトリクエストフォージェリ その要求が本人の意図か確かめていない 推測できないトークンを埋め込んで照合する Web ディレクトリトラバーサル ファイル名を利用者の入力から組み立てている ファイル名を直接受け取らず識別子で対応付ける Web OSコマンドインジェクション 入力値がシェルに渡っている シェルを介さないAPIを使い、入力を厳密に検証する Web セッションハイジャック セッションIDが推測できる、盗聴できる IDを乱数で長くし、ログイン時に再発行、通信をTLSで暗号化 プログラム バッファオーバフロー 入力長を検査せず領域をあふれさせられる 境界検査を行う、安全な関数やライブラリを使う ネットワーク DoS・DDoS 処理能力や回線容量には限りがある レート制限、負荷分散、DDoS防御サービスの利用 ネットワーク DNSリフレクション 送信元IPを詐称でき、応答が問合せより大きい オープンリゾルバをやめる、送信元アドレスの検証 ネットワーク DNSキャッシュポイズニング 偽の応答をキャッシュしてしまう DNSSECで応答に署名し正当性を検証する ネットワーク 中間者攻撃・リプレイ攻撃 経路上で盗聴・再送ができる TLSによる暗号化とサーバ証明書の検証、ワンタイムパスワード 認証 ブルートフォース・辞書・パスワードリスト パスワードが短い、単純、使い回されている 長く複雑なパスワード、多要素認証、試行回数の制限 認証 レインボーテーブル ハッシュ値の対応表を事前計算できる 利用者ごとのソルトを付けてハッシュ化、ストレッチング 人 標的型・水飲み場・やり取り型 人の判断や信頼関係につけ込める 教育と訓練、添付ファイルの制限、多層防御 人 内部不正 権限が広すぎ、監視もされていない 最小権限、職務分離、ログ監視、記憶媒体の持出し制限
用語 機密性・完全性・可用性 情報セキュリティの三つの基本特性。許可された人だけが読めること、情報が正確で改ざんされていないこと、必要なときに使えること。頭文字を取ってCIAという。 真正性・責任追跡性・否認防止・信頼性 JIS Q 27000がCIAに加えて挙げる特性。順に、名乗ったとおりの本人であること、動作を主体まで追跡できること、行った事実を否定できないこと、意図したとおりにふるまうこと。 脆弱性 情報資産がもつ弱点。未修正のソフトウェアの欠陥、単純なパスワード、施錠されていない部屋など。脅威がこれを突いたときに損失が現実になる。 ランサムウェア 感染した端末やサーバのファイルを暗号化して使えなくし、復号と引換えに金銭を要求するマルウェア。近年はデータを窃取して公開すると脅す二重脅迫型もある。 ボット・ボットネット 攻撃者のC&C(指令)サーバからの命令で動くマルウェアと、それに感染した多数の端末が束ねられた集団。DDoS攻撃や迷惑メールの送信の踏み台にされる。 ファイルレスマルウェア ディスクに実行ファイルを置かず、メモリ上やOS標準の管理ツールを悪用して動作するマルウェア。ファイルの特徴(シグネチャ)による検出が効きにくい。 SQLインジェクション 入力値を文字列連結でSQL文に埋め込んでいる箇所へ、SQLの断片を含む値を送り込み、データベースを不正に検索・改ざんする攻撃。対策はプレースホルダの利用。 クロスサイトスクリプティング 入力値をそのままHTMLに出力しているサイトを経由して、閲覧者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃。対策は出力時のエスケープ処理。 クロスサイトリクエストフォージェリ ログイン済みの利用者のブラウザに、本人が意図しない更新要求を送らせる攻撃。対策は推測できないトークンを画面に埋め込み、要求時に照合すること。 ディレクトリトラバーサル 「../」などを含むファイル名を与えて、公開を意図していないディレクトリのファイルを読み書きする攻撃。ファイル名を利用者の入力から直接作らないことが対策。 OSコマンドインジェクション 入力値がシェルに渡る箇所へ「;」などの区切り文字を混ぜ、任意のOSコマンドを実行させる攻撃。シェルを介さないAPIを使い、入力を厳密に検証することが対策。 セッションハイジャック 盗聴や推測で入手したセッションIDを使い、他人になりすましてサービスを利用する攻撃。IDを推測困難にし、ログイン時に再発行し、通信を暗号化することが対策。 DDoS攻撃 多数の踏み台から一斉に大量の要求を送り、サービスを提供できない状態にする攻撃。可用性を直接損なう。踏み台にはボットネットが使われることが多い。 DNSリフレクション攻撃 送信元IPアドレスを攻撃対象に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を対象へ集中させる増幅型のDDoS攻撃。DNSアンプ攻撃ともいう。 DNSキャッシュポイズニング DNSサーバのキャッシュに偽のドメイン名とIPアドレスの対応を覚え込ませ、利用者を偽サイトへ誘導する攻撃。応答に署名を付けるDNSSECが対策となる。 リプレイ攻撃 盗聴した認証データをそのまま送り直して認証を通過する攻撃。毎回異なる値を使うワンタイムパスワードやチャレンジレスポンス方式で防げる。 パスワードリスト攻撃 他のサイトから流出した利用者IDとパスワードの組をそのまま別のサイトで試す攻撃。パスワードの使い回しがあると成立する。多要素認証が有効な対策。 レインボーテーブル攻撃 ハッシュ値と元の文字列の対応表をあらかじめ計算しておき、盗んだハッシュ値から元のパスワードを高速に割り出す攻撃。利用者ごとのソルトを付けると無効化できる。 サイドチャネル攻撃 暗号アルゴリズムそのものではなく、処理時間・消費電力・電磁波などの物理的な観測値から鍵などの秘密情報を推定する攻撃。 水飲み場型攻撃 標的の組織の利用者がよく閲覧するWebサイトをあらかじめ改ざんしておき、訪れた標的だけにマルウェアを感染させる待ち伏せ型の攻撃。 サプライチェーン攻撃 対策が手薄な取引先や委託先、あるいはソフトウェアの配布経路を踏み台にして、本来の標的組織へ侵入する攻撃。 ゼロデイ攻撃 脆弱性が公表されてから修正プログラムが提供されるまでの間、あるいは開発元も知らない段階で、その脆弱性を突く攻撃。 ソーシャルエンジニアリング 技術ではなく人の心理や不注意につけ込んで情報を得る手口。なりすましの電話、肩越しののぞき見(ショルダハッキング)、ごみ箱あさり(スキャベンジング)など。 不正のトライアングル 内部不正は機会・動機・正当化の三つがそろったときに起きるという考え方。組織が直接減らせるのは主に「機会」で、最小権限や職務分離、ログ監視が効く。
例題
例題:利用者が入力した氏名をそのまま画面に表示するWebサイトがあった。攻撃者が氏名欄にスクリプトを書き込んだところ、そのページを見た別の利用者のブラウザでスクリプトが動いてしまった。何という攻撃か。
答えと考え方 クロスサイトスクリプティング(XSS)である。攻撃者のスクリプトが、脆弱なサイトを経由して被害者のブラウザ上で実行される点が特徴で、クッキーの窃取や偽の入力画面の表示に使われる。対策は、画面に出力する直前に「<」「>」「&」「"」などをエスケープして、HTMLのタグとして解釈されないようにすること。入力時の検査だけに頼るのは不十分である。
例題:退職を控えた社員が、顧客名簿を私物のUSBメモリにコピーして持ち出した。不正のトライアングルの三要素のうち、組織のしくみで直接小さくできるのはどれか。
答えと考え方 「機会」である。動機(金銭的な事情や不満)と正当化(自分の働きに見合う、といった言い訳)は本人の内面の問題で、組織が直接消すことは難しい。一方、機会は、担当業務に必要な最小限のアクセス権しか与えない、申請と承認を別の人が行う職務分離、操作ログの取得と監視、USBメモリの使用制限といった手段で確実に減らせる。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/JIS Q 27000(情報セキュリティマネジメントシステム-用語)
2. 暗号技術とディジタル署名
共通鍵と公開鍵の使い分け、そして「どちらの鍵で暗号化してどちらの鍵で戻すのか」が確実に言えるようになります。
暗号は、そのままでは読める平文を、鍵を使って読めない暗号文に変換(暗号化)し、正しい鍵をもつ人だけが元に戻せる(復号)ようにする技術です。現代の暗号ではアルゴリズムは公開されているのが普通で、安全性は鍵を秘密に保てるかどうかだけに依存します(ケルクホフスの原則)。鍵は長いほど総当たりに強くなりますが、その分処理も重くなります。暗号方式は、暗号化と復号に同じ鍵を使う共通鍵暗号方式と、対になる二つの鍵を使う公開鍵暗号方式に大きく分かれます。
共通鍵暗号方式(秘密鍵暗号方式)は、送信者と受信者が同じ鍵を共有します。代表的な方式はAESで、かつて使われたDESや3DESより安全で高速です。処理が軽いので、通信本文やファイルのように大きなデータの暗号化に向きます。弱点は鍵の配りかたで、相手ごとに別の鍵を安全に届けなければなりません(鍵配送問題)。n人が互いに通信するには n(n−1)/2 個の鍵が必要で、人数が増えると急激に増えます。10人なら45個、100人なら4,950個です。
公開鍵暗号方式は、対になる公開鍵と秘密鍵を各自がもちます。公開鍵は誰に配ってもよく、秘密鍵は本人だけが持ちます。片方の鍵で暗号化したものは、もう片方の鍵でしか戻せないという性質が要です。代表的な方式はRSAで、大きな数の素因数分解の難しさを安全性の根拠にしています。楕円曲線暗号(ECC)は、より短い鍵でRSAと同等の強度が得られるため、携帯端末やICカードで広く使われます。n人が互いに通信する場合に必要な鍵は各自1組ずつ、合計2n個で済みますが、処理は共通鍵暗号より格段に遅いという弱点があります。
公開鍵暗号の使い分けは、この分野で最も間違えやすいところです。秘密にして送りたい(機密性)ときは、受信者の公開鍵で暗号化します。復号できるのは対になる秘密鍵をもつ受信者だけなので、盗聴されても読まれません。この向きを逆にして送信者の秘密鍵で暗号化すると、公開鍵は誰でも入手できるため誰でも復号でき、秘密は守れません。そのかわり「その人しか作れなかった」ことが証明できるので、これがディジタル署名になります。なお、公開鍵暗号は遅いので、実際の通信では、本文は共通鍵暗号で暗号化し、その共通鍵だけを受信者の公開鍵で暗号化して送るハイブリッド暗号方式が使われます。TLSもこの考え方です。
ハッシュ関数は、任意の長さの入力から固定長のハッシュ値(メッセージダイジェスト)を作る一方向の関数です。代表はSHA-256で、同じ入力からは必ず同じ値が得られ、入力が1ビットでも違えば値は大きく変わります。ハッシュ値から元の入力を求めることが計算量的に困難であること(一方向性)と、同じハッシュ値になる別の入力を見つけることが困難であること(衝突発見困難性)が求められます。ファイルの改ざん検出やパスワードの保存に使われますが、鍵を使わないので、それだけでは「誰が作ったか」は分かりません。
