仮の宿 学習室

応用情報技術者 APPLIED IT ENGINEER

セキュリティ

講義 5 本・確認問題 55 問 | 本試験では「テクノロジ系」(50問)の一部 | 最終更新 2026-09-24

この章で学ぶこと
目次
  1. 情報セキュリティの目的とリスクマネジメント
  2. 脅威と攻撃手法を「突かれる弱点」で整理する
  3. 暗号技術とデジタル署名・PKI
  4. 認証とアクセス制御
  5. セキュリティ実装技術と組織的対応・法令
  6. 確認問題(55問)
  7. 演習ツール

1. 情報セキュリティの目的とリスクマネジメント

「何を守るのか」と「どこまで守るのか」を、組織が筋道立てて決める手順が分かります。

情報セキュリティとは、情報資産を機密性・完全性・可用性の三つの面から守ることです。機密性は許可された者だけが情報に触れられること、完全性は情報が正確で改ざんも欠落もないこと、可用性は必要なときに使えることを指し、頭文字を取ってCIAと呼びます。JIS Q 27000ではこれに加えて、名乗ったとおりの本人・本物であることを確実にする真正性、動作を行った主体まで一意にたどれる責任追跡性、行った事実を後から否定させない否認防止、意図したとおりにふるまう信頼性の四つが挙げられています。応用情報で問われるのは用語の暗記ではなく、目の前の対策がどの特性を守っているかを見分ける力です。暗号化は機密性、ハッシュ値やデジタル署名は完全性、二重化やバックアップは可用性、監査ログは責任追跡性、というように対応づけて考えます。

この三つは同時に最大化できません。機密性を高めて権限を絞り込むほど、必要な人がすぐ使えない場面が増えて可用性は下がります。可用性を高めて誰でもどこからでも使えるようにすれば、機密性は下がります。完全性を厳しく守って更新のたびに承認を求めれば、業務は遅くなります。だからセキュリティ対策は「全部を最高水準に」ではなく、守る対象の価値に見合った水準を選ぶ作業になります。その判断の枠組みがリスクマネジメントです。

出発点は情報資産の洗い出しです。サーバやPCのような機器だけでなく、顧客データ、設計書、ソースコード、業務ノウハウ、さらには要員そのものも情報資産になります。洗い出した資産は台帳にまとめ、機密区分と重要度を付けます。区分の付け方は組織が決めますが、漏えいしたときの影響、改ざんされたときの影響、使えなくなったときの影響を、それぞれ金額や業務停止時間で表しておくと後の分析が進みます。資産の価値が分からないままでは、対策にいくらまでかけてよいかが決められません。

次がリスクアセスメントです。JIS Q 31000の考え方では、リスクアセスメントはリスク特定・リスク分析・リスク評価の三段階からなります。リスク特定は、資産ごとに「どんな脅威が、どの脆弱性を突いて、どんな損失を起こしうるか」を列挙する段階です。リスク分析は、特定したリスクの発生頻度と影響の大きさを見積もる段階です。リスク評価は、見積もった大きさをあらかじめ決めておいたリスク基準と照らし、対応が必要かどうか、どれから手を付けるかを決める段階です。この順序と、それぞれが何をする段階なのかは、応用情報でそのまま問われます。

分析のやり方には定量的評価と定性的評価があります。定量的評価は損失を金額で表す方法で、代表的な指標が年間予想損失額(ALE)です。1回あたりの損失額(SLE)に年間発生回数(ARO)を掛けて求めます。たとえば1回の漏えいで500万円の損失が生じ、年0.2回の頻度で起きると見積もるなら、ALEは100万円です。この数値があると、年間コストが100万円を超える対策は割に合わない、という判断ができます。一方、定性的評価は発生頻度と影響度をそれぞれ3段階や5段階のレベルで表し、リスクマトリックスの上に置いて優先順位を付ける方法です。金額に換算しにくい信用の失墜などを扱いやすく、短時間で全体を見渡せますが、対策費用との比較には向きません。実務では、まず定性的に全体をふるいにかけ、上位のものだけ定量的に詰める進め方がよく採られます。

評価が終わったらリスク対応です。対応は四つに分類されます。リスク低減は、対策を打って発生頻度や影響を小さくするもので、暗号化、多要素認証、修正プログラムの適用などが該当します。リスク回避は、リスクの原因になっている活動そのものをやめるもので、収集する必要のない個人情報を集めない、危険なサービスを廃止する、といった判断です。リスク移転(リスク共有)は、損失の負担を他者に移すもので、サイバー保険への加入や、運用の外部委託が該当します。リスク保有(リスク受容)は、対応せずそのまま受け入れるもので、影響が小さいか、対策費用が損失見込みを上回る場合に選びます。選び分けの目安は、発生頻度が高く影響が小さいものは低減、頻度は低いが影響が甚大なものは移転、頻度も影響も小さいものは保有、頻度も影響も大きく事業として引き受けられないものは回避、という組合せです。

対策を打ってもリスクはゼロにはなりません。残ったものを残留リスクといい、これが受容水準に収まっていることを経営層が承認して初めて対応が完了します。また、対策の実施は費用対効果で判断します。判断の式は単純で、対策によって減る年間予想損失額が対策の年間費用を上回るなら実施する価値がある、上回らないならその対策は過剰である、というものです。ここを押さえておくと、「最も費用対効果が高い対策はどれか」という形の設問に迷わなくなります。

組織としての決めごとは情報セキュリティポリシにまとめます。一般に、なぜ守るのかと基本姿勢を示す基本方針、何をどこまで守るかを定める対策基準、具体的な手順を書いた実施手順の三階層で構成します。基本方針は外部にも公開して組織の姿勢を示すことが多く、実施手順は業務や機器の変更に合わせてこまめに改訂します。全体はPDCAで回し、計画・導入運用・点検・見直しを繰り返して水準を保ちます。この継続的な仕組みがISMSであり、認証規格がJIS Q 27001です。

リスク対応の4分類と、選ぶ場面の目安
区分何をするか向いている場面例
リスク低減対策を打って発生頻度か影響を小さくする発生頻度が高く、影響が中くらいまで暗号化、多要素認証、修正プログラムの適用、教育
リスク回避原因となる活動そのものをやめる頻度も影響も大きく、事業として引き受けられない不要な個人情報を収集しない、危険なサービスを廃止する
リスク移転損失の負担を他者に移す(リスク共有)発生頻度は低いが、起きたときの影響が甚大サイバー保険への加入、運用の外部委託
リスク保有対応せずそのまま受け入れる(リスク受容)影響が小さい、または対策費用が損失見込みを上回る少額の損失を業務コストとして織り込む

用語

機密性・完全性・可用性
情報セキュリティの三つの基本特性。許可された者だけが読めること、情報が正確で改ざんされていないこと、必要なときに使えること。頭文字を取ってCIAという。
真正性
エンティティが主張どおりの本人・本物であることを確実にする特性。認証やデジタル署名で確保する。
責任追跡性
あるエンティティの動作が、その動作を行ったエンティティまで一意に追跡できる特性。個人別のアカウント付与と操作ログの取得で確保する。
否認防止
ある事象や処置が実際に起きたことを、後から当事者に否定させないよう証明できる特性。タイムスタンプ付きのデジタル署名が代表的な手段。
信頼性
意図した動作と結果が一貫して一致する特性。障害や不具合で予期しない結果を返さないこと。
情報資産
組織にとって価値があり保護すべき対象。データやソフトウェアだけでなく、機器、書類、サービス、要員、組織の評判も含む。
脅威
情報資産に損害を与える可能性のある事象や行為。人的脅威、技術的脅威、物理的脅威に分けられる。
脆弱性
情報資産がもつ弱点。未修正のソフトウェアの欠陥、単純なパスワード、施錠されていない部屋など。脅威に突かれて初めて損失になる。
リスクアセスメント
リスク特定・リスク分析・リスク評価の三段階からなる一連の過程。リスク対応の前に行い、どこから手を付けるかを決める。
リスク特定
どんな脅威がどの脆弱性を突いて、どんな損失を起こしうるかを漏れなく洗い出す段階。ここで見落としたリスクは以降の段階に現れない。
リスク分析
特定したリスクについて、発生頻度と影響の大きさを見積もる段階。金額で表す定量的評価とレベルで表す定性的評価がある。
リスク評価
分析結果をあらかじめ定めたリスク基準と照らし、対応の要否と優先順位を決める段階。
年間予想損失額(ALE)
1回あたりの損失額(SLE)に年間発生回数(ARO)を掛けた金額。対策の年間費用と直接比較できるのが利点。
リスクマトリックス
発生頻度と影響度をそれぞれ数段階のレベルで表し、二次元の表に配置して優先度を見る定性的評価の道具。
リスク低減
対策を実施して発生頻度や影響を小さくするリスク対応。暗号化、多要素認証、修正プログラムの適用など。
リスク回避
リスクの原因となる活動そのものをやめるリスク対応。不要な個人情報を収集しない、危険なサービスを廃止するなど。
リスク移転
損失の負担を他者に移すリスク対応。リスク共有ともいい、サイバー保険への加入や運用の外部委託が該当する。責任まで移せるわけではない点に注意する。
リスク保有
対応せずリスクをそのまま受け入れること。リスク受容ともいう。影響が小さい場合や、対策費用が損失見込みを上回る場合に選ぶ。
残留リスク
対応を実施した後もなお残るリスク。受容水準に収まっていることを責任者が承認して初めてリスク対応が完了する。
情報セキュリティポリシ
基本方針・対策基準・実施手順の三階層で構成される組織の決めごと。基本方針は外部に公開して姿勢を示すことが多い。
ISMS
情報セキュリティマネジメントシステム。方針を定め、リスクに基づいて対策を選び、PDCAで継続的に改善する仕組み。認証規格はJIS Q 27001。

例題

例題:ある業務システムの停止による損失は1回あたり300万円で、年0.1回の頻度で起きると見積もられた。年20万円の保守契約を結ぶと発生頻度が年0.02回まで下がる。この契約は費用対効果の面で妥当か。
答えと考え方 妥当である。対策前のALEは300万円×0.1で30万円、対策後は300万円×0.02で6万円だから、年間で24万円の損失削減になる。対策費用は年20万円なので、差引で年4万円だけ得になる。ここで注意したいのは、判断材料は「減る損失額」と「対策費用」の比較であって、対策後のALEの小ささや削減額の大きさだけを見ても答えは出ないという点である。もし保守契約が年30万円なら、削減額24万円を上回るので見送りが合理的な判断になる。
例題:自社の通販サイトが大規模なDDoS攻撃を受けて長時間停止した場合、売上機会の損失と信用の失墜で数億円規模の被害が想定される。ただし、そのような攻撃が自社に来る頻度は数年に1回程度と見積もられた。リスク対応としてまず検討すべき区分はどれか。
答えと考え方 リスク移転である。発生頻度は低いが、いざ起きたときの影響が自社の体力を超える種類のリスクは、保険や外部サービスの利用で負担を分散するのが定石になる。具体的にはサイバー保険の付保や、DDoS防御を含むCDNサービスの利用が該当する。もちろん低減策(回線容量の確保、レート制限)も併用するが、頻度が低いものに自前で過大な設備投資を行うと費用対効果が合わなくなる。なお、外部委託しても説明責任や監督責任まで移るわけではない点は押さえておきたい。

出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ/JIS Q 27000(情報セキュリティマネジメントシステム-用語)

2. 脅威と攻撃手法を「突かれる弱点」で整理する

攻撃名を丸暗記せず、どの弱点を突かれているのかで分類できるようになります。

攻撃手法は数が多く、名前だけを覚えても実務でも試験でも使えません。有効なのは「その攻撃はどの弱点を突いているのか」で整理することです。弱点が分かれば対策は自動的に決まりますし、初めて見る攻撃名でも説明文から分類できます。ここでは、入口を狙うもの、Webアプリケーションの実装を狙うもの、ネットワークの仕組みを狙うもの、認証情報を狙うもの、人と組織を狙うものの五つに分けて見ていきます。

まず入口です。標的型攻撃は特定の組織に狙いを定め、業務に見せかけたメールや文書で足がかりを作り、長期間かけて内部を移動しながら目的の情報に近づきます。侵入した後に権限を広げていく段階を権限昇格、内部を移動していく段階を水平展開(ラテラルムーブメント)と呼びます。この形の攻撃は入口で完全に止めることが難しいので、侵入されることを前提に、内部の通信を監視し、被害範囲を区切る多層防御へと考え方が移っています。標的型の一種であるやり取り型攻撃は、無害な問合せを何度か交わして信用させてから本命を送り付けるもので、添付ファイルの機械的な遮断だけでは防ぎきれません。水飲み場型攻撃は、標的がよく閲覧するサイトを改ざんして待ち伏せる手口です。

ランサムウェアは、侵入した後にファイルやバックアップを暗号化して業務を止め、復旧と引換えに金銭を要求します。近年はデータを窃取したうえで「支払わなければ公開する」と迫る二重脅迫型が主流で、暗号化への備えだけでは不十分になりました。対策の柱は、オフラインまたは書換え不可の媒体にバックアップを取り、復旧手順を実際に試しておくことです。バックアップがネットワーク上に置かれたままだと、同時に暗号化されて役に立ちません。3つの複製を2種類の媒体に、うち1つは別の場所に置くという3-2-1の考え方が知られています。サプライチェーン攻撃は、対策の手薄な取引先や委託先、あるいはソフトウェアの更新配布経路を踏み台にして本来の標的へ入り込むもので、自社だけを固めても防げないところが厄介です。委託先の選定基準と監査、利用しているソフトウェア部品の一覧(SBOM)の把握が対策になります。

Webアプリケーションの実装を狙う攻撃は、いずれも「利用者から受け取った値を、そのまま別の文法の世界に流し込んでいる」ことが弱点です。SQLインジェクションは、入力値を文字列連結でSQL文に埋め込んでいる箇所を突き、データベースを不正に検索・改ざんします。対策はプレースホルダ(バインド機構)を使い、入力値を必ず値として扱わせることです。クロスサイトスクリプティング(XSS)は、入力をそのままHTMLに出力しているサイトを経由して、閲覧者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを動かします。対策は出力する直前のエスケープ処理で、入力時の検査だけに頼るのは不十分です。OSコマンドインジェクションは、入力がシェルに渡る箇所を突きます。どれも「入口で悪い文字を弾く」より「出口で正しく扱う」ほうが確実です。

同じWeb系でも、クロスサイトリクエストフォージェリ(CSRF)は毛色が違います。これは値の解釈ではなく、「この更新要求は本当に利用者が意図して出したものか」を確かめていないことが弱点です。ログイン済みの利用者のブラウザに、本人の知らないうちに送金や設定変更の要求を送らせます。対策は、画面ごとに推測できないトークンを埋め込み、要求時に照合することです。ディレクトリトラバーサルは、公開すべきでないファイルの名前を組み立てられてしまうことが弱点で、ファイル名を利用者の入力から直接作らず、識別子で対応付ける方法が確実です。セッションハイジャックは、セッションIDが推測できる、または盗聴できることが弱点で、IDを十分に長い乱数にし、ログイン時に再発行し、通信をTLSで保護します。

