仮の宿 学習室 資格 応用情報技術者 合格ラボ マネジメントと監査
応用情報技術者 APPLIED IT ENGINEER
マネジメントと監査
講義 5 本・確認問題 50 問 | 本試験では「マネジメント系」(10問)の一部 | 最終更新 2026-09-24
この章で学ぶこと プロジェクトを立ち上げてから閉じるまでに何を決めるのか、そのうちスコープ・資源・リスク・品質・調達・ステークホルダをどう扱うのかが分かります。 アローダイアグラムから最早・最遅とトータルフロートを求め、どの作業を縮めれば全体が縮むのかを判断できるようになります。 工数と費用の見積り方を選び分け、EVMのPV・EV・ACから遅れと超過を同じ物差しで読み取れるようになります。 ITILの考え方を軸に、インシデント管理と問題管理の役割の違い、SLAの決め方、可用性とキャパシティの守り方が分かります。 監査人の独立性、監査手続と監査証拠の集め方、監査証跡と可監査性、内部統制とITガバナンスの関係が分かります。
1. プロジェクトマネジメントの型とスコープ
プロジェクトを立ち上げてから閉じるまでに何を決めるのか、そのうちスコープ・資源・リスク・品質・調達・ステークホルダをどう扱うのかが分かります。
プロジェクトとは、決められた期間の中で、これまでにない成果物やサービスを作り出すために行う活動です。有期性(始まりと終わりがある)と独自性(毎回どこか違う)の二つを持つ点で、同じ手順を毎日回し続ける定常業務と区別されます。応用情報のレベルでは「用語を知っているか」ではなく「この状況でマネージャは何を根拠にどう判断するか」が問われます。判断の物差しになるのが、目的・成果物・体制・制約・前提を書いてプロジェクトを正式に発足させるプロジェクト憲章です。憲章はプロジェクトマネージャの権限の裏づけでもあるので、憲章に書かれていない要求が持ち込まれたときは、まず憲章と計画に照らして扱いを決めます。
国際的な進め方の枠組みとしてはPMBOKガイドとJIS Q 21500があります。JIS Q 21500では、活動を立上げ・計画・実行・管理・終結という五つのプロセス群に分け、管理する側面を統合・ステークホルダ・スコープ・資源・時間・コスト・リスク・品質・調達・コミュニケーションの十の対象群に整理します。PMBOKガイドは第7版で、決まった工程を順に踏む記述から、価値を届けるための原理原則とパフォーマンス領域を軸にした記述へと重心を移し、その方向は第8版にも引き継がれています。どちらにしても大事なのは、十の側面が独立ではなく互いに縛り合うという点です。スコープを広げれば時間とコストが増え、期間を縮めれば品質かコストのどちらかが犠牲になります。この綱引き(制約条件のトレードオフ)を明示して合意することが、マネジメントの中身そのものです。
スコープには、成果物の範囲を示すプロダクトスコープと、それを作るために必要な作業の範囲を示すプロジェクトスコープがあります。要求事項を集めてスコープを定義したら、成果物と作業を大きいものから小さいものへ階層的に分解します。これがWBS(Work Breakdown Structure)で、分解の最小単位をワークパッケージといいます。ここまで細かくして初めて、工数・期間・担当者・完了条件を具体的に決められます。各ワークパッケージの作業内容・成果物・受入基準を記した文書がWBS辞書です。「WBSにない作業はやらない」と決めておくことで、正式な変更手続を経ないまま範囲がじりじり膨らむスコープクリープを防げます。逆に必要な変更まで拒むのは誤りで、変更要求は変更管理委員会(CCB)で影響を評価し、承認されたらベースラインを改訂したうえで実施します。
資源のマネジメントでは、WBSの作業と組織の役割を対応づけた責任分担マトリックス(RAM)を作ります。実行責任・説明責任・相談先・報告先の4区分を割り当てる書き方をRACIチャートといい、1作業に説明責任者を1人だけ置くのが原則です。要員が特定の時期に集中しないよう、必要工数を時間軸に積み上げてから平準化する作業を山積み・山崩しといいます。なお、工数の単位である人月は、10人月を「10人で1か月」と読み替えられるとは限りません。遅れているプロジェクトへの要員追加は、教育と意思疎通の負担を増やしてかえって遅らせる(ブルックスの法則)ことがあります。関係者が増えるとコミュニケーション経路はn人でn(n-1)/2本に増え、人数の二乗に近い勢いで増えることも押さえておきます。
リスクマネジメントでは、リスクを洗い出し、発生確率と影響度で評価し(定性的分析)、必要なら金額や日数に換算して(定量的分析)、対応方針を決めます。マイナスのリスクへの対応は、原因となる作業や方式そのものをやめる回避、保険や外部委託で損失負担を他者に移す転嫁、確率か影響を小さくする軽減、対策せずに受け入れる受容の4種類です。プラスのリスク(好機)には活用・共有・強化・受容が対応します。対策を打ったあとに残るリスクを残留リスク、対策そのものが生む新たなリスクを二次リスクといいます。想定できたリスクの備えとして計画に織り込む金額がコンティンジェンシー予備、想定外の事象に備えて上位管理者が握る金額がマネジメント予備で、両者は権限の所在が違います。
品質のマネジメントは、作り込みの仕組みを整える品質保証と、成果物を測って基準に合っているか確かめる品質管理に分かれます。テストで欠陥を取り除くよりレビューや標準化で欠陥を作り込まないほうが安いというのが基本の考え方で、後工程で見つかるほど手戻り費用は大きくなります。調達のマネジメントでは、内製と外注のどちらが有利かを判断し、外注するなら契約形態と受入基準を先に決めます。ステークホルダのマネジメントでは、利害関係者を洗い出し、関心度と影響力の二軸で分類して関与の方針を変えます。影響力が大きく関心も高い相手には密に報告し、影響力が小さく関心も低い相手には定型の情報提供にとどめる、といった使い分けです。反対する立場の関係者ほど早期に巻き込むほうが、後の手戻りが小さくなります。
JIS Q 21500の10の対象群と、そこで決めること 対象群 中心となる問い 代表的な成果物や道具 統合 全体のつじつまは合っているか プロジェクト憲章、プロジェクト計画書、変更管理 ステークホルダ 誰が何を気にしているか ステークホルダ登録簿、関心度と影響力の分類 スコープ どこまで作り、どこからは作らないか 要求事項一覧、WBS、WBS辞書 資源 誰が、どの設備でやるか 責任分担マトリックス、要員計画、山積み表 時間 いつ終わるか、どこが押しているか アローダイアグラム、ガントチャート、マイルストーン コスト いくらかかり、いま超えていないか 見積書、コストベースライン、EVM リスク 何が起きうるか、どう備えるか リスク登録簿、リスク対応計画、予備費 品質 求める水準に届いているか 品質計画、レビュー記録、テスト報告 調達 内製か外注か、どんな契約か 調達計画、提案依頼書、契約書、受入基準 コミュニケーション 誰に、何を、どの頻度で伝えるか コミュニケーション計画、進捗報告、議事録
/* 関係者がn人のときの1対1コミュニケーション経路数 */ ○整数型: keiro(整数型: n) return n * (n - 1) / 2 /* n = 6 のとき 15、n = 10 のとき 45、n = 15 のとき 105 */ /* 人数が2.5倍で経路は7倍になる。会議体を階層化する根拠になる */
用語 プロジェクト憲章 プロジェクトの目的・成果物・主要関係者・体制・制約・前提を記し、プロジェクトの発足を正式に承認する文書。プロジェクトマネージャの権限の根拠にもなる。 JIS Q 21500 プロジェクトマネジメントの手引を定めた規格。立上げ・計画・実行・管理・終結の5プロセス群と、統合・ステークホルダ・スコープ・資源・時間・コスト・リスク・品質・調達・コミュニケーションの10対象群で整理する。 プロダクトスコープとプロジェクトスコープ 前者は成果物そのものに含める機能や特性の範囲、後者はそれを作るために必要な作業の範囲。両方を定義しないと「作るもの」と「やること」がずれる。 WBS 作業分解構成図。成果物と作業を階層的に分解した図で、最小単位のワークパッケージまで細分化して工数・期間・担当・完了条件を決める。 WBS辞書 各ワークパッケージについて、作業内容・成果物・受入基準・前提などを記述した文書。WBSの箱だけでは分からない中身を補い、認識のずれを防ぐ。 スコープクリープ 正式な変更手続を経ないまま、小さな追加要求の積み重ねで範囲がじりじり広がっていく現象。期間とコストの超過の主要な原因になる。 変更管理委員会 CCB。変更要求を受け付け、スコープ・期間・コスト・品質への影響を評価して承認または却下する意思決定の場。承認後にベースラインを改訂する。 RACIチャート 作業と役割の対応表で、実行責任・説明責任・相談先・報告先の4区分を割り当てたもの。説明責任者は1作業につき1人にするのが原則。 山積み・山崩し 各時期に必要な要員工数を積み上げて(山積み)、山が高すぎる時期の作業を余裕のある時期へずらして平準化すること(山崩し)。資源平準化ともいう。 コミュニケーション経路数 関係者がn人のとき、1対1の経路はn(n-1)/2本になる。人数を増やすほど意思疎通の負担が急に重くなる根拠として使われる。 リスク対応の4分類 マイナスのリスクに対する回避・転嫁・軽減・受容。原因を断つ、他者に移す、確率や影響を小さくする、そのまま受け入れる、の4通り。 残留リスクと二次リスク 残留リスクは対策後になお残るリスク、二次リスクは対策を実施したこと自体が新たに生むリスク。どちらも計画に明記して監視する。 コンティンジェンシー予備 特定できているリスクが顕在化したときのために、コストベースラインに含めて確保しておく予備費。プロジェクトマネージャの裁量で使える。 マネジメント予備 想定していなかった事象に備え、コストベースラインの外側に置く予備費。使用には上位管理者の承認が必要で、権限の所在がコンティンジェンシー予備と異なる。 ステークホルダ分析 利害関係者を関心度と影響力の二軸で分類し、関与や報告の濃さを変える手法。影響力が大きく関心も高い相手を最重点で管理する。
例題
例題:メンバ15人のチームに、全員が互いに直接やり取りする運用を続けさせると、1対1の経路は何本になるか。5人のサブチーム3組に分け、代表者3人だけが組をまたいでやり取りする形に変えると何本になるか。
答えと考え方 15人なら15*14/2 = 105本。サブチーム制なら、各組の中が5*4/2 = 10本で3組ぶんの30本に、代表どうしの3*2/2 = 3本を足して33本。3分の1以下に減る。人数nに対して経路がn(n-1)/2で増えるので、規模が大きいほど階層化の効果が効いてくる。ただし階層を挟むぶん情報が伝わるまでの時間は延びるので、緊急連絡の経路だけは別に用意しておく。
例題:テスト工程に入ってから利用部門が「この画面にも項目を1つ足したい。小さい変更だから今回のスコープ内で対応してほしい」と言ってきた。プロジェクトマネージャとして最初に取るべき行動はどれか。
答えと考え方 その場で引き受けることも、その場で断ることもしない。まず変更要求として正式に受け付け、WBSと計画に照らしてスコープ・期間・コスト・品質への影響を見積もり、変更管理委員会に諮る。承認されたらベースラインを改訂してから着手する。「小さいから」と手続を省いて受けると、同じ理屈の追加が積み重なってスコープクリープになる。逆に「スコープ外だから」と評価もせず断るのも誤りで、判断材料を作るのがマネージャの仕事である。
出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
2. スケジュールとクリティカルパス
アローダイアグラムから最早・最遅とトータルフロートを求め、どの作業を縮めれば全体が縮むのかを判断できるようになります。
スケジュールを作る手順は、WBSの作業を洗い出す、作業どうしの前後関係をつなぐ、各作業の所要期間を見積もる、資源の制約を当てはめる、という順です。前後関係を表す図には二つの流儀があります。作業を矢印で、作業のつなぎ目を結合点(丸)で表すのがアローダイアグラム(PERT図、AOA)で、作業を四角で、依存関係を矢印で表すのがプレシデンスダイアグラム(PDM、AON)です。アローダイアグラムでは、実際の作業を伴わないが前後関係だけを示したい場合に、所要日数0の点線の矢印であるダミー作業を使います。PDMでは、前の作業が終わってから始める終了-開始(FS)のほかに、同時に始める開始-開始(SS)、同時に終える終了-終了(FF)、前が始まるまで終えられない開始-終了(SF)の4種類の依存関係を表せます。前の作業の終了から次の開始までわざと空ける待ち時間をラグ、逆に前が終わる前に先行して始める重なりをリードといいます。
日程計算は前から後ろへ1回、後ろから前へ1回の2回で終わります。前向き計算では、各作業について「先行作業がすべて終わる最も早い時点」を最早開始時刻(ES)とし、それに所要日数を足したものを最早終了時刻(EF)とします。先行作業が複数あるときは、そのうち最も遅く終わるものに合わせるので最大値を取ります。すべての作業のEFの最大値が、プロジェクト全体の最短所要日数です。後ろ向き計算では、全体の完了日を出発点にして、各作業について「後続作業をすべて予定どおり始められる最も遅い時点」を最遅終了時刻(LF)とし、そこから所要日数を引いたものを最遅開始時刻(LS)とします。後続が複数あるときは、最も早く始めなければならないものに合わせるので最小値を取ります。