ディジタル署名は、送信者が文書のハッシュ値を自分の秘密鍵で暗号化したものです。受信者は、署名を送信者の公開鍵で復号して得た値と、受け取った文書から自分で計算したハッシュ値を比べます。一致すれば、文書が改ざんされていないこと(完全性)と、送信者の秘密鍵をもつ本人が作ったこと(真正性)が確認でき、送信者は後から「自分は送っていない」と言えなくなります(否認防止)。文書自体は暗号化されないので、署名だけでは機密性は得られない点に注意します。似たしくみにメッセージ認証符号(MAC)があり、共通鍵を使って改ざんを検出しますが、同じ鍵を双方がもつため、第三者に対する否認防止にはなりません。
公開鍵が本当に相手のものかを保証するしくみがPKI(公開鍵基盤)です。認証局(CA)は、申請者の公開鍵と所有者情報をまとめ、そこにCA自身のディジタル署名を付けたディジタル証明書(X.509)を発行します。利用者はCAの公開鍵で証明書の署名を検証し、鍵の持ち主を確認します。鍵が漏えいするなどして有効期限前に無効化された証明書は、証明書失効リスト(CRL)や、その都度問い合わせるOCSPで確認します。TLSでは、サーバ証明書でサーバの真正性を確かめ、ハンドシェイクで共通鍵を安全に共有してから本文の通信を暗号化します。なお、大規模な量子コンピュータが実現するとRSAや楕円曲線暗号の安全性の根拠が崩れるとされ、それでも解読が難しいとされる耐量子計算機暗号(PQC)への移行が進められています。
共通鍵暗号方式と公開鍵暗号方式の比較(鍵の向きに注意) 比較の観点 共通鍵暗号方式 公開鍵暗号方式 鍵の持ち方 送信者と受信者が同じ鍵を共有する 公開鍵と秘密鍵の対を各自がもつ 秘密にして送るとき暗号化に使う鍵 共有している共通鍵 受信者の公開鍵 秘密にして送るとき復号に使う鍵 同じ共通鍵 受信者の秘密鍵 署名の作成に使う鍵 署名には使えない(MACは共通鍵で作る) 送信者の秘密鍵 署名の検証に使う鍵 同じ鍵をもつ者なら誰でも作れてしまう 送信者の公開鍵 n人が相互に通信するときの鍵 n(n−1)/2 個の共通鍵 2n個(各自が公開鍵と秘密鍵を1組) 処理速度 速い(大きなデータ向き) 遅い(小さなデータ向き) 鍵の配送 相手ごとに安全に配る必要がある 公開鍵はそのまま配ってよい 代表的な方式 AES、3DES RSA、楕円曲線暗号(ECC) 主な用途 通信本文やファイルの暗号化 共通鍵の受渡し、ディジタル署名
用語 共通鍵暗号方式 暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。AESが代表。処理が高速で大きなデータ向きだが、相手ごとに鍵を安全に配る必要があり(鍵配送問題)、n人ではn(n−1)/2個の鍵がいる。 公開鍵暗号方式 対になる公開鍵と秘密鍵を使う方式。片方で暗号化したものはもう片方でしか戻せない。RSAや楕円曲線暗号が代表。鍵配送問題がない代わりに処理は遅い。 楕円曲線暗号 楕円曲線上の離散対数問題の難しさを根拠とする公開鍵暗号。RSAより短い鍵で同等の強度が得られ、処理も軽いため携帯端末やICカードで広く使われる。 ハイブリッド暗号方式 本文は高速な共通鍵暗号で暗号化し、その共通鍵だけを受信者の公開鍵で暗号化して渡す方式。速度と鍵配送のしやすさを両立する。TLSがこの方式を用いる。 ハッシュ関数 任意長の入力から固定長のハッシュ値を作る一方向の関数。SHA-256が代表。ハッシュ値から入力を求めることと、同じ値になる別の入力を見つけることが困難であることが求められる。 ディジタル署名 文書のハッシュ値を送信者の秘密鍵で暗号化したもの。受信者は送信者の公開鍵で検証する。完全性・真正性・否認防止が得られるが、文書自体は暗号化されない。 メッセージ認証符号(MAC) 共通鍵とメッセージから作る改ざん検出用の値。鍵を共有する当事者間では改ざんを検出できるが、双方が同じ鍵をもつため第三者に対する否認防止にはならない。 認証局(CA) 申請者の公開鍵と所有者情報に自らのディジタル署名を付けたディジタル証明書を発行する第三者機関。証明書の失効管理も行う。 ディジタル証明書 所有者情報と所有者の公開鍵に、認証局のディジタル署名を付けたデータ。X.509形式が標準。これにより公開鍵が本当に本人のものだと確認できる。 CRLとOCSP 有効期限前に失効させられた証明書を確認するしくみ。CRLは失効した証明書の一覧を配布する方式、OCSPは検証のたびに応答サーバへ個別に問い合わせる方式。 TLS 通信路を暗号化するプロトコル。サーバ証明書でサーバの真正性を確かめ、ハンドシェイクで共通鍵を安全に共有してから、本文を共通鍵暗号で暗号化する。 ソルト パスワードをハッシュ化する前に付け加える利用者ごとに異なるランダムな文字列。同じパスワードでもハッシュ値が変わるため、事前計算したレインボーテーブルが効かなくなる。 ストレッチング ハッシュ計算を数千回から数万回繰り返して、1回の検証にわざと時間をかける手法。総当たり攻撃に必要な時間を大幅に増やす。 耐量子計算機暗号(PQC) 大規模な量子コンピュータでも解読が難しいと考えられている暗号方式の総称。素因数分解や離散対数の困難性に頼るRSA・楕円曲線暗号の後継として標準化が進んでいる。
例題
例題:AさんがBさんへ文書を送る。Bさんだけが読めるようにし、かつ差出人が確かにAさんであることをBさんが確認できるようにしたい。どの鍵をどう使えばよいか。
答えと考え方 二つのことを別々に行う。機密性のためには、本文を共通鍵で暗号化し、その共通鍵をBさんの公開鍵で暗号化して一緒に送る(ハイブリッド暗号)。Bさんは自分の秘密鍵で共通鍵を取り出し、本文を復号する。真正性のためには、本文のハッシュ値をAさんの秘密鍵で暗号化した署名を添える。BさんはAさんの公開鍵で署名を検証し、自分で計算したハッシュ値と一致するかを確かめる。要点は、秘密にしたいときは相手の公開鍵、署名したいときは自分の秘密鍵、という向きである。
例題:共通鍵暗号方式で20人が互いに通信するには鍵が何個必要か。公開鍵暗号方式ではどうか。
答えと考え方 共通鍵暗号方式では、2人の組合せの数だけ鍵がいるので 20×19÷2=190個。公開鍵暗号方式では各自が公開鍵と秘密鍵を1組もつだけなので 2×20=40個で済む。人数が増えるほど差は開き、100人では共通鍵が4,950個、公開鍵が200個となる。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術・PKIの一般的な定義
3. 認証・アクセス制御と境界の防御
本人確認のしかたと権限の絞り方、そしてファイアウォールからEDRまでの守備範囲の違いが分かります。
利用者認証は、本人だけが知っていること(知識)、本人だけが持っていること(所持)、本人自身の特徴(生体)の三つの要素のいずれかを確かめることで行います。パスワードや暗証番号、秘密の質問は知識、ICカードやハードウェアトークン、スマートフォンは所持、指紋や虹彩、静脈、声紋は生体です。このうち異なる二つ以上の要素を組み合わせるのが多要素認証で、パスワードとスマートフォンに届く確認コードの組合せが典型です。パスワードを二つ聞くのは要素が一つ(知識)だけなので多要素認証にはなりません。パスワードだけの認証はパスワードリスト攻撃に弱いため、多要素認証の導入が最も効果の大きい対策です。
生体認証は「持ち歩く必要も覚える必要もない」利点がありますが、判定は必ず似ている度合いのしきい値で行うため、誤りをゼロにはできません。本人なのに拒否してしまう割合が本人拒否率(FRR)、他人なのに受け入れてしまう割合が他人受入率(FAR)です。しきい値を厳しくすればFARは下がりますがFRRは上がり、緩めればその逆になるというトレードオフの関係にあり、両者が等しくなる点を等誤り率(EER)と呼んで装置の精度比較に使います。用途によってどちらを重視するかは変わり、機密区画の入退室ではFARを、多数の人がすばやく通る場面ではFRRを小さくする設定にします。
パスワードを毎回同じ文字列のまま送ると、盗聴されて再送されるリプレイ攻撃を受けます。これを防ぐのがワンタイムパスワードで、時刻から生成する時刻同期方式や、サーバから送られた乱数(チャレンジ)を鍵やパスワードで加工して返すチャレンジレスポンス方式があります。チャレンジレスポンス方式では、パスワードそのものは経路に流れません。さらに、普段と異なる場所や端末からのログインだけ追加の確認を求めるリスクベース認証も使われます。
利用者が一度の認証で複数のサービスを使えるようにするしくみがシングルサインオン(SSO)です。実現方式として、認証結果をXML形式のアサーションでやり取りするSAML、認証と認可を分けて考えるOAuth 2.0とOpenID Connectがあります。ここで大切なのは、認証(誰であるかを確かめること)と認可(何をしてよいかを許すこと)の区別です。OAuth 2.0は、利用者のIDとパスワードを渡すことなく、あるサービスに別のサービスの資源へのアクセスを許可するための「認可」の枠組みで、その上に本人確認を載せて「認証」まで扱えるようにしたものがOpenID Connectです。
アクセス制御には方式の違いがあります。任意アクセス制御(DAC)は、資源の所有者が自分の裁量で誰に何を許すかを決める方式で、一般的なファイルシステムの権限設定がこれに当たります。強制アクセス制御(MAC)は、資源と利用者にラベル(機密区分)を付け、組織の定めた規則に従って許可を決める方式で、所有者でも勝手に権限を広げられません。ロールベースアクセス制御(RBAC)は、個人ではなく「経理担当」「システム管理者」といった役割に権限を与え、利用者を役割に割り当てる方式で、人事異動に強く運用しやすいのが利点です。運用の原則としては、業務に必要な最小限の権限しか与えない最小権限の原則と、申請する人と承認する人を分ける職務分離が基本になります。近年は、社内ネットワークだからといって信用せず、すべてのアクセスをその都度検証するゼロトラストの考え方が広がっています。
ネットワークの境界を守る中心はファイアウォールです。パケットフィルタリング型は、パケットの送信元・宛先IPアドレス、ポート番号、プロトコルを見て、あらかじめ決めた規則で通過の可否を判断します。ステートフルインスペクション型は、これに加えて通信の状態(コネクションの確立状況)を記憶し、内部から出した要求に対応する戻りのパケットだけを通します。公開サーバは、インターネットからも内部ネットワークからも切り離した区画であるDMZ(非武装地帯)に置きます。こうしておけば、公開サーバが侵入されても、そこから内部の重要なサーバへ直接は到達できません。プロキシサーバを経由させれば、内部端末を直接インターネットに出さずに済み、URLフィルタリングやアクセスログの取得もできます。
ファイアウォールは通信の中身までは判断しないので、HTTPの上を通ってくるWeb攻撃は止まりません。そこで、HTTPの要求内容を検査してSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングらしい要求を遮断するWAFを組み合わせます。IDSは不正侵入の兆候を検知して管理者に通知するしくみ、IPSは検知に加えてその通信の遮断まで行うしくみです。侵入を完全には防げない前提で、端末上の挙動を記録して不審な動作を検知・隔離するEDR、各機器のログを集めて相関分析するSIEM、社内ネットワークへ接続する端末の状態を検査して基準を満たさなければ隔離する検疫ネットワークなどを重ね、いずれかで食い止める多層防御の考え方が主流です。