ネットワークの仕組みを狙う攻撃も整理しておきます。DoS攻撃は大量の要求で処理能力や回線容量を使い切らせるもので、多数の踏み台から一斉に行うのがDDoS攻撃です。DNSリフレクション攻撃は、送信元IPアドレスを標的に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を標的に集中させる増幅型で、送信元の詐称ができることと応答が問合せより大きいことの二つを同時に突いています。DNSキャッシュポイズニングは、キャッシュに偽の対応関係を覚え込ませて利用者を偽サイトへ誘導するもので、応答に署名を付けるDNSSECが対策です。中間者攻撃は経路に割り込んで双方になりすますもので、サーバ証明書の検証を確実に行うことが防御になります。

認証情報を狙う攻撃では、ブルートフォース攻撃が総当たり、辞書攻撃がよくある語の試行、パスワードリスト攻撃が他サイトから流出したIDとパスワードの組の使い回しを突くものです。パスワードリスト攻撃はパスワードをいくら複雑にしても使い回していれば成立するので、対策の中心は多要素認証になります。リバースブルートフォース攻撃は、パスワードを固定して利用者IDのほうを変えていく手口で、アカウント単位の試行回数制限をすり抜けます。レインボーテーブル攻撃は、ハッシュ値と元の文字列の対応表を事前計算しておく手口で、利用者ごとに異なるソルトを付けてハッシュ化すれば表が使えなくなります。ストレッチングでハッシュ計算を何度も繰り返し、1回の照合を意図的に遅くするのも有効です。

最後に人と組織です。ソーシャルエンジニアリングは技術ではなく人の心理や不注意につけ込む手口の総称で、なりすましの電話、肩越しののぞき見、ごみ箱あさりなどがあります。ビジネスメール詐欺は取引先や役員になりすまして送金先を書き換えさせるもので、金額が大きくなりがちです。内部不正は、機会・動機・正当化の三つがそろったときに起きるとされ(不正のトライアングル)、組織が直接手を打てるのは主として機会です。最小権限、職務分離、操作ログの監視、記憶媒体の持出し制限が効きます。ゼロデイ攻撃は修正プログラムが提供される前の脆弱性を突くもので、パッチ適用だけでは防げないため、緩和策や検知の仕組みで時間を稼ぐという発想が要ります。

主な攻撃と、突かれている弱点・根本対策
攻撃突かれている弱点根本対策
SQLインジェクション入力値を文字列連結でSQL文に組み込んでいるプレースホルダで値として渡す
クロスサイトスクリプティング入力値をそのままHTMLに出力している出力の直前にエスケープする
クロスサイトリクエストフォージェリ要求が本人の意図か確かめていない推測できないトークンを埋め込み照合する
ディレクトリトラバーサルファイル名を利用者の入力から組み立てている識別子で対応付け、パスを直接受け取らない
セッションハイジャックセッションIDを推測できる、盗聴できる長い乱数、ログイン時の再発行、TLS
DDoS処理能力と回線容量に上限があるレート制限、負荷分散、防御サービスの利用
DNSリフレクション送信元IPを詐称でき、応答が問合せより大きいオープンリゾルバの廃止、送信元アドレス検証
パスワードリスト利用者がパスワードを使い回している多要素認証、流出パスワードの照合
レインボーテーブル同じパスワードが同じハッシュ値になる利用者ごとのソルトとストレッチング
ランサムウェア唯一の複製がオンラインに置かれているオフライン保管のバックアップと復旧訓練
サプライチェーン委託先や配布経路の対策が自社より弱い委託先の選定基準と監査、SBOMの管理
内部不正権限が広すぎ、監視もされていない最小権限、職務分離、ログ監視、持出し制限

用語

標的型攻撃
特定の組織に狙いを定め、業務に見せかけた文書などで侵入し、長期間かけて内部を移動しながら目的の情報に近づく攻撃。
水平展開
侵入した端末を足がかりに、内部の別の端末やサーバへ移動していく段階。ラテラルムーブメントともいう。内部通信の監視と区画化が対策。
権限昇格
侵入後に、より高い権限のアカウントを奪って操作範囲を広げること。管理者権限の常用を避け、権限を必要なときだけ与えることで抑えられる。
ランサムウェア
ファイルを暗号化して業務を止め、復旧と引換えに金銭を要求するマルウェア。データを窃取して公開すると脅す二重脅迫型が主流。
3-2-1ルール
3つの複製を2種類の媒体に保存し、うち1つは別の場所に置くというバックアップの目安。オンライン上の複製だけでは同時に暗号化される。
サプライチェーン攻撃
対策の手薄な取引先や委託先、ソフトウェアの更新配布経路を踏み台にして本来の標的へ侵入する攻撃。委託先の監査とSBOMの把握が対策。
SBOM
ソフトウェア部品表。製品に含まれるライブラリとその版を一覧にしたもの。脆弱性が公表されたとき、影響範囲を短時間で特定できる。
SQLインジェクション
入力値を文字列連結でSQL文に埋め込んでいる箇所を突き、データベースを不正に操作する攻撃。プレースホルダの利用が根本対策。
クロスサイトスクリプティング
入力をそのままHTMLに出力しているサイトを経由し、閲覧者のブラウザ上で攻撃者のスクリプトを実行させる攻撃。出力時のエスケープが対策。
クロスサイトリクエストフォージェリ
ログイン済み利用者のブラウザに、本人が意図しない更新要求を送らせる攻撃。要求が本人の意図かを確かめていないことが弱点で、トークン照合が対策。
ディレクトリトラバーサル
相対パスを含むファイル名を与えて、公開を意図していないファイルを読み書きする攻撃。ファイル名を入力から直接作らないことが対策。
セッションハイジャック
盗聴や推測で得たセッションIDを使って他人になりすます攻撃。IDを長い乱数にし、ログイン時に再発行し、通信をTLSで保護する。
DDoS攻撃
多数の踏み台から一斉に大量の要求を送り、サービスを提供できない状態にする攻撃。可用性を直接損なう。
DNSリフレクション攻撃
送信元IPアドレスを標的に詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、問合せより大きな応答を標的へ集中させる増幅型のDDoS攻撃。
DNSキャッシュポイズニング
DNSサーバのキャッシュに偽の対応関係を覚え込ませ、利用者を偽サイトへ誘導する攻撃。DNSSECによる応答の署名検証が対策。
パスワードリスト攻撃
他サイトから流出した利用者IDとパスワードの組をそのまま別サイトで試す攻撃。パスワードの使い回しがあると成立し、多要素認証が有効。
リバースブルートフォース攻撃
パスワードのほうを固定し、利用者IDを次々に変えて試す攻撃。アカウント単位の試行回数制限をすり抜けるため、送信元単位の制限も要る。
レインボーテーブル攻撃
ハッシュ値と元の文字列の対応表を事前計算しておき、盗んだハッシュ値から元のパスワードを高速に割り出す攻撃。ソルトの付与で無効化できる。
ソルトとストレッチング
ソルトは利用者ごとに異なる文字列をパスワードに連結してからハッシュ化する手法。ストレッチングはハッシュ計算を多数回繰り返して照合を遅くする手法。
ビジネスメール詐欺
取引先や自社の役員になりすまし、振込先の変更などを指示して送金させる詐欺。技術的な侵入を伴わないことも多く、承認手続の見直しが対策。
不正のトライアングル
内部不正は機会・動機・正当化の三つがそろったときに起きるという考え方。組織が直接減らせるのは主に機会。
ゼロデイ攻撃
修正プログラムが提供される前の脆弱性を突く攻撃。パッチ適用では防げないため、緩和策と検知で被害を抑える発想が要る。

例題

例題:利用者からの入力を含む検索機能で、開発者が「危険な記号を入力時に取り除く」対策を入れた。それでもSQLインジェクションの根本対策とは言えないのはなぜか。
答えと考え方 危険とされる記号の一覧は網羅できず、文字コードの解釈の違いや多段の変換で検査をすり抜ける余地が残るからである。さらに、入力時の検査は画面が増えるたびに漏れが生じる。根本対策は、SQL文の骨組みをあらかじめ固定し、利用者の値はプレースホルダを通じて必ず値として渡すことである。こうすれば、値の中にSQLの文法らしき文字列が含まれていても、それは単なる文字列として比較されるだけで、文の構造が変わることはない。入力検査は業務上の妥当性を確かめる目的で併用するとよい。
例題:毎日クラウドストレージへ自動でバックアップを取り、そのストレージは業務端末から常時書き込める状態にしていた組織がランサムウェアの被害に遭い、バックアップからも復旧できなかった。何が問題だったか。
答えと考え方 バックアップが業務端末から書き換えられる状態でオンラインに置かれていたため、原本と一緒に暗号化されてしまったことが問題である。バックアップは、取得後に書き換えられないこと(オフライン保管、または書換え不可の設定)が要件になる。あわせて、世代を複数保持しておくこと、そして復旧手順を実際に試して所要時間を測っておくことが要る。取得できていることと、決められた時間内に戻せることは別の話である。

出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

3. 暗号技術とデジタル署名・PKI

共通鍵と公開鍵をなぜ組み合わせて使うのか、証明書が何を保証しているのかが分かります。

暗号は「鍵を知っている者だけが元に戻せる」変換で、機密性を守る中心的な技術です。方式は大きく二つあります。共通鍵暗号(対称鍵暗号)は暗号化と復号に同じ鍵を使い、代表例がAESです。処理が速く大量のデータに向きますが、通信相手ごとに別の鍵を安全に配る必要があります。公開鍵暗号(非対称鍵暗号)は、対になる二つの鍵のうち片方で暗号化したものをもう片方でしか戻せない仕組みで、代表例がRSAと楕円曲線暗号です。公開鍵は誰に配ってもよいので鍵の配送問題が解けますが、共通鍵暗号に比べて処理が桁違いに遅くなります。

鍵の管理コストは人数が増えるとはっきり差が出ます。n人が互いに共通鍵暗号で通信するには、組合せの数だけ鍵が要るのでn(n-1)/2本になります。50人なら1225本です。一方、公開鍵暗号では各自が公開鍵と秘密鍵を1対持つだけでよく、鍵の総数は2n本、50人なら100本で済みます。ここで多いのが、公開鍵暗号でもn(n-1)/2本と数えてしまう誤りと、共通鍵でn(n-1)本(相手ごとに1本ずつ両方向)と数えてしまう誤りです。共通鍵は2人で1本を共有するので、掛けた後に2で割ることを忘れないようにします。

実際のシステムはハイブリッド暗号方式を使います。まず公開鍵暗号でその通信だけに使う共通鍵(セション鍵)を安全に相手へ渡し、以降の本文は速い共通鍵暗号でやり取りする、という組合せです。公開鍵暗号の「鍵を配れる」利点と、共通鍵暗号の「速い」利点をどちらも取る方法で、TLSもこの構成です。さらに、セション鍵を毎回使い捨てにし、後から秘密鍵が漏れても過去の通信を復号できないようにする性質を前方秘匿性(PFS)といい、鍵交換にDH法やECDHEを使うことで実現します。

ハッシュ関数は、任意長のデータから固定長の値を作る一方向の関数です。同じ入力からは必ず同じ値が出て、値から元のデータは復元できず、わずかな違いでも値は大きく変わります。改ざん検出やパスワードの保管に使われ、SHA-256などが用いられます。安全性の目安は二つあり、ある値と同じハッシュ値になる別のデータを見つける原像探索は2ⁿ回程度、単に同じハッシュ値になる二つのデータの組を見つける衝突探索は誕生日のパラドックスにより2ⁿᐟ²回程度で済みます。だから256ビットのハッシュでも、衝突に対する強度は128ビット相当と見積もります。

デジタル署名は、公開鍵暗号を「逆向き」に使う技術です。送信者は文書のハッシュ値を自分の秘密鍵で変換したものを署名として添え、受信者は送信者の公開鍵でそれを戻し、自分で計算した文書のハッシュ値と一致するか確かめます。一致すれば、署名は送信者の秘密鍵を持つ者にしか作れないので本人が作ったこと(真正性と否認防止)と、途中で書き換えられていないこと(完全性)が同時に確かめられます。注意すべきは、デジタル署名は文書を暗号化しないので機密性は守らないこと、そしてハッシュ値に署名するのは処理を速くするためだという点です。

ここで残る問題が「その公開鍵は本当に相手のものか」です。これを第三者が保証する仕組みがPKI(公開鍵基盤)で、認証局(CA)が申請者の実在性を確認したうえで、公開鍵と持ち主の情報をまとめてCAの秘密鍵で署名したものがデジタル証明書です。利用者はCAの公開鍵で証明書の署名を検証し、そのCAの証明書もさらに上位のCAが署名し、と信頼の連鎖をたどって、あらかじめ端末に組み込まれたルート証明書まで到達できれば信頼します。失効した証明書の扱いも重要で、失効した証明書の一覧を配布するCRLと、1件ずつ問い合わせるOCSPがあります。CRLは配布間隔のぶんだけ情報が古くなり、OCSPは即時性が高い代わりに問合せ先の負荷と可用性が課題になります。

TLSの手順も押さえておきます。クライアントが使える暗号方式の一覧と乱数を送り、サーバが方式を一つ選んで自分の証明書と乱数を返します。クライアントは証明書の署名、有効期限、名前の一致、失効の有無を検証し、問題なければ鍵交換を行って両者が同じ共通鍵(セション鍵)を得ます。その後、これまでのやり取りが改ざんされていないことを確認してから、暗号化した通信に移ります。TLS 1.3では手順が簡素化され、往復回数が減り、安全性の低い方式が整理されました。証明書には、ドメインの管理権だけを確認するDV、組織の実在も確認するOV、より厳格な審査を行うEVの区分があり、どれでも暗号化の強度は同じで、違うのは「何を確認済みか」だけです。

暗号の運用で忘れてはいけないのが危殆化です。計算機の性能向上や解読法の進歩によって、かつて安全だった方式や鍵長がやがて安全でなくなります。だから、方式を差し替えられる設計にしておくこと(暗号アジリティ)と、CRYPTRECの電子政府推奨暗号リストのような公的な指針を定期的に確認することが求められます。将来的には量子計算機による解読に備えた耐量子計算機暗号への移行も課題になります。