この2回の計算から余裕が求まります。全体の完了を遅らせずにその作業を遅らせてよい日数がトータルフロート(全余裕)で、LS-ESまたはLF-EFで計算します。これに対し、後続作業の最早開始時刻を遅らせずに遅らせてよい日数がフリーフロート(自由余裕)で、後続作業のESの最小値からその作業のEFを引いて求めます。フリーフロートはトータルフロート以下になります。トータルフロートが0の作業をつないだ経路がクリティカルパスで、その長さが全体の最短所要日数と一致します。クリティカルパス上の作業が1日遅れれば全体も1日遅れるので、進捗管理の重点はここに置きます。逆にクリティカルパス以外の作業が余裕日数の範囲で遅れても、全体の完了日は動きません。クリティカルパスは1本とは限らず、同じ長さの経路が複数あれば全部がクリティカルパスです。
全体を縮めたいときは、まずクリティカルパス上の作業を縮めます。ここが応用情報でよく問われるところで、「クリティカルパス上の作業をn日縮めれば全体もn日縮む」とは限りません。縮めていくと、それまで2番目に長かった経路のほうが長くなり、クリティカルパスが移ってしまうからです。移った時点でそれ以上は縮まなくなるので、短縮できる日数は、元のクリティカルパスと2番目に長い経路の差までが上限になります。それを超えて縮めたいなら、2番目の経路も同時に縮める必要があります。短縮の手段には、要員や設備を追加投入して期間を買うクラッシングと、本来は順に行う作業を一部重ねて並行させるファストトラッキングがあります。クラッシングはコストが増え、ファストトラッキングは手戻りのリスクが増えるという、それぞれ別の代償を払う点が判断の分かれ目です。
進捗を見せる道具も使い分けます。ガントチャートは作業名を縦、日付を横に取って予定と実績を横棒で並べる図で、誰が何をいつまでにやるかと進み具合が直感的に分かりますが、作業間の前後関係は表しにくいのが弱点です。アローダイアグラムは前後関係とクリティカルパスが分かる代わりに、進捗の見せ方には向きません。重要な節目だけを日付で置くマイルストーンチャートは、経営層への報告のように粒度の粗い共有に向きます。実務では、計画時にアローダイアグラムでクリティカルパスを押さえ、日々の管理はガントチャートで行い、上位報告はマイルストーンで行う、という組み合わせが多く取られます。
資源の制約も日程を動かします。日程計算だけで作った計画では、特定の時期に必要な要員が手持ちを超えることがあります。そこで、余裕のある作業を後ろへずらして山を崩す資源平準化を行いますが、余裕を使い切った作業は新たにクリティカルになるため、平準化のあとはクリティカルパスを引き直します。また、遅れが出たときの対処としてよく挙がる要員追加は、その作業がクリティカルパス上にあり、かつ人を増やせば期間が縮む性質の作業(分割できる作業)であることが前提です。設計のように人を増やすと意思疎通の手間が増える作業では、追加投入が逆効果になり得ます。
例題で使うプロジェクトの作業一覧(先行作業と所要日数) 作業 先行作業 所要日数 A なし 3日 B なし 5日 C A 4日 D B 2日 E CとD 6日 F B 9日 G EとF 3日
/* 上の表から、開始から終了までの経路をすべて書き出して長さを比べる */ 経路1: A -> C -> E -> G = 3 + 4 + 6 + 3 = 16日 経路2: B -> D -> E -> G = 5 + 2 + 6 + 3 = 16日 経路3: B -> F -> G = 5 + 9 + 3 = 17日 <- 最長 /* 最長の経路 B -> F -> G がクリティカルパス。全体の最短所要日数は17日 */ /* 前向き計算と後ろ向き計算の結果(ES:最早開始 LF:最遅終了 TF:全余裕) */ 作業 ES EF LS LF TF A 0 3 1 4 1 B 0 5 0 5 0 C 3 7 4 8 1 D 5 7 6 8 1 E 7 13 8 14 1 F 5 14 5 14 0 G 14 17 14 17 0
用語 アローダイアグラム 作業を矢印、結合点を丸で表し、前後関係と所要日数を示す図。PERT図ともいう。前向き計算と後ろ向き計算でクリティカルパスを求める。 ダミー作業 アローダイアグラムで、実際の作業を伴わないが前後関係だけを示すために引く所要日数0の点線の矢印。日程には影響しないが順序の制約は生む。 プレシデンスダイアグラム PDM。作業を四角、依存関係を矢印で表す図法。FS・SS・FF・SFの4種類の依存関係とラグやリードを表現できる。 最早開始時刻 ES。先行作業がすべて終わる最も早い時点。先行が複数あるときは、それぞれの最早終了時刻の最大値を取る。 最遅開始時刻 LS。全体の完了を遅らせない範囲で、その作業を最も遅く始めてよい時点。最遅終了時刻から所要日数を引いて求める。 トータルフロート 全余裕。LS-ES(またはLF-EF)で求め、全体の完了日を遅らせずにその作業を何日遅らせてよいかを表す。0の作業がクリティカルパス上にある。 フリーフロート 自由余裕。後続作業の最早開始時刻を遅らせずに遅らせてよい日数。後続のESの最小値からその作業のEFを引く。トータルフロート以下になる。 クリティカルパス 所要日数の合計が最長になる経路。全体の最短所要日数を決め、経路上の作業には余裕がない。同じ長さの経路が複数あれば、そのすべてがクリティカルパスになる。 クラッシング 要員や設備を追加投入して作業期間を短縮する手法。コストは増えるが、作業の順序そのものは変えないので手戻りのリスクは増えにくい。 ファストトラッキング 本来は順に行う作業を一部重ねて並行実施し、全体を短縮する手法。追加費用は少ないが、前工程の結果が変わると手戻りが起きるリスクがある。 ガントチャート 作業名を縦、日付を横に取り、予定と実績を横棒で表す図。進捗は分かりやすいが、作業間の前後関係やクリティカルパスは読み取りにくい。 マイルストーン 要件確定や本番移行などの重要な節目に置く、所要期間0の管理点。粒度の粗い報告や、契約上の区切りとして使われる。 資源平準化 特定時期に集中した要員の山を、余裕のある作業を後ろへずらして均すこと。余裕を使い切った作業は新たにクリティカルになるため、実施後は経路を引き直す。
例題
例題:上の表のプロジェクトで、作業Eの担当者が2日休むことになった。全体の完了日は何日遅れるか。
答えと考え方 Eのトータルフロートは1日しかない。1日目の遅れは余裕で吸収できるが、2日目は吸収できず、全体は1日遅れて18日になる。遅れ日数からトータルフロートを引いた分だけ全体が遅れる、と考えればよい。このときA-C-E-Gが18日、B-D-E-Gが18日、B-F-Gが17日となり、クリティカルパスは元のB-F-GからEを通る2本へ移る。余裕を食い潰した作業が新たにクリティカルパスを作る、という典型例である。
例題:上の表のプロジェクトで、作業Fに要員を追加して所要日数を9日から5日に縮めた。全体は何日縮むか。
答えと考え方 縮むのは1日だけで、16日にしかならない。Fを縮めるとB-F-Gは5+5+3 = 13日になるが、他の2経路が16日のまま残るからである。クリティカルパスは4日ぶん縮めた時点でA-C-E-GとB-D-E-Gに移っており、それ以上Fを縮めても全体は動かない。短縮できる上限は、元のクリティカルパス17日と2番目に長い経路16日の差である1日。この「縮めた日数がそのまま全体の短縮にならない」点が、クラッシングの費用対効果を評価するときの要になる。
出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
3. コスト見積りとEVMによる進捗管理
工数と費用の見積り方を選び分け、EVMのPV・EV・ACから遅れと超過を同じ物差しで読み取れるようになります。
コストの見積りは、規模を測る、規模から工数を出す、工数から費用を出す、という三段構えで考えると整理できます。規模の測り方の代表がファンクションポイント法で、外部入力・外部出力・外部照会・内部論理ファイル・外部インタフェースファイルという利用者から見える機能の数と複雑度に点数を付けます。実装言語に左右されないので、企画段階から発注側と受注側が同じ土俵で話せるのが利点です。対してLOC法は想定ソースコード行数を基準にするため、同じ機能でも言語や作り方で値が変わり、比較には向きません。COCOMOは規模を入力として工数と期間を数式モデルで求める方法で、係数を自組織の実績で較正しないと当たりません。
見積りの進め方には、過去の似た案件の実績から推定する類推見積法、WBSの末端ごとに見積もって積み上げるボトムアップ見積法(積算法)、作業種別ごとの標準工数を掛けて積み上げる標準値法、複数の専門家に匿名で回答させて意見を収束させるデルファイ法、楽観値・最可能値・悲観値の3点から期待値を出す3点見積法などがあります。どれを選ぶかは、情報の量と求める精度で決まります。企画段階のように情報が少ない時期は類推見積法が現実的で、設計が固まったあとはボトムアップ見積法のほうが精度が高くなります。ボトムアップ見積法は精度が高い代わりに、見積り自体に工数がかかり、末端が漏れると全体も漏れるという弱点があります。見積りの不確かさは時間とともに小さくなっていく(不確実性のコーン)ので、企画段階の見積りに幅を付けて示し、段階ごとに精緻化するのが実務の作法です。
決めた見積りを時間軸に並べ、いつまでにいくら使う予定かを累積で表したものがコストベースラインです。これを基準に、実績と比べて進捗とコストを同時に管理する手法がEVM(アーンドバリューマネジメント)です。EVMは三つの値を金額に換算して比べます。PV(プランドバリュー、計画価値)はその時点までに完了しているはずの作業の予算額、EV(アーンドバリュー、出来高)は実際に完了した作業に割り当てられていた予算額、AC(アクチュアルコスト、実コスト)はその作業に実際に費やした金額です。ポイントは、EVが「かかった金額」ではなく「終わった作業の値段」だという点です。EVを基準にPVと比べれば進み具合が、ACと比べれば費用対効果が分かります。
差異は引き算、効率は割り算で出します。スケジュール差異SV = EV - PV は、正なら計画より進んでおり、負なら遅れています。コスト差異CV = EV - AC は、正なら予算内、負なら超過です。比率で見るときはスケジュール効率指数SPI = EV / PV、コスト効率指数CPI = EV / AC を使い、1を超えれば良好、1を下回れば問題ありと判断します。引く順番と割る順番はどちらもEVが先だと覚えると取り違えません。SVを金額で見るとき「遅れているのに金額が小さいから軽微だ」と読むのは危険で、単位が金額なので工程末期には自然に0へ近づきます。進捗の遅れを日数で語りたいときは、EVがPVの水準に達した時点との差を見るなど、別の見方を併用します。
将来の予測もEVMの役目です。プロジェクト全体の予算総額をBAC(完成時総予算)とし、いまのコスト効率がこのまま続くと仮定すると、完成時総コストの予測EACはBAC / CPI で求まります。残作業に必要な額ETCはEAC - AC、完成時の差異VACはBAC - EACです。CPIが1を下回っているのにBACのままで報告するのは、予算超過を隠しているのと同じことになります。ただしEAC = BAC / CPI は「いまの効率が最後まで続く」という仮定に依存します。効率が悪い原因が初期の学習コストのように一時的なものだと分かっているなら、残作業は当初見積りどおりに進むと考えたEAC = AC + (BAC - EV) を使うほうが実態に近くなります。どちらの前提で予測したのかを添えて報告することが大切です。
SPIとCPIの組合せで打つ手が変わります。SPIが低くCPIが高いなら、安く進んでいるが遅い状態なので、要員追加や残業でコストを使って日程を買い戻す判断が成り立ちます。逆にSPIが高くCPIが低いなら、急いだ結果として金を使いすぎている可能性が高く、まず費用の使い方を絞ります。両方1未満ならスコープの見直しや納期の再交渉まで含めた計画変更が必要です。両方1を超えていても、見積りが甘すぎた、あるいは品質を犠牲にしていないかを疑うべきで、EVの計上基準(何をもって完了とするか)が甘いと数字だけがよく見えます。EVMは基準が明確でないと機能しない、という点が最後の落とし穴です。
EVMの指標と読み方 指標 式 意味と判断 PV 計画上の出来高 その時点までに終わっているはずの作業の予算額 EV 実績の出来高 実際に終わった作業に割り当てられていた予算額。支出額ではない AC 実際の支出 その作業に実際に費やした金額 SV EV - PV 正なら計画より先行、負なら遅れ。単位は金額 CV EV - AC 正なら予算内、負なら予算超過 SPI EV / PV 1超なら進捗良好、1未満なら遅れ CPI EV / AC 1超ならコスト効率良好、1未満なら超過 EAC BAC / CPI いまの効率が最後まで続くとしたときの完成時総コスト予測 ETC EAC - AC 残作業に今後必要となる額 VAC BAC - EAC 完成時に見込まれる予算との差異。負なら超過見込み