ファイアウォール・WAF・IDS/IPSなどの守備範囲の違い 機器・機能 主に見るもの 判断の材料 止められる攻撃の例 苦手なこと パケットフィルタリング型FW IPヘッダとTCP/UDPヘッダ 送信元・宛先IPアドレス、ポート番号、プロトコル 公開していないポートへの接続 許可したポートを通る攻撃(中身は見ない) ステートフルインスペクション型FW ヘッダ+通信の状態 コネクションの確立状況と要求・応答の対応 内部からの通信に見せかけた戻りパケット アプリケーションデータの中身の判断 WAF HTTP/HTTPSの中身 URL、パラメータ、本文のパターン SQLインジェクション、XSS、CSRFなどWeb攻撃 Web以外の通信 IDS 通信やホストの挙動 シグネチャ、平常時との差(アノマリ) 不正侵入の兆候の検知と管理者への通知 遮断はしない(検知と通知だけ) IPS 通信やホストの挙動 IDSと同じ判断材料 検知した通信をその場で遮断 誤検知のときに正常な通信も止めてしまう プロキシ HTTP要求の宛先と内容 URLのカテゴリ、ブラックリスト 不正サイトへの接続、情報の持ち出し 許可したサイトを悪用した攻撃 EDR 端末上の挙動 プロセスの起動、ファイル操作、通信の記録 侵入後のマルウェアの動作の検知と隔離 侵入そのものの予防 SIEM 各機器のログを横断して 相関分析 単体のログでは見えない一連の攻撃の発見 ログを出さない事象 検疫ネットワーク 接続しようとする端末の状態 修正プログラムやウイルス定義の適用状況 対策不十分な端末の持ち込みによる感染拡大 基準を満たした端末が起こす攻撃
用語 認証の三要素 本人だけが知っていること(知識)、持っていること(所持)、本人自身の特徴(生体)。異なる要素を二つ以上組み合わせるのが多要素認証で、パスワードを二つ使っても多要素にはならない。 本人拒否率(FRR) 生体認証で、本人であるのに拒否してしまう割合。判定のしきい値を厳しくすると上がる。利便性に直結する指標。 他人受入率(FAR) 生体認証で、他人であるのに本人として受け入れてしまう割合。判定のしきい値を厳しくすると下がる。安全性に直結し、FRRとはトレードオフの関係にある。 等誤り率(EER) しきい値を変えたときにFRRとFARが等しくなる点の値。値が小さいほど装置の精度が高く、生体認証装置の比較に使われる。 ワンタイムパスワード 一度しか使えないパスワード。時刻から生成する時刻同期方式などがあり、盗聴した認証データを再送するリプレイ攻撃を無効にする。 チャレンジレスポンス方式 サーバが送った乱数(チャレンジ)を、利用者側がパスワードや鍵で加工して返す認証方式。パスワードそのものが通信経路に流れないため盗聴に強い。 シングルサインオン 一度の認証で複数のサービスを利用できるようにするしくみ。SAMLやOpenID Connectなどの方式がある。利便性は上がるが、認証情報が漏れたときの影響も大きい。 OAuth 2.0 利用者のIDとパスワードを渡すことなく、あるサービスに対して別のサービスの資源へのアクセスを許可するための認可の枠組み。認証そのものの規格ではない。 OpenID Connect OAuth 2.0の上に本人確認(認証)のしくみを載せた規格。誰であるかを表すIDトークンをやり取りする。 任意アクセス制御(DAC) 資源の所有者が自らの裁量でアクセス権を設定する方式。一般的なファイルシステムの権限設定がこれに当たる。 強制アクセス制御(MAC) 資源と利用者にラベル(機密区分)を付け、組織が定めた規則に従って可否を決める方式。所有者であっても勝手に権限を広げられない。 ロールベースアクセス制御(RBAC) 個人ではなく業務上の役割に権限を与え、利用者を役割に割り当てる方式。人事異動のたびに個別設定を直す必要がなく、運用しやすい。 最小権限の原則 利用者やプログラムには、業務の遂行に必要な最小限の権限だけを与えるという原則。事故や不正が起きたときの被害範囲を小さくできる。 ゼロトラスト 社内ネットワークの内側だからという理由で信用せず、すべてのアクセスを利用者・端末・文脈から都度検証する考え方。境界防御だけに頼らない設計になる。 DMZ インターネットからも内部ネットワークからも分離した中間の区画。公開Webサーバやメールサーバを置き、侵入されても内部へ直接到達させないようにする。 ステートフルインスペクション パケットのヘッダだけでなく、通信の状態(コネクションの確立状況)を記憶して可否を判断するファイアウォールの方式。内部から出した要求への戻りだけを通せる。 WAF HTTP/HTTPSの要求内容を検査し、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどWebアプリケーションへの攻撃を遮断する装置・ソフトウェア。 IDSとIPS IDSは不正侵入の兆候を検知して通知するしくみ、IPSは検知に加えて該当する通信の遮断まで行うしくみ。IPSは誤検知で正常な通信を止めるおそれもある。 EDR 端末上のプロセス起動や通信の記録を収集し、不審な挙動を検知して隔離・調査を支援するしくみ。侵入を防ぎきれない前提で、侵入後の被害拡大を抑える。 SIEM サーバやネットワーク機器のログを一か所に集め、相関分析して脅威の兆候を見つけ出すしくみ。単体の機器のログだけでは見えない一連の攻撃を検知できる。 検疫ネットワーク 社内ネットワークへ接続しようとする端末を、いったん隔離した区画で検査し、修正プログラムの適用状況などが基準を満たした場合だけ接続を許すしくみ。
例題
例題:ある生体認証装置で、判定のしきい値を厳しくした。FRRとFARはそれぞれどう変化するか。
答えと考え方 しきい値を厳しくすると、本人でも「似ていない」と判断されやすくなるのでFRR(本人拒否率)は上がり、他人が誤って受け入れられることは減るのでFAR(他人受入率)は下がる。両者はトレードオフで同時にゼロにはできない。研究室や金庫室のようにセキュリティを優先する場所ではFARが小さくなるよう厳しめに、多数の人が短時間で通る場所では利便性のためFRRが小さくなるよう緩めに設定する。
例題:あるWebサービスに、写真共有サービスの自分のアルバムを読み出させたい。ID・パスワードを渡さずに実現する枠組みは何か。
答えと考え方 OAuth 2.0である。利用者は写真共有サービス側で「このサービスにアルバムの読取りを許す」と同意し、Webサービスにはアクセストークンだけが渡される。渡されるのは権限であって本人確認の結果ではない点が要点で、これは「認可」の枠組みである。本人が誰かを伝えたい場合は、OAuth 2.0の上に認証を載せたOpenID Connectを使う。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・セキュリティ技術評価)
4. 情報セキュリティ管理と実装上の対策
ISMSとリスクの扱い方、組織的な体制、そして脆弱性を作り込まない書き方までを押さえます。
組織として情報セキュリティを維持する枠組みがISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)で、要求事項をまとめた規格がJIS Q 27001(ISO/IEC 27001に対応)、実践のための管理策の手引がJIS Q 27002です。ISMSでは、まず適用範囲と情報セキュリティ方針を定め、守るべき情報資産を洗い出して台帳にし、リスクを評価して対応を決め、実施して監視し、内部監査とマネジメントレビューを経て見直す、という計画・実施・評価・改善のサイクルを回します。重要なのは、リスクをゼロにすることが目的ではなく、組織が決めた基準まで下げて管理し続けることが目的だという点です。認証を取得した後も、定期的な審査と継続的な改善が求められます。
リスクアセスメントは、リスク特定・リスク分析・リスク評価の三つのプロセスから成ります。リスク特定では、どんな資産にどんな脅威と脆弱性があるかを洗い出します。リスク分析では、その発生確率と影響の大きさを見積もってリスクの大きさを求めます。金額で表す定量的分析と、大・中・小のような段階で表す定性的分析があります。リスク評価では、求めた大きさをあらかじめ定めたリスク基準と比べ、対応が必要かどうか、どれから手を付けるかの優先順位を決めます。この順序を入れ替えた選択肢がよく出るので、特定→分析→評価の並びで覚えます。
評価の結果を受けて行うのがリスク対応で、四つに分類されます。リスク回避は、リスクの原因となる活動そのものをやめること。リスク移転(リスク共有)は、保険への加入や専門業者への委託によって、損失の負担を第三者と分け合うこと。リスク低減(軽減)は、暗号化や多要素認証、バックアップなどの対策で発生確率や損失の大きさを小さくすること。リスク保有(受容)は、損失が小さく対策費用に見合わないなどの理由で、対策せずに受け入れることです。対策を打った後にも残るリスクを残留リスクといい、これを認識して受容するかどうかを経営層が判断します。
組織の決まりごとは、情報セキュリティポリシとして三階層に整理するのが一般的です。最上位の基本方針(ポリシ)は、なぜ取り組むのかという目的、適用範囲、経営者の責任を示した宣言で、経営層が承認します。中位の対策基準(スタンダード)は、何をしなければならないかという組織共通のルールで、パスワードの条件や持出しの申請といった具体的な決まりを書きます。最下位の実施手順(プロシージャ)は、どうやるのかという作業レベルの手順書やマニュアルです。上位ほど変更の頻度が低く、下位ほど現場に近く具体的になります。
運用の体制としては、インシデントが起きたときの窓口となり、検知・封じ込め・根絶・復旧と再発防止を指揮するCSIRTと、セキュリティ機器のログを常時監視して異常を見つけるSOCが代表的です。事前の点検には、既知の脆弱性が残っていないかを網羅的に調べる脆弱性診断と、実際に攻撃者と同じ手口で侵入を試みて防御が突破できるかを確かめるペネトレーションテストがあります。脆弱性の情報は、個々の脆弱性に付ける共通の識別子であるCVE、深刻度を共通の基準で数値化するCVSS、日本国内向けに対策情報を提供するポータルであるJVNなどで共有されており、修正プログラムが出る前に攻撃されるゼロデイ攻撃に備えて、日ごろから更新の適用手順を整えておくことが必要です。
実装の段階で脆弱性を作り込まないための考え方がセキュアプログラミングです。基本は、外部から来る値をすべて信用せず、想定する形式・長さ・文字種に合っているかを検査すること(入力値検証)です。そのうえで、データベースへの問合せはプレースホルダ(バインド機構)で組み立てて入力値を値としてのみ渡し、HTMLへの出力は直前にエスケープ処理を行い、ファイル名やOSコマンドは利用者の入力からそのまま組み立てないようにします。さらに、エラーメッセージに内部の構造やSQL文をそのまま出さない、アプリケーションが使うデータベースの利用者には必要最小限の権限しか与えない、配列やバッファは境界を検査する、といった配慮を重ねます。対策は「攻撃の種類ごとに正しい対策が違う」という点が要で、XSS対策のエスケープをSQLインジェクション対策と取り違える誤りは典型的な誤答パターンです。