共通鍵暗号・公開鍵暗号・ハッシュ関数の使い分け
観点共通鍵暗号公開鍵暗号ハッシュ関数
鍵1つの鍵を2者で共有公開鍵と秘密鍵の対鍵を使わない
n人での鍵の数n(n-1)/2 本2n 本該当なし
処理速度速い遅いとても速い
主な用途本文の暗号化鍵の受渡し、デジタル署名改ざん検出、パスワード保管
守れる特性機密性機密性、真正性、否認防止完全性
代表例AESRSA、楕円曲線暗号SHA-256

用語

共通鍵暗号
暗号化と復号に同じ鍵を使う方式。対称鍵暗号ともいう。処理が速く大量データに向くが、相手ごとの鍵配送が課題。代表例はAES。
公開鍵暗号
対になる2つの鍵の片方で暗号化したものをもう片方でしか復号できない方式。鍵配送問題を解けるが処理は遅い。代表例はRSAと楕円曲線暗号。
鍵の本数
n人が互いに共通鍵暗号で通信するには n(n-1)/2 本の鍵が要る。公開鍵暗号なら各自1対で足り、鍵の総数は 2n 本になる。
ハイブリッド暗号方式
公開鍵暗号でセション鍵を安全に渡し、本文は共通鍵暗号でやり取りする組合せ。鍵配送の容易さと処理の速さを両立する。TLSもこの構成。
セション鍵
その通信の間だけ使う使い捨ての共通鍵。毎回変えることで、1つの鍵が漏れたときの影響を1回分の通信に限定できる。
前方秘匿性(PFS)
後からサーバの秘密鍵が漏れても、過去に記録された通信を復号できない性質。ECDHEなどの鍵交換方式で実現する。
ハッシュ関数
任意長のデータから固定長の値を作る一方向の関数。同じ入力からは同じ値が出るが、値から元データは復元できない。SHA-256など。
衝突と誕生日攻撃
同じハッシュ値になる異なるデータの組を衝突という。誕生日のパラドックスにより、nビットのハッシュでも衝突探索は約 2ⁿᐟ² 回で済む。
メッセージ認証符号(MAC)
共通鍵とメッセージからつくる検証用の値。改ざん検出はできるが、鍵を2者が共有しているため第三者に対する否認防止はできない。
デジタル署名
文書のハッシュ値を送信者の秘密鍵で変換した値。受信者は送信者の公開鍵で検証する。完全性・真正性・否認防止を確保するが、機密性は守らない。
認証局(CA)
申請者の実在性を確認し、公開鍵と持ち主の情報に自らの秘密鍵で署名して証明書を発行する第三者機関。
デジタル証明書
公開鍵とその持ち主の情報に認証局が署名した電子的な身分証。X.509の形式が広く使われる。
信頼の連鎖
サーバ証明書を中間CAが署名し、中間CAの証明書をルートCAが署名する連なり。端末に組み込まれたルート証明書まで到達できれば信頼する。
CRLとOCSP
証明書の失効を確認する方法。CRLは失効一覧を配布する方式で情報が配布間隔ぶん古くなる。OCSPは1件ずつ問い合わせる方式で即時性が高い。
TLS
通信路を暗号化し、サーバの正当性を証明書で確認する仕組み。ハイブリッド暗号方式で、TLS 1.3では手順が簡素化され往復回数が減った。
DV・OV・EV
サーバ証明書の審査区分。順にドメインの管理権のみ、組織の実在まで、より厳格な審査まで確認する。暗号化の強度自体に差はない。
暗号の危殆化
計算機性能の向上や解読法の進歩で、かつて安全だった方式や鍵長が安全でなくなること。方式を差し替えられる設計にしておくことが要る。
CRYPTREC
電子政府で利用する暗号技術を評価し、推奨暗号リストを公表している日本の取組み。採用する方式を選ぶときの公的な手掛かりになる。

例題

例題:8人の部署で、全員が互いに共通鍵暗号だけで秘密の通信をしたい。必要な鍵は何本か。公開鍵暗号に切り替えると鍵の総数はどうなるか。
答えと考え方 共通鍵暗号では2人の組合せごとに1本の鍵が要るので、8×7/2で28本である。公開鍵暗号なら各自が公開鍵と秘密鍵を1対ずつ持てばよいので、鍵の総数は2×8で16本になる。8人ではまだ差が小さいが、人数が増えると共通鍵は人数の2乗に比例して増える一方、公開鍵は人数に比例するだけなので差が急速に開く。ここでよくある誤りが、掛けた後に2で割り忘れて56本と答えることと、公開鍵でも組合せの数を数えてしまうことである。
例題:デジタル署名の付いた契約書のPDFを受け取った。この署名の検証に成功したことで確かめられるのは何で、確かめられないのは何か。
答えと考え方 確かめられるのは、その文書が署名時点から書き換えられていないこと(完全性)と、署名鍵の持ち主が署名したこと(真正性)、そして後から本人が「署名していない」と言えないこと(否認防止)である。確かめられないのは中身の秘密で、デジタル署名は文書を暗号化しないため、経路上で第三者に読まれることは防げない。機密性も要るなら、署名に加えて暗号化を併用する。また、署名した時刻を第三者に証明したいならタイムスタンプを別途付与する必要がある。

出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

4. 認証とアクセス制御

「誰か」を確かめる認証と、「何をしてよいか」を決める認可の違いから整理します。

認証(authentication)は相手が名乗ったとおりの本人かを確かめること、認可(authorization)はその主体に何をしてよいかを与えることです。この二つは別の工程で、認証に成功したからといって何でもできるわけではありません。試験でも実務でも、この区別を曖昧にしたまま議論すると話が噛み合わなくなります。

認証の手段は三つの要素に分けられます。知識による認証は本人だけが知っていること(パスワード、暗証番号、秘密の質問)、所持による認証は本人だけが持っている物(ICカード、スマートフォン、ハードウェアトークン)、生体による認証は本人固有の身体的・行動的特徴(指紋、虹彩、静脈、声紋、署名の筆跡)です。これらのうち異なる要素を二つ以上組み合わせるのが多要素認証です。ここで大事なのは、パスワードと秘密の質問のように同じ知識の要素を二つ重ねても、それは多段階認証ではあっても多要素認証にはならないという点です。要素が違うからこそ、片方が破られてももう片方が残ります。

生体認証には、本人を誤って拒否する割合(本人拒否率、FRR)と、他人を誤って受け入れる割合(他人受入率、FAR)という二つの誤り率があります。判定のしきい値を厳しくするとFARは下がりますがFRRは上がり、緩めるとその逆になります。両者が等しくなる点を等誤り率(EER)といい、装置の性能比較に使われます。どちらを優先するかは用途で決まり、機密区画の入退室ならFARを抑える方向、大勢が毎朝通る一般の入口ならFRRを抑える方向に寄せる、という判断になります。

パスワードだけに頼る認証の弱さから、フィッシングに強い方式が広がっています。FIDOは、端末の中に秘密鍵を保管し、サーバには公開鍵だけを登録して、サーバから送られた乱数に署名して返すことで認証する方式です。パスワードそのものがネットワークを流れず、サーバ側にも保管されないので、流出や中間者による横取りが原理的に起こりにくくなります。さらに、署名の対象に接続先のドメイン名が含まれるため、偽サイトでは正しい署名が作れず、フィッシングが成立しません。この方式を鍵の同期や端末間の共有まで含めて利用者向けに整理したものがパスキーです。ワンタイムパスワードも有効な手段ですが、偽サイトに入力させて即座に転送されると突破されうるので、フィッシング耐性という点ではFIDOに劣ります。

利用するシステムが増えるとログインの回数も増えます。一度の認証で複数のシステムを使えるようにする仕組みがシングルサインオン(SSO)です。実現方式には、認証情報をクッキーに持たせる方式、利用者に代わって各システムへログインするリバースプロキシ方式、認証結果を標準の書式でやり取りするSAML方式などがあります。SSOは利便性とパスワード管理の負担軽減に大きく効きますが、認証基盤が単一障害点になり、そこが破られると全システムへ波及するという裏返しがあります。だから認証基盤自体の多要素化と冗長化が前提になります。

SSOと混同されやすいのがOAuth 2.0とOpenID Connectです。OAuth 2.0は認可の枠組みで、「利用者のパスワードを渡さずに、あるサービスに他のサービスの特定の権限だけを一時的に貸す」ためのものです。写真共有サービスに印刷サービスから読取りだけを許す、といった使い方がこれにあたります。一方、OpenID Connect(OIDC)はOAuth 2.0の上に認証を載せた仕様で、「誰がログインしたか」を表すIDトークンを発行します。つまり、OAuthだけでは「この操作を許された」ことしか分からず、本人確認の用途にそのまま流用してはいけません。この違いは応用情報で頻繁に問われます。

認可の側、つまりアクセス制御にも型があります。任意アクセス制御(DAC)は資源の所有者が権限を決める方式で、柔軟ですが管理が属人的になります。強制アクセス制御(MAC)は組織が定めた規則で一律に制御する方式で、所有者でも規則を覆せません。役割ベースアクセス制御(RBAC)は、権限を人ではなく役割に付け、人には役割を割り当てる方式です。人事異動のたびに個人ごとの権限を触らずに済み、棚卸しもしやすいので、企業システムの標準的な選択になっています。さらに、利用者の属性や時刻・場所などの条件で判定する属性ベースアクセス制御(ABAC)もあります。

権限設計を貫く原則が最小権限です。業務に必要な最小限の権限だけを、必要な期間だけ与えます。管理者権限を常用しない、権限は申請と承認を経て一時的に付与する、期限が来たら自動的に外れるようにする、といった運用がこれを支えます。あわせて、申請する人と承認する人、実行する人と検証する人を分ける職務分離を入れると、1人の判断だけでは不正が完結しなくなります。そして、与えた権限は放っておくと積み上がるので、定期的なアクセス権の棚卸しで、異動や退職に伴う不要な権限を確実に落とすことが要ります。

似た用語の切り分け
用語答えているのは誤解しやすい点
認証あなたは誰か認証に成功しても操作範囲が決まるわけではない
認可あなたは何をしてよいか認可だけでは本人確認にならない
SAML認証結果を組織間でどう伝えるか認可の細かい制御は主目的ではない
OAuth 2.0権限をどう安全に貸すか本人確認の用途に流用してはいけない
OpenID Connect誰がログインしたかOAuthの置換えではなく、その上に認証を足した仕様
FIDO秘密を送らずにどう本人を示すかサーバ側に秘密が保管されないので流出しても悪用されにくい

用語

認証と認可
認証は相手が名乗ったとおりの本人かを確かめること。認可はその主体に何をしてよいかを与えること。別の工程であり、混同してはならない。
認証の3要素
知識(本人だけが知っていること)、所持(本人だけが持っている物)、生体(本人固有の特徴)。異なる要素の組合せが多要素認証。
多要素認証と多段階認証
多要素認証は異なる要素を組み合わせるもの。パスワードと秘密の質問のように同じ要素を重ねるのは多段階認証にすぎず、強度は大きくは上がらない。
本人拒否率(FRR)
生体認証で、本人を誤って拒否してしまう割合。しきい値を厳しくすると上がる。
他人受入率(FAR)
生体認証で、他人を誤って本人と認めてしまう割合。しきい値を緩めると上がる。FRRとはトレードオフの関係にある。
等誤り率(EER)
FRRとFARが等しくなる点の誤り率。装置どうしの性能比較に使われる指標。
チャレンジレスポンス方式
サーバが送った乱数(チャレンジ)に対し、利用者側が秘密情報を使って応答を計算して返す方式。パスワードそのものが流れないので盗聴と再送に強い。
ワンタイムパスワード
1回限り有効なパスワード。時刻同期方式やチャレンジレスポンス方式がある。再送攻撃には強いが、偽サイトに入力させて即転送される攻撃には弱い。
FIDO
端末内に秘密鍵を保管し、サーバには公開鍵だけを登録して署名で認証する方式。パスワードが流れず、署名対象に接続先のドメイン名が含まれるためフィッシングに強い。
パスキー
FIDOの仕組みを利用者向けに整理した呼び名。端末の生体認証や画面ロックで秘密鍵を使えるようにし、複数端末での利用にも対応する。
シングルサインオン(SSO)
一度の認証で複数のシステムを利用できる仕組み。利便性は高いが、認証基盤が単一障害点になるため多要素化と冗長化が前提になる。
SAML
認証結果や属性を標準の書式でやり取りする仕様。企業のSSOで、社内の認証基盤とクラウドサービスをつなぐ用途に広く使われる。
OAuth 2.0
認可の枠組み。利用者のパスワードを渡さずに、あるサービスへ他のサービスの限定的な権限を一時的に委譲する。それ自体は本人確認の仕組みではない。
OpenID Connect
OAuth 2.0の上に認証を載せた仕様。誰がログインしたかを示すIDトークンを発行する。認証が必要ならOAuthではなくこちらを使う。
任意アクセス制御(DAC)
資源の所有者が誰に何を許すかを決める方式。柔軟だが管理が属人的になり、権限の全体像がつかみにくい。
強制アクセス制御(MAC)
組織が定めた規則によって一律に制御する方式。所有者であっても規則を覆せない。高い機密性が要る環境で使う。
役割ベースアクセス制御(RBAC)
権限を役割に付与し、人には役割を割り当てる方式。異動時の付替えと棚卸しが容易で、企業システムの標準的な選択。
属性ベースアクセス制御(ABAC)
利用者や資源の属性、時刻、場所、端末の状態といった条件を組み合わせて許否を判定する方式。細かい制御ができる反面、規則が複雑になりやすい。
最小権限の原則
業務に必要な最小限の権限を、必要な期間だけ与えるという原則。管理者権限の常用を避け、期限付き付与と定期的な棚卸しで支える。
職務分離
申請と承認、実行と検証を別の人に割り当て、1人の判断だけでは不正が完結しないようにする統制。

例題

例題:ある社内システムが、パスワード入力の後に「母親の旧姓」を尋ねる方式を採用し、これを多要素認証だと説明している。この説明は適切か。
答えと考え方 適切ではない。パスワードも秘密の質問も、どちらも「本人だけが知っていること」という知識の要素であり、要素は1種類しかない。段階が2つあるという意味で多段階認証ではあるが、多要素認証ではない。フィッシングでパスワードを入力させる画面を作れば、続けて秘密の質問も入力させられるので、攻撃者にとっての難易度はほとんど変わらない。所持(スマートフォンのアプリやセキュリティキー)か生体を組み合わせて初めて多要素になる。
例題:外部の分析サービスに、自社の会計クラウド上の売上データを読み取らせたい。分析サービスに会計クラウドのIDとパスワードを教えるのは避けたい。どの仕組みを使うのが適切か。
答えと考え方 OAuth 2.0による権限の委譲が適切である。利用者は会計クラウドの画面で分析サービスに与える権限(この場合は売上データの読取りのみ)を確認して同意し、分析サービスにはアクセストークンだけが渡る。パスワードは分析サービスに渡らず、権限の範囲と期限も限定でき、必要なくなれば利用者側から取り消せる。なお、分析サービス側が「誰がログインしたか」まで知る必要があるなら、OAuthの上に認証を載せたOpenID Connectを使う。