/* EVMの計算手順(BAC:完成時総予算) */ ○なし: EVMを計算する(実数型: PV, 実数型: EV, 実数型: AC, 実数型: BAC) SV ← EV - PV /* 金額で見た進捗の差異 */ CV ← EV - AC /* 金額で見たコストの差異 */ SPI ← EV / PV /* 進捗の効率 */ CPI ← EV / AC /* コストの効率 */ EAC ← BAC / CPI /* いまの効率が続く前提の完成時予測 */ ETC ← EAC - AC /* 残りに必要な額 */ VAC ← BAC - EAC /* 完成時の予算差異 */ if (SPI < 1 かつ CPI ≧ 1) /* 安いが遅い。費用を使って日程を買い戻す判断が成り立つ */ elseif (SPI ≧ 1 かつ CPI < 1) /* 速いが高い。まず費用の使い方を絞る */ elseif (SPI < 1 かつ CPI < 1) /* 遅くて高い。スコープや納期を含む計画変更を検討する */ endif
用語 ファンクションポイント法 利用者から見える機能の数と複雑度に点数を付けて規模を求める手法。実装言語に依存しないので、企画段階から発注側と受注側が同じ基準で議論できる。 COCOMO 規模を入力として工数と期間を数式モデルで算出する見積手法。係数を自組織の過去実績で較正しないと精度が出ない。 類推見積法 過去の類似案件の実績から規模や工数を推定する手法。情報の少ない企画段階でも使えるが、精度は類似度と実績データの整備状況に左右される。 ボトムアップ見積法 WBSの末端作業ごとに見積もって積み上げる手法。積算法ともいう。詳細化後は精度が高いが、見積り自体に工数がかかり、末端の漏れが全体の漏れになる。 3点見積法 楽観値・最可能値・悲観値の3つの値から期待値を求める手法。PERTでは(楽観値 + 4 * 最可能値 + 悲観値)/ 6 を使う。 デルファイ法 複数の専門家に匿名で見積りを回答させ、集計結果を戻して再回答させることを繰り返し、意見を収束させる手法。声の大きい人に引きずられにくい。 コストベースライン 承認された見積りを時間軸に並べ、累積で表した支出計画。EVMのPVはこの曲線から読み取る。変更は正式な変更管理を経て行う。 PV・EV・AC PVはその時点までに完了しているはずの作業の予算額、EVは実際に完了した作業に割り当てられていた予算額、ACはそれに実際に費やした額。EVは出来高であって支出額ではない。 SVとCV SV = EV - PV はスケジュール差異で、正なら先行、負なら遅れ。CV = EV - AC はコスト差異で、正なら予算内、負なら超過。どちらもEVから引く。 SPIとCPI SPI = EV / PV はスケジュール効率指数、CPI = EV / AC はコスト効率指数。1を超えれば良好、下回れば問題あり。どちらもEVが分子。 BACとEAC BACは完成時総予算。EACは完成時総コストの予測で、いまの効率が続く前提ならBAC / CPI、非効率が一時的な前提ならAC + (BAC - EV)で求める。 ETCとVAC ETCは残作業に必要な額でEAC - AC。VACは完成時の差異でBAC - EAC。VACが負なら予算超過の見込みを意味する。 不確実性のコーン 見積りの誤差の幅が、企画段階では大きく、工程が進むほど狭まっていくという性質。企画段階の見積りは幅を付けて示し、段階ごとに精緻化する。
例題
例題:完成時総予算BACが4000万円のプロジェクトで、ある時点のPVが1200万円、EVが1000万円、ACが1250万円だった。SV・CV・SPI・CPIと、いまの効率が続くとしたときの完成時総コストの予測はいくらか。
答えと考え方 SV = 1000 - 1200 = -200万円で進捗は遅れ。CV = 1000 - 1250 = -250万円でコストは超過。SPI = 1000 / 1200 = 0.83、CPI = 1000 / 1250 = 0.80。どちらも1未満なので「遅れていて、かつ高い」状態である。EAC = BAC / CPI = 4000 / 0.80 = 5000万円で、当初予算より1000万円多くかかる見込み。残りに必要なETCは5000 - 1250 = 3750万円。両方の指数が1を割っているので、要員追加のような一方向の手当てでは足りず、スコープの見直しや納期の再交渉を含む計画変更を検討する場面である。
例題:EVMで、ACがPVを大きく下回っているのを見て「予算を使っていないから順調だ」と報告してよいか。
答えと考え方 よくない。ACが小さいのは、コスト効率がよいからかもしれないが、そもそも作業が始まっていないだけかもしれない。この二つはACとPVだけでは区別できず、EVを見て初めて分かる。EVも小さければ作業が進んでいないだけであり、SPI = EV / PV が1を大きく下回る深刻な遅れである。EVが十分あってACが小さいなら本当に効率がよい。EVMが三つの値を必要とするのは、まさにこの区別のためである。
出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
4. サービスマネジメントとファシリティ
ITILの考え方を軸に、インシデント管理と問題管理の役割の違い、SLAの決め方、可用性とキャパシティの守り方が分かります。
システムは作って終わりではなく、動かし続けて初めて価値を生みます。運用の良い進め方をまとめた事実上の標準がITILで、これを規格にしたものがJIS Q 20000(ISO/IEC 20000)です。ITILの新しい版では、需要から価値までを一つの仕組みとして扱うサービスバリューシステムと、その中核である6つの活動からなるサービスバリューチェーン(計画・改善・エンゲージ・設計と移行・獲得と構築・提供とサポート)という捉え方をします。細かい版の違いより大事なのは、運用の活動を「いま起きている障害を止める」「二度と起こさないようにする」「変えるときに壊さない」という役割ごとに分け、それぞれ別の指標で評価するという設計思想です。この分け方が分かっていれば、初見の場面でもどのプロセスの話かを判断できます。
利用者からの連絡を一手に引き受ける単一窓口がサービスデスクです。窓口を分散させると、たらい回しが起きて記録も残らないため、単一窓口にすることが原則になります。サービスデスクが受けた申告のうち、サービスの品質低下や中断を引き起こす事象への対応がインシデント管理です。インシデント管理の目的は「合意した時間内にサービスを復旧させること」であり、原因の究明ではありません。原因が分からなくても、再起動や代替機への切替え、既知の誤りに対する回避策(ワークアラウンド)の適用でサービスが戻るなら、それが正解です。これに対し、インシデントの根本原因を突き止めて恒久的に取り除くのが問題管理です。原因がまだ分からない段階の管理対象を問題といい、原因と回避策が判明したものを既知の誤りとして登録しておくと、次に同じインシデントが起きたときすぐ回避できます。同じインシデントが繰り返し起きているのに問題管理へ渡さないと、復旧作業だけが永久に続くことになります。
サービスを変えるときの守りが、変更管理・リリース管理・構成管理です。変更管理は、変更要求を受け付けて影響とリスクを評価し、承認と切戻し手順の準備を経て承認する活動です。リリース管理(リリース及び展開管理)は、承認された変更を本番環境へ実際に移す活動で、リリース単位の計画、テスト、展開、そして失敗したときの切戻しを担います。構成管理は、ハードウェア・ソフトウェア・文書などの構成品目とその関係を構成管理データベース(CMDB)で正確に保つ活動で、変更の影響範囲を判断する土台になります。三つの関係は、構成管理が地図を持ち、変更管理が行き先を決め、リリース管理が実際に運ぶ、と考えると整理できます。緊急変更は通常の承認手順を短縮できますが、記録を省いてよいわけではなく、事後に必ず正式な記録と評価を行います。
提供する品質の約束がSLA(サービスレベル合意書)です。SLAは提供者と利用者の合意文書で、サービス時間帯、可用性、応答時間、障害時の回復目標、報告方法、未達時の措置などを、測れる形で書きます。SLAの中の個々の目標値をSLO、内部の計測指標をSLIと呼び分けることもあります。同じ提供者の中で部門間に置く目標をOLA、外部委託先との契約に置く目標を裏付け契約(UC)といい、外部委託先の目標が甘いと自社のSLAは守れません。決めた目標を継続的に測り、報告し、改善へ回す活動全体がSLM(サービスレベル管理)です。目標値は高ければよいというものではありません。可用性を99.9%から99.99%へ上げると、許される年間停止時間は約8.8時間から約53分になり、必要な冗長構成と運用体制の費用は跳ね上がります。業務が本当に必要とする水準を決めることが、SLAを結ぶ実質的な作業です。
可用性管理は、稼働率の目標を決めて設計と運用で守る活動です。稼働率はMTBF / (MTBF + MTTR) で求まり、上げる手は二つしかありません。故障しにくくする(MTBFを延ばす)か、直りを速くする(MTTRを縮める)かです。冗長化やホットスタンバイはMTTRを縮める側の投資、部品の品質向上や予防保全はMTBFを延ばす側の投資と整理できます。災害時の目標としては、どの時点のデータまで戻せるかを示すRPO(目標復旧時点)と、いつまでに復旧させるかを示すRTO(目標復旧時間)を分けて決めます。RPOはバックアップの取得間隔で、RTOは切替えの仕組みで決まるので、投資先が違います。キャパシティ管理は、処理量・応答時間・資源使用率を監視し、需要の伸びを予測して、不足する前に増強する活動です。閾値を超えてから慌てるのではなく、傾向から先回りするのがキャパシティ管理の値打ちです。
設備そのものを守るのがファシリティマネジメントです。停電への備えとしては、瞬断や短時間の停電をしのぐ無停電電源装置(UPS)と、長時間の停電に備える自家発電装置を組み合わせます。UPSだけでは数分から数十分しか持たないので、UPSは「安全に落とすまでの時間」または「発電機が立ち上がるまでの時間」を稼ぐ装置だと理解します。地震対策には、建物ごと揺れを絶つ免震と、揺れを吸収して小さくする制震があります。空調は温度と湿度の両方を管理し、湿度が低すぎると静電気、高すぎると結露の問題が出ます。入退室管理では、共連れを防ぐアンチパスバックや二重扉方式が使われ、電源系統や通信回線を二重化して単一障害点をなくす設計も、ファシリティ側の可用性対策に含まれます。
運用の主要プロセスの目的と、評価に使う指標 プロセス 目的 主な指標と成果物 サービスデスク 問合せと申告を単一窓口で受け付ける 一次解決率、応答時間、記録の網羅性 インシデント管理 合意した時間内にサービスを復旧させる 平均復旧時間、SLA順守率、回避策の適用 問題管理 根本原因を除去して再発をなくす 既知の誤りの登録件数、再発インシデント件数 変更管理 変更のリスクを評価して安全に承認する 変更成功率、緊急変更の比率、切戻し手順 リリース及び展開管理 承認された変更を本番へ確実に移す リリース計画、展開失敗率、切戻し実績 構成管理 構成品目と関係を正確に保つ CMDB、構成情報の正確性、監査結果 サービスレベル管理 合意した水準を測り、報告し、改善する SLA、SLO、サービスレベル報告書 可用性管理 目標稼働率を設計と運用で守る 稼働率、MTBF、MTTR、単一障害点の有無 キャパシティ管理 需要の伸びを予測して不足前に増強する 資源使用率の傾向、応答時間、増強計画 サービス継続管理 災害時に決めた水準で業務を戻す RPO、RTO、復旧手順、訓練記録
/* 可用性の目標値から、許される停止時間を出す */ ○実数型: 停止許容時間(実数型: サービス提供時間, 実数型: 目標可用率) return サービス提供時間 * (1 - 目標可用率) /* 24時間365日運用(年8760時間)の場合 */ 目標99.0% -> 8760 * 0.010 = 87.6時間/年 目標99.9% -> 8760 * 0.001 = 8.76時間/年 目標99.99% -> 8760 * 0.0001 = 0.876時間/年(約53分) /* 稼働率 = MTBF / (MTBF + MTTR) */ MTBF=1200時間, MTTR=30時間 -> 1200 / 1230 = 0.9756(97.56%)
用語 サービスデスク 利用者からの問合せや障害申告を受け付ける単一窓口。連絡先を一つに集約して記録を残し、たらい回しを防ぐことが目的。 インシデント管理 サービスの中断や品質低下を、合意した時間内に復旧させる活動。目的は復旧であって原因究明ではなく、回避策で戻せるならそれでよい。 問題管理 インシデントの根本原因を特定し、恒久的に取り除く活動。原因未特定のものを問題、原因と回避策が判明したものを既知の誤りとして管理する。 ワークアラウンド 根本原因を除かないまま、サービスを暫定的に回復させる回避策。インシデント管理の武器であり、恒久対策は問題管理へ引き継ぐ。 変更管理 変更要求の影響とリスクを評価し、切戻し手順の準備を確認して承認する活動。緊急変更でも記録と事後評価は省かない。 構成管理データベース CMDB。ハードウェア・ソフトウェア・文書などの構成品目と、その相互関係を記録したデータベース。変更の影響範囲の判断に使う。 SLA サービスレベル合意書。サービス時間帯、可用性、応答時間、回復目標、報告方法、未達時の措置などを測れる形で合意した文書。 OLAと裏付け契約 OLAは同一組織内の部門間で結ぶ運用レベル合意、裏付け契約(UC)は外部委託先との契約。これらの水準が甘いと対外的なSLAは守れない。 SLM サービスレベル管理。SLAで決めた目標を継続的に測定し、報告し、レビューして改善につなげる管理活動全体を指す。 稼働率 MTBF / (MTBF + MTTR)。故障しにくくする(MTBFを延ばす)か、直りを速くする(MTTRを縮める)かの二方向でしか改善できない。 RPOとRTO RPOはどの時点のデータまで復旧させるかの目標でバックアップ間隔が決める。RTOはいつまでに復旧させるかの目標で切替えの仕組みが決める。 キャパシティ管理 処理量・応答時間・資源使用率を監視し、需要の伸びを予測して不足前に増強する活動。閾値超過後の対処ではなく先回りが役割。 UPS 無停電電源装置。瞬断や短時間の停電の間だけ電力を供給し、安全に停止させるか自家発電装置が立ち上がるまでの時間を稼ぐ。 アンチパスバック 認証済みの人に続いて入る共連れがあると入退室の記録の整合が崩れるため、共連れを検出でき、成立しにくくできる仕組み。