法規も押さえておきます。不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)は、他人の識別符号を無断で用いてアクセス制御されたコンピュータを利用できる状態にする行為や、セキュリティホールを突いて同様の状態にする行為、他人の識別符号を不正に取得・保管したり不正に取得を助長したりする行為を禁じています。刑法の不正指令電磁的記録に関する罪(いわゆるウイルス作成罪)は、正当な理由なくマルウェアを作成・提供・供用・取得・保管する行為を処罰します。個人情報保護法は、個人情報の取得・利用・提供のルールを定め、要配慮個人情報の取得には原則として本人の同意を必要とし、漏えい等が生じて個人の権利利益を害するおそれが大きい場合には個人情報保護委員会への報告と本人への通知を義務付けています。
リスク対応の4分類と、情報セキュリティポリシの3階層 区分 名称 内容 例 リスク対応 リスク回避 リスクの原因となる活動そのものをやめる 個人情報を預かる業務から撤退する リスク対応 リスク移転(共有) 損失の負担を第三者と分け合う サイバー保険に加入する、専門業者へ委託する リスク対応 リスク低減(軽減) 発生確率や損失の大きさを小さくする 暗号化、多要素認証、バックアップ、教育 リスク対応 リスク保有(受容) 対策せずにそのまま受け入れる 損失が小さく、対策費用に見合わない場合 ポリシ3階層 基本方針(ポリシ) なぜ取り組むのか。目的・適用範囲・経営者の責任 経営者が承認し公表する情報セキュリティ基本方針 ポリシ3階層 対策基準(スタンダード) 何をするのか。組織共通の守るべきルール パスワードの条件、記憶媒体の持出しは申請制 ポリシ3階層 実施手順(プロシージャ) どうやるのか。具体的な作業手順 サーバ設定手順書、マルウェア感染時の連絡手順
SQLインジェクションに対して脆弱なコードと、プレースホルダを使った対策後のコード
/* 脆弱な例:入力値をそのままSQL文へ連結している */ ○会員検索(文字列型: 入力ID) 文字列型: sql sql ← "SELECT * FROM 会員 WHERE 会員ID = '" + 入力ID + "'" 結果表示(DB問合せ(sql)) /* 対策後:プレースホルダに値として渡している */ ○会員検索2(文字列型: 入力ID) 文字列型: sql sql ← "SELECT * FROM 会員 WHERE 会員ID = ?" 結果表示(DB問合せ(sql, 入力ID))
用語 ISMS 情報セキュリティを組織的に管理し継続的に改善する枠組み。要求事項はJIS Q 27001が、実践のための管理策の手引はJIS Q 27002が示す。リスクをゼロにするのではなく、決めた基準まで下げて管理し続けることが目的。 リスクアセスメント リスク特定・リスク分析・リスク評価の三つのプロセスの総称。何が起こりうるかを洗い出し、大きさを見積もり、リスク基準と比べて対応の要否と優先順位を決める。 定量的分析と定性的分析 リスクの大きさを金額など数値で見積もるのが定量的分析、大・中・小のような段階で表すのが定性的分析。数値化が難しい資産では定性的分析が使われる。 リスク回避 リスクの原因となる活動そのものをやめて、リスクを断つ対応。たとえば個人情報を扱う業務を廃止する、危険なサービスの提供をやめる、など。 リスク移転(リスク共有) 保険への加入や専門業者への委託によって、損失の負担を第三者と分け合う対応。リスクそのものが消えるわけではない点に注意する。 リスク低減(軽減) 対策を実施して発生確率や損失の大きさを小さくする対応。暗号化、多要素認証、バックアップ、教育など、いわゆるセキュリティ対策の多くがこれに当たる。 リスク保有(受容) 損失が小さい、対策費用が損失額に見合わないなどの理由で、対策せずにそのまま受け入れる対応。受容する判断は記録に残す。 残留リスク 対策を実施した後にも残るリスク。すべてのリスクを消すことはできないため、残留リスクを把握して受容するかどうかを経営層が判断する。 情報セキュリティポリシ3階層 上から、目的と適用範囲と経営者の責任を示す基本方針、組織共通のルールを定める対策基準、具体的な作業手順を書く実施手順の三段構成。上位ほど変更頻度が低い。 CSIRT インシデントが起きたときの窓口となり、検知・封じ込め・根絶・復旧と再発防止を指揮する組織。社内に常設する場合と、必要時に招集する場合がある。 SOC セキュリティ機器やサーバのログを常時監視し、攻撃の兆候をいち早く見つける専門組織。検知した事象はCSIRTへ引き継がれる。 ペネトレーションテスト 実際に攻撃者と同じ手口で侵入を試み、防御を突破できるかどうかを確かめる検査。網羅的に既知の弱点を洗い出す脆弱性診断とは目的が異なる。 CVE 個々の脆弱性に付けられる共通の識別子。CVE-西暦-通番の形式で表され、これを使うことで組織や製品をまたいで同じ脆弱性を指せる。 CVSS 脆弱性の深刻度を、攻撃のしやすさや影響の大きさなど共通の観点から数値化する評価手法。基本評価基準・現状評価基準・環境評価基準がある。 JVN 日本国内向けに脆弱性対策情報を提供するポータルサイト。国内で使われる製品の脆弱性と、その対策情報がまとめられている。 プレースホルダ(バインド機構) SQL文の中で値を入れる場所を「?」などの記号で先に示し、後から値そのものとして与えるしくみ。値がSQLの構文として解釈されないため、SQLインジェクションを根本的に防げる。 エスケープ処理 出力先で特別な意味をもつ文字を、意味をもたない表記へ置き換える処理。HTMLへ出力する直前に「<」「>」などを変換することがクロスサイトスクリプティングの対策になる。 不正アクセス禁止法 他人の識別符号を無断で用いる、あるいはセキュリティホールを突くなどして、アクセス制御されたコンピュータを利用できる状態にする行為などを禁じる法律。識別符号の不正取得や助長行為も対象。 不正指令電磁的記録に関する罪 刑法に定められた、いわゆるウイルス作成罪。正当な理由なくマルウェアを作成・提供・供用・取得・保管する行為を処罰する。
例題
例題:ある業務システムの停止による損失は年間で最大10万円と見積もられたが、対策の導入と運用には年間200万円かかることが分かった。どのリスク対応を選ぶのが妥当か。
答えと考え方 リスク保有(受容)である。損失額に対して対策費用が大きく見合わないため、対策せずに受け入れるという判断が合理的になる。ただし、受容したという判断と根拠は記録に残し、前提(損失額や発生確率)が変わったときに見直せるようにしておく。なお、保険を掛けて損失の負担を移すならリスク移転、その業務自体をやめるならリスク回避になる。
例題:上のコードで、利用者が入力IDに「' OR '1'='1」と入力した場合、脆弱な例では何が起きるか。
答えと考え方 組み立てられるSQL文が WHERE 会員ID = '' OR '1'='1' となり、条件が常に真になって会員表の全行が読み出されてしまう。入力値がSQLの構文の一部として解釈されてしまうことが原因である。対策後のコードでは、入力値は「?」の位置に値としてだけ渡され、構文としては解釈されないため、同じ文字列を入力しても単に「そういう会員IDの会員はいない」という結果になる。
出典・根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ管理・情報セキュリティ対策)/JIS Q 27001(情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項)
確認問題(40問) 四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|完全性
情報セキュリティの基本特性のうち、完全性を確保するための対策として最も適切なものはどれか。
操作ログを取得して、誰がいつ何をしたかを後から追跡できるようにする データにハッシュ値を付けて保管し、後から改ざんの有無を検出できるようにする データを暗号化して、権限のない者には内容が読み取れないようにする サーバを二重化して、1台が故障しても業務を継続できるようにする 正解と解説 正解:B. データにハッシュ値を付けて保管し、後から改ざんの有無を検出できるようにする 完全性は、情報が正確で改ざんも欠落もない状態を保つ特性であり、ハッシュ値による改ざん検出はその代表的な対策である。暗号化は許可された者だけが読める状態を守る機密性、サーバの二重化は必要なときに使える状態を守る可用性、操作ログの取得は動作を主体まで追跡できる責任追跡性のための対策であり、いずれも完全性そのものを守る手段ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問2|否認防止
JIS Q 27000で定義される情報セキュリティの特性のうち、否認防止の説明として適切なものはどれか。
エンティティが、主張どおりの本人・本物であることを確実にする特性 主張された事象や処置が実際に起きたことを、後から否定されないように証明できる特性 意図した動作と結果に一致する、という一貫性をもつ特性 エンティティの動作が、その動作を行ったエンティティまで一意に追跡できる特性 正解と解説 正解:B. 主張された事象や処置が実際に起きたことを、後から否定されないように証明できる特性 否認防止は、ある事象や処置が発生したこととそれを引き起こした主体を証明でき、後から「やっていない」と言わせない特性である。主張どおりの本人であることを確実にするのは真正性、意図したとおりにふるまうことは信頼性、動作を主体までたどれることは責任追跡性であり、いずれも別の特性を指している。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/JIS Q 27000(情報セキュリティマネジメントシステム-用語)
問3|脅威と脆弱性
情報セキュリティにおける脅威、脆弱性、リスクの関係の説明として適切なものはどれか。
脅威と脆弱性は同じものを言い換えたもので、一方を取り除いてももう一方は必ず残る 脆弱性とは、情報資産に損害を与える可能性のある事象や行為そのものである 脅威とは、情報資産がもつ弱点であり、これが突かれたときに損失が生じる リスクとは、脅威が脆弱性を突いて損失が生じる可能性の度合いであり、脅威か脆弱性のどちらかを小さくすればリスクは下がる 正解と解説 正解:D. リスクとは、脅威が脆弱性を突いて損失が生じる可能性の度合いであり、脅威か脆弱性のどちらかを小さくすればリスクは下がる リスクは、脅威と脆弱性と資産価値の組合せで決まる損失発生の可能性であり、脅威と脆弱性のどちらかを小さくできればリスクは下がる。損害を与えうる事象や行為そのものは脅威の定義、資産がもつ弱点は脆弱性の定義であり、これらを入れ替えて述べた記述は誤りである。脅威と脆弱性は別々の概念であり、同じものの言い換えではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問4|ワーム