出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

5. セキュリティ実装技術と組織的対応・法令

機器と設計で守る技術面と、体制・手順・法律で守る組織面を、ひとつながりで押さえます。

ネットワークの防御は、境界を守る道具の役割分担から整理します。ファイアウォールは主にIPアドレスとポート番号を見て通信を通すか遮るかを決めます。パケットフィルタリング型は1つの通信単位ごとに判断し、ステートフルインスペクション型は接続の状態を覚えていて「こちらから出した通信への応答か」を判断できます。ただし、通過を許したポートの中身までは見ません。IDSは通信を監視して不審な挙動を検知し管理者に知らせる装置、IPSはさらにその通信を遮断まで行う装置です。WAFはHTTPの中身を解釈し、Webアプリケーションを狙う攻撃に特化して防ぎます。つまり、80番や443番を通す設計にしている以上、SQLインジェクションのような攻撃はファイアウォールでは止まらず、WAFの領分になります。この役割の違いが応用情報での定番の問いです。

配置の考え方も押さえます。外部に公開するサーバを内部ネットワークと外部の間の別区画に置くのがDMZ(非武装地帯)で、公開サーバが乗っ取られても内部へ直接届かないようにする設計です。さらに内部を業務や重要度で細かく区切るのがネットワークセグメンテーションで、侵入後の水平展開を遅らせます。近年は、社内は安全という前提そのものを捨てるゼロトラストの考え方が広がりました。すべてのアクセスを、利用者・端末・文脈の観点から毎回検証し、必要最小限の権限だけを与え、常に記録して監視する、という構えです。境界防御の代わりというより、境界が曖昧になったクラウドとリモートワークの時代に合わせた重ね方だと理解しておくとよいでしょう。

端末と監視の技術も広がっています。従来のアンチウイルスがファイルの特徴で既知のマルウェアを弾くのに対し、EDRは端末上のふるまいを記録し、侵入後の不審な動きを検知して調査と封じ込めを支援します。SIEMは各種機器のログを1か所に集めて相関分析し、単体では見えない攻撃の兆候を浮かび上がらせます。侵入を完全には防げないという前提に立つと、検知と対応にかける比重が上がる、というのがこの分野の流れです。

アプリケーション側の作り込みがセキュアプログラミングです。原則は三つに集約できます。第一に、外から来た値は必ず検証すること。長さ、型、範囲、書式を許可する形で確かめます。第二に、値を別の文法の世界へ渡すときは、その世界の作法で正しく扱うこと。SQLならプレースホルダ、HTMLなら出力時のエスケープ、シェルならシェルを介さないAPIです。第三に、失敗したときに安全側へ倒すこと。エラー画面に内部情報を出さない、既定値を「拒否」にする、例外時に権限が開いたままにしない、といった設計です。あわせて、秘密情報をソースコードに書き込まない、乱数は暗号用途に適したものを使う、といった基本も守ります。

脆弱性の管理には共通の物差しがあります。CVEは個別の脆弱性に付ける識別番号で、同じ問題を組織をまたいで指せるようにするものです。CWEは脆弱性の種類の分類で、「入力検証の不備」「境界外書込み」のような型を表します。CVSSは深刻度を数値で表す枠組みで、攻撃の難しさや影響の大きさから0.0から10.0までの値を算出します。値は基本評価基準(脆弱性そのものの性質)、現状評価基準(攻撃コードの出回り具合や対策の状況)、環境評価基準(自組織での重要度)に分かれ、対応の優先順位を決めるときは基本値だけでなく自組織の文脈を加味します。基本値の目安は、9.0以上が緊急、7.0以上9.0未満が重要、4.0以上7.0未満が警告、0.1以上4.0未満が注意です。数値が高いから必ず先に直す、ではなく、その資産がインターネットから触れるのか、既に攻撃が観測されているのか、を合わせて判断するのが実務です。

組織としての体制も問われます。ISMSは、方針を定め、リスクに基づいて管理策を選び、運用し、点検して改善する仕組み全体で、認証規格がJIS Q 27001、管理策の実施の手引がJIS Q 27002です。インシデントに備える専門チームがCSIRTで、検知の受付、影響範囲の判断、封じ込め、復旧、外部との連絡、再発防止までを担います。日常的にログを監視して検知に専念する組織はSOCと呼ばれ、CSIRTとは役割が異なります。インシデント対応の流れは、準備、検知と分析、封じ込め・根絶・復旧、事後活動という順序で整理されます。特に大事なのは準備の段階で、連絡体制と判断基準を平時に決めておかないと、いざというときに時間を失います。

事業継続の観点も欠かせません。BCPは、災害や大規模障害が起きても重要業務を継続または早期復旧するための計画で、目標復旧時間(RTO)と目標復旧時点(RPO)を業務ごとに定めます。RTOは「いつまでに復旧するか」、RPOは「どの時点のデータまで戻せればよいか」です。RPOを短くするほどバックアップの間隔を詰める必要があり費用が上がるので、業務の性質に応じて水準を決めます。ランサムウェアの被害も事業継続の課題として扱われるようになり、復旧手順を実際に試す訓練が重視されています。

最後に法令です。不正アクセス行為の禁止等に関する法律は、第3条で不正アクセス行為そのものを禁じ、第4条で不正アクセスに使う目的での他人の識別符号の取得を、第5条で識別符号を第三者に提供する助長行為を、第6条で不正に取得した識別符号の保管を、第7条でアクセス管理者になりすまして識別符号の入力を求める行為(いわゆるフィッシングの一形態)を禁じています。同法第8条は、アクセス管理者に対して識別符号の適正な管理とアクセス制御機能の有効性の検証を努力義務として課しています。個人情報の保護に関する法律では、第17条で利用目的をできる限り特定すること、第18条で本人の同意なく利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱わないこと、第20条で偽りその他不正の手段による取得の禁止、第23条で安全管理措置、第24条で従業者の監督、第25条で委託先の監督、第26条で漏えい等が生じたときの個人情報保護委員会への報告と本人への通知、第27条で第三者提供の制限が定められています。サイバーセキュリティ基本法は第2条でサイバーセキュリティを定義し、第12条で政府にサイバーセキュリティ戦略の策定を義務付けています。マルウェアの作成や提供そのものは刑法第168条の2(不正指令電磁的記録作成等)で処罰されます。

防御装置の守備範囲
装置主に見るもの止められる例止められない例
パケットフィルタリング型ファイアウォールIPアドレス、ポート番号許可していないポートへの接続許可したポートを通る攻撃の中身
ステートフルインスペクション型ファイアウォール接続の状態と対応関係内部から出していない通信への偽の応答正規のHTTP要求に見せかけた攻撃
IDS通信のパターンとふるまい検知して警報を出す通信そのものの遮断は行わない
IPS通信のパターンとふるまい不審な通信の遮断暗号化されて中身が見えない通信
WAFHTTPの要求と応答の中身SQLインジェクション、XSSの試みネットワーク層の帯域を埋める攻撃
/* 危ない書き方: 入力値を文字列連結でSQLに埋め込んでいる */sql ← "SELECT id, name FROM users WHERE login_id = '" + in + "'" /* 安全な書き方: 骨組みを固定し、値はプレースホルダ経由で渡す */SELECT id, name FROM users WHERE login_id = ? AND status = 1/* in に SQL の文法らしき文字列が入っていても、単なる文字列として比較されるだけで *//* 文の構造は変わらない。実際に sqlite3 で試すと該当行なしになる */

用語

ファイアウォール
主にIPアドレスとポート番号で通信の可否を判断する機器。ステートフルインスペクション型は接続の状態を覚えて応答パケットかどうかを判断できる。
IDSとIPS
IDSは不審な通信を検知して知らせる装置、IPSは検知に加えて遮断まで行う装置。誤検知があると正常な通信も止まる点がIPSの運用上の注意点。
WAF
HTTPの中身を解釈し、Webアプリケーションを狙う攻撃を防ぐ機器やサービス。ファイアウォールでは止められない層の攻撃に対応する。
DMZ
外部に公開するサーバを、内部ネットワークと外部の間の別区画に置く構成。公開サーバが侵害されても内部へ直接到達させない。
ゼロトラスト
社内だから安全という前提を置かず、すべてのアクセスを毎回検証し、最小権限を与え、常時監視する考え方。境界が曖昧な環境に合わせた設計指針。
EDR
端末上のふるまいを記録し、侵入後の不審な動きを検知して調査と封じ込めを支援する仕組み。既知の特徴に頼らない点が従来型と異なる。
SIEM
各種機器のログを1か所に集めて相関分析し、単体では見えない攻撃の兆候を検出する仕組み。
セキュアプログラミング
外部から来た値を必ず検証し、別の文法へ渡すときはその作法で正しく扱い、失敗時は安全側へ倒すという実装上の原則。
CVE
個別の脆弱性に付けられる共通の識別番号。組織をまたいで同じ問題を指せるようにする。
CWE
脆弱性の種類の分類。入力検証の不備、境界外書込みといった弱点の型を表し、再発防止の議論に使う。
CVSS
脆弱性の深刻度を0.0から10.0の数値で表す共通の枠組み。基本評価基準・現状評価基準・環境評価基準からなる。
ISMS認証
情報セキュリティマネジメントシステムが規格に適合していることを第三者が認証する制度。規格はJIS Q 27001、管理策の手引はJIS Q 27002。
CSIRT
インシデントの受付、影響範囲の判断、封じ込め、復旧、外部連絡、再発防止までを担う組織内の専門チーム。
SOC
ログや通信を常時監視して脅威を検知することに専念する組織。検知後の判断と対応の主体はCSIRTであり、役割が異なる。
インシデント対応の流れ
準備、検知と分析、封じ込め・根絶・復旧、事後活動という順序。連絡体制と判断基準を平時に決めておく準備の段階が最も効く。
RTOとRPO
RTOは目標復旧時間で、いつまでに復旧するかの目標。RPOは目標復旧時点で、どの時点のデータまで戻せればよいかの目標。
不正アクセス禁止法
第3条で不正アクセス行為を禁止し、第4条で不正取得、第5条で助長行為、第6条で不正保管、第7条でなりすましによる識別符号の入力要求を禁じている。
個人情報保護法の安全管理措置
同法第23条が、取り扱う個人データの漏えい・滅失・毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを義務付けている。
漏えい等の報告
個人情報保護法第26条により、一定の事態が生じたときは個人情報保護委員会への報告と本人への通知が義務付けられている。
サイバーセキュリティ基本法
第2条でサイバーセキュリティを定義し、第12条で政府にサイバーセキュリティ戦略の策定を義務付ける法律。基本理念と各主体の責務を定める。
不正指令電磁的記録に関する罪
刑法第168条の2。正当な理由なく、人の電子計算機で実行させる目的でマルウェアを作成・提供する行為などを処罰する規定。

例題

例題:自社のサーバから見慣れない外部あてに大量の通信が出ている、という警報が監視から上がった。CSIRTの初動として、まず行うべきことは何か。
答えと考え方 事実の確認と影響範囲の把握を先に行い、そのうえで封じ込めの方法を決めることである。警報だけで機器を止めると、誤検知だった場合に業務を無用に止め、正しかった場合でも証拠となる情報を失うことがある。まず、その通信がいつから、どの端末で、どの権限で発生しているかをログから確かめ、影響しうる資産と業務を洗い出す。そのうえで、ネットワークからの隔離か、通信先の遮断か、稼働を続けたまま監視するかを、業務への影響と証拠保全の両面から判断する。この判断を短時間で下せるかどうかは、平時の準備、すなわち連絡体制と判断基準、権限をあらかじめ決めてあるかで決まる。
例題:脆弱性情報を集めたところ、CVSSの基本値が9.1のものと6.5のものが見つかった。9.1のほうは社内だけで使う閉じたシステム、6.5のほうはインターネットに公開しているサーバだった。どちらから対応すべきか。
答えと考え方 一律には決まらないが、この状況なら6.5のほうを先に検討する余地が大きい。CVSSの基本値は脆弱性そのものの性質だけを表す指標で、自組織での重要度や露出の度合いは環境評価基準の側で加味する。インターネットから到達できる資産は攻撃の機会が桁違いに多く、攻撃コードが出回っていればなおさら急ぐ。逆に、閉じた環境で到達経路が限られているなら、基本値が高くても回避策で当面しのげることがある。数値の大小だけで機械的に順番を決めない、というのが実務の勘どころである。

出典・根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ/不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第3条・第4条・第5条・第6条・第7条・第8条/個人情報の保護に関する法律 第17条・第18条・第20条・第23条・第24条・第25条・第26条・第27条/サイバーセキュリティ基本法 第2条・第12条/刑法 第168条の2

確認問題(55問)

四肢択一。「正解と解説」を開くと、正解の理由と他の選択肢が違う理由を確認できます。

問1|可用性

情報セキュリティの基本特性のうち、可用性を確保するための対策として最も適切なものはどれか。

  1. 保存するファイルを暗号化し、権限のない者には内容を読めないようにする
  2. 業務サーバを2台構成にし、1台が故障しても処理を続けられるようにする
  3. 更新のたびにハッシュ値を記録し、後から改ざんの有無を検出できるようにする
  4. 利用者ごとにアカウントを分け、誰がいつ何をしたかの操作ログを残す
正解と解説
正解:B. 業務サーバを2台構成にし、1台が故障しても処理を続けられるようにする

可用性は、必要なときに情報や情報システムを利用できる状態を保つ特性である。サーバの二重化は障害時も利用を続けられるようにする対策で、可用性に直結する。暗号化は権限のない者に読ませない機密性、ハッシュ値による改ざん検出は情報が正確で欠落もない状態を保つ完全性、個人別アカウントと操作ログは動作を主体までたどれる責任追跡性の対策であり、いずれも可用性そのものを守る手段ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問2|否認防止

JIS Q 27000で挙げられている情報セキュリティの特性のうち、否認防止の説明として適切なものはどれか。

  1. エンティティが主張どおりの本人・本物であることを確実にする特性
  2. あるエンティティの動作が、その動作を行ったエンティティまで一意に追跡できる特性
  3. ある事象や処置が実際に起きたことを、後から当事者に否定させないよう証明できる特性
  4. 意図した動作と結果が一貫して一致する特性
正解と解説
正解:C. ある事象や処置が実際に起きたことを、後から当事者に否定させないよう証明できる特性

否認防止は、事象や処置の発生とその主体を後から証明でき、当事者に「やっていない」と言わせない特性である。タイムスタンプ付きのデジタル署名が代表的な手段になる。主張どおりの本人であることを確実にするのは真正性、動作を主体まで追跡できるのは責任追跡性、意図したとおりにふるまうのは信頼性であり、いずれも別の特性を指している。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問3|アセスメント