例題
例題:月間のサービス提供時間が400時間の業務システムで、SLAの可用性目標を99.5%と合意した。1か月に許される停止時間は何時間か。また目標を99.9%に引き上げると何時間になるか。
答えと考え方 99.5%なら400 * (1 - 0.995) = 2.0時間、99.9%なら400 * (1 - 0.999) = 0.4時間。0.4ポイント上げるだけで、許される停止が5分の1になる。0.4時間ということは、障害を検知して原因を切り分けて復旧させる一連の作業を24分で終えなければならず、人が駆けつけてから判断する運用では届かない。自動切替えの仕組みと常時監視の体制が要ることになり、費用の桁が変わる。SLAの数字は「業務がどこまでの停止に耐えられるか」から決めるべきで、高い値を置けばよいというものではない。
例題:同じ帳票の出力が月に4回も止まり、そのたびにサービスデスクがサーバを再起動して復旧させている。この対応の何が問題で、どう扱うべきか。
答えと考え方 再起動で復旧させること自体はインシデント管理として正しい。合意時間内にサービスを戻すのがインシデント管理の目的だからである。問題は、繰り返し起きているのに問題管理へ渡していない点にある。同一事象の再発は問題として起票し、根本原因を調査して恒久対策を打つべき局面である。原因が判明して回避策が確立した段階で既知の誤りとして登録しておけば、次の発生時の復旧も速くなる。恒久対策の適用が本番環境の変更を伴うなら、変更管理を通して影響評価と切戻し手順の準備を行ってから実施する。
出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
5. システム監査と内部統制
監査人の独立性、監査手続と監査証拠の集め方、監査証跡と可監査性、内部統制とITガバナンスの関係が分かります。
システム監査は、情報システムにまつわるリスクへの対応が適切に整備され、運用されているかを、独立した立場の者が点検・評価し、関係者に助言・勧告する活動です。ここでいちばん大事なのが独立性で、二つの面から見ます。一つは外観上の独立性で、監査の対象となる部門や業務から組織的に離れていること。もう一つは精神上の独立性で、公正かつ客観的に判断する態度を保つことです。自分が設計したシステムを自分で監査すれば外観上の独立性を欠きますし、上司の意向を忖度して結論を変えれば精神上の独立性を欠きます。なお、システム監査人は助言や勧告を行いますが、指摘した不備を自ら直したり、被監査部門に代わって統制を運用したりはしません。それをすると、次の監査で自分の仕事を監査することになるからです。監査人が外部の者か組織内の者かは独立性とは別の話で、内部監査部門の監査人でも、被監査部門から独立し社長直属など上位に報告する体制があれば独立性は保てます。
監査の進め方は、計画・実施・報告・フォローアップの順です。まず監査計画を立て、リスクの高い領域に資源を厚く配分します(リスクアプローチ)。実施の段階は、対象の概要をつかむ予備調査と、実際に証拠を集めて確かめる本調査に分かれます。証拠を集めるためにあらかじめ定める手順が監査手続で、その結果得られた事実が監査証拠、実施した手続と得た証拠を記録したものが監査調書です。監査調書は、結論の裏づけであり、後から第三者が同じ判断に至れることを示すものなので、いつ・誰が・何を・どうやって確かめたかを残します。最後に監査報告書で意見を述べ、指摘事項について改善の実施状況を後日確認するフォローアップまでが監査人の役目です。改善そのものを行うのは被監査部門であって監査人ではありません。
証拠の集め方にはいくつもの技法があり、確かめたいことによって選びます。チェックリスト法とインタビュー法は運用の実態を広く把握するのに向き、突合・照合法は帳票と記録を突き合わせて整合を確かめます。コンピュータ処理そのものを確かめる技法としては、あらかじめ結果の分かるデータを流して処理結果を確かめるテストデータ法、本番のファイルに監査用のダミー口座などを設けて本番処理の中で検証するITF法(組込み監査法)、処理の途中経過を抜き出して記録するスナップショット法、監査用のモジュールをアプリケーションに組み込んで条件に合う取引を抽出する監査モジュール法(埋込み監査モジュール)、監査用のプログラムでファイルを直接分析する監査ツール法などがあります。テストデータ法は本番データを汚さない代わりに、テストしていない経路の欠陥は見つかりません。ITF法は本番環境の実態を確かめられる代わりに、ダミーデータが本番の集計に混ざらないよう厳重な管理が要ります。
監査が成り立つ前提が監査証跡と可監査性です。監査証跡とは、ある取引や処理について、入力から出力まで、あるいは出力から入力まで、経路をたどって追跡できるようにする記録の連なりです。ログ、更新履歴、承認記録、帳票の連番などがこれにあたります。可監査性とは、システムが監査証跡を備え、監査が実施できるように作られている性質のことです。ここが要点で、可監査性は運用が始まってから足せるものではありません。ログの取得項目や保存期間、権限の記録といった要件は、要件定義や設計の段階で組み込んでおく必要があります。だからこそ、開発の各工程に監査の視点を入れる開発中の監査という考え方があります。
監査の背後にあるのが内部統制です。内部統制とは、業務の有効性と効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守、資産の保全という四つの目的を達成するために、組織内のすべての者によって遂行される仕組みを指します。基本的要素は、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング、ITへの対応の六つです。統制活動の代表が職務分掌で、申請する人と承認する人、開発する人と本番へ反映する人を分けることで、一人の不正や誤りが最後まで通らないようにします。ITに関する統制は、IT全般統制と業務処理統制に分けて考えます。IT全般統制は、開発と変更の管理、アクセス管理、運用管理といった、複数の業務処理を下支えする土台の統制です。業務処理統制は、入力チェックやマスタとの突合のように、個々の業務処理の中に組み込まれた統制です。土台であるIT全般統制が弱いと、いくら業務処理統制を作り込んでも、後から改ざんできてしまうため信頼できません。
内部統制を制度として求めているのが、金融商品取引法に基づく内部統制報告制度、いわゆるJ-SOXです。上場会社の経営者が、財務報告に係る内部統制の有効性を自ら評価して内部統制報告書を作成し、公認会計士等の監査を受けて提出します。ポイントは対象が財務報告に係る内部統制に絞られていること、そして評価するのは経営者自身であることです。情報システムの統制も、財務報告に影響する範囲でこの評価の対象になります。より広い枠組みがITガバナンスで、経営者が、ITへの投資と利用を組織の戦略に沿った方向へ導き、評価し、監視する責任を負うという考え方です。JIS Q 38500では、この責務をEDMすなわち評価(Evaluate)・指示(Direct)・モニタ(Monitor)の三つで表します。ITガバナンスの主体は経営者であり、システム監査はそのモニタを助ける手段の一つ、という位置づけになります。
システム監査の流れと、各段階で作るもの 段階 やること 残すもの 監査計画 リスクの高い領域を見極め、範囲と資源を配分する 監査計画書 予備調査 対象業務とシステムの概要、統制の設計状況をつかむ 調査メモ、質問票の回答 本調査 監査手続に従い、証拠を集めて事実を確かめる 監査証拠、監査調書 評価と結論 集めた証拠から、統制の整備と運用の状況を評価する 評価結果、指摘事項の一覧 監査報告 監査意見を述べ、改善のための助言と勧告を行う システム監査報告書 フォローアップ 改善が実施されたかを後日確認する 改善状況の確認記録
/* 主な監査技法の選び分け */ 確かめたいこと -> 向いている技法 運用の実態や手順の遵守状況 -> インタビュー法, チェックリスト法 帳票と記録の整合 -> 突合法, 照合法 処理ロジックが仕様どおりか -> テストデータ法 本番処理そのものの正しさ -> ITF法(組込み監査法) 処理の途中でデータがどう変わったか -> スナップショット法 運用中の異常な取引を継続的に拾いたい -> 監査モジュール法 大量データの網羅的な分析 -> 監査ツール法
用語 外観上の独立性 監査人が、監査対象の部門や業務から組織上・身分上離れていること。自分が設計や運用に関与したシステムを監査すると、この独立性を欠く。 精神上の独立性 監査人が、公正かつ客観的に判断する態度を保つこと。組織図の上で離れていても、忖度して結論を変えればこの独立性を欠く。 リスクアプローチ 限られた監査資源を、リスクが高いと評価した領域へ重点的に配分する監査計画の考え方。すべてを一律に調べるより効果が高い。 監査手続 監査目的に照らして十分かつ適切な監査証拠を得るために、あらかじめ定めておく手順。予備調査と本調査で用いる。 監査調書 実施した監査手続と、得られた監査証拠、判断の過程を記録した文書。監査意見の裏づけであり、第三者が追跡できるように残す。 テストデータ法 結果があらかじめ分かっているデータを処理させ、出力を確かめる技法。本番データを汚さないが、用意しなかった経路の欠陥は検出できない。 ITF法 組込み監査法。本番ファイルに監査用のダミー口座などを設け、本番処理の中で検証する技法。実態を確かめられるが、集計への混入防止の管理が要る。 監査モジュール法 監査用のモジュールをアプリケーションに組み込んでおき、条件に合う取引を継続的に抽出して記録する技法。運用中の異常を継続監視できる。 監査証跡 取引や処理を、入力から出力へ、または出力から入力へたどれるようにする記録の連なり。ログ、更新履歴、承認記録、帳票の連番などが該当する。 可監査性 システムが監査証跡を備え、監査を実施できるように作られている性質。運用開始後には足しにくいので、要件定義や設計の段階で作り込む。 職務分掌 申請と承認、開発と本番反映のように、相互に牽制すべき役割を別の担当者に分ける統制活動。一人の誤りや不正が最後まで通らないようにする。 IT全般統制 開発と変更の管理、アクセス管理、運用管理など、複数の業務処理を下支えする統制。ここが弱いと、業務処理統制の結果も信頼できなくなる。 IT業務処理統制 入力チェック、マスタとの突合、例外処理の記録など、個々の業務処理の中に組み込まれた統制。処理の正確性と網羅性を確保する。 内部統制報告制度 J-SOX。金融商品取引法に基づき、上場会社の経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価して内部統制報告書を作成し、監査を受けて提出する制度。 ITガバナンス 経営者が、ITの利用と投資を組織の戦略に沿うよう方向づけ、評価し、監視する責務。JIS Q 38500では評価・指示・モニタの3活動で表す。
例題
例題:販売管理システムの開発に設計者として関わった技術者が、そのシステムの運用開始後に社内のシステム監査人として監査を担当することになった。何が問題か。
答えと考え方 外観上の独立性を欠く。自分が設計した対象を自分で評価することになり、不備を見つけても自らの仕事の否定になるため、公正な判断が期待できないと外から見なされる。本人がどれだけ誠実でも、外観上の独立性は「そう見えるかどうか」の問題なので、担当を外すのが正しい対応である。なお、内部監査部門に所属していること自体は問題ではない。被監査部門から組織上分離され、経営者など上位者へ直接報告する体制があれば、内部の監査人でも独立性は保てる。
例題:運用開始後の監査で「ログの保存期間が3日しかなく、半年前の不正処理の経路をたどれない」と指摘された。どの段階で手を打つべきだったか。
答えと考え方 要件定義から設計の段階である。指摘の本質は可監査性の欠如であり、監査証跡が残っていないという事実は、運用中の努力では取り返せない。何のログをどの粒度で取り、どれだけの期間保存し、誰が消せないようにするかは、非機能要件として最初に決めて設計に組み込むものである。だからこそ、開発の各工程に監査の視点を入れる開発中の監査という考え方がある。運用開始後にできるのは、これから先のログ取得を直すことだけで、過去は復元できない。
出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
確認問題(50問) 四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。
問1|憲章
プロジェクト憲章の役割として、最も適切なものはどれか。