マルウェアの分類のうち、ワームの説明として適切なものはどれか。
単独では動作せず、他のプログラムに寄生して、そのプログラムの実行に伴って感染を広げる 単独のプログラムとして動作し、自分自身の複製をネットワーク経由で他のコンピュータへ送り込んで増殖する 有用なソフトウェアに見せかけて導入させ、内部では利用者に気付かれないように不正な動作を行う 感染した端末のファイルを暗号化して使えなくし、復元と引換えに金銭を要求する 正解と解説 正解:B. 単独のプログラムとして動作し、自分自身の複製をネットワーク経由で他のコンピュータへ送り込んで増殖する ワームは単独のプログラムとして動作し、自分自身の複製をネットワーク越しに送り込んで自律的に増殖する点が特徴である。他のプログラムに寄生して広がるのはウイルス、有用なソフトに見せかけて裏で不正動作をするのはトロイの木馬、ファイルを暗号化して金銭を要求するのはランサムウェアである。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問5|SQLI対策
Webアプリケーションに対するSQLインジェクション攻撃を防ぐ対策として、最も直接的で確実なものはどれか。
データベースへ渡すSQL文をプレースホルダ(バインド機構)で組み立て、入力値を値としてのみ渡す 更新用の画面に第三者が推測できないトークンを埋め込み、要求時に照合する 利用者が指定したファイル名から「../」などの文字列を取り除く Webページに出力する文字列のうち、「<」や「>」などの特殊文字を実体参照へ変換する 正解と解説 正解:A. データベースへ渡すSQL文をプレースホルダ(バインド機構)で組み立て、入力値を値としてのみ渡す SQLインジェクションは、入力値がSQLの構文の一部として解釈されることが原因なので、プレースホルダで値としてのみ渡せば根本的に防げる。特殊文字を実体参照へ変換するのはクロスサイトスクリプティングの対策、推測できないトークンの照合はクロスサイトリクエストフォージェリの対策、「../」の除去はディレクトリトラバーサルの対策であり、いずれもSQL文の組立てとは別の問題に対する対策である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問6|XSS
クロスサイトスクリプティングの攻撃内容と対策の組合せとして適切なものはどれか。
Webサーバへ大量の要求を送ってサービスを停止させる攻撃であり、入力値の形式検査が対策となる 脆弱なWebサイトを経由して、閲覧した利用者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃であり、HTMLへ出力する直前のエスケープ処理が対策となる ログイン済みの利用者のブラウザから、本人が意図しない更新要求を送信させる攻撃であり、HTMLへ出力する直前のエスケープ処理が対策となる Webサーバへ不正なSQL文を送り込んでデータベースを操作する攻撃であり、出力時のエスケープ処理が対策となる 正解と解説 正解:B. 脆弱なWebサイトを経由して、閲覧した利用者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃であり、HTMLへ出力する直前のエスケープ処理が対策となる クロスサイトスクリプティングは、入力値がそのままHTMLに出力される脆弱性を経由して、被害者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃であり、出力直前のエスケープ処理が対策となる。ログイン済み利用者に意図しない要求を送らせるのはクロスサイトリクエストフォージェリで対策はトークンの照合、SQL文を送り込む攻撃はSQLインジェクションで対策はプレースホルダ、大量の要求でサービスを止めるのはDoS攻撃であり、攻撃と対策の対応が食い違っている。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問7|CSRF対策
クロスサイトリクエストフォージェリへの対策として適切なものはどれか。
利用者が入力した文字列をHTMLへ出力するときに、特殊文字をエスケープしてから出力する 更新処理の画面に第三者が推測できないトークンを埋め込み、要求と一緒に送られてきたトークンと照合してから処理を実行する パスワードに利用者ごとに異なるソルトを付け、ハッシュ化した値だけを保存する データベースへの問合せを、値をプレースホルダに渡す方式で組み立てる 正解と解説 正解:B. 更新処理の画面に第三者が推測できないトークンを埋め込み、要求と一緒に送られてきたトークンと照合してから処理を実行する クロスサイトリクエストフォージェリは、ログイン済みの利用者のブラウザから本人の意図しない更新要求を送らせる攻撃なので、その要求が正規の画面から出たものであることを確かめるトークンの照合が対策になる。プレースホルダはSQLインジェクション、エスケープはクロスサイトスクリプティング、ソルト付きハッシュはパスワード流出時のレインボーテーブル攻撃への対策であり、いずれも要求が本人の意図かどうかは確かめられない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問8|トラバーサル
攻撃者がWebアプリケーションのパラメータに「../」を含む文字列を与えたところ、公開を意図していないディレクトリのファイルが読み出された。この攻撃の名称と対策の組合せとして適切なものはどれか。
バッファオーバフロー攻撃であり、セッションIDを推測困難な乱数にして毎回再発行する ディレクトリトラバーサル攻撃であり、ファイル名を利用者の入力から直接組み立てず、識別子と実ファイルの対応表を用いて解決する ディレクトリトラバーサル攻撃であり、データベースへのSQL文をプレースホルダで組み立てる OSコマンドインジェクションであり、HTMLへの出力時に特殊文字のエスケープ処理を行う 正解と解説 正解:B. ディレクトリトラバーサル攻撃であり、ファイル名を利用者の入力から直接組み立てず、識別子と実ファイルの対応表を用いて解決する 相対パスを含むファイル名を与えて公開範囲外のファイルへ到達する攻撃がディレクトリトラバーサルであり、ファイル名を利用者の入力から組み立てないことが確実な対策である。プレースホルダはSQLインジェクションの対策で、ファイルの読出しには関係がない。OSコマンドインジェクションは入力がシェルに渡る場合の攻撃、バッファオーバフローは入力長を検査しない領域をあふれさせる攻撃で、いずれも名称も対策も当てはまらない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問9|DNSアンプ
DNSリフレクション(DNSアンプ)攻撃の説明として適切なものはどれか。
DNSサーバへゾーン転送を要求し、内部のホスト情報を一括して取得する 権威DNSサーバの管理者アカウントを乗っ取り、登録内容を書き換える DNSサーバのキャッシュに偽の対応関係を覚え込ませ、利用者を偽サイトへ誘導する 送信元IPアドレスを攻撃対象に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を攻撃対象へ集中させる 正解と解説 正解:D. 送信元IPアドレスを攻撃対象に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を攻撃対象へ集中させる DNSリフレクション攻撃は、送信元を詐称した小さな問合せから大きな応答を返させ、それを攻撃対象へ集中させる増幅型のDDoS攻撃である。対策としては、外部からの再帰問合せに応じるオープンリゾルバをやめることや、詐称された送信元アドレスを経路上で遮断することが挙げられる。キャッシュに偽の対応を覚え込ませるのはDNSキャッシュポイズニング、ゾーン転送による情報収集や管理アカウントの乗っ取りは、いずれも増幅を利用した攻撃ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問10|水飲み場型
水飲み場型攻撃の説明として適切なものはどれか。
取引先を装って無害な問合せを何度かやり取りし、信用させてからマルウェア付きのメールを送る セキュリティ対策が手薄な取引先や委託先を踏み台にして、本来の標的の組織へ侵入する 修正プログラムが提供される前の脆弱性を突いて攻撃する 標的の組織の利用者がよく閲覧するWebサイトをあらかじめ改ざんしておき、そこを訪れた標的だけにマルウェアを感染させる 正解と解説 正解:D. 標的の組織の利用者がよく閲覧するWebサイトをあらかじめ改ざんしておき、そこを訪れた標的だけにマルウェアを感染させる 水飲み場型攻撃は、標的がよく訪れるWebサイトを改ざんして待ち伏せし、標的の組織からの閲覧のときだけマルウェアを送り込む待伏せ型の手口である。無害なやり取りで信用させてから攻撃するのはやり取り型攻撃、取引先や委託先を踏み台にするのはサプライチェーン攻撃、修正前の脆弱性を突くのはゼロデイ攻撃であり、いずれも別の手口を指す。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問11|不正の三角形
内部不正が発生する条件を説明した「不正のトライアングル」を構成する三つの要素の組合せはどれか。
機密性、完全性、可用性 予防、検知、回復 機会、動機、正当化 脅威、脆弱性、情報資産 正解と解説 正解:C. 機会、動機、正当化 不正のトライアングルは、機会・動機・正当化の三つがそろったときに不正が起きるとする考え方で、組織が直接小さくできるのは主に「機会」であり、最小権限の付与や職務分離、ログ監視、記憶媒体の持出し制限が効果をもつ。脅威・脆弱性・情報資産はリスクの大きさを決める要素、機密性・完全性・可用性は情報セキュリティの基本特性、予防・検知・回復は対策の時間的な区分であり、いずれも不正のトライアングルではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)
問12|鍵の数
共通鍵暗号方式を用いて、100人の利用者が互いに1対1で秘密の通信を行えるようにするとき、全体で必要な共通鍵の個数はどれか。
100 200 4950 9900 正解と解説 正解:C. 4950 共通鍵暗号方式では2人の組合せごとに1個の鍵が必要なので、n人ならn(n−1)/2個となり、100×99÷2=4,950個である。9,900は2で割り忘れた値、200は公開鍵暗号方式で各自が公開鍵と秘密鍵を1組ずつもつ場合の個数(2n個)、100は1人1個と誤った場合の値である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問13|機密性の鍵
公開鍵暗号方式を用いて、AさんがBさんへ、Bさんだけが読める文書を送りたい。Aさんが暗号化に使う鍵と、Bさんが復号に使う鍵の組合せとして適切なものはどれか。