リスクアセスメントを構成する三つの段階の組合せとして適切なものはどれか。

  1. リスク特定、リスク分析、リスク評価
  2. リスク特定、リスク対応、リスク受容
  3. リスク分析、リスク対応、残留リスクの承認
  4. リスク基準の設定、リスク低減、リスク移転
正解と解説
正解:A. リスク特定、リスク分析、リスク評価

リスクアセスメントは、どんな脅威がどの脆弱性を突いてどんな損失を起こしうるかを洗い出すリスク特定、その発生頻度と影響の大きさを見積もるリスク分析、見積もり結果をリスク基準と照らして対応の要否と優先順位を決めるリスク評価の三段階からなる。リスク対応、リスク受容、リスク低減、リスク移転は、アセスメントの後に行う「リスク対応」の段階に属する言葉であり、アセスメントの構成要素ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問4|リスク特定

リスクアセスメントの各段階のうち、リスク特定で行うこととして適切なものはどれか。

  1. 洗い出された事象について、発生頻度と影響の大きさを見積もる
  2. 見積もり結果をあらかじめ定めた基準と照らし、対応の要否と優先順位を決める
  3. 資産ごとに、どの脅威がどの脆弱性を突いて、どのような損失を生じさせうるかを漏れなく洗い出す
  4. 選んだ管理策を実施し、残ったリスクを責任者に承認してもらう
正解と解説
正解:C. 資産ごとに、どの脅威がどの脆弱性を突いて、どのような損失を生じさせうるかを漏れなく洗い出す

リスク特定は、リスクの候補を洗い出す段階である。ここで見落としたリスクは以降の分析にも評価にも現れないため、網羅性がとくに重要になる。発生頻度と影響の見積もりはリスク分析、基準と照らして対応の要否と優先順位を決めるのはリスク評価、管理策の実施と残留リスクの承認はリスク対応の段階で行うことである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問5|ALEの計算

ある障害が起きると1回あたり500万円の損失が生じ、発生頻度は年0.2回と見積もられた。年間60万円の対策を実施すると発生頻度は年0.05回に下がる。この対策による年間の効果を、期待損失の削減額から対策費用を差し引いた金額で表すといくらか。

  1. 25万円
  2. 40万円
  3. 15万円
  4. 75万円
正解と解説
正解:C. 15万円

年間予想損失額(ALE)は、1回あたりの損失額に年間発生回数を掛けて求める。対策前は500万円×0.2で100万円、対策後は500万円×0.05で25万円だから、削減額は100万円-25万円で75万円である。ここから対策費用60万円を引いて、年間の効果は15万円になる。25万円は対策後のALEをそのまま答えたもの、75万円は対策費用を引き忘れたもの、40万円は対策後のALEを0とみなして100万円-60万円と計算したものであり、いずれも誤りである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問6|リスク移転

発生頻度は数年に1回程度と低いが、いったん起きると自社の体力を超える損失になるリスクがある。リスク対応の区分として、まず検討することが最も適切なものはどれか。

  1. 原因となる事業活動そのものを取りやめる、リスク回避
  2. 対策を打たずにそのまま受け入れる、リスク保有
  3. サイバー保険への加入などによって損失の負担を他者と分け合う、リスク移転
  4. 多額の設備投資を行って発生頻度をさらに下げる、リスク低減
正解と解説
正解:C. サイバー保険への加入などによって損失の負担を他者と分け合う、リスク移転

発生頻度が低く、起きたときの影響が自社で吸収できない大きさのリスクは、保険や外部サービスの利用で損失負担を分け合うリスク移転が定石である。発生頻度が低いものに自前で過大な投資をするリスク低減は費用対効果が合いにくい。事業活動そのものをやめるリスク回避は、頻度も影響も大きく引き受けられない場合の選択である。影響が甚大なものをリスク保有で放置するのは、経営判断として妥当でない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問7|リスク回避

リスク対応のうち、リスク回避に該当する例はどれか。

  1. 会員データベースを暗号化し、持ち出されても内容を読めないようにする
  2. 会員登録で収集していたが業務上は使っていなかった生年月日の項目を、収集そのものをやめる
  3. 情報漏えいに備えてサイバー保険に加入し、賠償費用の一部を補填できるようにする
  4. 影響が軽微と判断し、対策を行わずに現状のまま運用を続ける
正解と解説
正解:B. 会員登録で収集していたが業務上は使っていなかった生年月日の項目を、収集そのものをやめる

リスク回避は、リスクの原因となっている活動そのものをやめる対応である。使っていない個人情報の収集を取りやめれば、その情報が漏れるリスクは根本からなくなる。暗号化は発生時の影響を小さくするリスク低減、保険への加入は損失負担を他者と分け合うリスク移転、対策せず現状のまま続けるのはリスク保有であり、いずれも回避ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問8|残留リスク

残留リスクの取扱いに関する記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 対応を適切に実施すれば残留リスクは0になるので、承認の手続は不要である
  2. 残留リスクは対応前に見積もるものであり、対応の実施後に再評価する必要はない
  3. 対応を実施しても残るリスクであり、受容できる水準に収まっていることを責任者が承認して初めてリスク対応が完了する
  4. 残留リスクが受容水準を超えていても、費用がかかる場合は記録するだけでよい
正解と解説
正解:C. 対応を実施しても残るリスクであり、受容できる水準に収まっていることを責任者が承認して初めてリスク対応が完了する

どれだけ対策を打っても、リスクを0にすることはできない。対応後に残るものが残留リスクであり、それが組織の定めた受容水準に収まっていることを責任者が確認して承認するまでが一連のリスク対応である。受容水準を超えているなら、追加の対策か、水準そのものの見直しか、上位者による例外承認が要る。記録するだけで済ませてよいわけではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問9|ポリシ階層

情報セキュリティポリシを三階層で構成するとき、最上位の基本方針に記述する内容として適切なものはどれか。

  1. サーバのパスワードの最小文字数や有効期間といった具体的な設定値
  2. ウイルス感染が疑われるときに、担当者が実際にたどる連絡と初動の手順
  3. 情報セキュリティに取り組む目的と経営層の基本姿勢、適用範囲といった組織全体の考え方
  4. 退職者のアカウントを削除するときの申請書の書式と記入例
正解と解説
正解:C. 情報セキュリティに取り組む目的と経営層の基本姿勢、適用範囲といった組織全体の考え方

情報セキュリティポリシは、目的と基本姿勢を示す基本方針、何をどこまで守るかを定める対策基準、具体的なやり方を書いた実施手順の三階層で構成するのが一般的である。基本方針は外部にも公開して組織の姿勢を示すことが多く、頻繁には変えない。具体的な設定値は対策基準、担当者がたどる手順や書式は実施手順に書く内容であり、業務や機器の変更に合わせてこまめに改訂する。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問10|CIAの両立

全社員が使う社内文書共有システムについて、機密性を高める目的で「文書を開くたびに上長の承認を得る」という運用を導入する案が出た。この案を評価する観点として最も適切なものはどれか。

  1. 機密性は上がるが必要なときにすぐ使えなくなり可用性が下がるため、資産の価値に見合う水準かを比べて決める
  2. 機密性が上がる対策は常に優先すべきなので、可用性の低下は考慮しなくてよい
  3. 承認手続を入れると完全性も同時に高まるため、他の対策より無条件に優れている
  4. 運用で対応する対策は技術的対策より弱いため、この案は検討する価値がない
正解と解説
正解:A. 機密性は上がるが必要なときにすぐ使えなくなり可用性が下がるため、資産の価値に見合う水準かを比べて決める

機密性・完全性・可用性は同時に最大化できず、機密性を高めて権限や手続を厳しくするほど、必要なときにすぐ使えないという形で可用性が下がる。したがって対策は「全部を最高水準に」ではなく、守る対象の価値に見合った水準を選ぶことになる。機密性を無条件に優先する考え方、承認手続で完全性まで自動的に高まるという理解、運用による対策を一律に弱いとみなす考え方は、いずれも適切でない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問11|標的型攻撃

標的型攻撃の特徴として最も適切なものはどれか。

  1. 不特定多数へ同じ内容のメールを大量に送り、反応した相手から金銭をだまし取る
  2. 多数の踏み台から一斉に大量の要求を送り、対象のサービスを提供不能にする
  3. 利用者が入力した値をそのままHTMLに出力しているサイトを経由し、閲覧者のブラウザ上でスクリプトを動かす
  4. 特定の組織に狙いを定め、業務に見せかけた文書などで足がかりを作り、長期間かけて内部を移動しながら目的の情報に近づく
正解と解説
正解:D. 特定の組織に狙いを定め、業務に見せかけた文書などで足がかりを作り、長期間かけて内部を移動しながら目的の情報に近づく

標的型攻撃は、あらかじめ特定の組織を調べ上げ、その組織にとって自然に見える文書やメールで侵入して、長期間にわたり内部で活動する点が特徴である。不特定多数への大量送信はばらまき型の迷惑メールや詐欺、踏み台からの一斉要求はDDoS攻撃、出力の不備を突いてブラウザ上でスクリプトを動かすのはクロスサイトスクリプティングであり、いずれも別の攻撃である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問12|ランサム対策

ランサムウェアへの備えとしてバックアップを設計する。最も効果的な要件はどれか。

  1. 毎日同じ共有フォルダへ上書きで保存し、常に最新の1世代だけを保持して古い世代は残さない
  2. 取得後は業務端末から書き換えられない状態にし、少なくとも1つは別の場所へ保管したうえで、復旧手順を実際に試しておく
  3. 業務端末から常時書込み可能なクラウドストレージへ自動保存し、世代は保持せずに、常に最新の状態だけが残るよう同期しておく
  4. 取得の記録だけを残し、復旧できるかどうかは実際に被害が起きたときに手順書を見ながら確認する
正解と解説
正解:B. 取得後は業務端末から書き換えられない状態にし、少なくとも1つは別の場所へ保管したうえで、復旧手順を実際に試しておく

ランサムウェアは侵入後、到達できる範囲のファイルをまとめて暗号化する。バックアップが業務端末から書き換えられる状態でオンラインに置かれていると、原本と一緒に暗号化されて役に立たない。したがって、取得後に書き換えられないこと、複数世代を保持すること、少なくとも1つは別の場所に置くこと、そして復旧手順を平時に試して所要時間を測っておくことが要件になる。上書き保存の1世代だけでは、感染したデータで上書きされた時点で復旧できなくなる。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問13|サプライ攻撃

サプライチェーン攻撃の説明として適切なものはどれか。

  1. 標的の利用者がよく閲覧するWebサイトを改ざんしておき、訪れた相手を感染させる
  2. 対策の手薄な取引先や委託先、あるいはソフトウェアの更新配布経路を踏み台にして、本来の標的組織へ侵入する
  3. 他のサイトから流出した利用者IDとパスワードの組を、別のサイトでそのまま試す
  4. 修正プログラムが提供される前の脆弱性を突いて攻撃する
正解と解説
正解:B. 対策の手薄な取引先や委託先、あるいはソフトウェアの更新配布経路を踏み台にして、本来の標的組織へ侵入する

サプライチェーン攻撃は、標的そのものではなく、標的とつながっている取引先や委託先、ソフトウェアの供給経路といった弱い環を突いて本命へ到達する攻撃である。自社だけを固めても防げないため、委託先の選定基準と定期的な監査、利用しているソフトウェア部品の一覧の把握が対策になる。改ざんしたサイトでの待ち伏せは水飲み場型攻撃、流出した認証情報の使い回しを突くのはパスワードリスト攻撃、修正前の脆弱性を突くのはゼロデイ攻撃である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問14|SQLi対策

SQLインジェクションの根本的な対策として最も適切なものはどれか。

  1. 入力欄で危険とされる記号をあらかじめ定めた一覧に従って取り除く
  2. データベースへの通信をTLSで暗号化し、経路上で内容を読めないようにする
  3. エラー画面にデータベースのエラーメッセージを表示しないようにする
  4. SQL文の骨組みをあらかじめ固定し、利用者から受け取った値はプレースホルダを通じて値として渡す
正解と解説
正解:D. SQL文の骨組みをあらかじめ固定し、利用者から受け取った値はプレースホルダを通じて値として渡す

SQLインジェクションは、入力値を文字列連結でSQL文に埋め込んでいるために、値の中身が文の構造を変えてしまうことが原因である。プレースホルダを使えば文の骨組みが先に確定し、入力値は常に値として比較されるだけになるので、原因そのものがなくなる。危険な記号の除去は一覧の網羅が難しく、文字コードの解釈差ですり抜ける余地が残る。通信の暗号化は経路上の盗聴対策、エラーメッセージの抑制は情報漏えいを減らす緩和策であり、いずれも攻撃の成立自体は防げない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問15|XSS対策

クロスサイトスクリプティングの対策として、入力時の検査ではなく出力時のエスケープが本質的だとされる理由はどれか。

  1. 入力時の検査はサーバの処理を遅くするため性能上の理由で避けるべきであり、出力時のエスケープなら負荷がかからないから
  2. 入力値はデータベースに保存された時点で必ず無害化され、取り出したときには危険な文字が残っていないから
  3. エスケープ処理を行うと、入力された危険な文字が自動的にすべて削除され、画面には何も残らなくなるから
  4. 問題が起きるのは値をHTMLとして解釈させる瞬間であり、同じ値でも出力先の文脈によって危険かどうかが変わるから
正解と解説
正解:D. 問題が起きるのは値をHTMLとして解釈させる瞬間であり、同じ値でも出力先の文脈によって危険かどうかが変わるから

同じ文字列でも、HTMLの本文に出すのか、属性値に出すのか、スクリプトの中に出すのかで、危険になる文字も必要な処理も変わる。危険かどうかが決まるのは出力先の文脈なので、出力する直前にその文脈に合った変換を行うのが本質的な対策になる。入力時の検査は業務上の妥当性を確かめる目的では有用だが、画面が増えるほど漏れが生じる。保存しただけで無害化されることはなく、エスケープは文字を削除するのではなく、タグとして解釈されない表現に置き換える処理である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問16|CSRF

クロスサイトリクエストフォージェリが成立してしまうアプリケーションの弱点はどれか。

  1. 利用者から受け取った値を、そのままHTMLに出力していること
  2. 更新要求が、利用者が意図して送ったものかどうかを確かめていないこと
  3. ファイル名を利用者の入力から組み立てていること
  4. セッションIDが短く、推測しやすい値になっていること
正解と解説
正解:B. 更新要求が、利用者が意図して送ったものかどうかを確かめていないこと