各ワークパッケージの作業内容と受入基準を詳細に記述し、担当者へ指示を出すこと 作業間の前後関係と所要日数を示し、クリティカルパスを算出できるようにすること プロジェクトの目的と概要を示して発足を正式に承認し、プロジェクトマネージャの権限の根拠となること 承認された変更要求を本番環境へ反映する手順と、失敗時の切戻し手順を定めること 正解と解説 正解:C. プロジェクトの目的と概要を示して発足を正式に承認し、プロジェクトマネージャの権限の根拠となること プロジェクト憲章は、目的・成果物・主要関係者・体制・制約・前提を記してプロジェクトの発足を正式に承認する文書であり、プロジェクトマネージャの権限もここで裏づけられる。作業内容と受入基準を詳細に記述するのはWBS辞書、前後関係と所要日数を示すのはアローダイアグラム、本番反映と切戻しの手順を定めるのはリリース管理の役割であり、いずれも憲章の役割ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問2|WBS辞書
WBS辞書に記載する内容として、適切なものはどれか。
各ワークパッケージの作業内容、成果物、受入基準など、WBSの箱だけでは分からない詳細 組織内で用いる用語の定義を五十音順に並べた一覧 利害関係者の氏名、所属、連絡先、関心度、影響力を整理した登録簿 各作業の予定期間と実績を横棒で示した進捗表 正解と解説 正解:A. 各ワークパッケージの作業内容、成果物、受入基準など、WBSの箱だけでは分からない詳細 WBSは成果物と作業を階層的に分解した図だが、箱の名前だけでは中身の解釈が人によってずれる。そこで各ワークパッケージの作業内容・成果物・受入基準・前提などを記述して補うのがWBS辞書である。用語の定義集は用語集、利害関係者の情報を整理したものはステークホルダ登録簿、予定と実績を横棒で示すのはガントチャートであり、いずれもWBS辞書ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問3|クリープ
スコープクリープが起きている状況として、最も適切なものはどれか。
変更管理委員会が変更要求を評価した結果、影響が大きいとして却下された 要件定義で決めた機能のうち、優先度の低いものを合意のうえ次期リリースへ回した 見積り時の想定より作業が速く進み、計画より早く工程が完了した 小さな追加要求を「これくらいなら」と現場判断で受け続け、気付くと作業量が計画を大きく超えていた 正解と解説 正解:D. 小さな追加要求を「これくらいなら」と現場判断で受け続け、気付くと作業量が計画を大きく超えていた スコープクリープは、正式な変更管理を経ないまま小さな追加が積み重なり、範囲がじりじり広がっていく現象である。現場判断で追加要求を受け続けた結果として作業量が膨らんだ状況がこれにあたる。変更要求が正式に評価されて却下されたのも、合意のうえで機能を次期へ回したのも、手続を踏んだスコープの管理そのものである。計画より早く進んだことはスコープの膨張とは関係がない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問4|変更要求
実装工程の途中で利用部門から機能追加の要望が出た。プロジェクトマネージャが最初に行うべきことはどれか。
工数への影響が小さいと判断できる範囲であれば、記録を残さずに担当者へ実施を指示する 変更要求として正式に受け付け、スコープ・期間・コスト・品質への影響を評価して承認の可否を諮る 実装工程に入った後の要望はすべて受け付けられないため、評価せずに差し戻す 追加分の工数を残業で吸収できるかどうかを担当者に確認し、可能ならそのまま着手させる 正解と解説 正解:B. 変更要求として正式に受け付け、スコープ・期間・コスト・品質への影響を評価して承認の可否を諮る 変更要求は、まず正式に受け付けて影響を評価し、変更管理委員会などの場で承認の可否を決めるのが原則である。影響が小さいからと手続を省くと、同じ理屈の追加が積み重なってスコープクリープを招く。一方、工程に入った後だからと評価もせずに一律で差し戻すのも誤りで、判断材料を作るのがマネージャの役割である。残業で吸収できるかどうかは、承認後に実施方法を決める段階の話である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問5|経路数
12人のチームで、全員が互いに直接1対1でやり取りする運用をしている。この場合のコミュニケーション経路は何本か。
66本 72本 132本 55本 正解と解説 正解:A. 66本 n人が互いに1対1でやり取りするときの経路数はn(n-1)/2本である。12 * 11 / 2 = 66本となる。132本はn(n-1)を2で割り忘れた値、72本はn * n / 2 として自分自身との組合せまで数えた値、55本は11 * 10 / 2 として人数を1人少なく数えた値であり、いずれも誤りである。経路数は人数の二乗に近い勢いで増えるため、規模が大きいときは会議体を階層化する根拠になる。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問6|RACI
RACIチャートの使い方として、適切なものはどれか。
作業ごとに要員の稼働予定工数を積み上げ、時期による偏りを可視化する 利害関係者を関心度と影響力の二軸で分類し、関与の方針を決める 作業と役割の対応を表にし、実行責任・説明責任・相談先・報告先を割り当てる リスクを発生確率と影響度の二軸で分類し、優先して対応するものを選ぶ 正解と解説 正解:C. 作業と役割の対応を表にし、実行責任・説明責任・相談先・報告先を割り当てる RACIチャートは責任分担マトリックスの一種で、作業と役割の交点に実行責任・説明責任・相談先・報告先の4区分を割り当てる。説明責任者は1作業につき1人に絞るのが原則で、複数いると誰も責任を取らない状態になりやすい。稼働予定工数の積み上げは山積み表、関心度と影響力による分類はステークホルダ分析、発生確率と影響度による分類はリスク評価であり、いずれもRACIチャートではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問7|リスク転嫁
リスク対応のうち「転嫁」に該当するものはどれか。
採用実績のない新技術の使用をやめ、実績のある技術に切り替える テスト工程を厚くして、欠陥が本番で顕在化する確率を下げる システム障害による損害に備えて保険を契約し、損失の負担を保険会社に移す 影響が軽微なため対策費用に見合わないと判断し、そのまま受け入れる 正解と解説 正解:C. システム障害による損害に備えて保険を契約し、損失の負担を保険会社に移す 転嫁は、リスクが顕在化したときの損失の負担を他者へ移す対応で、保険の契約や外部委託が代表例である。ただし移せるのは損失の負担であって、責任そのものが消えるわけではない点に注意する。新技術の使用をやめるのは原因そのものを断つ回避、テストを厚くして発生確率を下げるのは軽減、対策せずに受け入れるのは受容である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問8|予備費
コンティンジェンシー予備とマネジメント予備の違いとして、適切なものはどれか。
コンティンジェンシー予備は人件費のみに使え、マネジメント予備は物品費のみに使える コンティンジェンシー予備は特定できているリスクに備えてコストベースラインに含め、マネジメント予備は想定外の事象に備えてベースラインの外に置く コンティンジェンシー予備は上位管理者の承認がないと使えず、マネジメント予備はプロジェクトマネージャの裁量で使える コンティンジェンシー予備は計画時に見積もれないため、実績が出てから積み増す 正解と解説 正解:B. コンティンジェンシー予備は特定できているリスクに備えてコストベースラインに含め、マネジメント予備は想定外の事象に備えてベースラインの外に置く コンティンジェンシー予備は、識別済みのリスクが顕在化した場合に備える予備費で、コストベースラインに含めてプロジェクトマネージャの裁量で使う。マネジメント予備は、識別できていなかった事象に備える予備費で、コストベースラインの外に置き、使用には上位管理者の承認が必要である。つまり違いは費目ではなく、備える対象と権限の所在にある。承認が要るのはマネジメント予備の側なので、両者を入れ替えた記述は誤りである。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問9|利害関係
ステークホルダを関心度と影響力の二軸で分類する目的として、適切なものはどれか。
関与の濃さと報告の頻度を相手ごとに変え、限られた時間を効果的に使うため 反対する立場の関係者を早期に特定し、意思決定の場から外すため 利害関係者の人数から、必要なコミュニケーション経路の本数を算出するため 利害関係者ごとの負担額を決め、費用を按分するため 正解と解説 正解:A. 関与の濃さと報告の頻度を相手ごとに変え、限られた時間を効果的に使うため ステークホルダ分析は、影響力が大きく関心も高い相手には密に関与し、影響力も関心も小さい相手には定型の情報提供にとどめる、といった使い分けをするために行う。目的は限られた時間と労力の配分である。反対する関係者は、外すのではなく早期に巻き込むほうが後の手戻りが小さい。経路数の算出や費用の按分は、この分類の目的ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問10|品質保証
プロジェクトにおける品質保証と品質管理の関係として、適切なものはどれか。
品質保証は完成した成果物を検査する活動、品質管理は検査で見つけた欠陥を修正する活動である 品質保証は発注者が行う活動、品質管理は受注者が行う活動である 品質保証は本番稼働後に行う活動、品質管理は開発中に行う活動である 品質保証は欠陥を作り込まない仕組みを整える活動、品質管理は成果物を測って基準に合っているか確かめる活動である 正解と解説 正解:D. 品質保証は欠陥を作り込まない仕組みを整える活動、品質管理は成果物を測って基準に合っているか確かめる活動である 品質保証は、標準やレビューの仕組みを整えて欠陥をそもそも作り込まないようにするプロセス寄りの活動であり、品質管理は、成果物を測定・検査して基準を満たしているか確かめる成果物寄りの活動である。欠陥は後工程で見つかるほど手戻り費用が大きくなるため、検査を厚くするより作り込みを防ぐほうが安い。発注者と受注者の別、稼働前と稼働後の別は、この二つの区別とは関係がない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問11|最早開始
アローダイアグラムの前向き計算で、先行作業が複数ある作業の最早開始時刻を求める方法として、正しいものはどれか。
先行作業それぞれの最早終了時刻の最小値を取る 先行作業それぞれの最早終了時刻の最大値を取る 先行作業それぞれの最早終了時刻の平均を取る 先行作業それぞれの所要日数の合計を取る 正解と解説 正解:B. 先行作業それぞれの最早終了時刻の最大値を取る ある作業は、先行作業がすべて終わらないと始められない。したがって最早開始時刻は、先行作業の最早終了時刻のうち最も遅いもの、すなわち最大値になる。最小値を取ると、まだ終わっていない先行作業がある時点で始められることになってしまう。平均や合計に意味はない。なお後ろ向き計算で最遅終了時刻を求めるときは、後続作業のうち最も早く始めなければならないものに合わせるので、逆に最小値を取る。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問12|最短日数
次の7作業からなるプロジェクトがある。A(先行作業なし、4日)、B(先行作業なし、6日)、C(先行作業A、5日)、D(先行作業A、3日)、E(先行作業BとD、4日)、F(先行作業C、7日)、G(先行作業EとF、2日)。全体の最短所要日数は何日か。
13日 16日 18日 31日 正解と解説 正解:C. 18日 開始から終了までの経路をすべて書き出して比べる。A-C-F-G は 4+5+7+2 = 18日、A-D-E-G は 4+3+4+2 = 13日、B-E-G は 6+4+2 = 12日。最長の18日がクリティカルパスの長さであり、全体の最短所要日数になる。13日はA-D-E-Gの経路長で、これだけを見て答えたもの。16日はA-C-Fまでで最後のGを足し忘れた値。31日は7作業の所要日数を単純に合計した値で、並行できる作業を直列に数えてしまっている。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問13|余裕日数
次の6作業からなるプロジェクトがある。A(先行作業なし、2日)、B(先行作業A、7日)、C(先行作業A、4日)、D(先行作業B、3日)、E(先行作業C、5日)、F(先行作業DとE、5日)。作業Cのトータルフロートは何日か。
1日 0日 2日 4日 正解と解説 正解:A. 1日 経路はA-B-D-Fが 2+7+3+5 = 17日、A-C-E-Fが 2+4+5+5 = 16日で、クリティカルパスは17日のA-B-D-Fである。作業Cの最早開始時刻は2日、最早終了時刻は6日。Fの最遅開始時刻は12日なので、Eの最遅開始時刻は7日、Cの最遅開始時刻は3日となる。トータルフロートは最遅開始時刻から最早開始時刻を引いて 3-2 = 1日。0日はフリーフロート(後続Eの最早開始6日から、Cの最早終了6日を引いた値)と取り違えたもの。2日と4日はそれぞれ作業Aと作業Cの所要日数であって、余裕日数ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問14|短縮効果
次の5作業からなるプロジェクトがある。A(先行作業なし、6日)、B(先行作業なし、9日)、C(先行作業A、8日)、D(先行作業B、4日)、E(先行作業CとD、5日)。作業Cに要員を追加して所要日数を8日から5日に短縮したとき、全体の最短所要日数は何日になるか。