暗号化にBさんの秘密鍵、復号にBさんの公開鍵を使う 暗号化にAさんの公開鍵、復号にAさんの秘密鍵を使う 暗号化にAさんの秘密鍵、復号にAさんの公開鍵を使う 暗号化にBさんの公開鍵、復号にBさんの秘密鍵を使う 正解と解説 正解:D. 暗号化にBさんの公開鍵、復号にBさんの秘密鍵を使う 秘密にして送りたいとき(機密性)は、受信者Bさんの公開鍵で暗号化する。対になるBさんの秘密鍵はBさん本人しか持たないので、Bさんだけが復号できる。Aさんの鍵の対を使ったのでは、Bさん専用にはならない。また、送信者の秘密鍵で暗号化したものは誰でも入手できる公開鍵で復号できてしまうため、秘密は守れない(それはディジタル署名の使い方である)。Bさんの秘密鍵はAさんが持っていないので、それで暗号化することもできない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問14|署名の作成
送信者がディジタル署名を作成するときに用いる鍵はどれか。
受信者の秘密鍵 受信者の公開鍵 送信者の秘密鍵 送信者の公開鍵 正解と解説 正解:C. 送信者の秘密鍵 ディジタル署名は、文書のハッシュ値を送信者の秘密鍵で暗号化して作る。秘密鍵は本人しか持たないので「本人しか作れなかった」ことが示せる。送信者の公開鍵は検証に使う鍵であって作成には使えず、受信者の鍵の対は文書を秘密にして送るとき(機密性)に使うもので、署名の作成には関係しない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問15|署名の検証
受信者がディジタル署名を検証する際に用いる鍵と、検証によって確認できることの組合せとして適切なものはどれか。
送信者の秘密鍵を用いて検証し、文書が改ざんされていないことを確認できる 受信者の秘密鍵を用いて検証し、文書が送信者本人のものであることを確認できる 受信者の公開鍵を用いて検証し、文書が第三者に読まれていないことを確認できる 送信者の公開鍵を用いて検証し、文書が送信者本人のものであり改ざんされていないことを確認できる 正解と解説 正解:D. 送信者の公開鍵を用いて検証し、文書が送信者本人のものであり改ざんされていないことを確認できる 署名は送信者の秘密鍵で作られるので、対になる送信者の公開鍵で検証する。復号して得た値が、受け取った文書から自分で計算したハッシュ値と一致すれば、改ざんされていないこと(完全性)と送信者本人が作ったこと(真正性)が確認できる。送信者の秘密鍵は本人しか持たないため受信者は使えない。受信者の鍵の対は機密性のためのもので署名の検証には使えず、また署名は文書自体を暗号化しないので、盗み見られていないことの確認にはならない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問16|ハイブリッド
ハイブリッド暗号方式を用いて、送信者Aが受信者Bへ大きなファイルを安全に送る手順として適切なものはどれか。
ファイルをBの公開鍵で暗号化し、共通鍵をAの秘密鍵で暗号化して一緒に送る ファイルを共通鍵で暗号化し、その共通鍵をBの公開鍵で暗号化して一緒に送る ファイルを共通鍵で暗号化し、その共通鍵をAの公開鍵で暗号化して一緒に送る ファイルをAの秘密鍵で暗号化し、共通鍵をBの秘密鍵で暗号化して一緒に送る 正解と解説 正解:B. ファイルを共通鍵で暗号化し、その共通鍵をBの公開鍵で暗号化して一緒に送る ハイブリッド暗号方式では、処理の速い共通鍵暗号で本文を暗号化し、その共通鍵だけを公開鍵暗号で安全に渡す。共通鍵は受信者Bの公開鍵で暗号化するので、対になるBの秘密鍵をもつB本人だけが取り出せる。大きなファイルを公開鍵暗号で直接暗号化するのは処理が重く現実的でない。共通鍵をAの公開鍵やAの秘密鍵で暗号化しても、Bが取り出せなかったり誰でも取り出せてしまったりして意味をなさず、Bの秘密鍵はAが持っていない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問17|ハッシュ関数
暗号技術で用いるハッシュ関数の性質として、適切でないものはどれか。
得られたハッシュ値から、元の入力を効率よく復元できる 同じハッシュ値になる異なる二つの入力を見つけることが、計算量的に困難である 入力の長さにかかわらず、出力されるハッシュ値の長さは一定である 同じ入力からは、必ず同じハッシュ値が得られる 正解と解説 正解:A. 得られたハッシュ値から、元の入力を効率よく復元できる ハッシュ関数には一方向性があり、ハッシュ値から元の入力を求めることは計算量的に困難でなければならない。効率よく復元できてしまうと、ハッシュ値でパスワードを保存する意味がなくなる。出力長が一定であること、同じ入力から必ず同じ値が得られること、衝突を見つけることが困難であることは、いずれもハッシュ関数に求められる正しい性質である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問18|MACと署名
メッセージ認証符号(MAC)とディジタル署名の違いの説明として適切なものはどれか。
ディジタル署名は送信者と受信者が共有する共通鍵を用いて作るため、受信者も同じ署名を作ることができる ディジタル署名はメッセージの秘匿だけを目的としており、改ざんの検出や否認防止はできない MACは共通鍵を共有する当事者間で改ざんを検出できるが、双方が同じ鍵をもつため、第三者に対する否認防止にはならない MACは公開鍵暗号を用いて作るため、通信相手と鍵をあらかじめ共有しておく必要がない 正解と解説 正解:C. MACは共通鍵を共有する当事者間で改ざんを検出できるが、双方が同じ鍵をもつため、第三者に対する否認防止にはならない MACは共通鍵とメッセージから作るため、鍵を共有する相手どうしでは改ざんを検出できるが、同じ鍵で同じ値を作れる者が二人いるので、第三者に対して「作ったのはあなただ」と示す否認防止は成立しない。MACは共通鍵方式なので事前の鍵共有が必要であり、ディジタル署名は送信者の秘密鍵で作るため受信者には作れない。また署名は文書を暗号化しないので秘匿の手段ではなく、目的は完全性・真正性・否認防止である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問19|証明書
認証局(CA)が発行するディジタル証明書に関する記述のうち、適切なものはどれか。
証明書には所有者の情報と所有者の公開鍵が含まれ、それらに認証局のディジタル署名が付けられている 証明書が正当かどうかは、所有者の秘密鍵を用いて検証する 証明書は有効期限内であれば失効することはないので、期限だけを確認すればよい 証明書には所有者の秘密鍵が格納されており、認証局の公開鍵で暗号化されている 正解と解説 正解:A. 証明書には所有者の情報と所有者の公開鍵が含まれ、それらに認証局のディジタル署名が付けられている ディジタル証明書は、所有者の情報と所有者の公開鍵に認証局が自らのディジタル署名を付けたもので、利用者は認証局の公開鍵でその署名を検証して公開鍵の持ち主を確認する。秘密鍵は本人だけが保管するもので証明書には入らない。証明書の正当性を確かめるのは認証局の公開鍵であって所有者の秘密鍵ではない。また、鍵の漏えいなどで有効期限前に失効することがあるため、期限の確認だけでは不十分である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/PKI・ディジタル証明書の一般的な定義
問20|失効確認
ディジタル証明書が有効期限内であっても信用できない場合に備えて、失効状態を確認する方法はどれか。
証明書のハッシュ値を計算して、記載内容が改ざんされていないかを調べる CRL(証明書失効リスト)を参照するか、OCSPで応答サーバに問い合わせて、失効させられていないかを調べる 証明書に記載された有効期限を読み取って、現在時刻が期限内かどうかを調べる 証明書に含まれる公開鍵で通信を暗号化して、相手が復号できるかどうかを調べる 正解と解説 正解:B. CRL(証明書失効リスト)を参照するか、OCSPで応答サーバに問い合わせて、失効させられていないかを調べる 秘密鍵の漏えいや所属の変更などにより、証明書は有効期限前でも失効させられることがある。その状態を確認する手段が、失効した証明書の一覧を配布するCRLと、検証のたびに応答サーバへ個別に問い合わせるOCSPである。改ざんの有無は認証局の署名の検証で分かるが失効は分からず、有効期限の確認は失効の確認にならない。公開鍵で暗号化して試す方法は鍵の対応を確かめるだけで、失効状態とは無関係である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/PKI・ディジタル証明書の一般的な定義
問21|サイドチャネル
サイドチャネル攻撃の説明として適切なものはどれか。
通信経路に割り込み、双方になりすまして通信を中継しながら内容を盗み見る 過去に盗聴した認証データをそのまま送り直して、認証を通過する 暗号アルゴリズムの数学的な弱点を突いて、探索すべき鍵の範囲を絞り込む 暗号装置の処理時間や消費電力、電磁波などの物理的な観測値から、鍵などの秘密情報を推定する 正解と解説 正解:D. 暗号装置の処理時間や消費電力、電磁波などの物理的な観測値から、鍵などの秘密情報を推定する サイドチャネル攻撃は、暗号アルゴリズムそのものではなく、実装された装置が外部に漏らす物理的な情報(処理時間、消費電力、電磁波、動作音など)を観測して秘密情報を推定する攻撃で、ICカードなどで問題になる。数学的な弱点を突くのは解読法(暗号解析)、通信経路に割り込むのは中間者攻撃、認証データを送り直すのはリプレイ攻撃であり、いずれも物理的な観測を利用するものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ)/暗号技術の一般的な定義
問22|認証の要素
利用者認証で用いる三つの要素の分類において、「所持による認証」に当たるものはどれか。
利用者が持つハードウェアトークンに表示された値を入力させる 利用者の指紋を読み取って登録済みの特徴と照合する 利用者だけが答えられる秘密の質問に答えさせる 利用者だけが知っている暗証番号を入力させる 正解と解説 正解:A. 利用者が持つハードウェアトークンに表示された値を入力させる 所持による認証は、本人だけが持っている物を確かめる方式で、ハードウェアトークンやICカード、スマートフォンが該当する。暗証番号と秘密の質問はいずれも本人だけが知っていること、すなわち知識による認証であり、この二つを組み合わせても要素は一つなので多要素認証にはならない。指紋の照合は本人自身の特徴を使う生体による認証である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・アクセス管理)
問23|FRRとFAR
生体認証における本人拒否率(FRR)と他人受入率(FAR)の関係の説明として適切なものはどれか。