クロスサイトリクエストフォージェリは、ログイン済み利用者のブラウザに、本人の知らないうちに更新要求を送らせる攻撃である。ブラウザは自動的に認証情報を付けて送るため、サーバ側はその要求を正規の利用者からのものとして処理してしまう。弱点は「その要求が本人の意図か」を確かめていない点にあり、対策は推測できないトークンを画面に埋め込んで要求時に照合することである。値をそのまま出力しているのはXSS、ファイル名を入力から組み立てているのはディレクトリトラバーサル、セッションIDが推測しやすいのはセッションハイジャックの弱点である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問17|トラバーサル

ディレクトリトラバーサルへの対策として最も確実なものはどれか。

  1. 受け取ったパス名から、あらかじめ定めた危険な文字列を1回だけ取り除く
  2. ファイルを置くディレクトリの名前を推測されにくい長い名前にする
  3. ファイルのダウンロード時に、利用者に確認ダイアログを表示する
  4. ファイルを利用者に選ばせるときはパス名を直接受け取らず、識別子と実ファイルの対応表をサーバ側でもつ
正解と解説
正解:D. ファイルを利用者に選ばせるときはパス名を直接受け取らず、識別子と実ファイルの対応表をサーバ側でもつ

ディレクトリトラバーサルは、ファイル名やパスを利用者の入力から組み立てていることが弱点である。識別子で対応付ければ、そもそも利用者の入力がパスとして解釈される経路がなくなるので確実である。危険な文字列を1回だけ取り除く処理は、除去後に再び危険な形が現れる書き方で回避されうる。ディレクトリ名を隠すのは推測されるまでの時間稼ぎにすぎず、確認ダイアログは攻撃の成立とは関係がない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問18|DNS増幅

DNSリフレクション攻撃(DNSアンプ攻撃)が成立するために利用されている性質の組合せはどれか。

  1. DNSの応答がキャッシュされることと、キャッシュに有効期限があること
  2. 問合せが暗号化されないことと、名前解決が再帰的に行われること
  3. 送信元IPアドレスを詐称できることと、応答が問合せより大きくなること
  4. DNSサーバが冗長化されていることと、ゾーン転送が許可されていること
正解と解説
正解:C. 送信元IPアドレスを詐称できることと、応答が問合せより大きくなること

DNSリフレクション攻撃は、送信元IPアドレスを標的のものに詐称した問合せを多数のDNSサーバへ送り、それらの応答をまとめて標的に届かせる攻撃である。詐称ができるので応答の宛先を標的にでき、応答が問合せより大きいので少ない帯域で大きな攻撃を起こせる。この二つが同時に効いている点が要点になる。キャッシュと有効期限はキャッシュポイズニングに関わる性質、ゾーン転送の許可は情報漏えいに関わる設定であり、増幅の仕組みとは別である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問19|リスト攻撃

パスワードリスト攻撃に対して最も有効な対策はどれか。

  1. パスワードに加えて所持や生体の要素を組み合わせた多要素認証を導入する
  2. パスワードの最小文字数を増やし、記号を必ず含めるよう義務付ける
  3. パスワードの有効期間を短くし、90日ごとに変更を強制する
  4. ログイン画面に画像認証を追加し、自動化された入力だけを防ぐ
正解と解説
正解:A. パスワードに加えて所持や生体の要素を組み合わせた多要素認証を導入する

パスワードリスト攻撃は、他サイトから流出した正しいIDとパスワードの組をそのまま試す攻撃である。パスワードが正しい以上、長さや複雑さを増しても、そのパスワードを別サイトで使い回していれば成立してしまう。したがって、パスワード以外の要素を要求する多要素認証が最も有効になる。有効期間の短縮は流出から悪用までの時間が短ければ効果が薄く、画像認証は自動化を鈍らせるだけで、認証情報が正しいという前提を崩せない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問20|ゼロデイ

ゼロデイ攻撃への備えとして適切な考え方はどれか。

  1. 修正プログラムを速やかに適用する体制さえ整えれば、ゼロデイ攻撃も防げる
  2. 修正プログラムが存在しない期間があることを前提に、緩和策と検知の仕組みで被害の拡大を抑える
  3. 既知のマルウェアの特徴を集めた定義ファイルを最新にしておけば、確実に検知できる
  4. 外部からの通信をすべて遮断すれば、ゼロデイ攻撃を受けることはない
正解と解説
正解:B. 修正プログラムが存在しない期間があることを前提に、緩和策と検知の仕組みで被害の拡大を抑える

ゼロデイ攻撃は、修正プログラムが提供される前の脆弱性を突く攻撃である。パッチ適用の体制がいくら速くても、そもそも当てるものがない期間が存在するので、それだけでは防げない。したがって、機能の無効化や設定変更による緩和策、端末のふるまい監視やログの相関分析による検知、被害範囲を区切る区画化といった重ね方で時間を稼ぐ発想が要る。既知の特徴に頼る定義ファイルは未知の攻撃には効きにくく、外部通信の全遮断は業務が成立しないうえ、可搬媒体や内部経由の侵入も残る。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問21|内部不正

内部不正について、不正のトライアングルの考え方に基づくとき、組織のしくみによって最も直接的に小さくできる要素はどれか。

  1. 機会
  2. 動機
  3. 正当化
  4. 本人の資質
正解と解説
正解:A. 機会

不正のトライアングルは、不正が機会・動機・正当化の三つがそろったときに起きるとする考え方である。動機は金銭的な事情や処遇への不満、正当化は「自分の働きに見合う」といった本人の言い訳であり、いずれも内面の問題なので組織が直接消すことは難しい。これに対して機会は、担当業務に必要な最小限の権限しか与えない、申請と承認を別の人が行う職務分離を入れる、操作ログを取得して監視する、記憶媒体の持出しを制限する、といった手段で確実に減らせる。本人の資質は不正のトライアングルの要素ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問22|水平展開

侵入を受けた組織のログを調べたところ、最初に感染した1台の端末から、社内の複数のサーバへ同じ管理者アカウントでの接続が次々と行われていた。この活動段階を表す用語と、有効な対策の組合せとして適切なものはどれか。

  1. 権限昇格であり、外部との通信を暗号化することが有効である
  2. 水飲み場型攻撃であり、閲覧するWebサイトを制限することが有効である
  3. 水平展開であり、ネットワークの区画化と管理者アカウントの共用の廃止が有効である
  4. リプレイ攻撃であり、ワンタイムパスワードの導入が有効である
正解と解説
正解:C. 水平展開であり、ネットワークの区画化と管理者アカウントの共用の廃止が有効である

侵入した端末を足がかりに、内部の別の端末やサーバへ次々と移動していく段階を水平展開(ラテラルムーブメント)という。同じ管理者アカウントが社内で共用されていると、1台の侵害が全体へ一気に波及する。対策は、業務や重要度でネットワークを区切って到達範囲を狭めること、管理者アカウントを共用せず端末ごとに異なる資格情報にすること、内部通信の監視である。権限昇格は権限そのものを引き上げる段階、水飲み場型は侵入の入口の話、リプレイ攻撃は認証データの再送であり、いずれもこの記述には当たらない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問23|公開鍵暗号

共通鍵暗号と公開鍵暗号の比較として適切なものはどれか。

  1. 共通鍵暗号は処理が速いが相手ごとの鍵配送が課題で、公開鍵暗号は鍵配送が容易だが処理が遅い
  2. 共通鍵暗号は鍵配送が容易だが処理が遅く、公開鍵暗号は処理が速いが鍵配送が難しい
  3. どちらも暗号化と復号に同じ鍵を使うが、鍵の長さだけが異なる
  4. 公開鍵暗号は共通鍵暗号より処理が速いので、大量データの暗号化に適している
正解と解説
正解:A. 共通鍵暗号は処理が速いが相手ごとの鍵配送が課題で、公開鍵暗号は鍵配送が容易だが処理が遅い

共通鍵暗号は暗号化と復号に同じ鍵を使うため処理が速く大量データに向くが、通信相手ごとに鍵を安全に配る必要がある。公開鍵暗号は対になる2つの鍵を使い、公開鍵は誰に配ってもよいので鍵配送の問題を解けるが、演算が重く処理は桁違いに遅い。実際のシステムは、鍵の受渡しに公開鍵暗号、本文の暗号化に共通鍵暗号を使うハイブリッド構成をとる。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問24|鍵の本数

50人が互いに共通鍵暗号だけで秘密の通信を行うとき、必要となる鍵の本数はいくつか。

  1. 100本
  2. 2450本
  3. 1225本
  4. 2500本
正解と解説
正解:C. 1225本

共通鍵暗号では2人の組合せごとに1本の鍵を共有するので、必要な本数は n(n-1)/2 で求める。50×49/2を計算して1225本である。2450本は50×49を計算したまま2で割り忘れた値、2500本は50×50とした値、100本は公開鍵暗号を使ったときに各自が公開鍵と秘密鍵を1対ずつ持つ場合の鍵の総数2nに当たる値であり、いずれもこの問いの答えではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問25|鍵の増分

20人が互いに共通鍵暗号で通信している組織に、新たに1人が加わって21人になった。追加で必要になる鍵の本数はいくつか。

  1. 20本
  2. 1本
  3. 21本
  4. 40本
正解と解説
正解:A. 20本

20人のときに必要な鍵は20×19/2で190本、21人では21×20/2で210本だから、増加分は210-190で20本である。新しく加わった1人は既存の20人それぞれと鍵を1本ずつ共有する必要がある、と考えても同じ結果になる。1本は人数の増加分をそのまま答えたもの、21本は新規の人数を含めて数えたもの、40本は両方向に1本ずつ必要と誤解したものであり、いずれも誤りである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問26|ハイブリッド

ハイブリッド暗号方式を採用する理由として最も適切なものはどれか。

  1. 鍵を安全に渡せる公開鍵暗号の利点と、大量のデータを速く処理できる共通鍵暗号の利点を、どちらも生かすため
  2. 二種類の暗号を重ねて掛けることで、解読に要する時間を単純に2倍にするため
  3. 公開鍵暗号だけでは復号できないデータがあるため、共通鍵暗号で補うため
  4. 共通鍵暗号の鍵長を短くしても安全性を保てるようにするため
正解と解説
正解:A. 鍵を安全に渡せる公開鍵暗号の利点と、大量のデータを速く処理できる共通鍵暗号の利点を、どちらも生かすため

ハイブリッド暗号方式は、その通信だけに使う共通鍵(セション鍵)を公開鍵暗号で相手へ安全に渡し、本文は速い共通鍵暗号でやり取りする構成である。公開鍵暗号の鍵配送の容易さと、共通鍵暗号の処理速度を同時に得るための組合せであり、TLSもこの形をとる。暗号を二重に掛けて時間を稼ぐ方式ではなく、共通鍵の鍵長を短くしてよくなるわけでもない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問27|ハッシュ

暗号技術で使われるハッシュ関数の性質として適切なものはどれか。

  1. ハッシュ値と鍵があれば元のデータを復元でき、通信の暗号化にそのまま使える
  2. 入力がわずかに変わってもハッシュ値はほとんど変わらないので、似た入力どうしを見分けにくい
  3. 同じ入力からでも計算のたびに異なるハッシュ値が得られるので、値の再利用を防げる
  4. 入力の長さによらず固定長の値を出力し、その値から元のデータを復元することは困難である
正解と解説
正解:D. 入力の長さによらず固定長の値を出力し、その値から元のデータを復元することは困難である

ハッシュ関数は、任意の長さの入力から固定長の値を作る一方向の関数である。同じ入力からは必ず同じ値が出る一方、値から元のデータを復元することは困難で、入力がわずかに変わると出力は大きく変わる。この性質により、改ざんの検出やパスワードの保管に使える。鍵を使って復元できるのは暗号化であり、ハッシュ関数とは別の技術である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問28|衝突の強度

出力が256ビットのハッシュ関数について、同じハッシュ値になる異なる2つのデータの組を見つける難しさの見積もりとして適切なものはどれか。

  1. およそ2²⁵⁶回の試行が必要で、原像を求める場合と同じ難しさである
  2. およそ2⁶⁴回の試行で見つかるため、原像を求めるより桁違いに易しい
  3. 出力長にかかわらず、試行回数はデータの長さだけで決まる
  4. 誕生日のパラドックスにより、およそ2¹²⁸回の試行で見つかりうる
正解と解説
正解:D. 誕生日のパラドックスにより、およそ2¹²⁸回の試行で見つかりうる

ある特定のハッシュ値と同じ値になるデータを探す原像探索はおよそ2ⁿ回を要するが、値を問わず単に衝突する2つのデータの組を探す場合は誕生日のパラドックスが働き、およそ2ⁿᐟ²回で見つかりうる。したがって256ビット出力なら衝突探索の強度は128ビット相当と見積もる。2⁶⁴回で足りるのは出力が128ビットの場合であり、試行回数がデータの長さで決まるという説明も誤りである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問29|ソルト

パスワードをハッシュ値で保管するとき、利用者ごとに異なるソルトを付けてハッシュ化する主な狙いはどれか。

  1. ハッシュ値の長さが利用者ごとに変わり、解析に必要な計算量が増えるため
  2. 同じパスワードでも保管される値が利用者ごとに変わるため、事前計算した対応表による解析を無効化できる
  3. ハッシュ値から元のパスワードを復元できるようにし、忘れたときに通知できるため
  4. パスワードの文字数の制限を緩められ、利用者の利便性が上がるため
正解と解説
正解:B. 同じパスワードでも保管される値が利用者ごとに変わるため、事前計算した対応表による解析を無効化できる

ソルトは、利用者ごとに異なる文字列をパスワードに連結してからハッシュ化する手法である。これにより、同じパスワードを使っている利用者どうしでも保管される値が異なり、ハッシュ値と元の文字列の対応表をあらかじめ計算しておくレインボーテーブル攻撃が成立しなくなる。ハッシュ値の長さは変わらず、元のパスワードを復元できるようになるわけでもない。あわせて、ハッシュ計算を多数回繰り返すストレッチングで1回の照合を意図的に遅くする対策も併用する。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問30|署名の効果

デジタル署名の検証に成功したことで確かめられるものの組合せとして適切なものはどれか。

  1. 文書が経路上で第三者に読まれていないことと、署名した時刻が正確であること
  2. 文書が署名後に改ざんされていないことと、署名鍵の持ち主が署名したこと
  3. 文書が署名後に改ざんされていないことと、文書の内容が業務上正しいこと
  4. 署名者が実在する組織であることと、その組織の財務状況が健全であること
正解と解説
正解:B. 文書が署名後に改ざんされていないことと、署名鍵の持ち主が署名したこと

デジタル署名は、文書のハッシュ値を送信者の秘密鍵で変換した値を添えるもので、受信者は送信者の公開鍵で検証する。検証に成功すれば、文書が署名時点から書き換えられていないこと(完全性)と、その秘密鍵の持ち主が署名したこと(真正性・否認防止)が確かめられる。一方、署名は文書を暗号化しないので機密性は守らない。署名時刻を第三者に証明するにはタイムスタンプを別に付与する必要があり、内容が業務上正しいかどうかや、署名者の財務状況は署名の検証とは無関係である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問31|MACと署名