16日 19日 14日 18日 正解と解説 正解:D. 18日 短縮前の経路はA-C-Eが 6+8+5 = 19日、B-D-Eが 9+4+5 = 18日で、クリティカルパスは19日のA-C-Eである。Cを3日縮めるとA-C-Eは16日になるが、B-D-Eは18日のまま残るので、全体は18日にしかならない。縮められる上限は元のクリティカルパスと2番目に長い経路の差の1日で、それを超えて縮めてもクリティカルパスがB-D-Eへ移るだけである。16日はA-C-Eだけを見た値、19日は短縮の効果がまったくないと考えた値、14日は元の19日から短縮後のCの所要日数5日を引いてしまった値である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問15|自由余裕
フリーフロート(自由余裕)の説明として、適切なものはどれか。
プロジェクト全体の完了日を遅らせずに、その作業を遅らせてよい日数 後続作業の最早開始時刻を遅らせずに、その作業を遅らせてよい日数 その作業の所要日数から、実際にかかった日数を引いた差 クリティカルパスの長さと、2番目に長い経路の長さの差 正解と解説 正解:B. 後続作業の最早開始時刻を遅らせずに、その作業を遅らせてよい日数 フリーフロートは、後続作業の最早開始時刻に影響を与えない範囲での余裕日数で、後続作業の最早開始時刻の最小値からその作業の最早終了時刻を引いて求める。全体の完了日を基準にした余裕はトータルフロートで、フリーフロートはトータルフロート以下になる。所要日数と実績日数の差は単なる予実差であり、クリティカルパスと2番目の経路の差は短縮できる上限を示す値であって、どちらもフリーフロートではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問16|ダミー
アローダイアグラムにおけるダミー作業の説明として、適切なものはどれか。
所要日数が未確定の作業を、暫定的に置いておくための矢印 外部委託する作業であることを示すための矢印 実際の作業を伴わず、作業間の前後関係だけを示すために引く所要日数0の矢印 クリティカルパス上にあることを強調するために太く描く矢印 正解と解説 正解:C. 実際の作業を伴わず、作業間の前後関係だけを示すために引く所要日数0の矢印 ダミー作業は、アローダイアグラムの表記上、前後関係だけを表したいときに引く所要日数0の矢印で、通常は点線で描く。日数を消費しないので経路の長さには足さないが、順序の制約は生むため、クリティカルパスの通り道にはなり得る。所要日数の未確定、外部委託、クリティカルパスの強調は、いずれもダミー作業の意味ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問17|並行実施
スケジュール短縮の手法であるファストトラッキングの特徴として、適切なものはどれか。
本来は順に行う作業を一部重ねて並行実施するため、追加費用は抑えられるが手戻りのリスクが増える 要員や設備を追加投入するため、費用は増えるが手戻りのリスクは増えにくい スコープから機能を削るため、費用も期間も減るが利用者の合意が必要になる 余裕のある作業を後ろへずらすため、要員の山は均されるが全体期間は変わらない 正解と解説 正解:A. 本来は順に行う作業を一部重ねて並行実施するため、追加費用は抑えられるが手戻りのリスクが増える ファストトラッキングは、前工程が完全に終わる前に後工程を先行して始めるなど、作業を重ねて期間を縮める手法である。追加の資源を要しないので費用は抑えられるが、前工程の結果が後から変われば手戻りが生じるリスクがある。要員や設備の追加投入で期間を買うのはクラッシングで、費用が増える代わりに順序は変えないためリスクの性質が異なる。機能を削るのはスコープの縮小、作業を後ろへずらすのは資源平準化である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問18|ガント
ガントチャートの弱点として、適切なものはどれか。
各作業の担当者と実施期間が読み取れない 予定と実績を並べて比較できない 作業の進捗率を表現できない 作業間の前後関係やクリティカルパスが読み取りにくい 正解と解説 正解:D. 作業間の前後関係やクリティカルパスが読み取りにくい ガントチャートは作業名を縦、日付を横に取って予定と実績を横棒で示す図なので、担当者・期間・予実の比較・進捗率はいずれも表現できる。表現しにくいのは作業どうしの依存関係で、どの作業がどの作業の完了を待っているのか、どこが全体を律速しているのかは読み取れない。そのため、計画時のクリティカルパスの把握にはアローダイアグラムやプレシデンスダイアグラムを併用する。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問19|平準化後
資源の制約を考慮して、余裕のある作業を後ろへずらす資源平準化を行った。この直後に必ず確認すべきこととして、最も適切なものはどれか。
ずらした作業の所要日数が、資源の割当てを変えた後も変わっていないことを確かめること 余裕を使い切った作業が新たにクリティカルパスを構成していないか、経路を計算し直すこと ガントチャートの横棒の色が計画と実績で区別され、進捗が一目で分かるようになっていること ずらした作業の担当者が、作業を後ろへずらしたことによって変更されていないことを確かめること 正解と解説 正解:B. 余裕を使い切った作業が新たにクリティカルパスを構成していないか、経路を計算し直すこと 資源平準化はトータルフロートを使って作業を後ろへずらす操作なので、余裕を使い切った作業はトータルフロートが0になり、新たにクリティカルパス上の作業となる。クリティカルパスが増えたり別の経路へ移ったりすれば、以後の重点管理の対象も、遅れが全体に及ぼす影響の読み方も変わる。したがって平準化のあとは必ず経路を計算し直す。所要日数や担当者が変わっていないことの確認は平準化の前提であって、平準化が引き起こす副作用の確認にはならない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問20|依存関係
プレシデンスダイアグラム法(PDM)における依存関係のうち、開始-開始(SS)の説明として適切なものはどれか。
先行作業が終わってから、後続作業を開始できる 先行作業が終わってから、後続作業を終了できる 先行作業が開始してから、後続作業を開始できる 先行作業が開始してから、後続作業を終了できる 正解と解説 正解:C. 先行作業が開始してから、後続作業を開始できる PDMの依存関係は、先行作業側と後続作業側のどちらの端に制約が掛かるかで4種類ある。開始-開始(SS)は、先行作業が始まれば後続作業も始められるという関係で、データ移行を始めたら並行して検証も始める、といった重ね方に使う。先行の終了が後続の開始を縛るのが終了-開始(FS)で最も一般的、先行の終了が後続の終了を縛るのが終了-終了(FF)、先行の開始が後続の終了を縛るのが開始-終了(SF)である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問21|FP法
ファンクションポイント法を採用する主な理由として、適切なものはどれか。
利用者から見える機能を基準に規模を測るので、採用する開発言語の違いに左右されにくいから 作成予定のソースコード行数を基準にするので、企画段階でも精密な値が得られるから 過去の類似案件の実績を用いるので、実績データがなくても適用できるから WBSの末端作業ごとに見積もるので、要件が固まる前でも最も精度が高くなるから 正解と解説 正解:A. 利用者から見える機能を基準に規模を測るので、採用する開発言語の違いに左右されにくいから ファンクションポイント法は、外部入力・外部出力・外部照会・内部論理ファイル・外部インタフェースファイルという利用者から見える機能の数と複雑度に点数を付けて規模を求める。実装言語や作り方に依存しないため、発注側と受注側が同じ基準で議論できるのが最大の利点である。ソースコード行数を基準にするのはLOC法で、言語によって値が変わる。過去実績を用いるのは類推見積法で、実績データがなければ使えない。WBSの末端ごとに積み上げるのはボトムアップ見積法で、要件が固まる前には適用できない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問22|詳細化後
要件定義が完了し、WBSを末端まで分解できた。この時点の見積りとして最も適切な進め方はどれか。
末端作業ごとに担当者が工数を見積もり、積み上げたうえでリスク分の予備を上乗せする 企画段階に出した類推見積りの値を、そのまま最終見積りとして確定する テストケース数だけを基準に、全工程の工数を一括で算出する 過去案件の平均単価に想定人数を掛けて総額だけを示す 正解と解説 正解:A. 末端作業ごとに担当者が工数を見積もり、積み上げたうえでリスク分の予備を上乗せする 作業を末端まで分解できたら、ボトムアップ見積り(積み上げ法)が使える。担当者が見積もることで根拠が残り、進捗管理の単位ともそろう。企画段階の類推見積りをそのまま確定するのは、精度が上がった情報を捨てることになる。テストケース数だけ、平均単価だけの算出は根拠が細すぎる、または粗すぎる。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問23|SVとCV
ある時点のEVMの値が、PVは800万円、EVは720万円、ACは750万円であった。SVとCVの組合せとして正しいものはどれか。
SVは+80万円、CVは+30万円 SVは-50万円、CVは-30万円 SVは-80万円、CVは+30万円 SVは-80万円、CVは-30万円 正解と解説 正解:D. SVは-80万円、CVは-30万円 SVはEVからPVを引くので 720-800 = -80万円、CVはEVからACを引くので 720-750 = -30万円。どちらも負なので、計画より遅れており、かつ予算も超過している。+80と+30の組合せは、PVからEV、ACからEVというように引く向きを逆にした誤り。-50万円はACからPVを引いた 750-800 で、EVを使っていないためEVMの指標として意味を持たない。SVとCVはどちらもEVから引く、と覚えれば取り違えない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問24|SPI
EVMで進捗とコストを管理しているプロジェクトで、PVが3000万円、EVが3300万円、ACが3600万円であった。SPIとCPIの値の組合せとして正しいものはどれか。
SPIは0.91、CPIは1.10 SPIは1.10、CPIは0.92 SPIは0.92、CPIは1.10 SPIは1.10、CPIは1.09 正解と解説 正解:B. SPIは1.10、CPIは0.92 SPIはEVをPVで割るので 3300/3000 = 1.10、CPIはEVをACで割るので 3300/3600 = 0.9167となり約0.92である。進捗は計画より先行しているが、コストの効率は1を下回っており使いすぎている状態を表す。0.91はPVをEVで割った 3000/3300 の値、1.09はACをEVで割った 3600/3300 の値で、いずれも分母と分子を逆にした誤りである。SPIもCPIもEVが分子になる。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問25|EAC
完成時総予算BACが10000万円のプロジェクトで、ある時点のPVが4000万円、EVが3600万円、ACが4500万円であった。現在のコスト効率がこのまま続くと仮定したときの完成時総コストの予測はいくらか。
12500万円 10000万円 10900万円 11111万円 正解と解説 正解:A. 12500万円 CPIは 3600/4500 = 0.80。いまの効率が最後まで続く前提の完成時総コストはEAC = BAC/CPI で求め、10000/0.80 = 12500万円となる。当初予算より2500万円多くかかる見込みである。10000万円はBACをそのまま答えたもの。10900万円はAC+(BAC-EV) = 4500+6400 の値で、これは残作業が当初見積りどおりに進む別の前提での予測であり、いまの効率が続くという仮定には対応しない。11111万円はCPIの代わりにSPI = 3600/4000 = 0.90 を使った 10000/0.90 の誤りである。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問26|EVの定義
EVM におけるEV(アーンドバリュー)の説明として、適切なものはどれか。
その時点までに完了しているはずの作業に割り当てられた予算額 その時点までに実際に支払った金額の累計 その時点までに完了した作業に、もともと割り当てられていた予算額 完成までに必要と見込まれる残作業の金額 正解と解説 正解:C. その時点までに完了した作業に、もともと割り当てられていた予算額 EVは出来高であり、実際に完了した作業に対してもともと割り当てられていた予算額を指す。かかった金額ではないという点が肝心で、だからこそEVとACを比べればコスト効率が、EVとPVを比べれば進捗が分かる。完了しているはずの作業の予算額はPV、実際に支払った金額の累計はAC、残作業に必要な見込み額はETCである。ACとPVだけでは、支出が少ない理由が効率のよさなのか着手の遅れなのか区別できず、EVが必要になる。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問27|VAC