判定のしきい値を厳しくすると、FRRは上がり、FARは下がる FRRとFARは互いに独立なので、しきい値の調整で両方を同時にゼロにできる FRRを下げるとFARも必ず下がるので、両者は同時に改善できる 判定のしきい値を厳しくすると、FRRは下がり、FARは上がる 正解と解説 正解:A. 判定のしきい値を厳しくすると、FRRは上がり、FARは下がる しきい値を厳しくすると、本人でも「似ていない」と判定されやすくなるためFRRは上がり、他人が誤って受け入れられることは減るためFARは下がる。両者はトレードオフの関係にあって同時にゼロにはできず、しきい値を変えたときに両者が等しくなる点が等誤り率(EER)で、装置の精度比較に用いられる。厳しくしてFRRが下がることも、両者が同じ向きに動くこともない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・アクセス管理)
問24|OTP
ワンタイムパスワードやチャレンジレスポンス方式の採用によって、直接的に防ぐことができる攻撃はどれか。
Webページに悪意のあるスクリプトを埋め込むクロスサイトスクリプティング 入力値を通じてデータベースを不正に操作するSQLインジェクション 大量の要求を送り付けてサービスを停止させるDDoS攻撃 盗聴した認証データをそのまま送り直して認証を通過するリプレイ攻撃 正解と解説 正解:D. 盗聴した認証データをそのまま送り直して認証を通過するリプレイ攻撃 ワンタイムパスワードは一度しか使えず、チャレンジレスポンス方式では毎回異なる乱数を加工して返すため、盗聴した認証データを再送しても認証は通らない。したがってリプレイ攻撃に有効である。クロスサイトスクリプティングやSQLインジェクションはWebアプリケーションの実装に起因する脆弱性への攻撃、DDoS攻撃は可用性への攻撃であり、認証方式を変えても防げない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・アクセス管理)
問25|リスト攻撃
他のサイトから流出した利用者IDとパスワードの組合せをそのまま使って、別のサイトへのログインを試みる攻撃はどれか。
辞書攻撃 パスワードリスト攻撃 レインボーテーブル攻撃 ブルートフォース攻撃 正解と解説 正解:B. パスワードリスト攻撃 流出した認証情報の組をそのまま別のサイトで試すのがパスワードリスト攻撃で、パスワードの使い回しがあると成立するため、サイトごとに異なるパスワードを使うことと多要素認証が対策になる。ブルートフォース攻撃はあり得る文字列の総当たり、辞書攻撃は単語やよくあるパスワードを試すもの、レインボーテーブル攻撃は事前計算した対応表を使ってハッシュ値から元のパスワードを割り出すもので、いずれも流出した組合せをそのまま使う攻撃ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問26|ソルト
パスワードをハッシュ値にして保存する際、利用者ごとに異なるランダムな文字列(ソルト)を付け加えてからハッシュ化する主な目的はどれか。
同じパスワードでも利用者ごとに異なるハッシュ値になるようにし、事前計算した対応表を使うレインボーテーブル攻撃を無効にするため パスワードを誤って入力した回数を数えて試行回数を制限し、総当たり攻撃を止めるため 利用者が入力したパスワードが通信経路上で盗聴されないように、経路を暗号化するため 保存されているハッシュ値から、必要になったときに管理者が元のパスワードを復元できるようにするため 正解と解説 正解:A. 同じパスワードでも利用者ごとに異なるハッシュ値になるようにし、事前計算した対応表を使うレインボーテーブル攻撃を無効にするため ソルトを付けると同じパスワードでも保存されるハッシュ値が利用者ごとに変わるため、あらかじめ計算しておいた対応表が使えなくなり、レインボーテーブル攻撃を無効にできる。ハッシュ関数は一方向なので復元できるようにする目的ではなく、入力回数の制限はアカウントロックの機能、通信経路の保護はTLSの役割である。なお、ハッシュ計算を何千回も繰り返して総当たりを遅くするストレッチングは、ソルトと組み合わせて使われる別の手法である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問27|OAuth
OAuth 2.0の役割の説明として適切なものはどれか。
利用者や機器の公開鍵証明書を発行し、その有効期限と失効を管理するための規格である 利用者の認証結果をXML形式のアサーションにして、組織をまたいで別のサービスへ伝える規格である 利用者のIDとパスワードを渡すことなく、あるサービスに対して別のサービスの資源へのアクセスを許可するための認可の枠組みである パスワードを一切使わず、指紋や虹彩などの生体情報だけで本人認証を行うための規格である 正解と解説 正解:C. 利用者のIDとパスワードを渡すことなく、あるサービスに対して別のサービスの資源へのアクセスを許可するための認可の枠組みである OAuth 2.0は、利用者が自分の認証情報を渡さずに、あるサービスへ別のサービスの資源へのアクセス権限を与えるための「認可」の枠組みであり、アクセストークンをやり取りする。認証結果をXMLのアサーションで伝えるのはSAML、本人確認まで扱えるようOAuth 2.0の上に認証を載せたものがOpenID Connectである。生体情報だけの認証規格や証明書の発行・失効管理はPKIの領域であり、いずれもOAuth 2.0の役割ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・アクセス管理)
問28|RBAC
利用者個人ではなく業務上の役割に対してアクセス権を設定し、利用者をその役割に割り当てるアクセス制御方式はどれか。
任意アクセス制御(DAC) 強制アクセス制御(MAC) ロールベースアクセス制御(RBAC) キャパシティプランニング 正解と解説 正解:C. ロールベースアクセス制御(RBAC) 役割に権限を与え、利用者を役割に割り当てるのがロールベースアクセス制御で、人事異動があっても割当てを変えるだけでよく運用しやすい。任意アクセス制御は資源の所有者が自分の裁量で権限を決める方式、強制アクセス制御は資源と利用者に付けたラベルと組織の規則で可否が決まり所有者でも変更できない方式である。キャパシティプランニングは必要な性能や容量を見積もる計画作業で、アクセス制御方式ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策・アクセス管理)
問29|FW
パケットフィルタリング型のファイアウォールが、パケットを通すかどうかの判断に用いる情報はどれか。
送信元と宛先のIPアドレス、ポート番号、プロトコルの種類 HTTPリクエストの本文に含まれる文字列のパターン 電子メールの添付ファイルに含まれるマルウェアの特徴 利用者が入力したパスワードの長さと文字種の組合せ 正解と解説 正解:A. 送信元と宛先のIPアドレス、ポート番号、プロトコルの種類 パケットフィルタリング型は、IPヘッダとTCP/UDPヘッダの情報、すなわち送信元・宛先のIPアドレス、ポート番号、プロトコルを規則と照合して通過の可否を決める。HTTPの本文の内容を検査するのはWAF、添付ファイルのマルウェアを調べるのはウイルス対策ソフトやメールゲートウェイの役割で、パスワードの強度の判定は認証機能の話であり、いずれもファイアウォールが見る情報ではない。なお、通信の状態も併せて記憶して戻りのパケットだけを通す方式がステートフルインスペクションである。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問30|DMZ
外部に公開するWebサーバやメールサーバを、インターネットからも内部ネットワークからも分離したDMZに置く主な理由はどれか。
公開サーバのIPアドレスを利用者から隠し、名前解決を不要にするため 公開サーバに修正プログラムを適用する作業を不要にするため 公開サーバが侵入されても、そこから内部ネットワークの重要なサーバへ直接到達させないため 公開サーバの処理性能を高め、応答時間を短縮するため 正解と解説 正解:C. 公開サーバが侵入されても、そこから内部ネットワークの重要なサーバへ直接到達させないため DMZは、インターネットからの通信を受ける必要がある公開サーバを内部ネットワークから切り離して置く区画であり、公開サーバが侵入されても内部の重要なサーバへ直接到達できないようにすることが目的である。性能向上や名前解決の省略が目的ではなく、外部から見えるサーバであるからこそ修正プログラムの適用は欠かせない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問31|WAFとIPS
WAF、IDS、IPSの説明として適切なものはどれか。
WAFはHTTP通信の内容を検査して不正な要求を遮断し、IDSは不正の兆候を検知して通知し、IPSは検知に加えて該当する通信の遮断まで行う WAFはパケットのIPアドレスとポート番号だけを見て遮断し、IDSは検知した通信をその場で遮断する IDSは検知した通信を遮断し、IPSは検知して通知するだけで遮断は行わない WAFは端末上でのマルウェアの挙動を監視して隔離し、IDSはWeb要求の内容を書き換える 正解と解説 正解:A. WAFはHTTP通信の内容を検査して不正な要求を遮断し、IDSは不正の兆候を検知して通知し、IPSは検知に加えて該当する通信の遮断まで行う WAFはHTTP/HTTPSの要求内容を検査してSQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングなどのWeb攻撃を遮断する。IDSは侵入の兆候を検知して管理者へ通知するところまで、IPSは検知に加えて通信の遮断まで行う点が違いである。IPアドレスとポート番号だけを見るのはパケットフィルタリング型ファイアウォール、IDSとIPSの遮断の有無を入れ替えた説明は誤り、端末上の挙動を監視して隔離するのはEDRの役割である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問32|リスク評価
リスクアセスメントを構成する三つのプロセスを、実施する順に並べたものはどれか。
リスク特定 → リスク分析 → リスク評価 リスク評価 → リスク特定 → リスク分析 リスク特定 → リスク評価 → リスク分析 リスク分析 → リスク特定 → リスク評価 正解と解説 正解:A. リスク特定 → リスク分析 → リスク評価 リスクアセスメントは、どんな資産にどんな脅威と脆弱性があるかを洗い出すリスク特定、発生確率と影響の大きさからリスクの大きさを見積もるリスク分析、その結果をリスク基準と比べて対応の要否や優先順位を決めるリスク評価の順に行う。何があるかを洗い出す前に大きさを見積もることも、大きさを求める前に基準と比べることもできないので、他の順序は成り立たない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ管理)
問33|リスク移転
リスク対応のうち、リスク移転(リスク共有)に当たるものはどれか。