メッセージ認証符号(MAC)とデジタル署名の違いの説明として適切なものはどれか。

  1. MACは公開鍵暗号を使うため処理が遅く、デジタル署名は共通鍵暗号を使うため速い
  2. どちらも改ざんを検出できるが、MACは鍵を2者で共有するため第三者に対する否認防止はできない
  3. MACは改ざんを検出できないが、デジタル署名は検出できる
  4. デジタル署名は送信者だけが検証でき、MACは誰でも検証できる
正解と解説
正解:B. どちらも改ざんを検出できるが、MACは鍵を2者で共有するため第三者に対する否認防止はできない

MACは共通鍵とメッセージから検証用の値を作る仕組みで、鍵を知る2者の間では改ざんを検出できる。しかし、その鍵は両者が持っているため、受信者が自分で同じ値を作ることもでき、第三者に対して「これは送信者が作った」と証明できない。つまり否認防止にはならない。デジタル署名は署名者だけが持つ秘密鍵を使うので、公開鍵を持つ誰もが検証でき、否認防止が成立する。処理の速さの説明と、検証できる者の説明はいずれも逆である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問32|証明書

サーバ証明書の検証において、信頼の連鎖をたどるとはどういうことか。

  1. サーバ証明書に記載された有効期限が現在時刻を含んでいることと、記載された名前が接続先と一致していることだけを確かめる
  2. サーバ証明書と同じ内容の証明書が他の複数のサーバでも使われていることを確かめ、使われているサーバが多いほど信頼できると判断し、少なければ接続を中止する
  3. サーバから受け取った証明書のハッシュ値を、利用者があらかじめ手元に控えておいた値と比較し、一致すれば信頼できると判断する
  4. サーバ証明書の署名を中間認証局の証明書で検証し、その署名を上位の証明書で検証して、端末に組み込まれたルート証明書まで到達できることを確かめる
正解と解説
正解:D. サーバ証明書の署名を中間認証局の証明書で検証し、その署名を上位の証明書で検証して、端末に組み込まれたルート証明書まで到達できることを確かめる

PKIでは、サーバ証明書に中間認証局が署名し、その中間認証局の証明書にはさらに上位の認証局が署名する、という連なりで信頼が伝わる。検証側は、この連鎖をたどって端末にあらかじめ組み込まれた信頼済みのルート証明書に到達できるかを確かめる。有効期限の確認や名前の一致の確認、失効の有無の確認も併せて行うが、それらは連鎖の検証とは別の項目である。手元の値と直接比較する方式は証明書ピン留めと呼ばれる別の手法である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問33|失効確認

証明書の失効確認の方式に関する記述のうち、適切なものはどれか。

  1. CRLは1件ずつ問い合わせる方式なので、常に最新の失効状態を得られる
  2. OCSPは失効一覧をまとめて配布する方式で、問合せ先の負荷がかからない
  3. 証明書に有効期限が設定されているため、失効確認の仕組みは不要である
  4. CRLは失効した証明書の一覧をまとめて配布する方式で、配布の間隔に応じて情報が古くなる可能性がある
正解と解説
正解:D. CRLは失効した証明書の一覧をまとめて配布する方式で、配布の間隔に応じて情報が古くなる可能性がある

CRLは失効した証明書の識別番号を一覧にして定期的に配布する方式で、配布の間隔のぶんだけ情報が古くなる。OCSPは検証のたびに1件ずつ問い合わせる方式で即時性は高いが、問合せ先の負荷と可用性が課題になる。両者の説明を入れ替えた記述は誤りである。また、秘密鍵の漏えいや記載事項の変更があれば有効期限内でも失効させる必要があるため、有効期限があるから失効確認が不要になることはない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問34|TLSの手順

TLSによる通信の確立手順として、順序が適切なものはどれか。

  1. 利用可能な暗号方式の提示、サーバ証明書の送付と検証、鍵交換によるセション鍵の共有、暗号化した通信の開始
  2. サーバ証明書の送付と検証、暗号化した通信の開始、利用可能な暗号方式の提示、鍵交換によるセション鍵の共有
  3. 鍵交換によるセション鍵の共有、利用可能な暗号方式の提示、暗号化した通信の開始、サーバ証明書の送付と検証
  4. 暗号化した通信の開始、鍵交換によるセション鍵の共有、サーバ証明書の送付と検証、利用可能な暗号方式の提示
正解と解説
正解:A. 利用可能な暗号方式の提示、サーバ証明書の送付と検証、鍵交換によるセション鍵の共有、暗号化した通信の開始

TLSでは、まずクライアントが利用可能な暗号方式の一覧と乱数を送り、サーバが方式を1つ選んで自分の証明書と乱数を返す。クライアントは証明書の署名、有効期限、名前の一致、失効の有無を検証し、問題がなければ鍵交換を行って両者が同じセション鍵を得る。ここまでのやり取りが改ざんされていないことを確認したうえで、暗号化した通信に移る。証明書の検証や鍵の共有より先に暗号化通信が始まることはない。TLS 1.3ではこの手順が簡素化され、往復回数が減っている。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問35|認証と認可

認証と認可の関係について、適切な記述はどれか。

  1. 認証に成功した利用者には、システム上のすべての操作を許可してよい
  2. 認可を先に行って権限を確定させてから、認証で本人確認を行うのが正しい順序である
  3. 認証は相手が名乗ったとおりの本人かを確かめる工程で、認可はその主体に何をしてよいかを与える工程であり、別々に設計する
  4. 認証と認可は同じ処理を指す言葉であり、区別する必要はない
正解と解説
正解:C. 認証は相手が名乗ったとおりの本人かを確かめる工程で、認可はその主体に何をしてよいかを与える工程であり、別々に設計する

認証は「あなたは誰か」に答える工程、認可は「あなたは何をしてよいか」に答える工程で、目的も設計も異なる。認証に成功しても、その利用者に許される操作は認可の設計によって決まるのであり、すべてを許してよいわけではない。順序も、まず本人を確かめてから、その主体に応じた権限を与えるのが自然である。二つを同じものとして扱うと、権限設計の議論が抜け落ちる。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問36|多要素認証

多要素認証に該当する組合せはどれか。

  1. パスワードの入力と、「母親の旧姓」を答える秘密の質問への回答を続けて求める組合せ
  2. パスワードの入力と、スマートフォンのアプリに表示されるワンタイムパスワードの入力
  3. パスワードの入力と、あらかじめ登録した合言葉の入力を2つの画面に分けて求める組合せ
  4. 利用者IDの入力と、その利用者IDに対応するパスワードの入力を1つの画面で求める組合せ
正解と解説
正解:B. パスワードの入力と、スマートフォンのアプリに表示されるワンタイムパスワードの入力

多要素認証は、知識・所持・生体という異なる要素を2つ以上組み合わせるものである。パスワードは知識、スマートフォンのアプリに表示されるワンタイムパスワードはその端末を持っていることを示す所持の要素なので、この組合せは多要素認証になる。秘密の質問も合言葉も知識の要素であり、段階が2つあるだけの多段階認証にすぎない。利用者IDは本人を識別する記号であって、秘密の情報ではないため要素には数えない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問37|FARとFRR

生体認証装置の判定のしきい値を、より厳しい側へ変更した。このとき起きる変化として適切なものはどれか。

  1. 他人受入率は下がるが、本人拒否率は上がる
  2. 他人受入率も本人拒否率も、ともに下がる
  3. 他人受入率は上がるが、本人拒否率は下がる
  4. 他人受入率も本人拒否率も変化せず、等誤り率だけが下がる
正解と解説
正解:A. 他人受入率は下がるが、本人拒否率は上がる

生体認証では、判定を厳しくすると他人を誤って受け入れる割合(他人受入率、FAR)は下がるが、本人を誤って拒否する割合(本人拒否率、FRR)は上がる。緩めればその逆になる。両者はトレードオフの関係にあり、同時に下げることはできない。両者が等しくなる点の値が等誤り率(EER)で、これは装置そのものの性能を表す指標なので、しきい値を動かしても変わらない。用途に応じて、どちらの誤りを抑えるかを選ぶことになる。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問38|FIDO

FIDOによる認証がフィッシングに強いとされる主な理由はどれか。

  1. 入力するパスワードが毎回変わるため、盗まれても再利用できず、偽サイトに入力しても被害が生じないから
  2. サーバ側でパスワードを強力な方式で暗号化して保管しており、流出しても元のパスワードが分からず、他のサイトでも使えないから
  3. 通信経路をTLSで暗号化しているため、偽サイトへ誘導されても途中で内容を読まれることがないから
  4. 秘密鍵が端末内から出ず、署名の対象に接続先のドメイン名が含まれるため、偽サイトでは正しい署名を作れない
正解と解説
正解:D. 秘密鍵が端末内から出ず、署名の対象に接続先のドメイン名が含まれるため、偽サイトでは正しい署名を作れない

FIDOは、端末の中に保管した秘密鍵でサーバからの乱数に署名して返す方式である。パスワードそのものがネットワークを流れず、サーバ側にも保管されないので流出しても悪用されにくい。さらに、署名の対象に接続先の情報が含まれるため、利用者が偽サイトに誘導されても、そのサイト向けの正しい署名は作れず認証が成立しない。ここがフィッシング耐性の核心である。ワンタイムパスワードは再送には強いが、偽サイトに入力させて即時転送されると突破されうる。通信の暗号化やサーバ側の保管方法は、偽サイトへの誘導そのものを防ぐ手段ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問39|SSO

シングルサインオンを導入するときに、あわせて考慮すべき最も重要な点はどれか。

  1. 各システムのパスワードをすべて同じ文字列にそろえる必要があること
  2. 認証基盤が単一障害点になり、そこが停止または侵害されると全システムに波及すること
  3. 利用者ごとの権限設定が不要になり、認可の設計を省略できること
  4. システムごとの操作ログを取得できなくなること
正解と解説
正解:B. 認証基盤が単一障害点になり、そこが停止または侵害されると全システムに波及すること

シングルサインオンは、一度の認証で複数のシステムを使える仕組みで、利便性とパスワード管理の負担軽減に大きく効く。その裏返しとして、認証基盤が停止すれば全システムが使えなくなり、認証基盤が破られれば全システムへ被害が及ぶ。したがって、認証基盤自体の多要素化と冗長化が前提になる。パスワードをそろえる必要はなく、認可の設計は依然として必要で、各システムでの操作ログも従来どおり取得できる。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問40|OAuthとOIDC

OAuth 2.0とOpenID Connectの関係の説明として適切なものはどれか。

  1. OAuth 2.0は権限の委譲を扱う認可の枠組みで、OpenID Connectはその上に認証を載せ、誰がログインしたかを示すIDトークンを発行する
  2. OAuth 2.0は認証の仕様で、OpenID Connectはその古い版を置き換えた認可の仕様である
  3. どちらも認可の仕様であり、扱えるトークンの形式だけが異なる
  4. OpenID ConnectはOAuth 2.0とは無関係に定められた、独立した通信プロトコルである
正解と解説
正解:A. OAuth 2.0は権限の委譲を扱う認可の枠組みで、OpenID Connectはその上に認証を載せ、誰がログインしたかを示すIDトークンを発行する

OAuth 2.0は、利用者のパスワードを渡さずに、あるサービスへ他のサービスの限定的な権限を一時的に貸すための認可の枠組みである。それ自体は「誰がログインしたか」を伝える仕組みをもたないため、本人確認の用途にそのまま流用してはならない。OpenID Connectは、OAuth 2.0の仕組みの上に認証の層を足した仕様で、認証済みの利用者を表すIDトークンを発行する。置換えの関係ではなく、下地とその上の層という関係である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問41|RBAC

役割ベースアクセス制御(RBAC)を採用する利点として最も適切なものはどれか。

  1. 資源の所有者が個別に権限を決められるため、現場の判断で柔軟に運用できる
  2. 権限を役割に付けて人には役割を割り当てるため、異動時の付替えと権限の棚卸しが容易になる
  3. 利用者の所在地や時刻などの条件を細かく組み合わせて許否を判定できる
  4. 組織が定めた規則を所有者でも覆せないため、機密性を最も厳格に保てる
正解と解説
正解:B. 権限を役割に付けて人には役割を割り当てるため、異動時の付替えと権限の棚卸しが容易になる

RBACは、権限を役割に対して定義し、人には役割を割り当てる方式である。異動があれば役割の割当てを変えるだけで済み、「この役割に何が許されているか」を見れば全体像を把握できるので、棚卸しもしやすい。所有者が個別に決めるのは任意アクセス制御(DAC)、条件を組み合わせて判定するのは属性ベースアクセス制御(ABAC)、所有者でも覆せない規則による制御は強制アクセス制御(MAC)の特徴である。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問42|最小権限

最小権限の原則に沿った運用として適切なものはどれか。

  1. 作業のたびに申請するのは非効率なので、担当者全員に管理者権限を常時付与しておく
  2. 管理者権限は日常業務では使わず、必要な作業のときだけ申請と承認を経て期限付きで付与する
  3. 退職者のアカウントは、再入社の可能性があるため権限を残したまま無効化だけしておく
  4. 権限は付与時に慎重に決めていれば、その後の棚卸しは不要である
正解と解説
正解:B. 管理者権限は日常業務では使わず、必要な作業のときだけ申請と承認を経て期限付きで付与する

最小権限の原則は、業務に必要な最小限の権限を、必要な期間だけ与えるという考え方である。管理者権限を常用すると、その端末が侵害されたときの被害が一気に広がるので、必要なときだけ期限付きで付与する運用が適する。全員への常時付与は原則に真っ向から反する。退職者のアカウントは権限を残さず削除または権限剥奪まで行う必要があり、権限は運用のなかで積み上がるため定期的な棚卸しが欠かせない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問43|職務分離

職務分離を取り入れた統制の例として適切なものはどれか。

  1. 1人の担当者が申請から承認、実施、結果確認までを一貫して行い、責任の所在を明確にする
  2. 担当者ごとに異なるパスワードを設定し、他人には教えないようにする
  3. 本番環境への変更を申請する担当者と、その内容を確認して承認する担当者を別の人にする
  4. 作業内容を記録した手順書を作成し、作業後に本人が内容を確認して押印する
正解と解説
正解:C. 本番環境への変更を申請する担当者と、その内容を確認して承認する担当者を別の人にする

職務分離は、1人の判断だけでは不正や重大な誤りが完結しないように、相反する職務を別の人に割り当てる統制である。申請と承認、実行と検証を分けるのが典型で、内部不正の三要素のうち「機会」を直接減らす効果がある。1人が一貫して行う運用は責任は明確でも牽制が働かない。パスワードを個別に持つことは本人識別のための前提であって職務分離ではなく、本人が自分の作業を確認するだけでは第三者による検証にならない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問44|WAF