EVMのVAC(完成時差異)の求め方と意味として、正しいものはどれか。
EV-ACで求め、負なら進捗が遅れていることを示す EAC-ACで求め、残作業に必要な金額を示す EV/ACで求め、1未満ならコスト効率が悪いことを示す BAC-EACで求め、負なら完成時に予算を超過する見込みであることを示す 正解と解説 正解:D. BAC-EACで求め、負なら完成時に予算を超過する見込みであることを示す VACは完成時総予算BACから完成時総コストの予測EACを引いた値で、完成した時点で予算といくらずれるかの見込みを表す。負なら超過見込みである。EV-ACはその時点のコスト差異CV、EAC-ACは残作業に必要な額ETC、EV/ACはコスト効率指数CPIであり、いずれもVACではない。CVが現時点の差異であるのに対し、VACは完成時点までを見通した差異である点が違いになる。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問28|3点見積
ある作業の所要日数を3点見積法で見積もったところ、楽観値8日、最可能値12日、悲観値28日であった。PERTで用いる期待値は何日か。
16日 14日 12日 18日 正解と解説 正解:B. 14日 PERTの期待値は(楽観値 + 4 * 最可能値 + 悲観値)/ 6 で求める。(8 + 4*12 + 28) / 6 = 84 / 6 = 14日となる。最可能値に4倍の重みを置くので、単純平均より最可能値に寄る。16日は3つの値を単純平均した (8+12+28)/3 の値、12日は最可能値そのもの、18日は楽観値と悲観値の中間 (8+28)/2 であり、いずれも重み付けを反映していない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問29|指数の読み
ある時点でSPIが0.85、CPIが1.15であった。プロジェクトマネージャが検討する手として、最も適切なものはどれか。
コスト面に余裕があるので、要員の追加や作業の並行化に費用を投じて日程の遅れを取り戻す コスト効率が良いので、そのまま何も変えずに進める コストを使いすぎているので、要員を減らして支出を抑える 進捗が先行しているので、後続作業の開始を前倒しして余裕を作る 正解と解説 正解:A. コスト面に余裕があるので、要員の追加や作業の並行化に費用を投じて日程の遅れを取り戻す SPIが1未満なので進捗は遅れており、CPIが1を超えているのでコストは計画より安く進んでいる。つまり「安いが遅い」状態で、コスト面の余裕を日程の回復に振り向ける判断が成り立つ。クラッシングやファストトラッキングの費用を、CPIの余裕で吸収できる見込みがあるからである。何も変えなければ遅れはそのまま残る。CPIが1を超えている以上、使いすぎという読みは誤り。SPIが1未満である以上、先行しているという読みも誤りである。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問30|見積精度
見積りに関する不確実性のコーンが示す内容として、適切なものはどれか。
見積り担当者の経験年数が長いほど、見積りの誤差が小さくなる 開発規模が大きいほど、工数は規模の二乗に比例して増える 工程が進んで情報が増えるほど、見積りの誤差の幅は狭くなる 見積りに掛ける時間を2倍にすれば、誤差は半分になる 正解と解説 正解:C. 工程が進んで情報が増えるほど、見積りの誤差の幅は狭くなる 不確実性のコーンは、企画段階では見積りの誤差の幅が大きく、要件定義、設計と工程が進んで情報が増えるにつれて幅が狭まっていくという性質を表す。だから企画段階の見積りは1点の数字ではなく幅で示し、工程の節目ごとに精緻化して合意し直すのが正しい扱いになる。担当者の経験、規模と工数の関係、見積りに掛ける時間は、いずれもこの図が示している内容ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類5:プロジェクトマネジメント 中分類14:プロジェクトマネジメント
問31|復旧優先
インシデント管理の目的として、最も適切なものはどれか。
インシデントの根本原因を特定し、恒久的な対策を実施すること 合意したサービスレベルの範囲内で、できるだけ速やかにサービスを復旧させること 本番環境への変更に伴うリスクを評価し、承認の可否を決めること 構成品目とその関係を正確に記録し、変更の影響範囲を判断できるようにすること 正解と解説 正解:B. 合意したサービスレベルの範囲内で、できるだけ速やかにサービスを復旧させること インシデント管理の目的は、業務への影響を最小にするため合意した時間内にサービスを復旧させることであり、原因の究明ではない。原因が分からなくても、再起動や代替機への切替え、既知の誤りに対する回避策の適用でサービスが戻るならそれでよい。根本原因の特定と恒久対策は問題管理、変更のリスク評価と承認は変更管理、構成品目の記録は構成管理の役割である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問32|問題管理
同一のインシデントが毎月数回発生し、そのつどサービスデスクが定型手順で復旧させている。この状況で取るべき対応として、最も適切なものはどれか。
復旧手順が確立しているので、そのまま同じ対応を続ける サービスデスクの要員を増やし、復旧までの時間をさらに短縮する SLAの可用性目標を、実績に合わせて引き下げる 問題として起票し、根本原因を調査して恒久対策を検討する 正解と解説 正解:D. 問題として起票し、根本原因を調査して恒久対策を検討する その場の復旧はインシデント管理として正しい対応だが、同じ事象が繰り返し起きているのに原因を追わないのは問題管理の欠落である。問題として起票し、根本原因を突き止めて恒久対策を打ち、原因と回避策が判明した段階で既知の誤りとして登録しておけば、次の発生時の復旧も速くなる。要員増強は復旧を速くするだけで再発は止まらず、目標値の引下げは品質低下を追認するだけである。恒久対策が本番環境の変更を伴うなら、変更管理を通して実施する。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問33|変更と展開
変更管理とリリース及び展開管理の役割分担として、適切なものはどれか。
変更管理が変更要求の影響とリスクを評価して承認し、リリース及び展開管理が承認された変更を本番環境へ移す 変更管理が本番環境への適用作業を行い、リリース及び展開管理がその結果を評価して承認する 変更管理が構成品目の関係を記録し、リリース及び展開管理が変更要求を受け付ける 変更管理が利用者からの問合せを受け付け、リリース及び展開管理が復旧作業を行う 正解と解説 正解:A. 変更管理が変更要求の影響とリスクを評価して承認し、リリース及び展開管理が承認された変更を本番環境へ移す 変更管理は、変更要求を受け付けて影響とリスクを評価し、切戻し手順の準備を確認したうえで承認の可否を決める活動である。承認された変更を実際に本番環境へ移し、失敗時には切り戻すのがリリース及び展開管理である。評価して決める側と、運ぶ側が分かれているところが要点で、同じ担当者が両方を兼ねると相互牽制が働かない。構成品目の関係を記録するのは構成管理、問合せの受付はサービスデスク、復旧作業はインシデント管理である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問34|CMDB
構成管理データベース(CMDB)を整備する主な目的として、適切なものはどれか。
インシデントの受付から解決までの経過を時系列に記録し、対応時間を集計するため 利用者ごとのアクセス権限を集中管理し、認証の可否を判定するため 構成品目とその相互関係を正確に把握し、変更が及ぼす影響範囲を判断できるようにするため サーバの資源使用率を時系列で蓄積し、将来の需要を予測するため 正解と解説 正解:C. 構成品目とその相互関係を正確に把握し、変更が及ぼす影響範囲を判断できるようにするため CMDBは、ハードウェア・ソフトウェア・文書・サービスなどの構成品目と、それらがどう依存し合っているかを記録したデータベースである。あるサーバを止めたときにどの業務が影響を受けるかといった判断は、この関係情報がなければできない。したがって変更管理の影響評価と、インシデント発生時の影響範囲の特定を支える土台になる。対応時間の集計はインシデント記録、権限の集中管理はアクセス管理、資源使用率の蓄積と予測はキャパシティ管理の領域である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問35|許容停止
月間のサービス提供時間が500時間の業務システムについて、SLAで可用性99.5%以上と合意した。1か月間に許容される停止時間の上限は何時間か。
5.0時間 2.5時間 0.5時間 25.0時間 正解と解説 正解:B. 2.5時間 許容される停止時間は サービス提供時間 * (1 - 目標可用率) で求める。500 * (1 - 0.995) = 500 * 0.005 = 2.5時間となる。5.0時間は目標を99.0%として 500 * 0.01 を計算した値、0.5時間は99.9%として 500 * 0.001 を計算した値、25.0時間は0.5%ではなく5%として 500 * 0.05 を計算した値である。可用性の目標を0.4ポイント上げて99.9%にすると許容停止は5分の1になり、必要な冗長構成と監視体制の費用が大きく変わる点も押さえておきたい。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問36|OLA
OLA(運用レベル合意書)の説明として、適切なものはどれか。
同一組織内の部門間で、サービス提供を支えるために取り決める目標水準 サービス提供者と外部の利用者との間で結ぶ、サービス品質の合意文書 外部の供給者との間で結ぶ、サービス提供を裏付ける契約 サービスの利用実績を月次で集計し、利用者へ報告する文書 正解と解説 正解:A. 同一組織内の部門間で、サービス提供を支えるために取り決める目標水準 OLAは、サービス提供者の組織内で、運用部門とネットワーク部門のように部門間で取り決める内部の目標水準である。対外的な合意文書がSLA、外部の供給者との契約が裏付け契約(UC)で、OLAとUCの水準が甘いとSLAは守れない。三者を「内部の部門間」「利用者との間」「外部供給者との間」で区別すると整理しやすい。利用実績を集計して報告する文書はサービスレベル報告書である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問37|稼働率
MTBFが950時間、MTTRが50時間の装置がある。この装置の稼働率はいくらか。
94.7% 105.6% 5.0% 95.0% 正解と解説 正解:D. 95.0% 稼働率は MTBF / (MTBF + MTTR) で求める。950 / (950 + 50) = 950 / 1000 = 0.95 なので95.0%である。94.7%は (950-50)/950 として分母を誤ったもの、105.6%は 950/900 として分母からMTTRを引いてしまったもので、稼働率が100%を超える時点で誤りと分かる。5.0%は 50/1000 で、これは稼働していない時間の割合である。稼働率を上げる手は、MTBFを延ばす(故障しにくくする)か、MTTRを縮める(復旧を速くする)かの二方向しかない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問38|RPOの投資
災害対策の設計で、目標復旧時点を短くしたいときに投資すべき対象として最も適切なものはどれか。
バックアップの取得間隔を詰める、またはレプリケーションを導入する 復旧手順を自動化して切替えの所要時間を短くする サービスデスクの要員を増やして受付時間を短縮する 監視の閾値を下げて障害の検知を早くする 正解と解説 正解:A. バックアップの取得間隔を詰める、またはレプリケーションを導入する 目標復旧時点(RPO)は「どの時点のデータまで戻せればよいか」の目標なので、短くするにはデータを取る間隔を詰めるしかない。復旧手順の自動化や検知の早期化は、いつまでに復旧するかという目標復旧時間(RTO)を短くする施策で、失われるデータ量には効かない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問39|キャパ
キャパシティ管理の活動として、最も適切なものはどれか。
資源使用率や応答時間の推移から需要の伸びを予測し、不足する前に増強計画を立てる 資源使用率が閾値を超えた時点で警報を発し、担当者を呼び出す 障害が発生した機器を代替機へ切り替え、サービスを復旧させる 利用部門からの増設要望を受け付け、予算の範囲内で順次対応する 正解と解説 正解:A. 資源使用率や応答時間の推移から需要の伸びを予測し、不足する前に増強計画を立てる キャパシティ管理の値打ちは、閾値を超えてから慌てるのではなく、監視データの傾向から需要の伸びを予測して、不足する前に手を打つところにある。閾値超過での警報は監視の仕組みの一部にすぎず、それだけでは事後対応になる。切替えによる復旧はインシデント管理、要望を受けて順次対応するのは受け身の運用であり、いずれも需要予測にもとづく先回りにはなっていない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問40|電源対策