データをバックアップして、障害時の被害を小さくする リスクの原因となる業務そのものを廃止する 保険に加入して、損失が生じたときの費用を保険会社に負担してもらう 対策費用が想定損失額に見合わないので、対策せずに受け入れる 正解と解説 正解:C. 保険に加入して、損失が生じたときの費用を保険会社に負担してもらう リスク移転(共有)は、保険への加入や専門業者への委託によって損失の負担を第三者と分け合う対応である。原因となる業務をやめるのはリスク回避、対策せずに受け入れるのはリスク保有(受容)、バックアップのように発生確率や損失の大きさを小さくするのはリスク低減であり、いずれも負担を第三者と分け合うものではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ管理)
問34|ポリシ3階層
情報セキュリティポリシの3階層のうち、最上位の基本方針に記述する内容として適切なものはどれか。
サーバの具体的な設定手順や、感染時の連絡先と連絡順序 経営者による宣言として、情報セキュリティに取り組む目的、適用範囲、経営者の責任を示す内容 部門ごとに使う申請書の書式と、その提出先の一覧 パスワードは12文字以上とする、といった守るべき統一のルール 正解と解説 正解:B. 経営者による宣言として、情報セキュリティに取り組む目的、適用範囲、経営者の責任を示す内容 情報セキュリティポリシは、基本方針・対策基準・実施手順の3階層で構成する。最上位の基本方針は、なぜ取り組むのかという目的、適用範囲、経営者の責任を経営層が宣言するものである。パスワードの条件のような組織共通のルールは中位の対策基準、設定手順や連絡手順、申請書の書式といった具体的な作業レベルの内容は最下位の実施手順に書く。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ管理)
問35|ISMS
JIS Q 27001が規定するISMSに関する記述として適切なものはどれか。
情報システムの技術的な対策だけを対象としており、人的対策や物理的対策は範囲に含まない 認証を取得した後は、運用が定着したものとみなされ、以後の見直しや外部審査は不要になる 情報セキュリティのリスクを組織的に管理するしくみであり、計画・実施・評価・改善のサイクルを繰り返して継続的に改善する 組織が抱えるすべての情報セキュリティリスクをゼロにすることを、認証取得の条件としている 正解と解説 正解:C. 情報セキュリティのリスクを組織的に管理するしくみであり、計画・実施・評価・改善のサイクルを繰り返して継続的に改善する ISMSは、情報セキュリティを組織的に管理し、計画・実施・評価・改善のサイクルによって継続的に改善するしくみである。目的はリスクをゼロにすることではなく、組織が定めた基準まで下げて管理し続けることであり、対象は技術的対策に限らず人的・物理的・組織的な対策を含む。認証取得後も定期的な審査と見直しが求められる。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ管理)/JIS Q 27001(情報セキュリティマネジメントシステム-要求事項)
問36|CSIRT
CSIRT、SOC、ペネトレーションテスト、脆弱性診断に関する記述のうち、適切なものはどれか。
CSIRTは、セキュリティ機器のログを常時監視して異常を検知することを主な役割とする組織である SOCは、インシデント発生時に窓口となり、封じ込めから復旧までの対応を指揮する組織である ペネトレーションテストは、実際に攻撃者と同じ手口で侵入を試み、防御を突破できるかどうかを確かめる検査である 脆弱性診断は、システムを意図的に停止させて、復旧までに要する時間を測定する検査である 正解と解説 正解:C. ペネトレーションテストは、実際に攻撃者と同じ手口で侵入を試み、防御を突破できるかどうかを確かめる検査である ペネトレーションテストは、実際に侵入を試みて防御が突破できるかどうかを確かめる検査である。ログを常時監視して異常を検知するのはSOC、インシデント発生時の窓口となって対応を指揮するのはCSIRTであって、この二つを入れ替えて述べた記述は誤りである。脆弱性診断は既知の脆弱性が残っていないかを網羅的に調べるもので、復旧時間の測定を目的とはしない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(セキュリティ技術評価)
問37|CVSS
CVSS、CVE、JVNの説明の組合せとして適切なものはどれか。
CVSSは脆弱性の深刻度を共通の基準で数値化する評価手法、CVEは個々の脆弱性に付ける共通の識別子、JVNは日本国内向けの脆弱性対策情報ポータルである CVSSは脆弱性の識別子、CVEは深刻度を数値化する評価手法、JVNは暗号アルゴリズムの一覧である CVSSは暗号モジュールの認証制度、CVEは国際標準の識別番号、JVNは脆弱性の深刻度を表す指標である 三つとも、発見されたマルウェアの検体に付ける名前の付け方を定めた規格である 正解と解説 正解:A. CVSSは脆弱性の深刻度を共通の基準で数値化する評価手法、CVEは個々の脆弱性に付ける共通の識別子、JVNは日本国内向けの脆弱性対策情報ポータルである CVSSは深刻度を共通の観点から数値化する評価手法、CVEは個々の脆弱性を一意に指すための共通識別子、JVNは日本国内向けに脆弱性対策情報を提供するポータルである。CVSSとCVEの役割を入れ替えた説明や、暗号モジュールの認証制度と混同した説明は誤りであり、いずれもマルウェアの命名規約ではない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(セキュリティ技術評価)
問38|SQLIの修正
次のプログラムは、利用者が入力した会員IDで会員表を検索する。このプログラムがもつ脆弱性と、その修正方法の組合せとして適切なものはどれか。
会員IDで会員表を検索する処理
○会員検索(文字列型: 入力ID) 文字列型: sql sql ← "SELECT * FROM 会員 WHERE 会員ID = '" + 入力ID + "'" 結果表示(DB問合せ(sql)) SQLインジェクション。4行目で連結する前に、入力IDに含まれる「<」や「>」をHTMLの実体参照へ変換する クロスサイトスクリプティング。4行目で連結する前に、入力IDをHTMLエスケープする ディレクトリトラバーサル。4行目で連結する前に、入力IDから「../」を取り除く SQLインジェクション。4行目を「SELECT * FROM 会員 WHERE 会員ID = ?」とし、入力IDをプレースホルダに与える値として渡す 正解と解説 正解:D. SQLインジェクション。4行目を「SELECT * FROM 会員 WHERE 会員ID = ?」とし、入力IDをプレースホルダに与える値として渡す 4行目で入力値をそのままSQL文へ連結しているため、入力IDに「' OR '1'='1」のような文字列を与えると条件が常に真になり、全行が読み出されてしまう。これがSQLインジェクションで、根本的な対策はプレースホルダを使い、入力値を構文ではなく値として渡すことである。HTMLの実体参照への変換はクロスサイトスクリプティングの対策で、SQL文の構文には効かない。ここでは画面出力ではなくSQL文の組立てが問題であり、「../」の除去はファイル名を扱う場合の対策で無関係である。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問39|OSコマンド
次のプログラムに対して、利用者がファイル名として「a.log; rm -rf /data」という文字列を与えたところ、意図しないコマンドが実行された。この脆弱性の名称と対策の組合せとして適切なものはどれか。
指定されたログファイルの内容を表示する処理
○ログ表示(文字列型: ファイル名) 文字列型: cmd cmd ← "cat /var/log/app/" + ファイル名 結果表示(シェル実行(cmd)) バッファオーバフロー。配列の大きさを超えないように境界検査を行ってから代入する セッションハイジャック。セッションIDを推測困難な乱数にし、ログインの成功時に再発行する OSコマンドインジェクション。シェルを介さないファイル読込みのAPIを使い、ファイル名を英数字などの許可した文字だけに限定する SQLインジェクション。値をプレースホルダに渡す方式でコマンドを組み立てる 正解と解説 正解:C. OSコマンドインジェクション。シェルを介さないファイル読込みのAPIを使い、ファイル名を英数字などの許可した文字だけに限定する 入力値がシェルに渡る文字列の一部になっているため、「;」のような区切り文字を混ぜられると任意のコマンドが実行される。これがOSコマンドインジェクションで、シェルを経由しないAPIでファイルを読み、さらに入力を許可した文字種だけに限定するのが対策である。バッファオーバフローは入力長を検査しない領域をあふれさせる別の脆弱性、セッションハイジャックは認証状態の乗っ取りで、いずれもこのコードの問題ではない。プレースホルダはSQL文のためのしくみで、OSコマンドには適用できない。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ(情報セキュリティ対策)
問40|法規
不正アクセス行為の禁止等に関する法律(不正アクセス禁止法)によって禁止されている行為はどれか。
自分が管理するサーバの操作ログを、定められた保存期間の経過後に消去すること マルウェアに感染した疑いのある社内の端末を、ネットワークから切り離すこと 自社のシステムに対して、管理者の許可を得たうえで擬似攻撃による脆弱性診断を行うこと 他人の利用者IDとパスワードを無断で用いて、アクセス制御されているコンピュータを利用できる状態にすること 正解と解説 正解:D. 他人の利用者IDとパスワードを無断で用いて、アクセス制御されているコンピュータを利用できる状態にすること 不正アクセス禁止法は、他人の識別符号を無断で使う行為やセキュリティホールを突く行為によって、アクセス制御されたコンピュータを利用できる状態にすることを禁じており、識別符号の不正な取得・保管や取得を助長する行為も対象としている。自社サーバのログの消去や感染端末の切離しは正当な管理行為であり、許可を得た脆弱性診断も不正アクセスには当たらない。なお、正当な理由なくマルウェアを作成・提供・保管する行為は、刑法の不正指令電磁的記録に関する罪の対象となる。
根拠:IPA 基本情報技術者試験 シラバス Ver.9.2 大分類9:企業と法務 中分類23:法務/不正アクセス禁止法/刑法(不正指令電磁的記録に関する罪)
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※ 解説は学習用の情報提供です。最新の出題範囲・制度は必ずIPAの公式発表をご確認ください。 ※ 出題はIPA公開のシラバスVer.9.2(2026年1月8日適用)に沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。擬似言語の記述形式もIPA公開の仕様に合わせています。試験制度・実施要項はIPAの公式発表をご確認ください(2027年度春ごろに新試験制度へ移行予定)。