公開WebサーバへのHTTPSの通信をファイアウォールで許可している構成において、Webアプリケーションの入力欄を悪用する攻撃を防ぐために追加すべき機器はどれか。

  1. パケットフィルタリング型ファイアウォールをもう1台
  2. L3スイッチ
  3. WAF
  4. ロードバランサ
正解と解説
正解:C. WAF

ファイアウォールはIPアドレスとポート番号を見て通信の可否を決める装置なので、443番の通過を許可した以上、その中を流れるHTTPの中身までは判断しない。WAFはHTTPの要求と応答を解釈し、Webアプリケーションを狙う攻撃に特徴的なパターンを検出して遮断できるため、この層の防御に適する。ファイアウォールを増設しても判断できる情報は変わらず、L3スイッチは経路制御、ロードバランサは負荷分散のための機器である。なお、WAFは緩和策であり、根本対策はアプリケーション側の実装にある。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問45|IDSとIPS

IDSとIPSの違いの説明として適切なものはどれか。

  1. IDSは通信を遮断できるが、IPSは検知しかできない
  2. IDSはHTTPの中身を解釈できるが、IPSはIPアドレスとポート番号しか見られない
  3. IDSは暗号化された通信の中身を復号できるが、IPSはできない
  4. IDSは不審な通信を検知して知らせるにとどまるが、IPSは検知に加えてその通信の遮断まで行う
正解と解説
正解:D. IDSは不審な通信を検知して知らせるにとどまるが、IPSは検知に加えてその通信の遮断まで行う

IDSは侵入検知システムで、通信やログを監視して不審な挙動を検知し、管理者に知らせる。IPSは侵入防止システムで、検知に加えてその通信を遮断する。したがってIPSは誤検知があると正常な通信まで止めてしまうため、導入時にはまず検知だけで運用して調整する進め方が採られることが多い。HTTPの中身に特化して解釈するのはWAFであり、暗号化された通信は復号の仕組みを別に用意しない限り、どちらも中身を見られない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問46|DMZ

DMZを設ける目的として最も適切なものはどれか。

  1. 外部に公開するサーバを内部ネットワークとは別の区画に置き、公開サーバが侵害されても内部へ直接到達させないようにする
  2. 外部からの通信をすべて遮断し、社内からインターネットへ出る通信だけを許可して、公開サーバもすべて内部ネットワークの中に置く
  3. 内部ネットワークの通信速度を上げるために、公開サーバを内部より高速な回線へ移して負荷を分ける
  4. 公開サーバのIPアドレスを内部からしか見えないようにして、攻撃者にその存在を知られないようにする
正解と解説
正解:A. 外部に公開するサーバを内部ネットワークとは別の区画に置き、公開サーバが侵害されても内部へ直接到達させないようにする

DMZは、外部に公開する必要のあるサーバを、内部ネットワークと外部の間の別区画に置く構成である。公開サーバは攻撃にさらされやすいので、そこが侵害されても内部の重要な資産へ直接届かないよう、区画の間で通信を制限する。外部通信の全遮断は公開サーバの目的と矛盾し、通信速度の向上やIPアドレスの秘匿はDMZの目的ではない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問47|ゼロトラスト

ゼロトラストの考え方に沿った施策はどれか。

  1. 社内ネットワークからのアクセスであっても、利用者と端末の状態を毎回検証し、必要最小限の権限だけを与える
  2. 社内ネットワークに接続している端末からのアクセスは、信頼できるものとして認証を省略する
  3. 境界にファイアウォールを設置し、内部の通信については監視を行わない
  4. VPNで社内に接続すれば、社内の全システムへ自由にアクセスできるようにする
正解と解説
正解:A. 社内ネットワークからのアクセスであっても、利用者と端末の状態を毎回検証し、必要最小限の権限だけを与える

ゼロトラストは、「社内だから安全」という前提を置かず、すべてのアクセスを毎回検証し、必要最小限の権限を与え、常時記録して監視する考え方である。境界の内側を無条件に信頼する設計や、内部通信を監視しない設計、接続さえすれば全システムへ届く設計は、いずれもこの考え方とは逆である。境界防御を捨てるという意味ではなく、境界が曖昧になった環境に合わせて検証を重ねる指針だと理解しておくとよい。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問48|安全側設計

セキュアプログラミングにおいて、処理が失敗したときに安全側へ倒すという原則に沿った実装はどれか。

  1. 権限判定の処理で例外が発生した場合、既定の動作を「拒否」として処理を中断する
  2. 権限判定の処理で例外が発生した場合、処理を止めないために既定の動作を「許可」とする
  3. 例外の内容をそのまま画面に表示し、利用者が状況を判断できるようにする
  4. 例外が発生した場合はログを残さず、再試行を自動的に繰り返す
正解と解説
正解:A. 権限判定の処理で例外が発生した場合、既定の動作を「拒否」として処理を中断する

失敗したときに安全側へ倒すとは、判断できない状況では危険の少ない側を選ぶという設計である。権限判定が失敗したなら「許可されているか分からない」のだから、拒否して処理を止めるのが正しい。既定を許可にすると、例外を起こさせるだけで権限を回避できてしまう。例外の内容をそのまま画面に出すと内部構造やパスなどの手掛かりを与えることになり、ログを残さない設計は原因究明と責任追跡を不可能にする。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問49|CVSS

脆弱性への対応の優先順位を決めるとき、CVSSの基本評価基準の値だけで判断してはならない理由として適切なものはどれか。

  1. 基本評価基準の値は組織ごとに独自の算出方法で求められており、同じ脆弱性であっても他の組織が公表した値と横に並べて比較することができないから
  2. 基本評価基準は脆弱性そのものの性質だけを表し、自組織での露出の度合いや攻撃の観測状況は現状評価基準と環境評価基準で加味する必要があるから
  3. 基本評価基準は0.0から100.0までの値であり、緊急・重要・警告・注意という深刻度の区分とはそもそも対応していないから
  4. 基本評価基準の値は脆弱性が公表された後、攻撃コードの出回り具合に応じて毎日のように変化してしまうから
正解と解説
正解:B. 基本評価基準は脆弱性そのものの性質だけを表し、自組織での露出の度合いや攻撃の観測状況は現状評価基準と環境評価基準で加味する必要があるから

CVSSは、脆弱性そのものの性質を表す基本評価基準、攻撃コードの出回り具合や対策の提供状況を表す現状評価基準、自組織での重要度や影響範囲を表す環境評価基準の三つで構成される。基本値は共通の物差しとして有用だが、その資産がインターネットから到達できるのか、既に攻撃が観測されているのかによって、実際の危険度は大きく変わる。基本値の目安は9.0以上が緊急、7.0以上9.0未満が重要、4.0以上7.0未満が警告、0.1以上4.0未満が注意で、値の範囲は0.0から10.0である。算出方法は共通に定められており、基本値が日々変動することもない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問50|CVEとCWE

CVEとCWEの違いの説明として適切なものはどれか。

  1. CVEは脆弱性の深刻度を数値で表す指標、CWEはその数値の算出方法を定めた規格である
  2. CVEはソフトウェア部品の一覧を表す形式、CWEはその部品の版を管理する仕組みである
  3. CVEは攻撃者の手口を体系化した知識ベース、CWEは組織の成熟度を評価する枠組みである
  4. CVEは個別の脆弱性に付ける識別番号、CWEは脆弱性の種類を表す分類である
正解と解説
正解:D. CVEは個別の脆弱性に付ける識別番号、CWEは脆弱性の種類を表す分類である

CVEは、報告された個別の脆弱性に付けられる共通の識別番号で、同じ問題を組織や製品をまたいで一意に指せるようにするものである。CWEは、入力検証の不備や境界外書込みといった弱点の型を体系化した分類で、再発防止や設計上の議論に使う。深刻度を数値で表すのはCVSS、ソフトウェア部品の一覧はSBOM、攻撃者の手口を体系化した知識ベースはATT&CKであり、それぞれ別のものである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問51|CSIRT

CSIRTとSOCの役割分担の説明として適切なものはどれか。

  1. CSIRTがログや通信の常時監視と脅威の検知を担当し、SOCが経営層への報告、法的対応、外部への連絡を担当するという分担にする
  2. どちらも同じ役割であり、呼び名が違うだけで担当する業務にも組織上の位置付けにも違いはない
  3. SOCはログや通信の常時監視と脅威の検知に専念し、CSIRTは検知後の判断、封じ込め、復旧、外部連絡、再発防止までを担う
  4. SOCはインシデントが発生した後にだけ活動し、CSIRTは平常時の監視だけを行って発生後の対応には関わらない
正解と解説
正解:C. SOCはログや通信の常時監視と脅威の検知に専念し、CSIRTは検知後の判断、封じ込め、復旧、外部連絡、再発防止までを担う

SOCは監視と検知に専念する組織で、大量のログや通信を継続的に見て異常の兆候を拾い上げる。CSIRTは、上がってきた事象について影響範囲を判断し、封じ込め、根絶、復旧を進め、関係先や規制当局への連絡、再発防止の取りまとめまでを担う。インシデント対応は、準備、検知と分析、封じ込め・根絶・復旧、事後活動という流れで整理され、なかでも連絡体制と判断基準を平時に決めておく準備の段階が最も効く。役割を入れ替えた記述や、両者を同一視する記述は適切でない。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問52|RTOとRPO

事業継続計画で定めるRTOとRPOの説明として適切なものはどれか。

  1. RTOはいつまでに復旧するかという時間の目標、RPOはどの時点のデータまで戻せればよいかという時点の目標である
  2. RTOはどの時点のデータまで戻せるかの目標、RPOは復旧までに許容できる時間の目標である
  3. RTOもRPOも復旧に要する時間の目標であり、RTOが上限、RPOが下限を表す
  4. RTOは復旧に要する費用の上限、RPOは復旧作業に投入する要員数の上限である
正解と解説
正解:A. RTOはいつまでに復旧するかという時間の目標、RPOはどの時点のデータまで戻せればよいかという時点の目標である

RTOは目標復旧時間で、障害発生から業務を再開するまでに許容できる時間を表す。RPOは目標復旧時点で、障害発生時にさかのぼって「どの時点のデータまで戻せればよいか」、言い換えれば失ってよいデータの量を時間で表したものである。RPOを短くするほどバックアップの取得間隔を詰める必要があり費用が上がるので、業務ごとに水準を決める。二つを入れ替えた記述や、費用や要員数の目標とする記述はいずれも誤りである。

根拠:IPA「応用情報技術者試験(レベル3)」シラバス Ver.7.2 大分類3:技術要素 中分類11:セキュリティ

問53|不正アクセス法

不正アクセス行為の禁止等に関する法律に関する記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 同法が禁じているのは不正アクセス行為そのものだけで、識別符号の取得や提供は対象外である
  2. 同法は、アクセス管理者が講ずべき防御措置について、何ら規定を置いていない
  3. 同法は、アクセス管理者になりすまして識別符号の入力を求める行為については規定していない
  4. 同法第5条は、業務その他正当な理由による場合を除き、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を第三者に提供することを禁じている
正解と解説
正解:D. 同法第5条は、業務その他正当な理由による場合を除き、アクセス制御機能に係る他人の識別符号を第三者に提供することを禁じている

同法は第3条で不正アクセス行為そのものを禁じるほか、第4条で不正アクセスに使う目的での他人の識別符号の取得、第5条で正当な理由なく他人の識別符号を第三者に提供する助長行為、第6条で不正に取得した識別符号の保管、第7条でアクセス管理者になりすまして識別符号の入力を求める行為を、それぞれ禁じている。また第8条は、アクセス管理者に対して識別符号の適正な管理とアクセス制御機能の有効性の検証を努力義務として定めている。

根拠:不正アクセス行為の禁止等に関する法律 第3条・第4条・第5条・第6条・第7条・第8条

問54|個情法

個人情報の保護に関する法律に関する記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 個人データの取扱いを外部に委託した場合、委託先の管理は委託先の責任となるので、委託元には委託先を監督する義務も、取扱いの状況を確認する義務もない
  2. 個人データの漏えいが生じても、本人からの被害の申出がなければ個人情報保護委員会へ報告する必要はなく、本人への通知も不要である
  3. 同法第23条は、個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを個人情報取扱事業者に義務付けている
  4. 利用目的は個人データの取扱いを始めた後に定めればよく、取得の時点であらかじめできる限り特定しておく必要はない
正解と解説
正解:C. 同法第23条は、個人データの漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを個人情報取扱事業者に義務付けている

同法第23条が安全管理措置を、第24条が従業者の監督を、第25条が委託先の監督を、それぞれ事業者の義務として定めている。したがって委託しても委託元の監督義務は残る。第26条は、一定の事態が生じたときに個人情報保護委員会への報告と本人への通知を求めており、被害の申出の有無にかかわらず義務が生じる。第17条は利用目的をできる限り特定することを求めており、取扱いを始めてから定めればよいわけではない。

根拠:個人情報の保護に関する法律 第17条・第23条・第24条・第25条・第26条

問55|基本法

サイバーセキュリティ基本法に関する記述のうち、適切なものはどれか。

  1. 同法は、民間企業に対して不正アクセスを行った者への損害賠償請求を義務付けている
  2. 同法は、個人情報の漏えいが生じたときの本人への通知手続を定めている
  3. 同法は、マルウェアを作成した者に対する罰則を直接定めている
  4. 同法第12条は、政府にサイバーセキュリティ戦略の策定を義務付けており、その案は閣議の決定を経ることとされている
正解と解説
正解:D. 同法第12条は、政府にサイバーセキュリティ戦略の策定を義務付けており、その案は閣議の決定を経ることとされている

サイバーセキュリティ基本法は、第2条でサイバーセキュリティを定義し、第3条で基本理念を、第12条で政府によるサイバーセキュリティ戦略の策定を定めている。同条により、戦略の案は内閣総理大臣が閣議の決定を求め、策定後は国会への報告と公表を行うこととされている。基本法は施策の基本となる事項と各主体の責務を定めるもので、損害賠償請求の義務付けは行っていない。漏えい時の本人への通知は個人情報の保護に関する法律第26条、マルウェアの作成や提供に対する罰則は刑法第168条の2に定められている。

根拠:サイバーセキュリティ基本法 第2条・第3条・第12条/個人情報の保護に関する法律 第26条/刑法 第168条の2

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※ 解説は学習用の情報提供です。最新の出題範囲・制度は必ずIPAの公式発表をご確認ください。
※ 出題はIPA公開のシラバスに沿った仮の宿 学習室のオリジナル問題です。計算問題はすべて機械検算ずみ。試験制度・実施要項はIPAの公式発表をご確認ください(2027年度春ごろに新試験制度へ移行予定)。