データセンタの停電対策として、UPSと自家発電装置を併設する理由として適切なものはどれか。
UPSは落雷による過電圧だけを防ぎ、自家発電装置は停電だけを防ぐという役割の違いがあるため UPSは空調用、自家発電装置はサーバ用と、給電する対象が分かれているため 自家発電装置は起動が速いが供給時間が短く、UPSは起動が遅いが長時間供給できるため UPSは瞬時に給電できるが供給時間が短く、自家発電装置は起動に時間がかかるが長時間供給できるため 正解と解説 正解:D. UPSは瞬時に給電できるが供給時間が短く、自家発電装置は起動に時間がかかるが長時間供給できるため UPSは蓄電池で瞬時に給電を引き継げるが、供給できるのは数分から数十分程度である。自家発電装置は燃料がある限り長時間供給できるが、起動して電圧が安定するまでに時間がかかる。そこでUPSが、安全に停止させるまでの時間、または自家発電装置が立ち上がるまでの時間を稼ぐ、という役割分担になる。両者の速さと持続時間を入れ替えた記述は誤りで、給電対象で分かれているわけでも、過電圧と停電で分かれているわけでもない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類15:サービスマネジメント
問41|独立性
システム監査人の独立性に関する記述として、適切なものはどれか。
内部監査部門に所属する監査人は、社内の者であるため常に独立性を欠く 外部の監査法人に所属していれば、監査対象の設計に関与していても独立性は保たれる 監査対象の部門や業務から組織上分離されていることと、公正で客観的な判断態度を保つことの両方が必要である 被監査部門の同意が得られていれば、監査人が自ら設計したシステムを監査してもよい 正解と解説 正解:C. 監査対象の部門や業務から組織上分離されていることと、公正で客観的な判断態度を保つことの両方が必要である 独立性には二つの面がある。外観上の独立性は、監査対象の部門や業務から組織上・身分上離れていることで、精神上の独立性は、公正かつ客観的に判断する態度を保つことである。両方が要る。内部監査部門の所属でも、被監査部門から分離され経営者など上位者へ直接報告する体制があれば独立性は保てるので、社内だから常に欠くという記述は誤り。外部の者でも、自らが設計に関与した対象を監査すれば外観上の独立性を欠く。被監査部門の同意は独立性を回復させる根拠にはならない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問42|監査人の役
システム監査人が行う行為として、適切でないものはどれか。
指摘した不備について、被監査部門に代わって改善策を実装し、稼働まで担当する 監査手続に従って証拠を集め、統制の整備状況と運用状況を評価する 監査報告書で意見を述べ、改善のための助言や勧告を行う 報告後の一定期間を置いて、改善が実施されたかどうかを確認する 正解と解説 正解:A. 指摘した不備について、被監査部門に代わって改善策を実装し、稼働まで担当する システム監査人の役割は、点検・評価と、助言・勧告、そして改善状況のフォローアップまでである。指摘した不備を自ら直したり、被監査部門に代わって統制を運用したりすると、次の監査で自分の仕事を監査することになり、外観上の独立性を失う。証拠収集と評価、意見表明と助言、フォローアップの確認は、いずれも監査人の正当な業務である。改善そのものを実施する責任は被監査部門にある。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問43|監査調書
監査調書の役割として、適切なものはどれか。
被監査部門が改善計画を記述し、監査人へ提出するための様式である 監査の対象となるシステムの設計内容を、開発部門が記録した文書である 経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価した結果を示す報告書である 実施した監査手続と得られた監査証拠、判断の過程を記録し、監査意見の裏づけとなる文書である 正解と解説 正解:D. 実施した監査手続と得られた監査証拠、判断の過程を記録し、監査意見の裏づけとなる文書である 監査調書は、いつ・誰が・何を・どの手続で確かめ、どんな証拠を得て、どう判断したのかを記録した文書である。監査意見の根拠であると同時に、第三者が追跡して同じ判断に至れることを担保する役割を持つため、証拠の写しや実施記録を添えて保管する。改善計画は被監査部門が作る文書、設計内容の記録は設計書、経営者による内部統制の評価結果は内部統制報告書であり、いずれも監査調書ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問44|テストデータ
監査技法のうち、テストデータ法の限界として適切なものはどれか。
本番データを更新してしまうため、業務時間中には実施できない あらかじめ用意した条件しか通らないので、想定しなかった処理経路の欠陥は検出できない 処理の途中経過を記録しないため、最終的な出力の正しさも確認できない 監査人がプログラムを読める必要があり、ソースコードが入手できないと実施できない 正解と解説 正解:B. あらかじめ用意した条件しか通らないので、想定しなかった処理経路の欠陥は検出できない テストデータ法は、結果があらかじめ分かっているデータを処理させて出力を確かめる技法である。本番データを汚さないのが利点だが、検証できるのは用意したテストデータが通る経路だけで、想定していなかった条件分岐に潜む欠陥は見つからない。本番ファイルを使って本番処理の中で検証するのはITF法で、こちらはダミーデータが集計に混ざらない管理が必要になる。出力の正しさは確認できるし、ソースコードの読解は必須ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問45|監査モジュ
運用中のシステムで、一定金額を超える取引や通常と異なる時間帯の取引を継続的に抽出して記録し、監査に用いたい。適した監査技法はどれか。
テストデータ法 スナップショット法 監査モジュール法 突合法 正解と解説 正解:C. 監査モジュール法 監査モジュール法(埋込み監査モジュール)は、監査用のモジュールをアプリケーションに組み込んでおき、あらかじめ定めた条件に合致する取引を継続的に抽出して監査用のファイルへ記録する技法である。運用中の異常な取引を取りこぼさずに拾える点が特徴になる。テストデータ法は用意したデータを流す一時的な検証、スナップショット法は処理の途中でデータの状態を写し取る技法、突合法は帳票と記録を突き合わせて整合を確かめる技法であり、いずれも継続的な条件抽出には向かない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問46|可監査性
可監査性を確保するために最も重要なこととして、適切なものはどれか。
取得するログの項目と保存期間、権限の記録方法を、要件定義や設計の段階で決めて組み込むこと 運用開始後に監査人が必要と判断した時点で、ログの取得設定を追加すること 監査人が被監査部門の業務に精通していること 監査報告書を経営者だけに提出し、外部に公開しないこと 正解と解説 正解:A. 取得するログの項目と保存期間、権限の記録方法を、要件定義や設計の段階で決めて組み込むこと 可監査性とは、システムが監査証跡を備え、監査を実施できるように作られている性質のことである。ここが要点で、過去に起きたことをたどれるかどうかは、そのとき記録が取られていたかで決まる。運用開始後にログ設定を追加しても、追加した時点より前は復元できない。したがってログの項目・粒度・保存期間・改ざん防止といった要件は、非機能要件として要件定義や設計の段階で決めて組み込む必要がある。監査人の業務知識や報告書の取扱いは、可監査性そのものとは別の話である。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問47|監査証跡
監査証跡に該当するものとして、最も適切なものはどれか。
システムの機能一覧、画面遷移、データ項目の定義をまとめ、開発の前に承認を受けた設計書一式 入力から出力までの処理を追跡できるようにするアクセスログ、更新履歴、承認記録の連なり 監査人が被監査部門へ提出を求めた資料の一覧表と、その受領状況を記録した作業記録 システムの稼働率と応答時間を月次で集計し、合意した目標値と比べて示した報告書 正解と解説 正解:B. 入力から出力までの処理を追跡できるようにするアクセスログ、更新履歴、承認記録の連なり 監査証跡は、ある取引や処理について入力から出力へ、あるいは出力から入力へ経路をたどれるようにする記録の連なりである。アクセスログ、更新履歴、承認記録、帳票の連番などが該当し、これがあることで「誰がいつ何をしたか」を後から確かめられる。設計書は仕様を示す文書、資料の一覧表は監査の作業記録、稼働率の集計はサービスレベル報告であって、いずれも処理を追跡させる記録ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問48|IT全般統制
IT全般統制が有効でない場合、IT業務処理統制の評価にどのような影響があるか。
IT業務処理統制は個々の処理に組み込まれているので、IT全般統制の状況に関わらず有効と評価できる IT業務処理統制の評価は不要となり、手作業の統制だけを評価すればよい IT業務処理統制を、IT全般統制の代わりとして評価すればよい IT業務処理統制が設計どおりに動き続けている保証が得られないため、有効と評価できなくなる 正解と解説 正解:D. IT業務処理統制が設計どおりに動き続けている保証が得られないため、有効と評価できなくなる IT全般統制は、開発と変更の管理、アクセス管理、運用管理といった土台の統制である。ここが弱いと、入力チェックやマスタとの突合といったIT業務処理統制が、承認されない変更で無効化されたり、権限のない者にデータを書き換えられたりする余地が残る。つまり業務処理統制が設計どおりに動き続けている保証が得られないので、それ単独では有効と評価できない。土台が崩れているのに評価を省いたり、片方をもう片方の代替とみなしたりするのも誤りである。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
問49|J-SOX
金融商品取引法に基づく内部統制報告制度(J-SOX)に関する記述として、適切なものはどれか。
組織のすべての業務プロセスについて、内部統制の有効性を評価することが求められる 内部統制の有効性は、監査を行う公認会計士が評価し、その結果を経営者が承認する 経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、内部統制報告書として提出する 評価の対象は手作業による統制に限られ、情報システムに関する統制は対象外である 正解と解説 正解:C. 経営者が財務報告に係る内部統制の有効性を評価し、内部統制報告書として提出する この制度では、対象となる会社の経営者自身が、財務報告に係る内部統制の有効性を評価して内部統制報告書を作成し、有価証券報告書と併せて提出する。評価するのは経営者であり、公認会計士等はその報告書を監査する立場である。対象はすべての業務ではなく財務報告に係る範囲に絞られ、その範囲に含まれる情報システムの統制も当然に評価の対象となる。IT全般統制と業務処理統制の評価が求められるのはこのためである。
根拠:金融商品取引法 第24条の4の4
問50|EDM
JIS Q 38500が示すITガバナンスの考え方として、適切なものはどれか。
経営者が、ITの利用を評価し、方針を指示し、遵守状況をモニタする責務を負う システム部門長が、情報システムの開発と運用の手順を標準化して文書化する システム監査人が、情報システムのリスクを評価して経営者に助言する 情報システム部門が、利用部門からの要望を収集して優先順位を付ける 正解と解説 正解:A. 経営者が、ITの利用を評価し、方針を指示し、遵守状況をモニタする責務を負う JIS Q 38500では、ITガバナンスの責務を負うのは経営者であり、その活動を評価(Evaluate)・指示(Direct)・モニタ(Monitor)の三つ、頭文字を取ってEDMとして示す。すなわち現状と将来の需要を評価し、方針や計画を指示し、その遵守と成果をモニタする、という循環である。標準化や要望の優先順位付けは情報システム部門の管理業務、監査人による評価と助言はガバナンスを支える手段の一つであって、ガバナンスそのものの主体ではない。
根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類6:サービスマネジメント 中分類16:システム監査
演習:この章の問題を解く ランダム出題の演習ツールです(JavaScript が有効な場合に動きます)。上の「確認問題」はそのままでもすべて読めます。
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※ 解説は学習用の情報提供です。最新の出題範囲・制度は必ずIPAの公式発表をご確認ください。 ※ 出題はIPA公開のシラバスに沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。計算問題はすべて機械検算ずみ。試験制度・実施要項はIPAの公式発表をご確認ください(2027年度春ごろに新試験制度へ移行予定)。